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2024年8月12日公開

西武打線の立て直しはファイター中島宏之打撃コーチの誕生が待たれる!

北海道日本ハムファイターズ vs 埼玉西武ライオンズ/17回戦 エスコンF
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Lions 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 2 0
Fighters 0 1 0 1 1 1 1 0 × 5 11 1

継投●髙橋光成中村祐太アルバート・アブレイユ
敗戦投手髙橋光成 0勝9敗0S 4.60
本塁打西川愛也(2)

渡辺久信監督代行が考えても考えても何も変わらないチーム状態

残り41試合を残し、ライオンズの今季の優勝の可能性が完全に消滅した。と言われてもまったく驚くことはなく、ライオンズファンの大半はとうの昔に今季の優勝は諦めている。筆者自身も、可能性はあったのだとしても交流戦が始まる頃には優勝はもはやないだろうと考えていた。

もちろんファンとしてはそれでも毎日優勝を目指して頑張って欲しいという思いで応援を続けるわけだが、しかし現実問題として、松井稼頭央監督が更迭された頃には優勝の可能性はほぼなくなっていた。優勝するためには二重にも三重にも奇跡が起こらなければならないような状況だった。

なおオールスター明けの後半戦だけの数字で見ると、ライオンズは2勝12敗1分という数字になっている。この間の勝率は驚異の.142で、アンソニー・ガルシア選手の今日時点の打率.154よりも低くなっている。

渡辺久信監督代行も負けるたびに「考えなければならない」というコメントを残しているが、監督としての経験値がある渡辺監督代行が考えても考えても何も変わらない今のチームというのは、もう渡辺監督代行からしても手の施しようがない状態なのではないだろうか。

最近の試合を見ていても、実力が伴っていない若手選手を将来のために使い続けているという印象を受ける。普通に考えれば、プロ野球はビジネスであるのだから費用対効果を重視しなければならない。となるとどうせ打てないのであれば年俸が高いフランチー・コルデロ選手をもっと積極的に使っていくべきだと筆者は考える。

だが先日は一軍復帰と同時に発熱してしまうという不運も重なってしまい、コルデロ選手はなかなか一軍で出場する機会を与えられずにいる。コルデロ選手の年俸は1億円で、外国人選手は住宅に関しても球団が用意してくれるため、この1億円の主な使い道はせいぜい税金くらいのものになる。1億円+家賃を支払っているコルデロ選手を二軍に起き続けるというのは、果たして親会社側からするとどのような気持ちなのだろうか。

体調が回復しても一軍に上げてもらえないコルデロ選手自身も、もうすでに来年も同じユニフォームを着ていることはないと実感しているはずだ。すると残り試合はコルデロ選手にとってはただの消化試合にしかならず、アスリートとしてのモチベーションを維持することさえ難しい。政治の世界で言えば、ほとんどレイムダック状態だと言える。

西川愛也選手

そして若手選手を積極的に起用している采配が奏功しているかと言えばそうではなく、今日も僅か2安打で、西川愛也選手のソロホームランで1点を取るのがやっとだった。最終回には2つの四球でノーアウトのチャンスを作りながらも、三番四番があっさりと併殺・三振に倒れ敢えなくゲームセットとなってしまう。

ただ光明と言えば、ようやく怪我から復帰して来た佐藤龍世選手が1安打放ったことだろう。年齢的にも27歳となり、若手選手たちを引っ張っていける佐藤選手が戻って来たことはチームにとっては大きなプラスとなるはずだ。だが現状はと言えば、佐藤選手の貢献だけで何とかなるようなチーム状態ではない。

西武で強打者が育ちやすかったのはドラフト戦略だけの影響ではなかった

今ライオンズに必要なのは失われたものを取り戻すことだ。例えばライオンズで「真のエース」と呼べる最後の存在は涌井秀章投手だ。涌井投手以降にライオンズでエースと呼ばれた投手たちは、まったく真のエースと呼ぶことはできなかった。最多勝を獲った菊池雄星投手でさえ、首位や2位の球団相手には文字通りまったく勝つことができなかったのだ。

まず投手陣に関しては涌井投手を失ってしまったことで、ライオンズに脈々と受け継がれて来たエースのDNAが完全に失われてしまった。そのDNAを甦らせるためにも、西武球団は今オフ、是が非でも涌井投手を取り戻すべきだろう。もちろんその涌井投手が一年間ローテーションを守るような活躍を期待しているわけではない。かつての内海哲也投手のように、エース道を若手投手たちに注入してもらうことが最大の目的だ。

また、涌井投手はまだまだ体は元気であるため、ローテーションの谷間や9連戦などで先発として試合を作ってもらうという役割は十分に期待することができる。内海投手は現役時代から主に二軍で若手にアドバイスを送ってくれていたが、涌井投手には一軍でそれをしてもらいたいのである。特に球速ばかりを追い求めて筋トレ主体の野球をしているような投手たちには、間違いなく涌井投手の野球脳が必要だ。

そして打つ方であれば中島宏之選手の招聘が必要だろう。中島選手に関してはまさに渡辺久信監督代行が求めるファイターであり、ライオンズの若手選手たちに戦い方を教えてくれるはずだ。この中島選手は今季は怪我もあり15試合の出場に留まっていることから、そろそろ引退も視野に入れていると思われる。

昨オフは西武球団は中島選手に対し選手兼任コーチとして獲得オファーを出していたのだが、しかし現役一本を希望していた中島選手はそれを断り、ドラゴンズ入りしていたという経緯がある。だがもし中島選手が今季引退するようなことになれば、西武球団は確実に打撃コーチとしてナカジを再獲得すべきだ。

ただし中島選手には当然指導者経験がないため、ベテラン打撃コーチとのコンビで一軍の打撃コーチを任せるべきだろう。例えば田邊徳雄打撃コーチと中島宏之打撃コーチというコンビであれば、バランスも取れているし、何よりも田邊氏は若かりし頃の中島選手にとって師匠とも呼べる打撃コーチの一人だった。この信頼関係があれば、指導現場も上手く回るようになるだろう。

今いる若い選手たちを、何の生き字引もなく育てていくことは困難だ。例えば全盛期の中村剛也選手にしても、中村選手に四番道を叩き込んだのは江藤智選手だった。江藤選手はFAでカープからジャイアンツ入りするも、その後は豊田清投手の人的補償によりライオンズ入りした選手だ。

ライオンズ時代の江藤選手はとっくに全盛期を過ぎていたわけだが、それでも4年間ライオンズのユニフォームを着て、その間徹底的に中村選手に対し四番道を説き続けてくれた。そして誕生したのが、飛ばないボールでホームランが激減する中でも異次元のホームラン数を記録したホームランアーチストおかわり君だった。

ライオンズはいつの時代もこのように、かつて栄光を掴んだ経験のある名選手が若手選手にその経験を説き、それによって若手打者がどんどん育ってくるという環境が整っていた。決してドラフト戦略が上手くいっていたことだけが、ライオンズにスラッガーを生み続けていたわけではない。ライオンズはこの環境をもう一度再整備すべきなのだ。そのためにも必要なのが打者であれば中島宏之選手、投手であれば涌井秀章投手という、今季共にドラゴンズのユニフォームを着ている二人なのである。

ライオンズ打線の立て直しは栗山・中村コンビに委ねるしかないのかもしれない

近年、内海哲也投手の獲得は大成功だったと言われている。内海投手のアドバイスにより、渡邉勇太朗投手菅井信也投手など、次世代を担う投手たちが続々と育って来ている。しかし一方打撃陣にはそのような存在がいなかった。

もちろん栗山巧選手や中村剛也の存在はあるが、しかし彼らはチーム事情もあり、一軍でも三番四番という重責な打順を任されることが多かった。するとその中で若手選手にアドバイスを送る余裕など当然なく、自分たちが期待された仕事をできるだけこなすことに注力していかなくてはならない。

もし栗山選手や中村選手が一軍でも代打専任で、スタメンで出たとしても月に数回という起用法であれば、この二人はもっと若手選手たちに大きな影響を与えられただろう。だが試合に出続けなければならなかった栗山選手と中村選手の場合、若手選手たちはその二人を見て学ぶしかなかった。

しかし筆者が見る限り、近年の若手選手たちは「見て学び技を盗む」ということがほとんどできない。自分たちのベストパフォーマンスをすることだけしか考えておらず、野球には常に相手がいることを忘れてしまっている。そのためスウィングスピードを速くするため、球速を速くするために筋トレばかりに頼ってそれで満足してしまっているように見えることさえある。

筋トレはもちろん大切なトレーニングだ。だがそれによってスウィングスピードを上げようとしたり、球速を上げようとしたりすることは非常に危険だ。上げられたとしてもスウィングはピッチング(波打つ)するようになり、投げるボールの球質も低下してしまう。まさに今日50日振りの先発マウンドに登った髙橋光成投手のように。

この髙橋投手にしても50日振りの一軍マウンドで脇腹を攣ってしまっている。しかもベルーナドームではなく快適なエスコンフィールドでの試合でだ。そう考えると一体50日間もどんな調整をしてきたのだろうと不思議に思えてくる。そして結果的にも今日も6回途中まで投げて4失点で敗戦投手となり、今季の成績を0勝9敗としている。

さて、話を栗山選手と中村選手に戻すと、もしかしたら西武球団はこの二人に対し引退勧告を出すべきなのかもしれない。ファンとしてはもちろんまだまだ頑張ってもらいたいという気持ちの方が強いわけだが、この二人に引退と同時に打撃コーチに就任してもらい、打線の立て直しを目指してもらいたい。

一軍は指導力抜群の田邊徳雄コーチと、ファイター中島宏之コーチ、二軍は栗山コーチとおかわりコーチというコンビでもう良いのではないだろうか。できれば栗山・中村コンビには優勝を引退の花道にしてあげたいわけだが、しかし今のチーム状態では来年・再来年に優勝できる可能性は非常に低い。そう考えると引退の時期を少し早めてもいいのかもしれない。

かつて最下位の翌年に優勝したバファローズやスワローズのようなただの最下位ではなく、今季のライオンズは歴史的大敗を喫している一人負けの最下位なのだ。さすがにこのチームを一年やそこらでしっかりと立て直すことは難しい。だがその立て直しを急ぐためにも、もしかしたら上述した4人の打撃コーチの誕生が急がれるのかもしれない。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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