2024年8月26日公開
今季の外国人選手問題は本当に悩ましい。そろそろ来季に向けて外国人選手構想を練っていかなければならない時期に差し掛かっているわけだが、まず現時点で残留がほぼ確実なのはアルバート・アブレイユ投手のみだと言える。ジェフリー・ヤン投手も防御率は5.61という数字ながらも、奪三振は25回2/3で30個となっているため、制球面での成長が期待できればやはり残留は濃厚だと言えるだろう。
なおアブレイユ投手に関してはイーグルス則本投手の26Sを、5S差の21Sで追いかけている。今季のライオンズで今井達也投手の奪三振と並び、数少ないタイトル争いに加わっている選手であることを考えれば、よほど法外な年俸アップを要求してこない限りはアブレイユ投手の残留はほぼ確実だと言えるだろう。ただし、ホークスとの相性が非常に悪く対戦防御率は5.14となっている。来季も残留ということになれば、今オフはこの数字を改善するための対策が必要になって来るだろう。特にみずほPayPayドームでは4試合で防御率12.00となっているため、もしかしたらこの球場のマウンドの傾斜などがアブレイユ投手に合っていないのかもしれない。
また、今季途中に育成から支配下契約に切り替わったアンソニー・ガルシア選手の育成時代の年俸は400万円だった。支配下契約となった際にこの額は多少上がったとは思うのだが、それでも1000万円を越えているということはないはずだ。この格安年俸を考えると、仮に今オフこの年俸が2000万円に上がったとしても契約は更改されることになるだろう。
アブレイユ投手、ヤン投手、ガルシア選手が来季残留となっても不満を抱くファンはほとんどいないと思われる。しかし悩ましいのはヘスス・アギラー選手とフランチー・コルデロ選手だ。この二人に関しては、現状ではまだ何も決まっていないと思う。数字だけを見れば解雇相当とも言えるわけだが、しかしチームや日本の野球に馴染もうとする姿は見ていて本当に清々しいし、このような人柄の選手たちにライオンズを強くしてもらいたいとも思う。
現状ではアギラー選手、コルデロ選手の残留の可能性は五分五分だ。どちらに転がるかはまだ分からない。まずアギラー選手に関しては足首次第だろう。先日アメリカで足首の手術を受けたわけだが、そこから実戦復帰までは2ヵ月を要すると言う。つまり今シーズンはもう復帰することは事実上できず、早くても秋季キャンプからということになる。
渡辺久信GMも、秋季キャンプで動きを見てからアギラー選手と来季も契約するかを決めると話している。また、守備に関しては高く評価されているため、この守備力を買っての契約更改も十分にあり得るだろう。
一方のコルデロ選手の守備力は非常に低い。今季は一軍ではレフト、二軍ではレフトとファーストとして出場する機会が多くなっているわけだが、コルデロ選手の場合は一軍ではやはり指名打者で起用すべきだろう。そして二軍では一時期3割弱まで打率を上げてきており、日本野球に対するアジャストもかなり進んでいると見ることができる。ただし来季も残留かと問われれば、少なくとも現段階では上述の通り五分五分としか言えない。
恐らく半数以上のライオンズファンはアギラー選手とコルデロ選手の残留にはノーと言うだろう。しかし先に言っておくと筆者個人としては残留させて欲しいと考えている。まずアギラー選手に関しては、春季キャンプの時点で足首に違和感が出ており、開幕後はそれを堪えながらのプレーとなっていた。そして堪えながらプレーしていたことで違和感が痛みに変わってしまい、症状を悪化させてしまうことになった。
最近のプロ野球選手は違和感という言葉を使って簡単に試合を休むことが多いのだが、筆者はそのような選手はあまり好きにはなれない。もちろん怪我をしてまで試合に出続けろとは言わないが、しかしちょっとやそっとの違和感くらいで試合を休むそのことには違和感を覚える。だがアギラー選手は、その違和感に関しては首脳陣も把握していたという状況で、開幕後も試合に出続けるという判断を下した。これは近年稀に見る闘志溢れる選手の姿であり、渡辺GMもそのようなアギラー選手の姿勢は高く買っているはずだ。
黄金時代のライオンズでは、例えば辻発彦選手は軽い肉離れであれば脚をテーピングでグルグル巻きにして試合に出続けた。当時の選手たちにはそのようなことができ、さらにはそこから怪我を悪化させることなくシーズンを駆け抜ける体の強さがあった。今回のアギラー選手に関しては残念ながら足首は悪化してしまったわけだが、しかし強いチームを作るためにはアギラー選手のようなスピリットを持った選手が不可欠だ。
そしてアギラー選手についてもう少し考察していくと、春季キャンプの時点で首脳陣はアギラー選手の足首の違和感を把握しており、それを承知の上で開幕から四番起用を続けていた。それに対する責任も少なからず渡辺GMは感じているはずだ。だからこそファームでも試合に出ることができていない現状でもアギラー選手を簡単に解雇するのではなく、回復次第で来季の契約も考えたいとコメントしている。
アギラー選手は今季はあまり積極的にバットを振りにいくことはなかったわけだが、もしかしたら足首への不安がそうさせていたのかもしれない。もちろんメジャー時代もボールをしっかりと見ていく打者ではあったが、しかしライオンズでプレーをする姿を見ていると、追い込まれるまでは甘いボールでも見逃してしまうことが多かった。
筆者個人としても思うわけだが、渡辺GMも万全な状態のアギラー選手の打撃を見てみたいという気持ちがあるのだろう。そしてもし春先の違和感の内にストップをかけて完治を優先させていれば、という負い目もあり、アギラー選手に対して厳しいコメントを残すことはせず、逆に高い評価をしているという旨のコメントを残しているのかもしれない。
なお昨季は年俸2億7000万円の山川選手がまったく働かなかった。そしてこの選手の行動はチームを崩壊させ、ファンのライオンズ離れをも加速させた。一方アギラー選手の今季の年俸は推定2億1000万円であり、同じようにシーズンの大半で試合に出ることはできなかった。しかしライオンズというチームやライオンズファンに与えたプラスの影響は計り知れない。
もしアギラー選手が万全な状態で打てなかったというのであれば当然それは解雇となるだろう。だが日本野球やライオンズを最大限リスペクトし、紳士を絵に描いたような姿を見せ続けてくれた。しかも足首の違和感を押して試合に出続けたというタフなスピリットは、ライオンズの若手選手たちも見習っていくべきだ。
このように考えていくと、もし手術により足首やその他フィジカル面で問題がないようであれば、筆者個人としては来季もアギラー選手と契約を結び、万全な状態でプレーをするアギラー選手を見てみたいという気持ちが強い。だが情だけではプロ野球は成り立たない。もし術後の経過に不安があったり、来季また怪我をしてしまうようなことがあれば、その時は渡辺GMも情を挟むことなくバイアウトすべきだろう。だがそうでないのであれば、アギラー選手にはこの先もずっとライオンズの一員であり続けて欲しい。
さて、一方のコルデロ選手だが悩ましさで言えばアギラー選手を上回る。まず守備力に関しては非常に低く、プロの中では最低レベルをも下回るのかもしれない。そして期待されたバッティングでもなかなか打球が上に上がらず、二軍でも59試合で5本塁打、48打席に1本の割合でしかホームランは出ていない。ちなみに一軍では1本だ。
コルデロ選手に関しても来季残留の可能性は十分にあり得ると考えられる。しかしそのためには年俸の大幅減額は免れないだろう。今季の推定年俸は1億円であるわけだが、野球協約上では1億円以上の場合の減額制限は40%、1億円以下の場合は25%と定められている。さて、未満という言葉が使われていないわけだが、コルデロ選手の1億円という年俸は、果たして1億円以上になるのだろうか、それとも1億円以下になるのだろうか。もうこの点からして実に悩ましい。
仮に1億円以下に入るのだとすれば来季の年俸は7500万円までしか下げることができないわけだが、7500万円+インセンティブという契約であれば、コルデロ選手の残留もありだと思う。ちなみにアギラー選手の今季の年俸は2億1000万円であるため、最大40%まで減額することができ、その場合の年俸は1億2600万円となる。
コルデロ選手にしてもアギラー選手にしても、残留するにしてもやはり年俸次第ということになるだろう。そしてコルデロ選手の場合、なかなか一軍に上がれないこの状況であってもまったく腐ることなく日々頑張ってプレーしてくれている。外国人選手の中には二軍降格さえも受け入れない選手がいるわけだが、そういう意味ではコルデロ選手は二軍でも真摯に野球に向き合い続けている。
このような姿は若手選手たちの手本にもなるため、もしコルデロ選手側に減額を受け入れる用意があるのであれば、残留は十分にあり得るだろう。そして現状で考えると、渡辺GMはアギラー選手の足首の回復が芳しくなかった場合の代役一塁手として、コルデロ選手の存在に保険をかけているということも考えられる。
つまり、来季また日本未経験の新外国人選手を連れてきて同じ状態になってしまうよりは、少なくとも今季日本の野球を一年間経験しているコルデロ選手のアジャスト能力に期待した方が確率は良いということだ。また、コルデロ選手は二軍ではファーストに入ることも多く、この辺りももしかしたら来季の起用法を想定してのことなのかもしれない。さすがにコルデロ選手のレフトの守備に関しては危なっかしくて見ていられない。ちなみにそれについてはガルシア選手も同様だ。
一番の理想としては、アギラー選手とコルデロ選手、さらにはガルシア選手も残留させながら、あと1人年俸1億円前後の外国人打者を獲得することだ。しかしアギラー選手とコルデロ選手には球団経営的に高額年俸を払うべきではないと考えるライオンズファンも多くいると思う。だがもし秋山翔吾選手、浅村栄斗選手、森友哉捕手、山川穂高選手の全員が今なおライオンズにいた場合、年俸の総額は現状よりも遥かに高額となる。それを考えるとアギラー選手とコルデロ選手を残留させる経営体力が西武球団にないということは考えられない。
なおライオンズの親会社である西武ホールディングスは、3日前の8月23日に2015年以来の株価高値を更新しており、営業利益も前年比で36%増加している。さらに言えば四半期純利益も71%増となっており、西武ホールディングスの経営体力はかなり戻ってきていると言える。もちろんソフトバンクやオリックスのような金満振りとまでは行かないだろうが、しかし今後は選手の活躍次第では今まで以上に年俸が上がっていくことにも期待できるはずだ。
親会社の業績がこのように上々であることを考えると、本来であれば今季しっかりと活躍して選手たちは年俸を稼いでいかなければならなかった。だが残念ながら来季の年俸が大幅にアップすると思われる選手はごく僅かしかいない。今までにない出場試合数を稼いだ若手選手たちの多くはもちろん年俸は上がるのかもしれないが、しかしそれは微々たるものであるはずだ。
今オフは球団全体の年俸が下がることが見込まれる中、今までFAで多くの選手を失った補填をしていくためにも、来季は外国人打者4人体制でも良いと思う。そしてもし4人目がドラゴンズのダヤン・ビシエド選手のように日本人選手扱いとなっていれば最高だと言える。