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2021年11月21日公開

フェイクニュースに貴重な練習時間を奪われてしまった森友哉捕手

森友哉

チーム防御率の向上しないのは森友哉捕手の責任ではない

あるスポーツ紙が、森友哉捕手が「涙ながらに捕手を辞めたいと懇願した」とする、ある球団関係者の言葉を記事にした。しかしこれを森友哉捕手は真っ向から否定し、来季以降も捕手としてプレーし続けることを明言した。

森捕手自身がわざわざこんなコメントを出さなければならないとは、報道とは一体何なのだろうか。そもそもある球団関係者とは誰なのだろうか。この匿名状態の記事と、一般人がネット上で匿名による他者批判を行うのとでは、何が違うのだろうか。筆者には同じ低レベルさにしか見えない。

球団関係者の言葉、という書き口であればどんな嘘でも書けてしまう。基本的にこのような場合、球団関係者は決して今現在球団に関係している人物ではない。例えば筆者はプロコーチとしてこれまで西武ライオンズ関連のお仕事をたくさんいただいてきたわけだが、球団関係者と自称することはない。ただ単にライオンズとお仕事をさせていただいた、というだけだ。

このようなスポーツ紙が未だに存在しているのも不思議であれば、それを買って読む人間がいるということも筆者には理解し難い。そもそもこのような媒体をスポーツ紙と呼ぶべきなのかも疑わしい。

筆者が個人的に許せないのは、根拠も何もないただの無責任記事により森友哉捕手や、ライオンズの選手たちが傷つけられたということだ。今回の報道による事実は唯一これだけではないだろうか。

ちなみに森友哉捕手はコンバートすべきだと平然と口にする野球解説者たちもいるが、余計なお世話だ。こんなことを軽々しく口にすべきではない。このようなことを平気で言えるのは、センセーショナルなことを言って注目を集めたり、記事へのアクセス数を伸ばしたいだけの三流解説者のみだろう。

確かにこれまで捕手からコンバートすることによって成功を収めてきた選手は大勢いる。ライオンズで言えば高木大成選手、和田一浩選手、貝塚政秀選手、犬伏稔昌選手らがそうだ。しかしこの中で自ら捕手を辞めたいと言ってコンバートした選手はいたのだろうか。

筆者が記憶している限りでは、どの選手も監督主導でコンバートをしていたように思う。捕手としてプロに入ったからには、捕手というポジションにプライドを持っているはずだ。そのプライドを簡単に捨てられるような選手が1軍で結果を残せるはずなどない。

だが森捕手は捕手というポジションにプライドを持っているからこそ、「3番捕手」というポジションでリーグ屈指の打撃成績を残すことができている。

なかなか向上しないチーム防御率を見て、森捕手のリードが悪いからだという者もいるがこれも筋違いだ。渡辺久信GMが就任する前のライオンズは、毎年のようにエースやローテーションピッチャーを失っていた。こんな状況が続いてはチーム防御率を改善することなど不可能だ。

渡辺GMになってからは主戦級投手の流出はなく、逆にライオンズ愛を貫こうとする選手が増えてきた。だがこの成果も1年や2年という短期間で見えてくるものではない。見えてくるのは恐らくは来季以降となるだろう。

そしてこのチーム防御率が改善された時、無責任な一部スポーツ紙は森捕手が名捕手に近付いたと、また薄っぺらな記事を書くのだろう。

フェイクニュースに掻き乱された森友哉捕手

森捕手は、捕手としてはまだまだ完成形ではない。配球、キャッチングなどなど、捕手に関する技術は伊東勤捕手や細川亨捕手にはまだ及ばない。だがまだまだ伸び代があるのが現時点での森捕手であり、来季以降、森捕手は捕手としてさらに進化していくはずだ。

その森捕手を育成するためにも、ライオンズはそろそろ細川亨捕手をコーチとして呼び戻してもいいような気もするのだが、これはまだ先の話になりそうだ。筆者個人としては、試合前練習などでまたズンドコ節を聴けるのを楽しみにしている。

さて、森友哉捕手は強肩と呼べる捕手だと思う。だが今季の盗塁阻止率は.274と低く、リーグ4位というポジションだ。ではなぜ森捕手は肩が強いのに盗塁を刺せないのか?

もちろん投手陣のクイックモーションのレベルも関係してくるわけだが、それを差し引いても.274という数字は低い。その原因はスローイングモーションの大きさにある。

森捕手はどちらかと言えば、大きなモーションで強いボールを投げてしまっている。大きなモーションでも動きそのものは速いため見落とされがちだが、大きなモーションで強いボールを投げても盗塁阻止率を向上させることはできない。

実際にプロ野球選手のPop To Pop(捕手がキャッチングした瞬間から、ボールが二塁ベース上の野手のグラブに収まるまでのタイム)を計測してみると、大きなモーションで上から強く速いボールを投げた時よりも、コンパクトな動きのサイドハンドスローでできるだけ早くリリースした時の方が、Pop To Popは短くなる。

森捕手の盗塁阻止率を向上させるためには投手の協力を求める前に、まずは二塁送球時のモーションをコンパクトにすることが効果的だと思う。これは速く動くことよりも重要な要素だ。

森捕手は一般的なプロ野球選手よりも身長は低い。これを活かすべきだろう。身長が低いということは、キャッチングからサイドハンドスローでのリリースまで持っていくまでのタイムは、背が高い捕手よりも早くなる。ということは、物理的には170cmという同じ身長のホークス甲斐捕手とちゃんと勝負ができるはずなのだ。

だが盗塁阻止率では甲斐捕手の.452と森捕手の.274で、今季は大きく水を開けられている。この差を埋めるためにも森捕手は、送球モーションをもう少しコンパクトにすべきだろう。強肩だけに頼るのではなく、無駄なモーションを省いてPop To Popを短くできれば、.400近くの盗塁阻止率をマークできるはずだ。ちなみに2018年には森捕手は.373という盗塁阻止率をマークしている。

森捕手には、かつて細川亨捕手がマークした.469という盗塁阻止率をいつか越えてもらいたい。森捕手の捕手としての全盛期はまだまだこれからだ。プロ野球選手の全盛期は一般的には27歳からの3〜5年だと言われている。とするならば、森捕手の全盛期は来季から始まるということになる。

これから全盛期を迎えるのに、森捕手が涙ながらに捕手を辞めたいと訴えることなどそもそもあり得ない。勝てずに悔しくて涙を見せたことはあった。辛くて捕手を辞めたいと思ったことだってあっただろう。だが泣きながらコンバートを訴えることなどまず常識的にあり得ないし、本物の球団関係者であれば、選手の涙を売り物にするようなことは絶対にしない。

「球団関係者の話では」と書けば、「情報源は明かせない」と言えば裏が取れているか取れていないのかなど関係ない。好き勝手に書いて「報道の自由」を主張すればそれで終わってしまう。だがこれはただのゴシップであり、まったく報道などではない。

チームが来季の優勝に向けて必死に練習している今、こんなフェイクニュースでチームを掻き乱してもらいたくはない。このようなゴシップ紙に選手を取材させることは避けて欲しい。いや、取材させてもらえないからこそこのようなフェイクニュースを書くということなのだろうか。その辺りは筆者には分からない。

とにかく来季以降、森捕手は12球団屈指の捕手へと進化していくはずだ。来季の森捕手はその進化を以って、これがフェイクニュースだったと改めて証明してくれるはずだ。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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