2024年7月30日公開
さて、そろそろ球団の中で作成され始めてしまうのが整理リストと呼ばれる、いわゆる誰を戦力外にするかというリストだ。今季は歴史的負け数を記録しているだけに、ある程度の名のある選手でもこの整理リストに入ってくる可能性が高いだろう。
そしてオフに戦力外になる選手が多くなるほど、そのオフに血の入れ替えとして新しい選手を入れてくることも可能となる。今回はまずは、野手の中で誰が今オフの整理リストに入ってくるかを考えてみたい。
まず最初に名前を挙げなければならないのは金子侑司選手だろう。今季は4年契約を終えた1年目で、年俸は7000万円となっている。だがここまで36試合の出場で打率.220、盗塁も3となっており、まったく期待通りの働きを見せられていない。
7000万円という高額年俸を踏まえると、まずこの金子選手が戦力外の筆頭候補ということになるはずだ。金子選手の場合、これまで幾度となくチャンスをもらってきた。昨季までは4年契約の高額年俸者だったこともあり、首脳陣もできる限り金子選手を起用して欲しいとフロントからもある程度の要望が入っていたはずだ。
プロ野球はあくまでもビジネスであり、選手1人1人を見ても、常に費用対効果を考えていく必要がある。しかし金子選手の場合は4年契約を結んだ途端に成績が下降し始め、そこから持ち直すことがまったくできなかった。そして背水の陣として迎えた今季に関しても、一時的に少しヒットが続くことがあったとは言え、現状では一軍に戻ってくるような気配は感じられない。
ちなみに金子選手はファームではちょこちょことマルチヒットを記録し、打率も.284とそこそこ打ち、盗塁も8個決めている。決して外野の層が厚いわけではないライオンズでこの成績でも一軍に上がれないということは、やはり球団としてももはや金子選手には一軍での活躍は期待していないということなのだろう。
育成からも外野を守れる選手が支配下契約に切り替えられているし、ベテランの金子選手にチャンスを与えるくらいならば、若くて勢いのある選手たちにより多くのチャンスを与えた方が球団の将来にとってはプラスになる。そのため野手陣では、まずこの金子侑司選手が戦力外候補になってくるはずだ。
そして続いて名前が上がってくるのがブランドン選手だろう。近年は怪我に苦しみ育成契約に切り替えられ、今季は再び支配下に這い上がってきたブランドン選手ではあるが開幕直後にまた怪我をしてしまい、今季はファームでもまだ5試合にしか出場していない。
筆者個人としては若林楽人選手と共に大きな期待を寄せていたブランドン選手ではあるが、さすがにここまで怪我に弱いということになると、今オフの戦力外はもはや免れないだろう。
ブランドン選手の場合、バッティングでもフィールディングでも動きが非常に硬い。これは恐らくは体そのものの柔軟性の低さから来ているのではないだろうか。近年のライオンズには股関節が硬い選手が多いわけだが、ブランドン選手もその一人だと言える。
筆者は怪我のリスクを軽減した上でピッチング・バッティングパフォーマンスを向上させるフォーム改善指導を生業としているのだが、怪我する選手の中で股関節の柔軟性が十分である選手は1%にも満たない。肩肘の怪我に関してはまさにそれが顕著で、野球肩野球肘になる選手のほとんどは十分な股関節の柔軟性を持っていないのだ。
股関節というのは下半身と上半身を繋ぐ、全スポーツ選手にとって最も重要な関節になるわけだが、ブランドン選手はその股関節の柔軟性が十分ではないだけでなく、強度も足りていない。そのため今抱えている怪我が完治したとしても、強度の高いプレーを一軍で続ければまたすぐに怪我をしてしまうはずだ。そのためブランドン選手もやはり、今オフの戦力外は免れないと思われる。
そして残念ながら陽川尚将選手も整理リストに入ってくるだろう。今季は数試合のみ一軍で良い働きを見せてくれたのだがそれが続くことがなく、ファームでも打率は.171にとどまっている。
元タイガースのロマン砲ということで大きな期待も寄せられていたが、しかし残念ながらロマンはロマンのまま終わってしまいそうな気配だ。そしてトレードで、陽川選手と完全にポジションが被る野村大樹選手を獲得したことで、陽川選手の出番はさらに減ることになり、もっと言えば村田怜音選手の怪我が治れば、ファームであっても陽川選手が守る場所はなくなってしまう。
ライオンズはここのところ、一塁と三塁を守れる将来性のある選手は増えてきた。そのため今後のドラフト戦略としては外野・二遊間を守れる選手を見ていくことになると思うのだが、残念ながらこの現実は陽川選手にとっては辛いものとなるだろう。
陽川選手には、かつてタイガースからライオンズにやってきた平尾博嗣選手のような活躍を期待したのだが、残念ながら平尾選手の再来は叶わなかった。今季はまだ西武移籍2年目ではあるが、しかし33歳という年齢と、ファームでの.171という打率、そしてポジションが被る若手選手が増えてきたことを考えると、陽川選手の今オフの戦力外も不可避と言えるのかもしれない。
もちろん3選手とも今後の活躍次第ということになるわけだが、しかしこの3人が今季残り試合で一軍で多くのチャンスを与えられることはまずないだろう。金子選手のようにファームでマルチヒットを打っていても一軍からは声がかからないのだから、それが渡辺久信GMの答えなのかな、という今のところの印象だ。