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2024年9月 8日公開

西武再建に必要なのは新GMや新監督ではなく日本版ポール・デポデスタ

昨オフは愛斗選手、では今オフ現役ドラフトにかけられる選手は誰?!

渡辺久信監督代行は常々「ベテランに頼っているようではダメ」というようなことを仰っているが、これは何も栗山巧選手中村剛也選手のことばかりではない。このベテランの中には今年31歳になる源田壮亮主将と、32歳になる外崎修汰選手も含まれている。

本来であれば現在26〜27歳の選手たちが、外崎選手が26〜27歳の頃に見せた活躍をしていなければならない。例えば今26〜27歳の選手と言えば佐藤龍世選手平沼翔太選手岸潤一郎選手元山飛優選手鈴木将平選手らだ。アスリートにとって27〜29歳の3年間は体の状態が最高潮になる時期で、このようなこともありかつてイチロー選手も27歳という年齢でメジャー移籍することに拘っていた。

佐藤龍世選手と平沼選手に関しては今、飛躍のきっかけを掴み始めていると言ってよく、このふたりに関しては来季は主軸打者としてシーズンを通して活躍してくれるはずだ。だが元山選手と鈴木選手に関しては、仮に短期間であってもまだ好調を維持できるレベルには至っておらず、打つ時はもちろん打つのだが、打てない時は本当になかなか打てない状態が長く続いてしまう。そして岸選手に関しては今季は再び野球以外のことで悪目立ちしてしまった。

野球選手の場合もやはり27〜29歳という時期にある程度の活躍を見せることができなければ、球団から「この選手には成長の見込みはもうない」という判断を下され、整理リストに名前を加えられることになる。もしくは良くてもトレード要員や現役ドラフト要員とされてしまうだろう。

西武球団は昨オフ、まだ26歳で非常に守備力が高く、バッティングでも成長を見せていた愛斗選手を現役ドラフトにかけた。愛斗選手は2021〜2022年にかけては出番を増やしていたのだが、2023年に関してはその出番がやや減ってしまった。たった一年成績を少し落としただけでも現役ドラフトにかけられてしまうということがあるため、そう考えると今オフは28歳になる岸潤一郎選手も現役ドラフト要員にされる可能性は高いと言える。やはり野球以外のところで複数回悪目立ちしてしまうというのは、球団からの評価を著しく低下させる要因にもなってしまうからだ。

ライオンズは確かに外野手は手薄であることに違いはない。だがここに来て西川愛也選手が打率こそ2割少々であるものの、3割を超える得点圏打率を買われて三番で起用される試合が続いている。さらには長谷川信哉選手もファームでは圧倒的な好成績を残し、一軍でも徐々に仕事を果たせる試合が増えて来ている。そして蛭間拓哉選手もまだまだ安定感には乏しいものの、調子が良いと月間打率が3割前後になることもあり、勝負強さも少しずつだが見せられるようになって来ている。

ここに来季は仮に、フランチー・コルデロ選手が自由契約になったとしても、外野を守れる新外国人選手が加わることは間違いないため、上記三選手が少しずつでも成長の足跡を見せ続けることができれば、来季の外野陣は決して手薄と言える状況にはならないはずだ。

とにかく言えることは、野球選手は27〜29歳の3年間が非常に大事だと言うことで、例えば27〜28歳の2年間でチャンスを生かすことができなかった岸潤一郎選手は、3年間のうち2年間で満足のいく結果を残せなかったというフロントの評価になってしまうのだ。

球団からすると、これは西武球団にかかわらずだが、27〜28歳で打率2割少々しか残せない選手と契約をし続けるのならば、高卒・大卒の若い選手と契約した方が年俸はさらに抑えられるし、伸び代にも期待することができる。これが元山選手のようにライオンズ移籍1年目の選手であれば、さすがに今オフに現役ドラフトにかけられる可能性は非常に低いわけだが、独立リーグ出身でライオンズ5年目の岸選手の場合は、今季の失速のしかたではフロントからの評価はかなり低くなると言って良いだろう。

外崎修汰選手は追い駆けられることによってもう一段上に行ける!

通算100本塁打を達成した外崎修汰選手

冒頭でベテランに頼っていてはダメだと書いたが、しかし今日に関しては主役はベテラン外崎選手だった。今日は初回に西川選手の犠牲フライで幸先よく先制するも3回にすぐに逆転されてしまい、それでも8回に再び西川選手のタイムリーヒットで同点に追いつくとその直後の9回、外崎選手が起死回生となる勝ち越しソロホームランをライトラッキーゾーンへと叩き込んだ。

今日は西川選手の活躍も、今井達也投手の好投も見事だったわけだが、しかし一番良いところは外崎選手が持っていってしまった。そしてこのホームランは外崎選手にとっては通算100号というメモリアルアーチとなった。中村剛也選手の通算ホームラン数は478本と次元が違うわけだが、しかし外崎選手の通算100本塁打というのも本当に見事な数字だ。

長いプロ野球の歴史の中で、100本塁打以上打った選手というのは実は300人ちょっとしかいない。その第一号は川上哲治選手で、近年のライオンズでそれを達成したのはエルネスト・メヒア選手、浅村栄斗選手、秋山翔吾選手、山川穂高選手、栗山巧選手、森友哉捕手、そして外崎選手だ。だが残念なことに栗山選手と外崎選手以外はもうライオンズには残っていない。

ところで筆者は思うのである。オフの自主トレは他球団の選手と合同でやるべきではない、と。近年のプロ野球では比較的惜しむことなく合同自主トレで他球団の選手に助言をする選手が多い。だが実際にはまったく出し惜しみしていないかと言えばそんなことはないし、例えばホークス和田毅投手の自主トレに参加したライオンズの隅田知一郎投手に対し、和田投手が持っているすべてを伝授することなどありえない。なぜならホークス和田選手からすれば、同一リーグであるライオンズの選手に強くなってもらっては困るからだ。

もちろん表向きは絶対にそんなことは言わないし、そんな姿を見せることもしないだろう。だが年間を通して対戦していく同一リーグの選手に対してサービス精神全開で何でも教えてくれる選手は実際にはいない。中村剛也選手とジャイアンツの岡本選手のように、リーグが違う場合は話も変わってくるのだが、同一リーグの場合はやはり、技術面においてはヒントをもらえる程度に留まることが多い。

だからこそ筆者は、自主トレは同一球団の選手たちでやってもらいたいと常々考えている。例えば栗山選手がギャップヒッター候補を引き連れ、中村選手が大砲候補を引き連れて自主トレを行えば、ライオンズの若手打者陣はもっと速く成長していけるはずなのだ。

昨オフに関しては蛭間選手が栗山選手に付き、渡部健人選手が中村選手に付いた。確かにこの二人はまだまだ一軍レベルのレギュラーではないわけだが、それぞれ少しずつだが成長の跡を見せている。渡部選手にしても実際に中村選手の自主トレに参加した後は、やっている練習の次元が違う、というような言葉を残しており、本物のプロフェッショナルのレベルを知ることができただけでも大収穫だったはずだ。

そして外崎選手に話を戻すと、昨オフの外崎選手は気心の知れたかつてのチームメイト、浅村栄斗選手と一緒に自主トレをしていた。だが選手会長にもなった外崎選手は、今オフは浅村選手と自主トレをするよりも、ライオンズの若手クラッチヒッター候補を引き連れ、チーム外崎を結成して自主トレに挑み、チームメイトの底上げにも尽力してもらいたい。そのようなことを考えることも、選手会長の一つの職責とは言えないだろうか。

人間というのは追い駆けているだけではもう一段上の成長を遂げることはできない。なぜならば、追い駆けられる立場になって初めて見えるようになることが多いからだ。外崎選手にしてもいつまでも浅村選手を追いかけているようではダメだ。ライオンズの若手選手たちに追い駆けられる立場に自分を追い込んでいかなければ、いつまで経っても浅村選手を超えることなどできないだろう。

そして今まで浅村選手から教わって来たことを、今度は外崎選手がライオンズの若手選手たちに伝えていくことにより、外崎選手自身もその技術を今まで以上に深く理解できるようになるはずだ。だからこそ筆者は、外崎選手にもう一段上のレベルに到達してもらうためにも、今オフは追い駆ける立場ではなく、追い駆けられる立場で自主トレに挑んで欲しいと期待している。

今ライオンズに必要なのは日本版ポール・デポデスタ

さて、今日はライオンズファンの間でも大きな話題になっている通り、渡辺監督代行はDHを途中解除するという勝利への執念を見せた。オープン戦や短期決戦ではDH解除は時々行われる作戦であるわけだが、レギュラーシーズンでDHが解除されるのは非常に珍しい。

今日の試合では佐藤龍世選手がDHで四番に入っていたのだが、7回表に四球で出塁すると代走で奥村選手が起用され、7回裏からはその奥村選手が山野辺翔選手に代わりレフトに入ったことでDHが解除された。そしてDHが解除されたことにより、それまでレフトに入っていた山野辺選手の打順、八番にそのまま投手の名前が入ることになった。

山野辺選手は外野も守れるわけだが専門は内野であるため、外野の守備力という意味では確かに奥村選手の方が上だ。渡辺監督代行曰く、接戦になったためレフトを外野専任の奥村選手に代えておいた方が良いかな、という勝負勘が働いたとのことらしい。

このような勝負勘が戻って来た姿を見ると、これは来季も渡辺監督体制で行くことも真剣に考えていくべきだと言えるのではないだろうか。そうなるとGM兼任監督という立場になり、これは本当に激務となる。近年ではイーグルスの石井一久GMが兼任監督を務めていたわけだが、これは我々ファンが想像する以上に大変な兼任業務だ。

そのためもし仮に来季「代行」が取れて、渡辺久信GM兼任監督という形で再船出するのであれば、渡辺GMはよほど信頼できる右腕をGM補佐として重用する必要がありそうだ。そうなってくると候補となるのは潮崎哲也スカウトディレクターや、広池浩司球団副本部長あたりになるのではないだろうか。

もしくは今ライオンズはデータサイエンティストを2名公募しているわけだが、かつてオークランドアスレティックスのビリー・ビーンGMの補佐としてセイバーメトリクスによる球団強化法を確立したポール・デポデスタ氏のようなデータサイエンティストをGM補佐として起用するのも良い手だと筆者は考えている。

西武球団はアスレティックス同様に資金潤沢とは言えない球団だ。だからこそ西武球団はマネーゲームでチームを作るのではなく、かつてのアスレティックスのようにデータを最重視しながら低予算で勝てるチームを作る必要がある。そもそも野球とは数字のスポーツであるのだから、この数字というデータを活用しない手はない。

ちなみにセイバーメトリクスに関しては、デポデスタ氏がアスレティックスに持ち込んだ頃と比べるとは今は大幅にアップグレードされており、その数値はさらに緻密なものへと姿を変えている。そのデータを適切に読むことができるデータサイエンティストをGM補佐に付ければ、どの選手がどれだけの費用対効果でチームの勝利に貢献しているのか、ということをハッキリとした根拠を持って知ることができる。

そうすれば大枚をはたいても活躍できるか分からない選手を外から連れて来るよりは、はるかに低予算で勝てるチームを作れる可能性が高まる。筆者はプロ野球選手の記録に関しては疎い方なのだが、このようなデータに関しては強い関心を持っており、実際にプロコーチとしてもセイバーメトリクスなどのデータは頻繁に活用している。

渡辺GMにしても、「育成育成」と今までと同じことをやっていてももはや通用しないということが今季で分かったのだと思う。だからこそ今、一部球団よりはやや遅れてデータサイエンティストの公募を始めた。ちなみに多くのファンは西武球団は最新科学に対してまったく貪欲ではないと考えているようだが、実際にはそうではない。例えばバイオメカニクスチームを作ったのは西武球団はプロ野球の中でもかなり早かった。

だがあれもこれもと色々なことを同時に始めても仕方がないし、現場が混乱するだけだ。現在のライオンズはバイオメカニクスチームに関してはそれなりの地位を確立することができた。それができたからこそ来季以降は、データサイエンスを取り入れられる余裕が出て来たと考えるのが妥当だ。

これに関しては筆者は以前からこの場で幾度も書いているわけだが、ライオンズが生き残る術はアスレティックスがかつて取った道しかない。他球団は打率や本塁打の数字だけを見て大枚をはたいてFAで選手を獲得することができる。だが西武球団にはそれはできない。だからこそ札束ではなく、数字を武器にして戦うことで金満球団と対等に渡り合うしかないのだ。

あまりにも速いFAでの選手流出ペースにより育成が間に合わなくなって来た今、育成だけでチームを強化することはもはやできない。だからこそかつて三原脩監督が「超二流」という言葉を用いて万年最下位チームを僅か一年で日本一に仕立て上げた時のように、データ的に一芸に秀でた選手を上手く起用して戦うことで勝っていくしかないと筆者は考えているのである。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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