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2023年11月22日公開

FA宣言の山川穂高選手が最もダメージが大きくなる時期に逆襲される可能性

山川選手を残しても出しても批判されかねなかった西武球団

前途多難、山川穂高選手のFA宣言

「野球人生を奪われるほどの事件ではない」と言い切る元プロ野球選手である解説者も複数人いるようだ。だが筆者はこの意見には同意しかねる。事件がしっかりと解決したのであれば話は別だが、不起訴になったとは言え示談は成立していないし、そもそも山川穂高選手側に示談という選択肢がないようだ。

そして西武球団からは無期限の公式戦出場停止処分(移籍すれば解除)が下されている。そんな中山川選手は、締め切り当日の夕刻という時間帯に、弁護士を介してFA申請書類を西武球団に提出した。筆者は示談を成立させる気のない山川選手にはライオンズを去って欲しいというスタンスなのだが、西武球団も同様であるようだ。

まず西武球団は山川選手に対し、年俸大幅減額での1年契約を提示したと報道されている。だがこれは西武球団が山川選手を慰留したというわけではない。もしここであっさりと解雇してしまえば、一部のライオンズファンの怒りを買いかねないからだ。

逆に山川選手に対し好条件を提示したならば、また別のライオンズファンが球団に対し怒りを抱くことになる。特に女性に関しては山川選手に対しアレルギー反応を示しているファンが多い。

このように残しても解雇しても批判されかねない板挟みという状況の中で、西武球団は大幅減額による1年契約を提示し、「この契約内容に納得できないのならどうぞFA移籍してください」という無言のメッセージを送った。山川選手がFAで自ら出ていくのであれば、球団が叩かれることもなくなる。これは球団社長と渡辺久信GMの苦肉の策だったと思う。

事件を起こした山川選手に対し態度を軟化させているソフトバンク球団

山川選手はまだ夏の時点でチームメイトに対し「俺は来年ここにはいない選手」という言葉を漏らしていたという。これが事実であれば、山川選手としてはどのような流れでFA移籍するのが自分にとってベストなのか、ということを代理人と共に画策していたはずだ。

その結果が、締め切り当日ギリギリになってからのFA宣言だった。そしてこのFA宣言に対し、非常に多くの西武ファンがネガティブな反応を示している。もう西武球団内に自分の居場所がないことは、山川選手自身が感じていたはずだ。そのためこのFA宣言は、「ギリギリまで悩みに悩み抜いて」宣言したものではない。このタイミングまで西武球団やファンに対し義理立てできる策が見つからなかったら、という結果だったのだと思う。

もし山川選手が、被害を受けた女性に対しもっと誠意を持った対応をしていれば、筆者自身の感情もきっと違っていたと思う。だが山川選手は最後まで被害者女性に対する気遣いは見せなかったし、女性に対し謝罪する言葉も発していない。そのため筆者は山川選手には早々にライオンズを去って欲しいというスタンスだった。

山川選手の元々の本命は、地元沖縄に近いホークスへのFA移籍だったのだと思う。これに関してはすでに、出来レースであるかのようにも報道されている。事件発覚当初はソフトバンク球団も山川選手の獲得には消極的だったと言われていた。その理由は王貞治会長が、山川選手の紳士らしからぬ対応に良い顔をしていなかったからだと伝えられている。

だがここに来てソフトバンク球団は、事件を球団なりに精査した上で獲得の有無を判断すると、姿勢を軟化させている。ホークスとしては来季は小久保監督元年であるだけに、最善の補強をしてV奪回を目指したいのだろう。そしてホークスとしては、喉から手が出るほど欲しいのが右のスラッガーだ。

しかし山川選手がライオンズと同じパ・リーグに移籍するのは果たして最善と言えるだろうか。ベルーナドームでのホークス戦で、山川選手が「おかえり!」と言われることはまずありえない。それならばライオンズファンが少ない地域である名古屋、セ・リーグのドラゴンズに移籍した方がまだファンが納得するのではないだろう。

ドラゴンズもドラゴンズで、ミスタードラゴンズを監督に据えながらも低迷を続けている。このあたりでしっかりと強打者を補強しておかなければ、立浪監督を見殺しにする形になり、ドラゴンズファンの不興を買うことになる。だが仮に山川選手を補強することができれば、中日球団もファンに対して勝とうとしている姿勢を見せることができる。

ちなみにジャイアンツを戦力外となった中島宏之選手は、ドラゴンズ入団が決まっているとすでに報道されている。ライオンズファンとしては中島選手には炭谷捕手と共にライオンズに帰ってきてもらいたかったわけだが、西武球団は中島選手に対しコーチ兼任選手としての契約を提示した。

だが中島選手は現役一本にこだわっており、選手としてのみオファーを受けたドラゴンズを選んだようだ。筆者個人としては山川選手が穢してしまったライオンズの背番号3を、中島選手によって蘇らせて欲しかったのだが、その希望はどうやら叶わなかったようだ。

「この程度」という言葉では片付けられない山川選手が起こした事件

契約内容次第にはなるだろうが、山川選手がFA宣言すれば複数球団が手を挙げる可能性がある。だが逆にソフトバンク球団のように独自に事件を精査した結果、獲得を見送る球団も出てくるはずだ。ソフトバンク球団にしても、精査した結果問題が解決されていないと判断すれば、山川選手を獲得することはないだろう。

つまり言い換えると、どこかは獲得に手を挙げるだろうが、逆に山川選手の獲得にどの球団も手を挙げないという可能性もある。そうなるともはや西武球団に居場所がない山川選手は、完全に浪人という形になる。

筆者個人としては山川選手は一度独立リーグなどでプレーをし、再度NPBを目指すべきだと考えている。それくらいのことをしなければほとんどのライオンズファンは納得しないはずだ。

一部のライオンズファンは「この程度のことで」というニュアンスで山川選手を擁護していたりもするが、山川選手は実際に女性に怪我を負わせたのだし、その女性の人生を大きく傷つけている。そのような事件を「この程度」と言える人々の神経を筆者は理解することはできないし、したくない。

山川選手にとって最もダメージが大きくなる逆襲を仕掛ける時期

西武球団の正直な感想としては、「ようやくFA宣言してくれたか」という感じではないだろうか。少なくともここまでライオンズ関係者の中で山川選手の残留を望むコメントを出している人間は一人もいない。これが現実だ。

ライオンズはもはや山川選手を必要とはしていない。そもそも「示談をしてすっきり事件を解決しよう」と山川選手を説得していたのは西武球団と球団顧問の弁護士で、それを突っぱねて西武球団とは無関係の弁護士を雇って勝手に行動をしたのは山川選手だ。そんな山川選手にこれからもずっとライオンズでプレーして欲しいと願う球団関係者などいないだろう。

筆者個人としては、もう山川選手のプレーなど見たくはない。しかも示談をしていない時点で、今後被害者女性から民事訴訟を起こされる可能性もある。ソフトバンク球団が独自に精査したいと言っているのは恐らくはこの点ではないだろうか。

もし被害者女性が今後民事訴訟を起こす可能性が高いと判断されれば、ソフトバンク球団は山川選手を獲得することはしないだろう。ここまで被害者女性の方は静観状態にあるようだが、しかし山川選手のFA移籍の話題が大きくなって来れば、そのタイミングで逆襲を仕掛ける可能性は否定できない。そしてそのタイミングで逆襲を仕掛ければ、最も大きなダメージを山川選手に与えられるということは十分知っているはずだ。

山川選手としては、FA宣言をすれば必ずどこかが手を挙げてくれるという勝算があったからFA宣言をしたのだろうが、しかしその読みはやはり、事件を起こした行動同様に甘いように思える。いくら金満球団と呼ばれるソフトバンクと言えど、わざわざ訴訟中の選手を獲得することはしないだろう。そもそもそんなことを王貞治会長が許すはずがない。

このように、残念ながら山川選手のFA宣言は前途洋洋とは行きそうにない。野球を辞める必要はないと思うが、「プレーで信頼を取り戻したい」というような甘いことを言っているうちは、山川選手はやはり独立リーグや台湾、韓国など、NPB以下のリーグからやり直すべきだ。

もしそこから這い上がってくるのだとすれば、山川選手に対しアレルギー反応を示しているファンの気持ちも少しは和らぐのではないだろうか。

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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