2024年7月 7日公開
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | |
Marines | 0 | 0 | 2 | 0 | 2 | 2 | 0 | 3 | 0 | 9 | 10 | 0 |
Lions | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 7 | 2 |
継投/ ●ボー・タカハシ〜 菅井信也〜 中村祐太〜 豆田泰志〜 佐藤隼輔
敗戦投手/ボー・タカハシ 1勝6敗0S 3.62
失策/豆田泰志(1)、山村崇嘉(3)
これでマリーンズ戦は今季開幕11連敗となってしまった。レフトスタンドからもライオンズファンに「気合を入れろ!ライオンズ!」とコールされてしまうほどの体たらく振りとなってしまっている。ライオンズが今季勝てないのはもちろん打力の弱さが最大の原因となっているわけだが、今日の試合を見ていると捕手の差も大きいように感じられた。
9回裏二死走者なしで、この場面マリーンズはリードを7点まで広げていた。そして代打長谷川信哉選手を2ストライクと追い込んだ次の1球、マリーンズの西村投手が投じたフォークボールは暴投気味のワンバウンドとなってしまった。この場面は走者もいないし、空振りして振り逃げになっているわけでもないため、基本的にはこの暴投は捕手としては無理に捕りにいく必要がない。だがマリーンズのベテラン佐藤都志也捕手はこれをしっかり止めに行き、しかもバウンドしたボールが喉に当たってしまった。
喉への直撃が大事に至らなかったのが何よりであるわけだが、捕手がこのように、捕らなくても良いボールまでしっかり止めようとしてくれることで、投手から佐藤捕手に対する信頼感は高まっていき、信頼関係が高まるとバッテリーのパフォーマンスも向上していく。今季マリーンズが好調を維持をしている要因は、このようなチーム内の信頼関係にあるのではないだろうか。
では一方ライオンズの捕手陣はどうだろうか。ベテラン炭谷銀仁朗捕手は除き、今一軍には古賀悠斗捕手と今日スタメンマスクを被った牧野翔矢捕手がいるわけだが、まず今日マスクを被った牧野捕手だが、今日の試合でボー・タカハシ投手のワンバウンドしたフォークボールを止めに行く際、足よりも先に手だけでボールを追いかけてしまい、結局下半身が間に合わずにボールを逸らしてしまうという場面があった。
だがこの動作は牧野捕手だけではなく、古賀捕手にもよく見られる。一方マリーンズの佐藤捕手や炭谷捕手はワンバウンドしたボールを手で追いかけるよりも先に、膝で滑って上半身で壁を作り、その後でミットをボールが来そうなところに持っていく。そのためワイルドピッチでもボールがミットに収まる確率が非常に高い。
ちなみにかつて細川亨捕手と野田浩輔捕手が正捕手争いをしていた際は、今の古賀捕手や牧野捕手よりもずっと高いキャッチング技術があった。今のライオンズの若手捕手の中では、筆者は個人的には柘植世那捕手のキャッチング技術が最も高いと見ているのだが、しかし全体的には細川・野田時代と比べると今の若手捕手陣のレベルは低いように見える。
そしてそれはキャッチング技術にとどまらず配球でも見て取れる。今日マスクを被った牧野捕手も、投手から何度もサインに首を振られる場面があった。また古賀捕手に関しても渡辺久信監督代行に代わった後からは、松井稼頭央前監督時よりも投手陣から首を振られる回数は増えている。これは恐らく渡辺監督代行が投手陣に対し自覚を促した結果と言えるだろう。
チームとしては古賀捕手を一本立ちさせたいのかもしれないが、しかし昨季も今季も古賀捕手ではライオンズはまったく勝てていない。今季をこのまま歴史的弱さで終えないためにも、これまでにも書いたことではあるが、正捕手は炭谷捕手にスイッチすべきではないだろうか。
困った時こそベテランに頼るべきで、そして今ライオンズは弱くて弱くてまさに困り果てている。だからこそキャッチャーとしての技術がまだ未熟な古賀捕手や牧野捕手ではなく、炭谷捕手を正捕手に据えるべきなのだ。そして試合の大勢が決まったところで経験を積ませるために古賀捕手や牧野捕手を起用すればいいと思う。
勝てていないのにこのまま古賀捕手や牧野捕手ばかりを起用する采配が続いてしまうと、ファンとしても「もう今年は諦めて将来のための育成をしているのかな」と思ってしまうようになる。しかしAクラス入りの可能性がまだあるうちは、最もチームが安定的に戦える布陣を敷くべきだ。そしてその扇の要として今最も相応しいのが炭谷銀仁朗捕手だと思う。
そして今日はもう一点守備に関して、ジャイアンツから新加入した松原選手の守備についても書く必要があるだろう。今日も松原選手はライトに入っていたわけだが、ライト線を破る打球が来た際、今日はクッションボールの判断を誤ってしまい、さらにボールを拾いに行った時にファンブルまでしてしまい、その結果ただの二塁打をタイムリースリーベースヒットにしてしまうという場面があった。
この場面は無死一塁だったわけだが、もし松原選手がクッションボールの判断を誤らなければ無死三塁二塁でとどまっており、その後のボー・タカハシ投手のピッチング次第では無失点で切り抜けられた可能性もあった。もちろん一番に戻って岡選手に犠牲フライを打たれているわけであり、三塁二塁でも1点は入ってしまっていただろう。だがミスにより2点を失うよりは、犠牲フライで1点失うだけの方が数字的にも気持ち的にはダメージは小さくて済む。
確かに松原選手はまだベルーナドームのライトの形状には慣れていないのかもしれない。だがこれはプロとしては言い訳にはならない。プロはシーズンの半分は本拠地以外のグラウンドで試合をするのだから、どんな球場であっても試合前にはクッションボールの弾み方を入念にチェックし、どんな打球がどこに当たってもしっかり捕れるように準備をしておかなければならない。
ここでやはり不思議に思ってしまうのが若林楽人選手の存在だ。今松原選手の打率は.121で、若林選手の打率は.231だ。そして若林選手は今日の松原選手のようなダメージの大きな守備のミスをすることはまずなかったし、ジャイアンツでも強肩を発揮して守備で大きな貢献をしている。
要するに筆者は未だにこのトレードには納得していないということなのだが、なぜ打率.121の松原選手をここまで我慢して起用し続けているのに、ライオンズ愛を持っており成長株でもあった若林選手を我慢して起用し続けることをしなかったのだろうか。しかも守備力では松原選手よりも若林選手の方がずっと上であるにもかかわらず。
このあたりの選手起用やトレードを見ても、選手だけではなく首脳陣やフロントにも今季は失策が目立っているように見える。もちろん松原選手がせめて.270以上打っているのであれば、今日のミスも「まだベルーナドームに慣れていないんだろうな」で終わる話なのだが、打てない上にこのような痛手の大きい守備のミスをしてしまう選手を起用し続けている理由が筆者には分からない。
今日の松原選手の2つの守備のミスにはエラーは記録されていない。しかしこれはエラー同然のミスであり、この2つのミスを加えると今日のライオンズのエラーは4つということになる。積極果敢に攻めた結果の、ファインプレーと紙一重のエラーであったり、名手源田壮亮主将がたまに見せてしまうエラーであればファンも「惜しかった!」と思える。だが今日の松原選手のミスはまったく惜しくはなく、ベルーナドームのライトフェンスの形状を未だに理解していないことを露呈しただけの凡ミスだ。
このような凡ミスをしてしまったことにより、松原外野手の投手陣からの信頼はかなり薄れてしまったはずだ。そうするとどうなるかと言うと、極端な話、投手陣はライトに打球を打たせることを嫌い、力で抑え込もうとして力んでしまい、その結果自分のピッチングを崩してしまうことに繋がってしまうのだ。
今日は守備で信頼を勝ち取っているマリーンズの佐藤捕手に対し、ライオンズの選手たちは逆に守備で信頼を失いかねないプレーを連発してしまった。これではライオンズが弱いこともまったく不思議には思えなくなる。そして筆者個人としては移籍してきた選手を二軍での慣らし運転なしにいきなりスタメンで使うことにも違和感を覚えている。これが主力級の新加入選手であれば別だが、松原選手にしても野村選手にしても今季はずっとファーム暮らしの選手だった。
もちろん心機一転の気持ちを生かすための起用法と見ることもできるわけだが、しかしこのような起用法は、ファームでずっと頑張っている選手たちからすると面白くないのではないだろうか。渡辺GMも本気で血の入れ替えを目指しているのであれば、他の選手たちが納得するレベルの選手を獲得してこなければならない。
負けているとどうしても書くことも文句ばかりになってしまうため、最後は今日の試合を見ていて良かったなと思える部分も少し書いておきたい。まず源田主将が猛打賞を記録したのは良かった。それでもまだ打率は.242ではあるものの、交流戦までの打率.229に対し、交流戦後の源田主将の打率は.256まで上がってきた。
.256でもまだまだかなり物足りないわけだが、しかし僅かでも調子が上向いているのであれば、さらなる上昇にも期待を寄せやすくなる。また、交流戦後は源田主将以上に打率を上げている選手が何人かいる。まず外崎修汰選手は交流戦までの.228に対し交流戦後は.321、山村崇嘉選手は交流戦までの.150に対し交流戦後は.314、西川愛也選手は交流戦までの.203に対し交流戦後は.320となっている。
まだまだ打線が線になり切っていない状態が続いてはいるものの、それでも交流戦までと比べると打線の状態は間違いなく上がってきていると言える。あとはバントミスを減らし、チームバッティングをもっと徹底していくことができれば、今後打線ももう少し繋がるようになり、得点力も上がっていくだろう。
そしてもう一点、今日は中村祐太投手が非常に良かった。中村投手を見ていると開幕直後はまだ、新天地でただ一生懸命投げているだけのように見えていたのだが、最近は自信を漂わせてマウンドに登っているように見えるのだ。
今日のマウンドでも菅井信也投手の後を受けた際、岡選手を追い込んでから牧野捕手のサインに何度も首を振って投げたボールで三振を奪っている。この場面は中村投手を見ていて、まったく打たれる気がしなかった。
そして中村投手は回またぎで1回1/3を投げたわけだが、1安打を打たれながらもまったく危なげないピッチングで好リリーフを見せてくれた。まだイニング数が多くないため1点取られると防御率が跳ね上がってしまうわけだが、しかしその防御率も今は2.95まで改善しており、6月の防御率は5試合で5回1/3を投げて3.38でWHIPが0.94、7月の防御率が2試合で3回1/3を投げて0.00、WHIPも0.30(3イニングス投げても0.9人しか走者を出さないという数字)となっている。
5月の中村投手は6試合で6回1/3を投げて防御率が5.68、WHIPが1.89だったことを考えると、6月以降の中村投手のパフォーマンスは飛躍的に良くなって来ていると言える。そしてその調子の良さを自ら感じているからこそ、マウンド上でも自信を漂わせて、場面場面でしっかりと投げたいボールを考えながらそのボールを投げて抑えることができているのだろう。
佐藤隼輔投手の状態がまだ中の上程度と見られるため、勝ち試合のセットアッパーとして、しばらくは中村投手を起用してもいいのではないだろうか。今日のような4点リードされた場面で起用するにはもったいないほど、近頃の中村投手のパフォーマンスは、時々は失点しながらも良い状態になっていると思う。
打者にしてもそうだが、リリーバーにしても勝ち試合で投げさせるという地位を与えることでその役割を意気に感じ、選手は成長していく。だが今のように勝っている場面でも負けている場面でも投げさせられるという状況では、自分の役割を明確に理解することが難しく、モチベーションや集中力も維持しにくくなるのだ。
中村投手をもう一段上のレベルの投手に押し上げるためにも、一度ここで地位を与えてみるのも一つの手だと思う。そしてこれまで中村投手が務めていた、場面を問わず登板するというポジションは、先発としてはちょっと難しいかなと思われ始めているボー・タカハシ投手を入れていけば良いのではないだろうか。
中村投手の最近のボールを見ているとスピンがかかっていて、球速表示以上に速く感じられる。このような質の高いボールを投げている投手には、やはり一度は地位を与えてみるべきだ。それで上手くいけばセットアッパー問題も解決するし、上手くいかなければまた元のポジションに降格させて出直しをさせれば良いだけだ。
甲斐野央投手の復帰に思いの外時間がかかっている今、8回を投げる投手の固定は近々の課題だと言える。最近の中村投手のボールはそれに資するだけの質となっているため、筆者個人としてはせめて一度はセットアッパーとして試してもらいたいなと、今日も中村投手のピッチングを見ながら考えていた。