2020年11月 9日公開
今日、ライオンズはマリーンズに敗れたことによりあと1試合を残し、3位が確定してしまった。つまりCSには進出できないということで、事実上の終戦ということになった。今季は最下位争いに甘んじる時期もあったわけだが、最終的には2位争いができるまで本当によく盛り返して来てくれたと思う。
2020年の戦いを振り返ると、エース・4番・正捕手が一年間一度も盤石になることがなかった。エースに関してはニール投手にその役割が期待されたが、昨季のような安定感はほとんど見せることなく今季を終えてしまった。4番に関してもまたもや山川選手が4番の座を剥奪され、シーズン終盤には怪我による2軍降格も強いられた。
正捕手に関しては森友哉捕手がその役割を果たさなければならなかったわけだが、昨季の首位打者がまさかの打撃不振に陥り、リード面でも投手の良さを最大限引き出せない試合も少なくはなかった。やはり不敗神話のニール投手、本塁打王の山川選手、首位打者の森捕手が揃って不振を極めてしまったことが、今季の戦いが苦しくなってしまった最大の要因だろう。
秋山翔吾選手の穴、浅村栄斗選手の穴とも言われているが、しかし上記3人がそれなりの成績を残すことができていれば、秋山・浅村両選手の穴を意識する必要などないはずだ。抜けた選手の穴を大きく広げて覗くよりも、今いる選手たちの復調・成長を期待しなければならない。
秋山選手の穴ということであれば、筆者個人としては栗山巧選手を1番に据えれば十分に埋まると考えている。秋山選手はそれほど盗塁をする選手ではなかったし、野球をよく知っているという意味では、栗山選手が最適だったと思う。後半戦は俊足の金子選手が1番を務めたが、しかしバッティングの調子が良かったのは8月の短期間のみで、その他の月を見るとすべて打率は低空飛行なった。これだけ打率が低いと、いくら俊足であっても1番を打たせるにはあまりにも物足りない。金子選手の打力であれば、8番・9番を打たせて盗塁によってチャンスメイクをしてもらう、という形の方が、本人の気持ち的にも楽になって良かったのではないだろうか。
誤算という意味では、今井達也投手の乱調続きも大きかった。開幕前には非常に大きな期待を寄せられていたが、開幕してみると制球難で自滅する試合が多く、好不調の波も大きかった。後半戦から高橋光成投手がエース級の活躍を見せていただけに、今井投手がもう少し試合を作ることができれば、マリーンズよりも少しだけ上に行けていた可能性は低くはなかっただろう。
とにかく今季のライオンズは投打がほとんど噛み合わなかった。根本的に見ていくと今のライオンズはまだまだ未完成のチームだ。やはり涌井・岸両投手を失って以来、エース不在という状況は苦しい。菊池雄星投手はエースと呼べるキャラクターではなかったし、ニール投手が良かったのも今のところは昨季のみだ。
今ライオンズに必要なのはやはりエースだと思う。高橋投手がそうなっていくのか、それとも今井投手が覚醒するのか。とにかく「コイツが投げていれば大丈夫だ」と思わせてくれるピッチャーの出現を待ちたい。期待できる若手先発陣としては高橋投手、今井投手、松本投手、浜屋投手、與座投手、伊藤投手、本田投手と数は揃っている。あとは彼らが来季に向けてどれだけ成長できるかだろう。
10%やそこらのレベルアップではまったくダメだ。20%、30%とレベルアップしなければならない。特に伊藤・本田両投手はちょこちょこチャンスをもらいながらも近年1軍に定着することができていない。これは1軍レベルとしては明らかに何かが足りないからだ。例えばウィニングショットであったり、制球力であったり。何か武器を身につけなければ来季も今までの繰り返しとなるだろう。
松本投手に関しては2年目のジンクスといったところだったろうか。将来的にはエースとなっていかなければならない投手なだけに、変化球の精度を1軍レベルにまで磨き上げたい。そして今井投手に関しては今季は上手くいかなかったが、しかし何かを変えようというチャレンジ精神が見えるため、いくつかのことがハマり出せば、一気に開花する可能性は高い。
與座投手に関しては開幕は1軍で迎えたが、2軍降格後は自分を見失っていると言うか、どこか迷いのあるピッチングを続けていた。シーズンオフには牧田和久投手に弟子入りするなどしその迷いを吹っ切ることができれば、サブマリンという武器をもっと1軍の舞台で活かせるようになるのではないだろうか。
若手先発投手陣を見た時、責任が重くなってくるのが西口文也投手コーチだ。今季西口コーチは、高橋投手を覚醒させることに成功した。西口コーチの助言がなければ、後半戦の安定感は見られなかっただろう。西口コーチは昔ながらの「教えたがり」ではなく、選手をよく観察し、選手個々それぞれに必要なアドバイスを送ることのできるコーチのように見える。
まだまだ未完成ばかりの若手先発陣を抱え、仕事は本当に多いと思う。恐らく今季は、12球団のベンチ担当としては最も多くマウンドまで走った投手コーチだったのではないだろうか。
将来、松井稼頭央監督、西口・豊田投手コーチ、高木浩之ヘッドコーチ、和田一浩打撃コーチ、野田浩輔バッテリーコーチ、松坂大輔2軍監督というような布陣を見られる日も来ると思う。この中でもディフェンス中心の野球ということになると、やはり西口コーチの責任は非常に重い。この世代のコーチたちが経験したのは東尾監督・伊原監督による守り中心の野球だ。
先発投手陣が安定していただけに年間の順位が大崩れすることがなく、常にAクラスを維持していた。だが東尾時代の投手たちがチームを去ったり、年齢的に衰えが見えてくると、渡辺久信監督の時代には打って勝つしかないという状況に変わっていく。そして投手力はどんどん衰えていき、Bクラスに転落するシーズンも増えてしまった。
常勝チームとして常にAクラスで優勝争いをしていくためには、とにかく先発投手陣の整備が最重要事項だ。来季はニール投手に開幕を任せるような状況ではいけない。ニール投手が木曜日や日曜日に投げられる状況になっていくのがベストだ。そのためにも期待したいのは高橋投手のさらなる飛躍と、今井投手の覚醒だ。まずはこのふたりが自立してくれないと話にならない。
そして高橋・今井両投手の底上げを担っているのが西口コーチということになる。さらにはライオンズには松坂・内海両投手というふたりの超エース級だったピッチャーもいる。先発投手が育つにはこれほど素晴らしい環境はないはずだ。西口コーチ、豊田コーチ、松坂投手、内海投手と、まさにレジェンドだらけなのだから。
今季は本当に先発投手に苦労したライオンズだが、このオフは西口コーチに徹底的に先発陣を底上げしてもらい、来季は4人くらい10勝投手が誕生することを期待したい。覚醒前の若手先発陣の顔ぶれを見ると、4人以上が二桁勝利を挙げてもまったく不思議はないと筆者は感じている。来季は本当に先発投手の力によって勝ってもらいたい。リリーバーにではなく、先発投手に勝ち星がついてもらいたい。今季の3位が確定した今、筆者は強くそう願うのであった。