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2024年9月 2日公開

来季は背番号41を背負ってGM兼任監督として指揮を執ってもらいたい渡辺久信監督代行

野手の育成が間に合っていないのは渡辺久信GMの責任ではない

渡辺久信GM

ライオンズの今季Bクラスというのはもうすでに確定しており、今は順位の確定を待つのみの消化試合となっているわけだが、そうは言っても最下位から5位に浮上できる見込みはほぼない。今季は残り24試合となるが、早ければあと5試合程度で最下位も確定してしまうような状況だ。

そんな中、先日スポニチは渡辺久信GM兼監督代行の辞任が濃厚であるという記事を出した。これが何を根拠に出された記事なのは今となっては不明だが、恐らくは球団関係者の誰かが不確定要素をさぞ事実であるかのようにマスコミにリークしたのだろう。スポニチはスクープのようにこの記事を取り扱ったが、しかしこの内容に追随する他の有力スポーツ紙はほとんどなかったことから、スポニチの記事の信憑性はかなり低くなったと言える。

筆者個人としては渡辺久信GM兼監督の続投には賛成派だ。多くのライオンズファンは今季負けた原因を渡辺GMに押し付けようとしているが、正直なところ筆者はそのようには考えてはいない。ライオンズは元々育成に定評のある球団で、スター選手が抜けてもすぐにまた次のスターが生まれるという土壌があった。しかし今はそれが機能していないのである。

その理由は単純だ。主力打者のFAとポスティングによる流出ペースがあまりにも速かったことが原因だ。例えば清原和博選手が去って松井稼頭央選手が出て来た際や、松井稼頭央選手がメジャー移籍して中島裕之選手が出て来た時というのは、近年ほどFAによる流出は多くはなかった。そのためスター選手を失っても、次のスター選手を育成するだけの時間的余裕が十分にあったのだ。

しかしこの約10年は打者だけを見ても炭谷銀仁朗捕手、森友哉捕手、中島裕之内野手、片岡易之内野手、浅村栄斗内野手、脇谷亮太内野手、山川穂高内野手、秋山翔吾外野手と、これだけ多くの選手がFA移籍、もしくはポスティングによるメジャー移籍を果たしているのだ。

脇谷選手は話が別としても、他の面々はいずれも他球団で主力打者として活躍している。つまり近年のライオンズは、他球団にとってはマイナーリーグのような扱いになっているとも言えるのだ。しかしこれはまったく渡辺久信GMの責任ではない。GMの仕事は、与えられた予算の中でできる限り強いチームを作ることであり、渡辺GMはそれを全うして来た。

つまり渡辺久信GMが辞任したとしても、別のGMになった時に後藤高志オーナーがやはり財布の紐を緩めないようであれば、誰がGMを務めても、誰が監督を務めてもライオンズは変わらない、ということになる。それならばライオンズと親会社の現在を熟知している渡辺GMにそのまま再建を託した方が、あらゆる面でスムーズに事は運ぶはずだ。

新しい人物を連れて来て下手に衝突を生んでしまうよりは、筆者は渡辺久信GMにGM兼任監督として再建を託すべきだと考えている。そして穿った見方をすれば、そもそも今の西武球団の予算を知った上で来季の監督就任を快く引き受けてくれる実力者は皆無だろう。もちろん「一度は監督業をやってみたい」という人物であれば監督になってくれるだろうが、そのような実績や経験のない人物にライオンズを再建することはできないだろう。

育成しなくちゃいけない所だらけで育成が間に合わなくなった近年のライオンズ

さて、上述したようにスター選手が抜けてもまたすぐに次のスター選手が誕生していた頃というのは、FAで選手が抜けることも多くはなかったため、球団が「この選手は恐らくはあと1〜2年でライオンズを去るだろう」という判断をした場合、その後釜になれるような選手を二軍で英才教育していくことができた。松井稼頭央選手や中島裕之選手はまさにそれによってスターダムにのし上がった選手たちだ。

だが今は正捕手を育てなくちゃいけないし、リードオフマンも育てなきゃいけないし、和製大砲だって育てなきゃいけないし、外野手だって手薄だし、源田壮亮主将の後のショートも育てなきゃいけないしで、とにかくやることが多すぎるのだ。そのため指導に関してもどうしてもリソース不足に陥り、誰か1人2人だけを徹底して鍛え上げるというやり方ができなくなっている。つまり選手が抜けるペースが速すぎて、それに育成が間に合わなくなってしまったということだ。

ただ、今季で言えば渡部健人選手は二軍で徹底的にやってもらえている数少ない一人だとは言える。今季は調子が良い時でもなかなか一軍に上がってこなかったのは、今季に関してはもう怪我をせず、安定的に打てる実力を二軍でしっかり培って、来季は春季キャンプの初日からA班の主力としてやってもらうための下準備なのではないだろうか。

今季は明らかな長距離砲不足の中、二軍で打っている渡部健人が一軍に上がって来ないのはそう考えなければ不自然になる。ただ、渡部選手はプライベートがプロ野球選手として相応しい行動だと言えない面もあったため、そのあたりの再教育も二軍でなされているのではないだろうか。そしてプロとしてあるべき姿になったと球団が判断した時、満を辞してまた一軍に戻すことになるのだろう。

今季の二軍での起用法を見る限り、渡部選手は間違いなく次世代スターとしての英才教育が二軍でなされていると思われる。渡部選手のファームでの83試合の出場というのはライオンズの中では圧倒的な出場試合数で、ライオンズ野手陣の次点を見ても61試合のフランチー・コルデロ選手、59試合の陽川尚将選手となっており、出場試合数2番目のコルデロ選手よりも20試合以上多くイースタンの試合に出場している。

そして昨オフには中村剛也選手の自主トレにも参加している渡部選手だが、中村選手が二軍にいるうちに、最大限中村選手の打撃理論を学べる場としても、今季の渡部選手の長い二軍生活というのは将来のためには大きなプラスとなるはずだ。

現状では和製大砲の育成はまさに急務と言えるため、渡辺GMとしても焦ることなく、下でじっくりと育てたいという意図があるのではないだろうか。

世間ではマスコミもファンも野手の育成が間に合っていないと言ったり、ドラフト戦略が間違っていたと言ったり、とにかく今季の戦犯を探すことに躍起になっているように見える。しかし筆者は戦犯を探すことで時間を無駄にしたくはないし、できるだけ前を向いてこの場でもパソコンのキーをタイプし続けたい。もちろんよろしくないプレーに対しては厳しくも書くが、しかし基本的にライオンズ愛を感じられる選手に対しては、筆者はライオンズ愛なしに何かを書くことは絶対にしない。

確かに今季のライオンズは歴史的大敗を喫しているわけだが、しかし5位と僅差の6位でも、5位から17ゲーム差の6位でも、6位は6位だ。最下位という結果に違いはない。確かに最下位という結果はファンとしては非常に悔しいわけだが、しかしこの状態が2年も3年も続くとは思えないし、さすがにこの結果を見て親会社が何も変わらないということもないはずだ。そのため筆者は、ここまで負けたことはある意味では親会社と球団が変わる良いきっかけになると考えている。

渡辺GMの辞任は筆者個人としてはないと考える理由

さて、ではなぜFA流出が続いたかと言えば、それは決して渡辺久信GMに交渉力がなかったからではない。これはひとえに西武球団の、選手に対する魅力が低いためだ。まずやはり大きかったのは、渡辺久信GM以前の前球団本部長2人、前田康介氏と鈴木葉留彦氏が、選手の心を逆撫ですることばかりを契約更改の場で口にし、それに嫌気が差してFA移籍してしまった選手がいたことだ。まずこの2人が選手がFA移籍したがる土壌を作ってしまったというのが問題だ。

そして最も大きかったことと言えば親会社の再建だ。ライオンズの親会社である西武鉄道(現西武ホールディングス)は2004年に証券取引法違反が発覚し、その後上場廃止に追い込まれてしまった。それによりライオンズのために組める予算も大幅に削減され、以降の球団本部長は本当に大変な思いをされたと思う。だがそれと選手の心を逆撫ですることとは話が別だ。

なお2004年に球界再編問題が起こった頃、実は西武鉄道はライオンズを売却しようとしていた。その売却先はライヴドアなど複数の企業が候補に上がっており、実際に交渉は進められたものの、西武ドームを使い続けることを条件としたため交渉がまとまることはなかった。

確かに西武鉄道としてはライオンズが西武沿線から離れてしまうと大きな収入減となってしまうため、それだけは避けたいところだったわけだ。このように、実は一度は西武はライオンズを切り捨てようとしていたのだ。だが堤義明前オーナーが逮捕されると、みずほ銀行から出向して来た後藤高志オーナー代行はライオンズを西武から切り離すことは絶対にないと宣言した。このように当時の後藤オーナー代行より、所沢の西武ライオンズは守られたのである。

しかしその後も苦難は続き、一時期西武ホールディングスの大株主となっていたいわゆるハゲタカ企業と呼ばれるサーべラスは、ライオンズを売却すべきだという提案を繰り返した。それでも後藤オーナーは決してライオンズを切り離すことはせず、結果的には西武HDが再上場を果たして株価が上がったことで、サーべラスは西武HDの株式を手放してくれた。

その後は西武鉄道から西武HDへと変わっていた親会社の経営も少しずつ軌道に乗っていき、今年に関しては最高益を出すまでに企業としての復活を遂げている。この流れがあったからこそ、昨オフは2億円のヘスス・アギラー選手、1億5000万円のアルバート・アブレイユ投手、1億円のフランチー・コルデロ選手、7500万円のジェフリー・ヤン投手を獲得することができた。残念ながらアギラー選手とコルデロ選手に関しては今季は機能しなかったわけだが、しかし後藤高志オーナーがライオンズの勝利のために無策だったというわけではなかった。

確かにソフトバンクの孫正義オーナーやオリックスの宮内義彦前オーナーと比べると、後藤高志オーナーの野球熱は高いとは言えない。しかし西武HDの現状を弁えながら、出せる範囲で最大限出すということはしてくれているため、筆者個人としてはライオンズファンとして後藤オーナーには大変感謝している。

さて、もう一度ライオンズの話に戻すと、ライオンズの新体制に関する構想はすでにこの夏の時点で始まっている。公にはあくまでも「シーズンが終わってから」と皆口を揃えるが、しかしシーズンが終わってから始めても遅すぎるため、実際にはすでに来季の人選はとっくに始まっていると言って間違いない。

そして渡辺久信GMは先日、アギラー選手に対し「術後の状態を見て来季の再契約を検討する」という旨のコメントをされていた。もし渡辺GMが辞意に向けて心が傾いていたならば、このアギラー選手に対するコメントもまた違ったものになっていたはずだ。だが渡辺GMはあくまでも秋に自分で見て判断をする、という趣旨の言葉を残したため、これはあくまでも筆者個人の推測でしかないのだが、来季は渡辺久信GM兼任監督としてライオンズの再建に取り掛かるのではないだろうか。

そもそも、渡辺監督代行が就任した時点で、誰も今季中にライオンズが完全に蘇るとは思っていなかったはずだ。このチームの再建には数年はかかるだろうというのが常識的な見解であり、渡辺GMにしてもそれだけの期間を踏まえた上での「野球人生をかける」という発言だったはずだ。

さすがにすでに沈没状態にあったライオンズの、シーズン残り僅か4ヵ月という期間だけに野球人生をかけるというのは考えにくい。だとすればやはり、野球人生をかけて来季以降もGM兼任監督としてライオンズに厳しさと強さを取り戻しに行くと考えた方が自然だ。

そして西武球団にしても、「GMしかいない」、という言葉で渡辺GMに監督代行を託したのだから、4ヵ月で辞任に追い込むのではなく、2008年の再来を期待してシーズン途中からではなく、もう一度最初から渡辺久信という男にライオンズの再建を託すべきだ。少なくとも筆者はそれが最善であると信じてやまない。

また、現在背番号41を背負うルーキー成田晴風投手が怪我によりしばらくプレーできないことを考えると、背番号41は来季の渡辺久信監督が背負って指揮を執るべきだと筆者は考えるわけだが、果たして読者の皆さんはこれについてはどう思われるだろうか。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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