HOME > ゲームレビュー (131記事) > 西武打線を甦らせられるのはかつての好々爺、田邊徳雄打撃コーチの再登板のみ!

2024年5月 6日公開

西武打線を甦らせられるのはかつての好々爺、田邊徳雄打撃コーチの再登板のみ!

千葉ロッテマリーンズ vs 埼玉西武ライオンズ/5回戦 ZOZOマリン
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Lions 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 5 1
Marines 2 2 0 0 0 0 0 4 0 8 12 1

継投●髙橋光成ジェフリー・ヤン増田達至中村祐太
敗戦投手髙橋光成 0勝3敗0S 3.00
本塁打中村剛也(4)
失策佐藤龍世(2)

筆者が個人的に期待しているG.G.佐藤打撃コーチの誕生

髙橋光成投手

これが現状の髙橋光成投手の実力なのではないだろうか。確かに過去四度の二桁勝利という実績は素晴らしいと思う。だがそれでもキャリアハイは12勝止まりで、これまでコラムでも幾度か書いてきた通り、髙橋投手は決してメジャーで通用するレベルではない。

昨オフの髙橋投手のテーマは「メジャーボディ」を作ることだったらしい。つまりメジャーリーガーのように分厚い胸板、丸太のように太い腕を作るということだ。だが筆者はクライアントである選手や生徒さんたちには常々、純粋な日本人の骨格に欧米選手のような筋肉量をつけてもバランスが崩れるだけであると伝え続けている。

例えば今メジャーリーグで伝説化しつつある大谷翔平選手もやはり、高校時代は身長こそ高かったものの、決して欧米人レベルで骨太だったというわけではないはずだ。ただしもちろん、平均的な日本人プロ野球選手と比較をすると、平均値以上には骨太だとは思う。ちなみにファイターズ時代の投球フォームを見ると、2024年のような筋肉量にはもちろんなっておらず、比較的まだ細身の体からしなやかな腕の振りでボールを投げていた。

だが体を大きくした後のメジャーでのピッチングフォームは、ファイターズ時代の腕の使い方よりも肩関節の内外旋の動きがやや浅くなっているように見え、それに伴い腕の振りのしなやかさも以前ほどは見られなくなり、それ以降肘痛を繰り返すようになってしまった。

そしてライオンズではかつてG.G.佐藤選手が日本人選手としてはまさに筋骨隆々といったタイプだったが、アマチュア時代のG.G.佐藤選手もやはりどちらかと言えば元々は細身の選手だった。元々の骨格が細い選手が、その骨格以上の筋肉量を持ってしまうと、特に上半身の動作のバランスが崩れやすくなり、肩肘の故障に繋がることが多くなる。

G.G.佐藤選手もやはり肩肘を痛めている。そしてG.G.佐藤選手と言えば世間一般ではどうしてもオリンピックでのエラーが記憶として残ってしまっているが、しかし2007年はライオンズで外野手として131試合に出場してエラー0、守備率1.000という数字を記録しているほどの選手なのだ。守備範囲こそ広くはなかったとは言え、決して守備が下手な選手ではなかったと伝えておきたい。

ちなみに筆者は「華のG.G.世代」であるわけだが、G.G.佐藤選手のようにファンサービスも大切にしながら選手ファーストで野球に携われる人物こそ、ライオンズは打撃コーチとして招聘してもらいたいと常々考えている。G.G.佐藤選手は米国マイナーリーグの1Aから這い上がり、ライオンズの四番を務めるまでに至った名選手で、その経験は必ず指導者として大きなプラスになるはずだと筆者は考えている。

話は少し逸れてしまったが、とにかく何が言いたいのかと言えば、骨格のバランス以上の筋肉量を持ってしまうと怪我に繋がるか、フォームのバランスを崩してしまうかのどちらかに至りやすい、ということだ。そして髙橋光成投手の場合は現状では後者に当たるのではないだろうか。

髙橋光成投手・平良海馬投手が今季凄みを失っている原因

これが例えば1〜2試合満足の行かない試合が続いた程度であれば、春先に出遅れた影響がまだ出ていたのだろう、という話で済ませることもできる。だが昨季まではエースと呼ばれた投手が4試合に投げて0勝3敗、防御率3.00というのは明らかにフォームを崩していることが原因だと言える。

もちろん打線の援護との兼ね合いもあるわけだが、しかし髙橋投手も今季は簡単に相手に先制を許す場面が目立っている。そして投げているボールを見ていても、球速表示ほどの速さを感じないのだ。ということは初速と終速に差が生じているということになり、打者としては合わせやすくなり、その原因として最も一般的なのは上半身主導の投げ方になっているというケースだ。

今季の髙橋投手のフォームと、勝てていた頃の髙橋投手のフォーム。そしてリリーバー時代の平良海馬投手のフォームと先発転向後の平良投手のフォームをそれぞれ見比べてみると、二人ともより最近のフォームの方が下半身を使っている割合が明らかに減っているように見える。

恐らくはメジャーリーグを意識しての体幹主導の投げ方に取り組んでいるのだとは思うが、それがここまでは上手く行っていないように見える。大谷翔平投手などはまさに下半身主導でも、上半身主導もない、体幹主導の最も難易度が高く、最もパフォーマンスが上がりやすいフォームで投げたり打ったりしているわけだが、もしかしたら髙橋投手と平良投手もそれに取り組んでいるのかもしれない。

恐らくは筆者のような専門知識を持っていない、ごくごく一般的なライオンズファンの方でも、今季の髙橋投手と平良投手のボールには凄みを感じなくなった、と思っている方が多いのではないだろうか。その原因が筆者はこの辺りにあると考えている。

さらに付け加えると、ベルーナドームのマウンドも数年前よりはやや硬くなったと言われているが、それでもメジャー仕様のマウンドと比べるとまだ硬い方だとは言えないし、傾斜もメジャーと比べるとやや緩い。髙橋投手と平良投手が今凄みを失っている原因は、日本仕様のマウンドで、メジャー仕様の投げ方をしているためではないだろうか。

もちろんこれは筆者が今季ここまでの二人のパフォーマンスを観察して感じた、あくまでも個人的な憶測に過ぎない。本当のところは二人にしか分からないわけだが、理由もないのにパフォーマンスが低下するということはほとんどありえない。筆者の憶測が間違っていたにしても、何らかの理由があることは間違いない。その原因を改善しない限りは、今季この二人がメジャークラスの活躍をすることはできないのではないだろうか。

西武打線を甦らせられるのはかつての好々爺、田邊徳雄打撃コーチの再登板のみ!

5月はせっかく3連勝で入れたわけだが、またもや2連敗とその3連勝を台無しにしてしまった。しかもマリーンズ戦はこれで今季5戦5敗となっている。だがこれは決してマリーンズが凄く強いというわけではなく、単純にライオンズが弱いだけと見るべきだろう。その証拠に、今日は今季ここまで6試合に投げて防御率5.27で1勝3敗という成績の種市投手から1点も奪うことができなかった。

相手チームのエースから点を奪えないのならまだしも、昨季は10勝したとは言え、まだ主戦レベルではない防御率5点台の投手から点を奪えなかったのだから、ライオンズ打線の低迷振りはまさに深刻だと言わざるを得ない。

このまま行けば間違いなく、遅かれ早かれ打撃コーチの一・二軍の入れ替えが行われるだろう。それがGW明けのタイミングになるのか、交流戦前のタイミングになるのかは何とも言えないが、しかし昨季から引き続き打線が低迷しているこの状況を考えれば、明らかに打撃コーチが機能していないということになる。

以前のコラムで筆者は平石洋介ヘッド兼打撃戦略コーチの打撃戦略が機能していない、と書いたわけだが、もしかしたら筆者は間違えていたのかもしれない。平石コーチが練った戦略云々ではなく、打撃陣にその戦略に沿ったバッティングができる技術が備わっていないのではないだろうか。

入れ替えということになると、一軍は嶋重宣コーチと高山久コーチ、二軍は小関竜也野手総合コーチと大島裕行コーチのいずれかというのが濃厚になるとは思うのだが、筆者はここで田邊徳雄現プロ担当スカウトの名前も挙げておきたい。田邊元監督はコーチ時代、まさに好々爺として数多くのスラッガーを育成してきた。監督を退任されてからは一度ファームや三軍で再びユニフォームを着ているのだが、残念ながら2022年を限りにユニフォームは脱いでいる。

だが今こそ田邊打撃コーチに再登板を願うべき時ではなかろうか。松井稼頭央監督と共にかつて俊足カルテットと活躍された小関竜也コーチを一軍で見てみたいという気持ちも強いのだが、しかし今はコーチとしてまだ経験が浅い人物よりも、監督経験もあるベテランコーチ、田邊徳雄プロ担当スカウトを一軍打撃コーチに据えるくらいのことをしなければ、今のライオンズ打線が機能し出すことはないように思える。

優勝するためにはチームには必ずベテラン選手が必要だ。それと同様に勝つためにはやはりベテランコーチの存在も必要になってくる。例えば渡辺久信監督で日本一になった時のヘッドコーチが黒江透修コーチだったように。しかし今ライオンズの一軍にはベテランと呼べるコーチの存在がない。コーチ歴がある程度長くなってきているコーチはもちろんいるわけだが、少なくとも好々爺と呼ばれるようなベテランコーチは皆無だ。

このまま何の手も打たずにただ復調を待っているだけでは、あっという間にペナントレースは終わってしまうだろう。つまり夏休みの時点でAクラス入りさえも絶望的になってしまう、ということだ。そのような最悪な事態を防ぐためにも、筆者は打撃コーチの早急な入れ替えが行われることを期待したい。

そして中でも中島裕之選手、栗山巧選手中村剛也選手らを指導してきて、さらには監督経験、海外コーチ経験もある大ベテラン、田邊徳雄打撃コーチの再登板を筆者はいま切に願っている。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
⚾️ 筆者カズのTwitter(現X)
⚾️ 筆者カズの野球系YouTube
⚾️ 筆者カズの野球系Instagram
SNSのフォローやいいねもよろしくお願いします🙏

関連記事