2024年5月 7日公開
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | |
Lions | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 7 | 0 |
Marines | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 4 | 0 | 0 | × | 6 | 12 | 0 |
継投/ ●ボー・タカハシ〜 水上由伸〜 田村伊知郎〜 平井克典〜 本田圭佑
敗戦投手/ボー・タカハシ 1勝2敗0S 2.25
本塁打/中村剛也(5)
盗塁/ 岸潤一郎(2)、 源田壮亮(3)
5月は3連勝でスタートしていよいよエンジンがかかって来たかとも思われたが、今日の敗戦で再び3連敗となり、3連勝したことがまったくの泡沫と化してしまった。それにしてもライオンズ打線はここぞという時に本当に打てない。今日の試合でも7本のヒットと2つの四球があったにもかかわらず、取れたのは中村剛也選手のソロホームランによる1点のみだった。
今日試合を見ていて、筆者には非常に気になったことがあった。すでにライオンズがリードを許しているという状況でベンチの様子が画面に映し出されたのだが、そこに映っていたのはニコニコと笑顔で誰かと会話をする高山久コーチの姿だった。
もちろん高山コーチにしてもいつもニコニコヘラヘラしているわけではないだろう。しかしたまに映された画面にそのような姿が入ってくると、打てなくて勝てないチームの打撃コーチがこんな緊張感のない表情を見せていてもいいものだろうか、とやや憤りに近いものを筆者は感じてしまった。
今日の試合を終えて打率が.250を超えているのは、ちょうど.250の金子侑司選手と、.293の古賀悠斗捕手のみだ。他の選手は軒並み2割台前半で、2人が1割台、1人が0割台という状況になっている。
ただ、一つの良い兆しとしては若林楽人選手が六番に戻ったことで、またらしさが見えて来た。1試合2ホームランを打った次の試合から入った三番ではまったく仕事ができなかったが、今日再び六番に戻るとマルチヒットを記録している。やはり現段階では若林選手はまだクリーンナップを任せるほどではなく、六番であまり制限やプレッシャーのない状況で打たせてあげるのが一番であるようだ。
そして今日最初の失点は、走者を2人置いた場面でボー・タカハシ投手が三塁打を打たれてしまったことによるものだった。この時の打球はライト方向にフラフラと上がる平凡なフライだったわけだが、それを若林選手が捕ることができなかった。
ただし若林選手を責めることはできない。なぜなら、フライは平凡だったが風の強さが尋常ではなかったためだ。レフトからライト方向に吹く風は、バックスクリーンに掲げられている旗を吹き飛ばしてしまうのではないかとも思われるほどの強さだった。
若林選手も当然風のことは頭に入っており、それを念頭に入れていると思われるような打球の追い方をしていた。だがこの打球が完全に風に乗ってしまい、ちょっと普通の強風では考えられないほど、フライがライトポール方向にどんどん流されていった。さすがにこれを捕れというのは、この球場をホームにしていない選手にとっては酷だ。
若林選手は落下点を予測することさえできず、打球に追いつける程度の余裕があったにもかかわらず、落ちてくるフライに触れることさえできなかった。ちなみに今日の風は再度付け加えておくと、いつものZOZOマリンの強風とはまったく異質とも言えるような強さだった。こんな状況でフライを追わなければならない野手たちが本当に気の毒で仕方がなかった。
さて、逆にその風を味方にできるのは落ちるボールを持っている投手たちだ。今日の試合で言えば、田村伊知郎投手のフォークボールは上手く空振りが取れていて、1安打されながらも見事な火消し役を務めてくれたと思う。
今日ほどの風に関しては筆者も経験がないため厳密なことは言えないのだが、いつものZOZOマリンの強風の場合、ピッチャーからすると風はアゲインスト(向かい風)になる。そのためストレートの伸びは低下してしまうわけだが、フォークボール、ドロップ系のカーブ、チェンジアップという落ちる球種は、打者の予測を遥かに上回る落ち方をする。
ZOZOマリンではかつて、渡辺俊介投手がこの風を上手く利用して打者を手玉に取っていたわけだが、次ここでやる際は、ぜひ與座海人投手のピッチングを見てみたいなと、筆者は今日試合を見ながら考えていた。
そして田村投手に関しては開幕前には守護神候補の一人にも挙げられていたわけだが、春先はあまり調子が上がって来なかった。しかし今一軍に戻って来てからはストレートにも力があるように見えるし、フォークボールも低めに制御できる確率が高まって来た。こうした姿を見ていると、甲斐野央投手を肘痛で欠いてしまったものの、その穴は田村投手で埋められそうだなと筆者は感じている。
さらに田村投手は今、マウンドで投球練習を終えると手を胸に置き祈るような姿を見せている。これはかつての絶対的守護神、豊田清投手が毎試合行っていた儀式だった。背番号20、そしてこの儀式を豊田投手から受け継いだ田村投手が、いつかライオンズの守護神としてセーブ王に輝く姿を見てみたいなと筆者は密かに夢見ている。
さて、筆者はあまり監督の采配批判をすることは好まないのだが、昨季、そして今季ここまでの戦い方を見ていると、松井稼頭央監督はどうも律儀すぎるのではないだろうか。
例えばリリーバーの連投についてだ。松井監督は開幕前に、基本的にリリーバーの3連戦3連投はないと仰っていた。そして実際今季もここまでリリーバーが3連投したというケースはまだない。だが3連投させないと話していたのは、甲斐野投手が怪我をすることなく、豆田泰志投手も昨季のような勢いをキープし、田村投手も順調だった時のことだ。つまり今とはまるで状況が違っていた。
確かに今ここでリリーバーに3連投させたならば、「以前3連投はないと言っていませんでしたか?」と各方面から突っ込まれることになるだろう。だがそんなことはまったく気にせず、「記憶にございません!」くらいのことを言っておけばいいのだ。監督という職業は負ければ何をしてもとやかく言われるし、勝っても落合博満監督のようにやはりとやかく言われてしまうものなのだから。
そもそも3連投をさせないという約束を律儀に守り続けていては、例えば3連戦の最初の2試合でアルバート・アブレイユ投手が登板した場合、3試合目には守護神は投げないということが完全に相手チームに伝わってしまい、そしてそれは同時に相手チームに勇気を与えてしまうことにもなる。
松井監督は、やはりお人柄なのだろうが、采配がやや真面目になり過ぎているように筆者には見えている。そもそも名将は得てして「魔術師」と呼ばれるものだ。三原脩監督然り、仰木彬監督然り、中嶋聡監督然りだ。時には野村克也監督でさえも「やる」と言ったことをやらず、「やらない」と言ったことをやっていたほどだ。
監督の務めは、如何にして相手チームに気持ち良く野球をさせないかということに尽きる。だがここまでの松井監督の采配は正直すぎて、相手も裏をかく必要がない状況になってしまっているのだ。本来であればそこを軌道修正しなければならないのが平石洋介ヘッドコーチの務めであるわけだが、平石コーチも今のチーム状況において、そこまでの余裕を持てていないのかもしれない。
ちなみにこれまで、恐らく一番熱心に松井監督の指導を受けたのは金子侑司選手と言えるのではないだろうか。その金子選手は今季は見事に復活し、打率こそまだ.250と高くはないものの今日もマルチヒットを記録し、リードオフマンとして素晴らしい働きを見せられるようになって来た。
この金子選手の復活は松井監督の打撃指導の影響が大きいわけであり、打撃陣が深刻な不振に陥っている今、松井監督は打撃コーチを差し置いてでも積極的に打者陣を指導していくべきではないだろうか。少なくとも打撃コーチたちの仕事の結果が出ていない今、松井監督が自ら熱心に打撃指導をして文句を言う人間はいないはずだ。
松井監督自身、メジャーリーグ時代は極度の不振に苦しんだ経験を持つ。だがその時個人コーチとして熊澤とおるコーチをアメリカに呼び寄せ、復調していくことに成功した。松井監督はその時の成功体験を、今のライオンズの野手陣に植え付けていくべきだろう。
松井監督の恩師である東尾修監督は、投手コーチとしての役割も担っていた。それならば松井監督も打撃コーチの役割を担いながら、もっと積極的に打線を生き返らせようとする姿をファンに見せてもらいたいなと筆者は考えている。
真面目な人柄の松井監督の場合、コーチの職域を侵してはいけないと考えているのかもしれない。だがそんな時こそ渡辺久信GMなどが、「もっとどんどん指導して松井チルドレンを増やせよ!」と声をかけてあげることで、松井監督の気持ちも楽になっていくのではないだろうか。
プロ野球の監督というのは、我々の想像を絶するほど過酷な職業なのだ。事実勝っていても、ある程度の好成績を残していても、体力的・精神的辛さを感じ、一年納得が行かない成績になるだけで勇退する監督も多い。このように勝っていたとしても辛い職業なのだから、ここまで負け込んでしまい、なおかつ真面目な性格の松井監督は今さぞ苦しい胸の内なのだろう。それを想像するだけでも筆者は押し潰されそうになってしまう。