2021年2月 5日公開
「おかわり三世」と呼び声高いルーキー渡部健人選手だが、筆者の目にはすぐに1軍で活躍できる技術はまだないように映っている。バッティングフォームを見ていると山川穂高選手同様に手先が器用そうだなという印象を受ける。だが気になる点は、下半身よりも先に上半身が動き終えてしまうフォームだ。
筆者は仕事柄プロ野球選手のフォーム映像を細かく分析していくことも多いのだが、時々仕事の合間を縫って渡部選手やタイシンガー・ブランドン大河選手の映像を見ることもある。
ブランド選手は平良海馬投手からヒット性の当たりを打ったようだが、やはり1軍で結果を残すレベルにはまだ至っていない。まずスウィングがまだ荒く、軸のスタビリティも低く、ウェイトシフトで打っていることにより頭の位置を大きく移動させながらのスウィングになっていて、これでは1軍のボールを正確にミートしていくことはできないだろう。
渡部選手にしても合同自主トレからの疲れもあるのかもしれないが、フリーバッティングでも完全に手で打ちに行っているように見えた。フリーバッティングの相手は本田圭佑投手だったが、フリーバッティングという打ちやすいボールを投げてくれる練習にも関わらず、1本もホームランを打つことはできなかった。
現在ブランドン選手はA班、渡部選手はB班でキャンプを過ごしているわけだが、ふたりとも今年いきなり1軍でブレイクする可能性は高くはないだろう。だがここから打撃コーチの指導のもと、プロで通用する確かな技術を身につけていけば、近い将来このふたりが山賊打線の一員になっている可能性もある。
ライオンズの主軸打者では、中村剛也選手が近年故障しがちだ。今年もキャンプイン早々ふくらはぎに違和感を覚え別メニューになっている。つまりライオンズとしては中村選手の後釜になる三塁手を急ピッチで育てなければならない時期に来ているということだ。
今季に関しては中村選手の代わりにサードに入るのはスパンジェンバーグ選手が多くなるのだろう。だが後々は山川選手がサードに回っても良いと思うし、渡部選手やブランドン選手もそこに食い込んでいかなければならない。
故障が増えてきた中村選手を見て、若手選手はこれをチャンスだと思わなければならない。もちろん今年いきなり渡部選手とブランド選手が1軍のサードでレギュラーを張ることはないだろうが、山川選手に関してはサードに挑戦しても良いように思える。
山川選手がサードに回れば、メヒア選手をファーストで起用することができ、オーダーのバリエーションを増やすこともできる。メヒア選手は基本的にはファーストしか守れないため、山川選手がファーストに入ってしまうと、DHが空いていなければメヒア選手は代打要員ということになってしまう。
本塁打王になったことがあり、体もまだまだ動くメヒア選手を代打要員として置いておくのはもったいない。DHには基本的には栗山巧選手が入るため、やはりメヒア選手をもう一度輝かせるためにも、山川選手がサードを守るというオプションもあって良いと思う。
とにかく、中村剛也選手が今後1年間フルで試合に出続けることは難しくなる。本音を言えばもう一度2019年のような活躍を見せて欲しいわけだが、しかし年々怪我が増えていることと年齢を考えれば、休ませながらの起用になっていくことは間違いないだろう。
そうなった時、やはりサードをスパンジェンバーグ選手だけに任せてしまうのは少し怖い気もする。外国人選手の場合、活躍しても長年日本でプレーし続けてくれる選手もいれば、日本での活躍をきっかけにメジャー復帰を希望する選手もいる。
スパンジェンバーグ選手は今のところはライオンズ愛を見せてくれているが、しかしもし今季3割30本打つようなことがあれば、メジャーのスカウトマンたちがそれを見過ごすことはしないだろう。
将来的なそのような状況も見据えながら、ライオンズは今新たな三塁手を急ピッチで育てなければならない時期に差し掛かってきている。そしてその候補として今、ブランドン選手がA班でアピールを続けている。
現時点では渡部選手はブランドン選手に大きく遅れをとっているわけだが、ふたりとも焦る必要はない。焦って怪我をしても仕方がないのだから、今は焦らずじっくりプロレベルの体づくりをし、プロレベルの技術を身につけていけば良いと思う。
ふたりとも大卒ルーキーであるため、理想としてはもちろん一年目に1軍デビューを果たし、そこからきっかけを掴んでいってくれれば良いと思うのだが、しかし中村剛也選手だってそう簡単に三塁を明け渡す気はないだろう。
こうしてサードに絞って今年のライオンズを見ているだけでも、渡辺久信GMの補強策は本当に理に適っていて、的確なチーム強化をされているなぁという印象を受ける。
ブランドン選手と渡部選手が加入したことにより、中村選手も大ベテランとして最後の一花をしっかりと咲かせていかなければレギュラーとしてプレーすることはできない。そのような状況を作った渡辺GMの手腕は、本当に流石だなと筆者は頷くばかりなのであった。