2021年3月 2日公開
2月後半の実戦に入ってからすでに2本塁打を放っているブランドン選手。しかしまだまだ開幕スタメンに近付いたと言うことはできない。そして仮にこれから始まるオープン戦であと3本ホームランを打ったとしても、開幕スタメンを確約されることはないだろう。
今季のライオンズはまず、正三塁手の中村剛也選手が左ふくらはぎを痛めて出遅れている。先日ようやく2軍に合流したわけだが、開幕戦に間に合うかどうかは不透明な状況だ。そして中村選手同様にサードに入ることができるコーリー・スパンジェンバーグ選手も、コロナウィルスの影響でいつ来日できるのかが不透明な状況だ。そのため現時点では、ライオンズの開幕スタメンサードにはポッカリと穴が空いてしまっている。
その座を目指して現在ブランドン選手らが鎬を削っており、現状ではブランドン選手が一番目立っている状況となっている。だが開幕スタメンサードとなると、ブランドン選手もまだまだ厳しい状況にある。今のレベルのままで3月のオープン戦を過ごしたとしても、辻発彦監督は簡単にはブランドン選手の名を開幕戦のオーダー表に書き込むことはないだろう。
確かにここまでの2ホームランは見事だ。特に2本目のライト方向へのホームランは強振することなく、コースに逆らわずに上手くライトスタンドまで運んで行った。まるでかつての清原和博選手のホームランを見ているようだった。だが問題は2ホームラン共に、ホームランを打った後の打席だった。両試合共にホームランを打った後は簡単に三振をしてしまっている。これでは辻監督の言葉通り、プロでやっていくことは難しい。
今ブランドン選手に求められているのは打率.300という数字ではなく、凡打になった時の内容だ。内容のある凡打であれば次の打席に繋げることもできる。だが内容のない三振ばかりでは、次の打席に対する布石を打つこともできない。
例えば栗山巧選手のように抜群の選球眼を持った選手が見逃し三振をした場合は「栗山がボールだと思って見逃したのなら仕方ないな」と思うこともできる。だがブランドン選手のように内容が求められているルーキーの場合だと「もっとボールに食らい付いていけ!」と思われてしまうだけだ。
例えば外角低めへの良いスライダーを、スライダーを狙ったタイミングで空振り三振したのであれば、これはコーチが外角低めのスライダーを打てるようにするためのアドバイスをすれば済む話だ。だが消極的に見逃されたボールをストライクだと判定されての三振では、コーチ陣にも打つ手がない。そしてそのような内容のない打席が続いてしまえば、当然1軍に居続けることもできなくなる。
ホームランを打った2打席を除くと、ブランドン選手のバッティングの内容はまだまだ1軍レベルではない。もし2ホームラン打っていなければ、オープン戦を前にして2軍に送られていただろう。だが2ホームランしているために、首脳陣も「もう少し様子を見てみよう」という形に留まっている。
今ブランドン選手がしなければならないのは、頭脳面での強化だ。例えばバッティング技術というものは、ここから開幕までの間に大きく向上させることはできない。だがスコアラーの力を借りて、相手投手の配球パターンを頭に叩き込むことはすぐにでもできる。配球パターンがある程度頭に入っていれば、まったくの予想外となるボールが来ることはまずなくなり、意表をつかれて簡単にストライクを見逃してしまうことも減るはずだ。
他球団からすると、ブランドン選手はまだまだ要注意人物ではない。つまり森友哉捕手や山川穂高選手のように相手チームから徹底的にマークされることはまだない。だからこそブランドン選手自身が相手投手をもっと徹底研究すれば、打てるチャンスは森・山川両選手以上に多くなる。
当たり前だが、ブランドン選手が開幕までに森・山川両選手の技術レベルに至ることはできない。だが相手投手の研究ならば、森・山川両選手と同じレベルで行うことができる。意表をつかれずに何とか1軍レベルのボールに食らいついていくためにも、ブランドン選手はもっともっと相手投手の情報を頭に詰め込まなければならない。これこそが、ブランドン選手が開幕スタメンを手にするために、今最も力を入れなければならないことだ。
いつもストレートを打つタミングで、ストレートが上手く来てくれた時だけ打てるという状態では、開幕スタメンどころか1軍に残ることさえできない。しかし多くの一流打者たちのように、変化球を待ちながらストレートにも合わせていく、という待ち方ができればもっと率が上がるようになり、凡打の質を高めていくこともできる。
そして凡打の質が上がっていけば、ヒットになる打球を打つ確率も自ずと高くなる。少なくとも内容のない見逃しストライクはなくなっていき、三振をしたとしても内容のある三振になっていくだろう。では内容のある三振とは?
例えば上述したように、スライダーを狙ったタイミングでスライダーで空振り三振したとする。すると次の打席でバッテリーは、勝負球にスライダーを選びにくくなるのだ。すると自ずとストレートが来る確率が高まって行き、ブランドン選手のようにストレートに滅法強いバッターの場合、有利な状況で打席に立てるようになる。これが内容のある三振の一例だ。
このような同じ三振をするにしても、内容のある三振が増えていけば辻監督からの評価ももっと高くなっていくはずだ。現状では「ブランドンを使うしかない」という状況だが、凡打の質が良くなっていけば「よし、開幕サードはブランドンで行こう!」というように辻監督の考えも変わっていくだろう。そのためにも今ブランドン選手に必要なのは頭脳面でのレベルアップなのである。