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2024年7月 4日公開

かつてのライバル松中信彦氏でさえも憂いているライオンズの凋落ぶり

福岡ソフトバンクホークス vs 埼玉西武ライオンズ/14回戦 みずほPayPayD
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Lions 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
Lions 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

継投○武内夏暉アルバート・アブレイユ
勝利投手武内夏暉 5勝0敗0S 1.10
盗塁/高松渡(7)、西川愛也(2)
失策滝澤夏央(4)

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松坂大輔氏の言葉通り完全無欠な投球を続ける武内夏暉投手

武内夏暉投手

今日の試合は今季無敗投手同士の対決だった。ライオンズの先発は4勝0敗の武内夏暉投手、ホークスの先発は5勝0敗の大関投手で、今日の一戦は非常にタフな内容になることが戦前予想されていた。

しかし蓋を開けてみると武内投手は8回無失点という完璧な内容のピッチングで5勝目を飾り、打線もその武内投手を9安打で4点を奪い援護した。まさに投打がガッチリと噛み合った、ライオンズからするとベストゲームとも呼べる一戦となった。

なお新人として開幕5連勝をすべて先発でマークした武内投手のこの記録は、2リーグ制以降では日本記録タイとなっている。つまり次戦でも勝ち星が付くことになれば、長いプロ野球史の新記録ということになる。ただ1リーグ制時代まで遡ると1942年の巨人の藤本投手が新人として開幕から先発10連勝を記録している。武内投手には6連勝に留まることなく、ぜひこの10連勝という記録を塗り替えるような活躍を期待したい。

そして今日の武内投手に対し言うことは何もないのではないだろうか。細かいポイントなど今はここで書く必要などなく、ポーカーフェイスで淡々と投げ続けて防御率も1.10という素晴らしいピッチングをただただ讃えたい。

ちなみにライオンズファンなら誰もが知る通り、武内投手は福岡県出身で、子どもの頃はホークスのファンクラブにも入っていたと言う。そして和田毅投手に憧れながら、プロになるため腕を磨き続けた。そして今日、子どもの頃に通い詰めた福岡ドームのマウンドに立ち、子どもの頃に夢見たホークスを相手に見事なピッチングを披露してくれた。

武内投手とライオンズの他の投手陣との違いは、やはり上にも書いたポーカーフェイスという点だろう。他の投手たちの場合、エース今井達也投手でさえも打たれた時はあからさまにガッカリした表情を見せる。しかし武内投手は、もちろんガッカリしているとは思うのだが、それでもそれを表情に出すことがほとんどない。少なくとも筆者は開幕して以来、武内投手がマウンド上で感情を顔に出しているのをほとんど見たことがない。

強いメンタルが平常心にあることはすでに最近書いたが、武内投手はまさに冷静沈着という言葉がよく似合う。1球1球丁寧に、次何が起こりうるのかを考えながら投げているように見えるし、ほとんど完全に試合をコントロールすることができている。相手打線に点を取られた時でさえも、決して試合の流れを相手に持って行かせない粘り強さもある。

もし昨年のドラフトで武内投手を獲得できていなければと考えると、それだけでも恐ろしくなる。ちなみにWHIPは現在0.81で、あと2〜3試合しっかり試合を作れれば規定投球回数にも届くわけだが、この0.81という数字は今日時点ではパ・リーグトップの数値となっている。なお1.10という防御率ももし規定投球回数に届いていればパ・リーグダントツトップという数字だ。

つまり武内投手は1イニングあたり0.81人の走者しか出しておらず、背負う走者が少ないから失点も少なくなるという結果に繋がっている。なおライオンズで規定投球回数に届いている今井投手のWHIPが1.12、隅田知一郎投手のWHIPが1.16となっている。この二人の数値も十分素晴らしいわけだが、武内投手の0.81というのはスーパーエース級の数字だと言える。

髙橋光成投手平良海馬投手がまったく機能していない今、武内投手は今井投手・隅田投手と共に間違いなく三本柱と呼べる存在になっている。そして今思い出されるのが、松坂大輔氏が春季キャンプ中に言った「直すところが何もない」という武内投手に対する言葉だ。まさにその言葉の通り今、武内投手は完全無欠なピッチングを続けている。

今こそ兜の緒を締め直すべき三番・副主将の外崎修汰選手

さて、打つ方では2ヵ月以上低迷が続いていた外崎修汰選手の状態がようやく上向いてきた。3月の開幕3試合こそ打率.462と打ち出の小槌のようにヒットを打っていた外崎選手だったが、4月に入ると急速に調子を落とし、月間打率は.150まで下がってしまった。そして5月は.256、怪我から復帰した6月は.296とやや持ち直し、7月は2試合で打率.444となっている。

ただこれまでの傾向からすると、外崎選手が好調である期間はいつも非常に短い。そのため9月までずっとこの調子で打ち続けてくれることは考えにくいだろう。しかし三番を任されている打者が打てるか打てないかというのはチームにとっては大問題だ。

もし外崎選手の打順が下位打線であれば好不調の波があってもチームの勝敗にはそれほど大きな影響は与えない。しかし三番打者が好調であれば得点力は飛躍的にアップするし、逆に三番打者が機能していないとなかなか得点することはできなくなる。それは4〜5月のライオンズの戦いを見れば一目瞭然だ。

だからこそ外崎選手にはベテランとして、三番打者としての自覚をしっかりと持ってもらいたいのだ。もちろん持っているとは思うのだが、しかし不調である期間が長いことを考えると結果が伴っているとは言えない。今後不調である期間を短くするためにも、今は好調さだけでヒットを打って満足するようなことはして欲しくはない。なぜヒットを打てているのかを今のうちにしっかりと自己分析し、それを調子が落ちてきた時に活かしてもらいたい。

勝って兜の緒を締めよではないが、ヒットを打てている時こそ調子が落ちた時のことを考えておくべきなのだ。なお外崎選手は言うまでもなくライオンズの副主将だ。そのため外崎選手の行動がチームに反映されていくと言っても過言はない。つまり外崎選手が自ら打てている今こそしっかりと引き締めていくことにより、チーム全体もそのような雰囲気になっていくのだ。

ライオンズはリーグ戦再開後は5勝4敗1分で、ようやくまともに勝てるようになってきた。打線に関しても2安打程度で終わる試合はほとんどなくなっており、今日の試合でも9安打放っている。まだこのチームが好調であると言うにはほど遠いが、しかし勝てるようになってきた今こそしっかりと気を引き締めておく必要があるのだ。

かつてはライバルだった松中信彦氏も憂うライオンズの凋落ぶり

ライオンズの選手は近年、筋トレをガシガシやる選手が非常に多くなった。しかし平成の三冠王である松中信彦氏がこのライオンズの打者たちに対し警鐘を鳴らしている。ちなみに筆者自身バッターのコーチングを行う際も、選手たちには筋トレの取り組み方にはかなり注意させている。

実は筋トレというのは、いくらガシガシやってもそれによってスウィングスピードが上がることはないのだ。いや、もちろん平均値に達していないレベルの打者であれば筋トレによりスウィングスピードがアップすることもあるが、ある程度のレベルにある選手の場合、筋トレでスウィングスピードがアップするケースは稀だし、上がったとしても微々たるものだ。

なおプロでも学生野球でもスウィングスピードをアップさせるためにマスコットバット(1kgくらいある重いバット)を日常的に振る選手も多いが、これも逆効果だ。これに関しては科学的根拠もしっかり存在しており、マスコットバットを振り続けることでスウィングスピードがアップする根拠は一つも存在しない。

逆にマスコットバットを日常的に振ってしまうと腰椎分離症を引き起こすリスクが一気に高まる。プロでも学生でも腰痛持ちの選手が近年非常に多いのはこれが一つの原因となっている。

そして筋トレに関しては、速くなったバットスウィングによってインパクトの衝撃が高まり、その衝撃や、高負荷のスウィングトレーニングに耐えられる体を作るために取り組むべきなのだ。筋トレによってバットスウィングを速くしようと試みる選手は、根本的にスポーツ科学やスポーツ理論を理解していないと言える。

そもそも筋トレは高速で動くことはまずない。高速で動かないトレーニングによってバットスウィングを高速化させるという考えは、理論的に見てもに間違っている。そのため筆者は選手たちには、筋トレは必ず野球動作を行う前に行うように伝えている。そうることによって、筋トレで鍛えた筋肉が野球動作のスピードに馴染むようになるのだ。

筆者のクライアントたちは確実にバットスウィングが速くなっていく。それを可能にするトレーニングが軽いバットを使うことなのだ。例えば普段900gのバットを使っている選手であれば、800〜850g程度のバットも合わせて用意するのがベストだ。

バットを振るトレーニングの最初の80〜90%程度は900gのバットを使って行い、最後の10〜20%のスウィングを800gのバットを使って行うと、スウィングスピードはどんどん速くなっていく。1kgのマスコットバットを速く振ることはできない。そのためマスコットバットを振り続けても、速く動く筋肉を作ることはできないのだ。

逆に800gのバットは、900gのバットよりも速く振ることができる。そのため終盤のスウィングを800gのバットで高速で振っておくことにより、筋肉がより速く動くことを覚えてくれるのだ。これがバットスウィングを速くするための科学的に最善だと言える方法だ。なおこれはプロ野球選手だけではなく、少年野球や草野球でも有効であるため、野球をされている方はぜひ試してもらいたい。

松中氏がこれらのことを踏まえてスウィングスピードはバットスウィングによって速くしていくべき、と仰っているのかは分からない。しかしバットスウィングによってしかスウィングスピードを速くすることはできないという氏の言葉は、科学的にはまったく正しいのだ。

ちなみにライオンズには稀代のアーチストである中村剛也選手がいるわけだが、中村選手は一切筋トレは行わない。個人的には年齢的なことを考えて、多少はやった方が良いとは思うのだが、しかし筋肉痛になるのが嫌いという理由で中村選手は筋トレを行わない。それでもプロでこれだけホームランを打っているのだから、松中氏が仰る通り、ライオンズの若手打者たちは中村選手の取り組み方をもっともっと見習っていくべきなのだ。

ではなぜ選手たちは筋トレに走りがちなのか?その理由は簡単だ。一日にボールを100球も200球も投げるより、一日にバットを500回も1000回も振るよりも、1〜2時間筋トレしてた方がずっと楽だからだ。そしてプロテインを多用すればあっという間に筋肉が大きくなり、それによって強くなったと錯覚してしまう。ちなみに一流メジャーリーガーは朝起きて筋トレし、チーム合流前に個人練習場で500球打ち込み、チームで行われるアーリーワークで体幹をしっかりと鍛え、そして試合後にまた500球打ち込むという生活をしている。これだけトレーニングを行っているため、SNSを使ってネットナンパをする暇などまったくないのだ。

松中選手が活躍していた頃のライオンズは強かった。ライオンズとホークスはまさにバチバチのライバル関係にあったわけだが、そのライオンズが凋落した姿を見て、さすがの松中氏も寂しくなってしまったのだろう。まさに金言とも言える言葉だっただけに、ぜひライオンズの打者陣にはこの松中氏の言葉を肝に銘じて練習に励んでもらいたい。

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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