2021年12月21日公開
ライオンズの黄金時代は1994年に終焉を迎えたとされている。そして1995年からは東尾修新監督の下、黄金時代を築き上げたほとんどの選手がライオンズを去ってしまった状態で、新たなチーム作りが始まっていった。しかしそれでもライオンズには常に絶対的エースの存在があった。
絶対的エースとは、エース対決で負けないピッチングができ、日本シリーズなどの短期決戦でチームを勝たせられる投手のことだ。西武以降の絶対的エースの名を挙げていくと、東尾修投手、工藤公康投手、渡辺久信投手、郭泰源投手、石井丈裕投手、西口文也投手、松坂大輔投手、涌井秀章投手という流れになる。
菊池雄星投手もタイトルを獲るような活躍を見せてくれたが、やはり上位チームに対してまったく勝てなかったという意味では絶対的エースと呼ぶことはできないだろう。
ライオンズは涌井投手が去って以来、絶対的エース不在という時期がずっと続いている。これもやはりチーム防御率が長年低迷している大きな原因だと言える。
そして今、髙橋光成投手がエースの階段を登りつつあるわけだが、まだまだ絶対的エースと呼べる段階には至っていない。もちろん開幕投手であったわけで、エースと呼ぶべきなのだと思う。だが絶対的エースかと言われれば、まだそうではないと言うべきだろう。
髙橋光成投手の今季の防御率は3.78で11勝9敗という成績だったのだが、仮に3回自責9と大炎上したスワローズ戦の登板がなければ、防御率は3.37となっていた。3.78という数字はエースと呼ぶには相応しくない数字となってしまうが、3.37であればあと一息でタイトル争いに加われるような投手になっていける。
髙橋投手は調子が良いと本当に素晴らしいピッチングを続けていくのだが、まだ時々不安定になってしまうことがある。いわゆる安定感を欠き、調子が悪くても試合を作る技術においてまだ未熟さが残っているということだ。だがこれに関しては髙橋投手は来年の2月でまだ25歳であり、経験を積んでいくうちに調子が悪くても試合を作ることのできる技術を磨いていけるはずだ。
ちなみに今季に関しては、髙橋投手は9〜10月にかけて一気に調子を落としてしまった。これが疲れから来るものだったのかは分からないのだが、しかし真のエースを目指すのであれば9〜10月に調子を落とすのは致命的だ。
CSや日本シリーズがある10月に最高のピッチングパフォーマンスを発揮できるのが、絶対的エースになるための絶対的条件となる。例えばいくらレギュラーシーズンで15勝をしたとしても、CSや日本シリーズでまったく活躍できなければエースとしての資質が問われることになってしまう。
あくまでも日本一になることを目指していくのならば、髙橋投手は来季は、どうのようにして9〜10月にピークを持っていくのかということを考えていく必要がある。また今季のように9〜10月に息切れしてしまうようでは、ライオンズも日本一になることはできないだろう。
ライオンズが2008年以来の日本一に返り咲くためには、髙橋光成投手にもう一段二段レベルアップしてもらわないと難しい。今季の髙橋投手は3〜4月、5月、6月、7月、8月、9月、10月という7タームで大まかに見ていくと、6月、9月、10月という3タームで不調だった。つまりシーズンのだいたい42%の期間を不調の状態で過ごしてしまったということになる。
この42%という大まかな数字を10〜20%くらいにしていかなければ、真のエースと呼ばれることはないだろうし、タイトル争いに加わることも難しくなるだろう。つまり「チームの勝ち頭」というだけの、チーム内だけのエースという立ち位置で終わってしまう。
上述した絶対的エースたちの名をもう一度見返してもらいたい。全員がタイトルホルダーだ。しかし髙橋投手はリーグワーストの数字はこれまで何度も記録しているのだが、タイトル争いに加わったことはまだ一度もない。ここが髙橋投手の分岐点になっていくのだろう。
もし来季タイトル争いに加わる活躍を見せることができれば、いよいよ西口文也2軍監督の後継者として、再び背番号13を輝かせることができるだろう。そしてそうなった時、髙橋光成投手はエースの階段を登り切り、今度は絶対的エースの階段を登り始めていくのだと思う。