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2024年9月16日公開

完全試合間近でルーキーらしからぬ冷静さを見せつけた武内夏暉投手

完全試合間近でルーキーらしからぬ冷静さを見せつけた武内夏暉投手

武内夏暉投手

今日のマリーンズ戦に先発をしたのはルーキー武内夏暉投手だったわけだが、今日のピッチングはまさにプロ入り後最高の内容だったと言って良いのではないだろうか。9回を一人で投げ抜き被安打3、四球1、無失点でプロ入り初完投初完封勝利となった。しかも7回表が終わるまでは一人の走者も許さないパーフェクトピッチが続いていた。

武内投手はここ1ヵ月少々は勝ち星から遠ざかっていたわけだが、少し勝てていなかったこの時期と比較すると、今日のストレートは非常に良かったと言える。スピードガン表示以上にボールに伸びがあり、回転数、回転角度ともに良質のストレートを投げていた。そしてストレートがこれだけ良くなってくると変化球も生きるようになり、相手打者たちは武内投手に対し、いつも以上にタイミングを合わせるのに苦労していたように見えた。

今日のストレートの最速は148km/hが2〜3球あり、次いで147km/hがもう少し多く、アヴェレージで見ると145km/h程度だった。現代野球では148km/hという球速は「速い方」という部類になり、「速い」と言い切れるほどではない。150km/hを超えてくると「速い」、155km/h以上だと「すごく速い」という評価になってくるわけだが、そのベースで見ていくと武内投手のストレートは決して打者が恐れるほどの速度ではない。

だが球質が非常に良いため、打者目線では球速表示以上に速く見えているはずだ。特に今日のボールはそう見えていたはずで、145km/h程度のストレートであっても打者が差し込まれている場面が多く見られた。今日の武内投手のピッチングを見ていると、やはりピッチャーはストレートが大事なのだなとつくづく実感させられる。

そして今日はストレートもさることながら、ツーシームがいつも以上に効果的だったのではないだろうか。今日一番遅いストレートは142km/hだったと思うのだが、そのストレートに非常に近い140km/hという速度でツーシームが入ってくるため、打者としてはストレートだと思ってツーシームを振りにいった場面が多かったはずだ。

また、完全試合ペースが続いていた7回表は明らかに球威が落ちてきたようにも見えた。だがそこからさらに2イニングス踏ん張り続けたのはさすがだったと言える。しかも最後の打者にはまさに最後の力を振り絞って147km/h、148km/hのストレートを投げ込み二死三塁一塁というこの日最大のピンチを切り抜けてゲームを締めくくった。

そしてこのピッチャーは並のルーキーではないなと思わせられたのが、初ヒットを打たれた時の気持ちを準備しながら投げていたという点だ。武内投手自身は5回あたりから完全試合を意識していたものの、いつか打たれるという頭では常にいたらしい。そしてそのいつか打たれた時のために、打たれたことで気落ちしてしまわぬよう、その時どう考えるべきなのかを投げながらあらかじめ準備していたと言うのだから、これは立派だとしか言いようがない。

筆者はこれまでプロアマ合わせて何千人ものピッチャーをコーチングしてきたわけだが、ノーヒットノーランや完全試合のチャンスがあった場面で打たれ、そこでも平常心を維持し続けられるピッチャーはプロレベルでも決して多くはなかった。そしてノーヒットノーランを意識すればするほど打たれた時のショックも大きくなるわけだが、武内投手の場合はその心配はまったく必要がなかった。

今季は暗いニュースばかりのライオンズではあるが、武内投手に関しては前途揚々だと言える。近い将来、早ければ来季からでも表ローテの一番手として投げる可能性もあるし、今日のプロ初完封勝利にしても、新人王の獲得に大きく前進したと言えるだろう。

ちなみにライオンズのルーキーが完封勝利を挙げたのは2016年の多和田真三郎投手以来で、それが1-0での完封となると1999年の松坂大輔投手以来、実に四半世紀振りの出来事となるらしい。そしてライオンズのルーキーが8勝以上を挙げたのも2007年に11勝を挙げた岸孝之投手以来で、それをサウスポーに限定すると1993年の杉山賢人投手の7勝以来の出来事となり、ライオンズにおいての左腕ルーキーの8勝目は球団新記録となるようだ。

その時の杉山賢人投手と松坂大輔投手は新人王、岸投手も新人王同等の新人特別賞を受賞しているため、今季の武内投手の新人王獲得もかなり現実味を帯びてきたと言える。これで新人王のライバルであるファイターズの金村投手とは2勝差、イーグルスの古謝投手とは3勝差となった。ただしライバルは彼らだけではなく、バファローズの古田島投手もその一人だ。

古田島投手はここまで47試合に投げて2勝1敗23ホールド、25HPで、防御率は0.84という素晴らしい数字を残している。もし武内投手の存在がなければ、新人王の筆頭候補とも呼べるほどの活躍だ。ちなみに新人王の投票はプロ野球記者が行うわけだが、記者の皆さんが優勝争いに絡んでいた中での金村投手を評価するのか、それとも下位ながらも主力級の活躍を見せている武内投手、古田島投手を評価するのかは今から非常に気になるところだ。

だが武内投手は少なくともあと二度は登板するものと思われる。そこでもし9勝目、10勝目を挙げることができれば、優勝争いに加わっているファイターズの金村投手の評価を大きく上回ることになり、新人王の獲得もほぼ確実なものとなるはずだ。そのためにも最近1ヵ月間は勝てていなかった武内投手だが、最後はぜひとも3連勝で10勝をマークして今季を締め括ってもらいたい。

2025年も栗山巧選手・中村剛也選手と契約を結ぶ方針の西武球団

さて、今日はもう一点今日の試合とは関係ないことも一つ付け加えておきたい。岡田雅利捕手金子侑司選手が引退を表明した中、我々ファンが非常に気になっていた栗山巧選手中村剛也選手の進退がハッキリした。日刊スポーツの報道によれば、すでに西武球団は栗山選手・中村選手と来季も契約を結ぶ方針であるとのことらしい。

もちろん西武球団からの正式なアナウンス、というわけではないが、スクープという類の報道ではない分記事の内容にもギャンブル性がなく、、日刊スポーツが出したこのニュースには信憑性があると言って良いのではないだろうか。また、この手のニュースは球団側からリークされて報道されるケースが多いため、そういう意味でもいつも誠実なライオンズニュースを書いている日刊スポーツに対し、球団側からの良心的なリークがあったとも考えられる。

また、これに関しては筆者も含め、多くのライオンズファンも栗山・中村両選手の進退が非常に気になっていたところであり、そのファンのヤキモキした気持ちを解消すると言う意味でも、岡田捕手・金子選手の引退に水を差さないこのタイミングでのリークとなったのかもしれない。

ただ、どのような契約形態になるのかはシーズンが終わって見なければ分からない。個人的には選手兼任コーチという肩書きでも良いのでは、と思っている。通常一軍には打撃コーチが二人在籍するわけだが、その二人を栗山・中村両選手が僅かでもアシストすることができれば、打線強化という現在の最大の懸念を少しでも早く解消していくこともできるはずだ。

昨オフの西武球団は、今季42歳になる中島宏之選手に対して選手兼任コーチのオファーを出している。もちろんこの時の中島選手は戦力外、今オフの栗山・中村両選手は戦力外ではない、という違いはあるわけだが、来季共に42歳になる栗山・中村両選手に対しても選手兼任コーチとしてのオファーを出したとしても不思議はない。ただしこの場合はもちろん、両選手がその立場に対し前向きである場合のみそのような契約になるものと思われる。

なおプロの世界には職域というものが存在しており、それを侵すことは良しとはされない。例えば若手選手がベテラン選手に対しアドバイスを求め、それに対しベテラン選手が応えることはまったく問題ない。だがベテラン選手が自ら率先して若手打者を指導することになると、それはコーチの職域を侵しているということになり、あまり心証は良くない。

だが兼任コーチという肩書きが付いていれば、栗山・中村両選手も遠慮することなくどんどん若手選手たちに積極的にアドバイスしていくことが可能になるのだ。とにかくライオンズの場合は打線の立て直しが急務となっているため、そのピッチを上げるためにも打撃コーチ二人+兼任コーチ二人というコーチ四人体制で打撃部門を見て行っても良いのではないだろうか。また、それくらいの本気度を見せなければ、今のライオンズ打線を来季の開幕までにしっかりと戦えるレベルに持っていくのは難しいとも考えられる。

もちろん一番は栗山・中村両選手には、来季は今季以上の活躍をしてもらうことであり、兼任コーチになったとしても優先すべきは選手としての調整だ。その調整に支障が出ないようであれば、兼任コーチという選択肢も含めるべきだと筆者は考えているのだが、果たして読者の皆さんはどうお考えだろうか。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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