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2024年5月21日公開

今の西武に必要なのは松井稼頭央監督の更迭ではなく軟弱な選手を戦士に変えられるメンタルトレーナー

埼玉西武ライオンズ vs 千葉ロッテマリーンズ/7回戦 0勝7敗 ベルーナドーム
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Marines 5 0 0 0 0 0 0 0 0 5 11 0
Lions 0 0 1 0 0 1 1 0 0 3 11 0

継投●今井達也佐藤隼輔中村祐太平井克典田村伊知郎
敗戦投手今井達也 3勝1敗0S 2.17

松井監督はなぜ古賀捕手を重用し、柘植捕手を起用しないのか?!

ファンの間だけではなく、いよいよメディアの中でも松井稼頭央監督の更迭論を語り出すところが出てきた。もちろんそれは主要スポーツ新聞の記事ではなく、いわゆる大衆紙と呼ばれるメディアであるため信頼性はまったくないわけだが、しかしメディアがこうして報じることでそれに乗せられてしまう野球ファンも決して少なくはないはずだ。

そんな状況下において、今日はエース今井達也投手を擁しながらもまたもやマリーンズに敗れてしまった。今日の今井投手は初回に一気に5点を失ってしまうわけだが、右打者に打たれたほとんどのボールは、外角低めに投げたボールがシュートして真ん中付近に入ってきたものだった。

一方左打者に対しては落ちるボールを上手く合わせられて、完全に打ち取ったような打球でありながらも野手の間に落ちる不運なヒットになっていた場面もあった。やはりこの辺りは配球によって防いでいかなければならない。まず古賀捕手の配球はほとんどが外角低めか真ん中低めのサインだった。このように対角線や奥行きを使わない配球は、いつも書いているようにアマチュア野球の配球だ。

「低めに投げておけばなんとかなる」という配球になっており、今日初回に5点を取られた際の今井投手のボールも、1球単位で見れば良いところに決まっているボールが多かった。しかし古賀捕手の配球が低め一辺倒であるため、マリーンズの打者も低めに対し上手く目付けすることができ、ストライクからボールゾーンに落ちていくボールに対しても上手く対応することができていた。

ライオンズはこのまま古賀捕手を起用し続けていては、まず勝てるようにはならないだろう。そして筆者が不思議に思っているのは、なぜ柘植世那捕手を起用しないのかという点だ。実は筆者個人としては古賀捕手よりも、柘植捕手の方が捕手としての能力は高いと見ていた。だが残念ながら柘植捕手には怪我があったため、昨季以降の正捕手争いで一歩遅れをとっている状況となっている。だが今季は4月21日に一軍登録をされて今日でちょうど1ヵ月になるわけだが、まだ7試合で15打席の出場にとどまっている。

確かにバッティングでは現状では古賀捕手の方が上なのだろう。しかし投手陣は明らかに古賀捕手の配球ミスや捕球ミスによって失点を増やしてしまっている。捕手の場合、打てるに越したことはないわけだが、しかし重要度が高いのはバッティングよりもキャッチャーとしての能力だ。そのキャッチャーとしての能力の高さを見せられていない古賀捕手を重用する理由が筆者には見えてこない。本当に打撃だけで古賀捕手を利用しているのだろうか。ちなみに炭谷捕手の次いで捕手としての能力が高いのは間違いなく岡田雅利捕手だ。特に配球面では素晴らしいリードを見せてくれる。

今はもう「育てながら勝つ」と悠長なことを言っていられる状況ではない。メディアでさえも松井監督の更迭論をニュースにし始めているほどなのだ。そう考えるとやはり、最も投手陣を安定させられる可能性が高い炭谷銀仁朗捕手を主戦捕手にし、点差が開いた場面などで柘植捕手、古賀捕手を起用していくべきではないだろうか。

今日の古賀捕手の配球を見ていても、まったくプロの一軍レベルではなかった。細川亨捕手のことは絶賛した故野村克也監督も、今の古賀捕手を見れば間違いなく酷評するだろう。

今のライオンズに木村文紀選手ほどバットを振っている選手はいるのだろうか?

さて、松井監督の更迭論が出てくることは仕方がないことだと思う。だが筆者個人としては更迭すべきではないと考えている。なぜならまず、監督を更迭する前にもっとすべきことがあるからだ。例えば打撃コーチの入れ替えなどはその際たる面だと言えよう。そのような打てる手を打たずして監督を更迭するというのは避けるべきだ。

これが例えば第二次伊原政権の時のように、伊原監督の選手に対する不必要な言葉によってチームが空中分解しているような状況であれば、監督を更迭する必要もあると思う。だが今はまだ、松井監督が思い描く野球を選手たちができていないという状況なのだ。もちろんそうさせなければならないのが監督であるわけだが、しかし無闇に監督を更迭しても良い結果になるケースは稀だ。

そもそもつい先日、後藤高志オーナーが松井監督にはこれからも思う存分やってもらうと明言されたばかりなのだ。つまりよほどのことがない限りは、松井監督が早期更迭されることはまずないと考えられる。

さて、今日は松井監督の選手起用についても少し書いておきたいと思う。これが松井監督の意思なのか、それとも打撃コーチの意思なのかは分からないのだが、今季もここまで、二軍から上がってきた選手を即スタメンで起用することがほとんどとなっている。今日の試合に関しても西川愛也選手が即スタメン起用されている。

だがこのやり方は選手の競争本能を掻き立てることに役立つことはない。二軍から上がってきたばかりの選手は、まずは1打席勝負の代打からチャンスを与えるべきだ。もちろんライオンズには現状、しっかりとしたレギュラーは非常に少ないわけだが、それでもやはり一軍でプレーしてきた選手を優先して起用すべきだろう。そうしなければ一軍に居続けた選手のモチベーションも下がってしまう。

もちろん今日に関しては少し疲れが見え始めていた金子侑司選手を休ませるために西川選手を起用したのだと思うが、しかし外野手ということであれば、まずは若林楽人選手を西川選手よりも優先して起用すべきだろう。

そしてそこで西川選手が若林選手に対する代打により、若林選手よりも安定したバッティングを続けて見せられた場合は、そこで初めて若林選手と西川選手をスイッチさせるべきだと思う。このような起用法に関しても、松井監督はやり方が優しすぎるように筆者には見えている。もっと言えばやり方がぬるいのだ。

そもそも今こうしてあまり打てていないライオンズの打者陣は、果たしてかつての木村文紀選手のように手の皮がボロボロになるまでバットを振り込んでいるのだろうか。もちろんバットマンである限り手にマメは誰にでもあるとは思うが、しかし木村選手の手のひらは他の選手とは違うレベルだった。

木村選手は投手から野手に転向したこともあり、転向後はライオンズのどの打者よりも多くバットを振っていた。この時の木村選手の姿こそが、ライオンズの打者陣が今見せるべき姿ではないだろうか。お風呂に入るたびにお湯が滲みて痛くなるほどバットを振り込むべきではないだろうか。

かつての木村選手ように、やることをしっかりやっている打者であれば多くのチャンスを与えてあげても良いと思う。しかし結果を出せていない選手が、特訓とも呼べないようなバッティング練習を早出・居残りでしているだけという状況であれば、そのような選手を昇格後すぐにスタメン起用すべきではない。もちろん西川選手がそうであると言っているわけではない。西川選手にしろ、若林選手にしろ、源田壮亮主将にしろ、外崎修汰選手にしろ同じだ。トノゲンコンビだって打率を残せていないのだから、破れたマメで送球時に手が痛くなるほどバットを振り込むべきだ。

今ライオンズに必要なのは軟弱な選手を戦士に変えてくれるメンタルトレーナー

今井達也投手

さて、最近髙橋光成投手のインタビュー記事を読んでいて気になった点があった。髙橋投手が「緊張」というものについて語っているインタビューだったのだが、ライオンズの選手は試合前の緊張感を緩めるために10〜30分程度の昼寝をしている選手が非常に多いらしい。しかしこれこそが弱さの元凶になっているのではないだろうか。

スポーツ指導現場には、「スポーツ心理学」という分野の科学が存在しており、筆者も選手を指導するにあたりこのスポーツ心理学をかなり深く勉強した経験を持っている。そのため筆者はクライアントである選手たちに対し、ある程度レベルの高いメンタル強化法をコーチングしていくこともできる。その筆者に言わせてもらえるのならば、「緊張」をほぐそうとしている時点で、ライオンズの選手たちがスポーツ心理学をまったく理解していないことがよく分かるのだ。

実は渡辺久信監督時代には、ライオンズには鋒山丕コーチというメンタルトレーナーが在籍していた。筆者もお話をさせていただいたことがあるのだが鋒山コーチは日本で最初のメンタルトレーナーだと言われている、スポーツ心理学の第一人者でもある。そのため当時のライオンズの選手たちは、緊張というものをプラスに変える能力を身につけていた。

例えば岸孝之投手などは、大舞台になるほど緊張し、試合直前にはトイレに行って吐いてしまうことさえあった。しかしその緊張をあえてほぐそうとするのではなく、その緊張を上手く使うことができていたのだ。ちなみに試合直前に吐いてしまった時は日本シリーズの先発時だったわけだが、その日本シリーズで岸投手はMVPを獲得している。

緊張というものについて書き始めると文章が終わらなくなってしまうため、ここで詳しく書くことはしないが、とにかく言えることは、緊張というものを理解できれば、その緊張をパフォーマンスに対し非常に大きなプラスにしていけるということだ。だが今のライオンズの選手たちはその緊張を使うどころか、試合前に寝てリラックスしてしまっているのだ。これでは他球団の選手たちとメンタル面での差が付いてしまうばかりだ。

ちなみに髙橋光成投手はメジャーに行きたいと考えているはずだ。メジャーリーグの場合、各球団には必ずメンタルトレーナーが在籍しているし、エージェントのサポートチームにも必ずと言って良いほどメンタルトレーナーがいる。例えば平良海馬投手は現在スコット・ボラス氏とエージェント契約を結んでいるわけだが、ボラス氏のサポートチームにもメンタルトレーナーが在籍している。

メジャーではそれほどメンタル面が大切にされているわけだが、メジャーに行きたいと語っている髙橋投手は、インタビュー記事を読む限りではメンタル面の知識はほとんどないようだ。ちなみにメジャーでは今なお語り継がれているヨギ・ベラ捕手のアフォリズムがある。「野球の90%はメンタルで、残りの半分がフィジカル」という言葉がそれだ。この言葉に集約されている通り、野球はメンタル競技なのだ。つまり体を鍛えても、メンタルを鍛えていなければ安定したパフォーマンスは絶対にできないということだ。

そしてメンタルを鍛えていなければ得点圏打率が上がることもない。もちろん性格的にチャンスになると燃えていつも以上に打てるタイプの選手もいるわけだが、そのような選手は非常に稀だ。例えば大谷翔平選手にしても今季開幕直後は低い得点圏打率に苦しんでいたが、しかしメンタル面もしっかり鍛えている大谷選手はすぐに得点圏打率を高水準まで上げてくることができた。

とにかく今のライオンズの選手たちはメンタルの鍛え方が甘い、と言うよりは甘すぎる。外崎選手にしても今日は2安打放ったわけだが、チャンスで巡ってきた場面では最初の2打席は内野ゴロに倒れ、3回目のチャンスでようやくヒットを打つことができた。もちろん3回チャンスで打席に立って1安打であるため、この試合だけで見れば得点圏打率は.333と見ることもできるわけだが、しかし今季トータルの外崎選手の打率は.224で、得点圏打率は.206となっている。とても三番打者の数字とは思えない。

松井監督の更迭よりも前にやるべきことがあると上述したわけだが、その一つがメンタルトレーナーとの契約だ。もちろん短期的にすぐに結果が出るとは限らない分野ではあるが、しかし野球という競技に精通しているメンタルトレーナーであれば、短期的に結果を出すことも十分に可能だ。

ライオンズは今まったく勝てていない。そうであるならば選手たちは試合前に仮眠を取っている場合ではない。その時間を使って本番で能力を発揮するために不可欠なメンタル面の強化を行なっていくべきだ。例えば筆者が見たいのは、日本シリーズの舞台で死球を当てられて力強いガッツポーズを見せた片岡易之選手のような選手なのだ。今日の今井投手のように初回に打ち込まれた時に見せたしょんぼりした表情でも、チャンスで凡退して俯きながらトボトボと戻ってくる外崎選手の姿でもないのだ。今ライオンズに最も必要なのは、軟弱にも見える彼らを立派な戦士に変えてくれるメンタルトレーナーの存在であると言って間違いないはずだ。

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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