2024年9月11日公開
今季125試合目、残り18試合を残してライオンズの今季の最下位が確定した。もちろん誰しもが確信していたことではあるが、それでも実際に最下位が確定してしまうとやはりガッカリしてしまうものだ。
なおライオンズのワースト記録は残り13試合を残して最下位が確定した1972年の西鉄ライオンズだったわけだが、今季はそれを大幅に上回り、ライオンズ史上ワーストの記録を更新してしまった。そしてプロ野球史で見ても、残り18試合で最下位が確定したのは2005年の、球団創設1年目の楽天イーグルス以来の出来事であるという。
つまり今季のライオンズは、プロ野球に参入した新規球団の1年目と同じ負け方をしているということだ。これはさすがに選手たち自身が恥ずかしいと感じなければならない。そして走者が出てもあと1本のヒットが出ないというのも、渡辺久信監督代行の言葉通り、相手投手がギアを上げた時のボールにまったく対応できていないということであり、これはもう技術不足以外の何物でもない。
そして今日もまたバントミスが出た。今日は柘植捕手がバントを失敗してせっかくの走者を併殺打で無駄にしてしまったわけだが、今季のライオンズは一年間ずっとこの同じことを繰り返している。そう考えると、やはり今オフの血の入れ替えは避けて通ることはできないだろう。
創成期の西武ライオンズは、他球団からどんどん実力者を補強していった。例えば野村克也捕手、田淵幸一選手、山﨑裕之選手らがそうだ。ちなみに田淵幸一選手に関しては、一番ショートに定着しベストナインにも選ばれていた真弓明信選手、主戦リリーバーだった竹田和史投手、正捕手だった若菜嘉晴捕手を交換要員とした1対3の世紀のトレードだった。
そして根本陸夫監督兼任球団管理部長(現代で言うGM兼任監督)らが画策したこのトレードは大成功となり、田淵選手は西武ライオンズ初年度の1979〜1984年までの間、6年間主砲として素晴らしいバッティングを見せ続けてくれた。しかも引退される前年でさえも30本塁打を放ち、さらにはアニメ「がんばれ!タブチくん」も大人気だった。筆者も再放送で幾度も観たことがあるのだが、広岡監督のキャラクターが最高だった。
今ライオンズに必要なのは秋山幸二選手と佐々木誠選手らが絡んだ方の世紀のトレードではなく、田淵幸一選手を獲得した際の世紀のトレードだ。主戦選手3〜4人を放出してでも、他球団から四番を打てる打者を連れてくるべきだ。もしくは現代で言えば、さすがにそろそろ本気でFAでスラッガーを獲得しなければならない。
今季で言えば阪神タイガースの大山悠輔選手がFAとなる。もしこの大山選手がFA宣言した場合は、是が非でも獲りにいかなければならない。しかも今ライオンズの背番号3は空き番号となっており、埼玉県は大山選手の出身地である茨城県にもほど近い。そしてこれまで高額年俸だった主力打者たちが続々とライオンズを去っていったことにより、大山選手に年俸3億円を支払う予算は間違いなくあると言える。そもそも近藤健介選手の獲得を目指したのだから、それだけの予算があることは間違いない。
仮に大山選手がFA宣言した場合は、交渉ラインは最低でも4年12億円以上という金額になるだろう。だがもし大山選手を獲得できるのであれば、4年16億円という金額を提示したとしてもライオンズファンは納得するだろう。いや、逆にそれだけの金額を出さなければ納得しないと言うべきなのかもしれない。
以前も少し書いたことではあるが、筆者は渡辺久信GMには根本陸夫になってもらいたいのだ。そして渡辺GM自身も故根本陸夫を目標としている。根本陸夫氏は、坂井保之球団社長に請われて1978年、つまり西武ライオンズが誕生する前年にクラウンライターライオンズの監督に就任している。だがその頃のライオンズは昨今のライオンズのように毎年最下位争いをしているような弱小球団だった。
そのクラウンライターから西武ライオンズに変わった1979年以降も、今でいうGM兼任監督として根本監督は完全に負け癖がついたライオンズの立て直しを任されていた。そして所沢移転後、上述したトレードなどで血の入れ替えを図り、負け癖が付いていた選手をどんどん放出し、逆にドラフトやドラフト外で力のあるフレッシュな選手を次々と獲得していった。
そして所沢移転も3年が経過した頃、ようやくライオンズはクラウンライター時代とは別の球団に生まれ変わり、戦う集団へと姿を変えることができた。そして同時に選手の間から、「根本監督では優勝できない」という噂が囁かれ始め、根本監督はその声が大きくなる前にそれを察知し、先回りして勝てる監督の招聘を目指した。そして連れてきたのが広岡達朗監督と森祇晶ヘッドコーチ(当時は森昌彦)で、そこからライオンズの黄金時代は始まっていった。
ライオンズは今、ちょうど根本監督がクラウンライターに招聘された頃のような状態にある。それを渡辺久信GM兼任監督が、まるで背中を追い駆ける根本陸夫監督が歩んだ道をそのまま歩んでいくかのようにチームの立て直しを目指して日々神経をすり減らしている。
「勝てないからクビ」、ということを繰り返していては、チームはいつまで経っても強くなることはない。強くなる前には、必ず土台を築き上げる時間が必要なのだ。例えば阪神タイガースと楽天イーグルスの監督として優勝している星野仙一監督の場合、監督就任前の数年間は必ず野村克也監督がチームを率いて、まるで根本監督のように地道な土台作りを行っていた。そのチームを、根本監督を引き継いだ広岡監督のように星野仙一監督が引き継ぎ、チームを優勝へと導いていった。
※イーグルスは1年間ブラウン監督を挟んでの星野監督の就任。
成績が伴わないことで監督やGMを辞めろと言うことは簡単で、そんなことは野球素人にだってできる。だが大事なのは、今渡辺GM兼任監督がどんなことを考えながら立て直しを図っているのかを理解した上で辞めろだの何だのと言うことだ。ローマは一日にして成らずだ。ライオンズの再びの常勝時代だって明日すぐにやってくるわけではない。
もちろん補強や戦力の入れ替え次第では来季からでもライオンズは戦う集団に変貌できると筆者は考えているが、それを渡辺GM兼任監督が、かつての根本陸夫GM兼任監督のように断行できるかどうかだ。ちなみに筆者は、できると確信しているライオンズファンの一人だ。