2024年2月13日公開
新外国人投手のジェフリー・ヤン投手がこの日、ライヴBPに初登板した。ライヴBPとは、ピッチャーがマウンドから打者を相手に投げるメニューのことで、BP(バッティングピッチャー)がマウンドよりも手前から投げるフリーバッティングよりも、より実戦に近いメニューとなる。
前評判通り、ヤン投手のボールは本当に速い。やや抜け気味に左打者の胸元に行くボールもあったわけだが、これは左打者にとってはかなりの脅威で、この速さでこの制球力の投手に対しては、なかなか思い切って踏み込んでいくことはできない。
この制球力を見る限りヤン投手はセットアッパーというよりは、スクランブルで登板してくる役割になってくるのではないだろうか。つまり先発投手が早めに崩れた時のロングリリーフや、僅差でビハインドの場面などで試合を立て直す役割を与えられる可能性が高い。
もちろんライヴBPに登板したこと自体が初めてであるため、ここからさらに日本のマウンドやボール、ストライクゾーンに慣れていけば、制球力はもう少し安定していくとは思う。だが同じく新外国人投手であるアルバート・アブレイユ投手と比較をすると、ストライクとボールの差がまだ大きいようだ。
いずれにしてもこれだけのボールを投げられるというのは、ピッチャーとしては非常に魅力的だ。先発投手が序盤に崩れてヤン投手が二番手として出て来たら、相手打線はそこからはもうそう簡単に打つことはできなくなるだろう。また、そのような役割を担って行くことを想定するとイニング数が増えることも考えられ、ヤン投手の目標である140奪三振というのも、決して不可能ではないかもしれないとも思えてくる。
四球で自滅するタイプではなさそうだが、安定した制球力を持たない剛腕というと、ライオンズ時代のデニー友利投手に似たタイプと言えるだろうか。デニー投手も四隅を突く制球力はなかったが、当時の東尾修監督の助言で常に真ん中を狙って投げることで程よく内外にボールが散り、打者はなかなか的を絞ることができなかった。
ヤン投手も四隅を突けるほどの制球力はなかったとしても、かつてのデニー投手のようにストライクゾーンで勝負することができれば、ブルペンにおいて非常に大きな戦力となるはずだ。
さて、この日は古市尊捕手がロングティーをする映像も届けられた。最後の方ではレフトポールに直撃する打球も見せていたが、プロコーチ目線で言わせてもらえるならば、下半身の使い方が雑だなという印象を持った。腕力だけで打球を飛ばしているようなスウィングになっており、下半身の動きにはほとんど安定感が見られなかった。
なぜこのような下半身の動作を打撃コーチが放置しているのかは分からないが、もしかしたらフォーム固めというよりは、単純に遠くまで飛ばすゲーム感覚で行っていただけなのかもしれない。その意図まではなかなかこちらまでは伝わっては来ないわけだが、古市捕手が一軍で勝負をしていくためには、もう少し下半身の動作を理論的に作っていき、それを安定させることが必要なのかもしれない。
古市捕手も頑張り次第ではまだまだ正捕手争いに食い込んでいくことができるはずだ。だがそのためには、一軍で最低でも.220以上打てる程度の打力がなければ難しい。
もちろん正捕手でも打率1割台というキャッチャーがライオンズにはこれまで複数人いたが、しかし彼らは捕手としての能力がずば抜けていた。多少打てなくても捕手としてこなしてくれる仕事が人並み以上に高く評価されていたのだ。だが古市捕手の場合はまだそこまでのレベルとは言えないため、やはり打力がなければ一軍に食い込むことは難しいだろう。
だがスウィング速度や強さというあたりを見ていくと、今まで以上に強いスウィングができているように見える。このロングティーの映像ではフォームはぐちゃぐちゃになっているようにも見えるが、それでもバットを振る速度に関しては着実にアップしているように見えるため、やはりあとは下半身の安定感が成績を左右していくことになるだろう。
そして古市捕手のように明るい性格の捕手が一軍に控えていれば、チームのムードメーカーにもなってくれて、ビハインドで敗色濃厚の雰囲気を一気に変えてくれることもあるだろう。例えば岡田雅利捕手はそのような能力を備えている。
古市捕手はいきなり正捕手を目指しても難しいというのが現状であるため、まずは岡田捕手が務めたようなムードを一変できる控え捕手を目指すと良いのではないだろうか。そして控え捕手として一軍に定着できた時、正捕手をうっちゃって一気にその座を奪いに行ってもらいたい。