2024年1月 7日公開
昨シーズンを終えた際、ライオンズの中で最も悔しさを表したのはブランドン選手ではなかっただろうか。ルーキーイヤーでは新人ながら開幕直後の3月下旬にプロ初安打を初ホームランでマークするなど、非常に期待値の高い選手だった。しかし残念ながら2022年から悩まされている股関節痛の影響で、2023年のシーズン終了後に戦力外通告を受けてしまった。
しかしこの戦力外通告は、育成での再契約を前提にしたものだった。とは言えブランドン選手はインタビューなどで悔しさと驚きを口にしている。覚悟はしていたものの、やはり戦力外という現実には多少なりとも驚きがあったようだ。
そしてそれは我々ファンにとっても同じだっただろう。ブランドン選手が戦力外となったニュースを目にした際は、筆者も自らの目を疑うほどだった。確かに2年間一軍出場はなかったが、将来の正三塁手候補の筆頭でもあったブランドン選手が僅か3年で戦力外になってしまったのだから、これは驚かずにはいられない。
だがこの戦力外はまったく結果を出せなかったからの戦力外ではなく、2022年から2023年にかけてブランドン選手は股関節痛に悩まされていた。そのためなかなか一軍にも上がることができず、治癒と再発を繰り返してしまっていたようだ。
渡辺久信GMとしてもブランドン選手の姿を見ながら、焦ってプレーをさせてまた再発を繰り返すよりは、ここは一度育成契約に切り替え、焦らずにしっかり完治させることを優先させようとしたのだろう。同じく怪我により登板できなかった、2022年オフに人的補償でライオンズ入りした張奕投手とは扱いがまったく異なる。
張奕投手は怪我の治癒を待たずにあっという間に戦力外となってしまったが、少なくともブランドン選手は多少の年俸ダウンだけで育成契約を結んでもらうことができた。これは怪我さえ治れば十分一軍の戦力になると判断されたためだろう。
また、西武球団としてもアマチュア球界からの信頼を失わないためにも、ドラフトで指名した選手を簡単に戦力外にすることはできない。もしそんなことを繰り返してしまえば、高校大学側が選手を西武入りさせたくないと考えてしまうためだ。
そう言ってしまうと「ブランドン選手を戦力外にしたくてもすることができなかった」というニュアンスにも取られそうだが、しかしそういうことを言いたいのではなく、アマチュア球界からの信頼を失わないようにすることはもちろんのこと、まずはしっかりと股関節を完治させ、一軍で活躍してもらいたいという西武球団からの期待値の高さがブランドン選手にはあるということだ。
ブランドン選手と言えば、同期入団した若林楽人選手が盟友のような存在となり、ルーキーイヤーはお互い切磋琢磨しながら一軍への切符を手にしていった。
だがその若林選手もルーキーイヤー以来膝の故障に悩まされ、昨シーズンを終えた際にようやく膝の金具を除去できたという段階だった。ブランドン選手も若林選手も球団からの期待値だけではなく、ファンからの人気も非常に高い選手たちだ。
ライオンズファンの誰しもが今、若林選手がダイヤモンドを駆け回り、ブランドン選手のタイムリーで生還する姿を見たいと願っている。ブランドン選手よりも先に怪我をしてしまった若林選手が、今季2024年はようやく本来の姿を取り戻せそうなところまで来ている。
となるとブランドン選手も1日でも早く支配下契約を取り戻し、三桁ではない背番号を背負って一軍を目指していきたいところだ。ただ股関節痛というのは長引きやすいし、癖にもなりやすい。だからこそブランドン選手はここで無理することなく、まずはしっかりと完治させることを優先しなければならない。そうしなければまた再発を繰り返してしまうことになるだろう。
筆者はプロの野球コーチなのだが、簡単に説明をさせてもらうと股関節というのは上半身と下半身のつなぎ目となる。野球の場合、ピッチングでもバッティングでもキネティックチェーン(運動連鎖)は必ず下半身から上半身に向けて始動させていくのだが、股関節が怪我などで上手く機能していないと、下半身のエネルギーが上半身に伝わらなくなり、その結果上半身に頼ってプレーせざるを得なくなってしまう。
ブランドン選手も股関節を庇いながらプレーをして他の部位を怪我するわけにはいかないし、再びルーキーイヤーのようなパワフルなバッティングを見せるためにも、やはりしっかりと股関節を治し、再発の不安なくプレーに集中できるようになって欲しい。
そうすれば熾烈な三塁手争いにもう一人有力候補が加わり、ライオンズの三塁手争いはまさに戦国時代を迎えることになる。そしてその戦国時代を制した三塁手は、きっとリーグを代表する三塁手へと成長していくはずだ。ブランドン選手がそうなっていくためにも、焦る気持ちは分かる、だがそこで焦ることなくまずは股関節を完治させ、また元気な姿を一軍のグランドで見せてもらいたい。
ルーキーイヤーには中村剛也選手の最有力後継者とも呼ばれていただけに、筆者個人としてはブランドン選手にはいつか、和製アレックス・カブレラのような強打者に成長していって欲しいと願っている。そしてそのためにもまずは股関節の完治を待ちたい。