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2023年11月23日公開

炭谷銀仁朗捕手の6年振りライオンズ復帰がもたらす大きなアドバンテージ

6年振りのライオンズ復帰が決まった炭谷銀仁朗捕手

6年振りにライオンズに復帰する炭谷銀仁朗捕手

6年振りに炭谷銀仁朗捕手がライオンズに復帰することになった。これは本当に歓迎すべきグッドニュースだ。筆者はこれまでに幾度か、ライオンズには若手捕手を底上げするためのベテラン捕手が必要だと書いてきたわけだが、炭谷捕手はまさにうってつけの存在だ。

今季1億円という高額年俸が響いてイーグルスからは戦力外通告を受けてしまったが、ライオンズにとってはこれは非常に大きな補強だと言える。本来であれば岡田雅利捕手がその役目を務めるべきだったが、現在岡田捕手はリハビリ中で、1軍に戻ってこられる目処はまだ立っていない。

そんな状況下で炭谷捕手がリリースされ、ライオンズは3,000万円前後の年俸でこの名捕手を獲得できることになった。まだ年俸は発表されてはいないが、これまでの通例から考えるとだいたい年俸は3,000万円前後になるのだろう。炭谷捕手の経験値を考えれば非常に格安だと言えるが、そこは複数年契約や出来高などによりサポートされるのだと思う。

戦力外を受けた選手とは言え、西武球団は炭谷捕手に複数年契約を打診しても良いと思う。それこそ栗山巧選手中村剛也選手のように。炭谷捕手には選手としてそれだけの価値がある。

炭谷捕手の加入によりイーグルス戦で得られるアドバンテージ

今季、ライオンズはバファローズ相手に8勝17敗と大きく負け越した。この負け越しが5位に低迷した大きな要因の一つとなっている。マリーンズに対しても9勝16敗と負け越しているが、バファローズ戦の場合は原因がハッキリしていた。それは森友哉捕手によってライオンズの情報がバファローズに流れてしまったという点だ。

森捕手は正捕手であったため、ライオンズ投手陣のすべての情報を持っていた。例えば「この投手はカウントが不利になると変化球を投げたがらない」とか、「こっちの投手はこの球種を2球続けることはない」とか、「あっちの投手は走者を背負ってクイックになると変化球ばかり投げたがる」などの情報だ。

このような投手陣のクセがすべてバファローズに流れてしまったのだ。そのため今季、ライオンズはバファローズに対し非常に不利な戦いを強いられることになった。

これはかつての正捕手である細川亨捕手がホークスに移籍した後も同じだった。細川捕手の移籍後は、ライオンズはホークスにカモにされることが多くなってしまった。昔から捕手の同一リーグへの移籍はチームにとって致命傷になると言われているが、ライオンズは二度もこの致命傷を受けている。

だが来季は、イーグルスの情報を豊富に持った炭谷捕手がライオンズでプレーすることになっている。イーグルスの投手陣がよほどの変化を見せてこない限りは、来季、ライオンズがイーグルスをカモにできる可能性は高い。

ただし細川亨捕手や森友哉捕手のように、炭谷捕手はイーグルスではフル出場に近い状態での活躍はしていない。そのためアドバンテージとしてはやや劣ることも考えられるが、いずれにしてもある程度イーグルスの内部情報を持って戦えるのはライオンズにとっては大きな武器となる。

昔から捕手はグラウンドの頭脳と呼ばれているが、その頭脳を流出させるか、流入できるかによってペナントレースの結果は大きく変わってくる。

しかし1998年にライオンズが中嶋聡捕手をオリックスからFA獲得した際は、このアドバンテージを生かすことはできなかった。なぜならこの時オリックスを率いていたのは名将仰木彬監督だったからだ。仰木監督は中嶋捕手によってライオンズに流れるであろう情報を上書きしていき、ライオンズにアドバンテージを与えることを許さなかった。

その結果、1998年のライオンズはオリックス相手に12勝14敗と負け越している。これは中嶋捕手がもたらした情報が機能しなかった現れだ。

だが来季のイーグルスを率いるのは若き今江敏晃監督だ。この青年監督にはまだ、仰木彬監督のような経験値はない。そう考えると炭谷捕手がもたらしてくれるであろう情報は、かなり高い確率でアドバンテージとして機能するはずだ。

炭谷捕手の加入で一気にレベルが上がるライオンズの正捕手争い

炭谷捕手にはもちろん正捕手を張るくらいの活躍をしてもらいたいが、しかしチーム事情としては炭谷捕手を正捕手として起用することはできない。もちろん来季37歳という炭谷捕手の年齢もあるが、それ以前にライオンズは正捕手として古賀悠斗捕手柘植世那捕手の育成を急がなければならない。

現時点では柘植捕手の怪我もあり、正捕手争いは古賀捕手が一歩リードしている。だが怪我さえなければ柘植捕手のプレーには安定感があるため、正捕手争いの行方はまだまだ分からない。

そしてこの正捕手争いをさらにレベルが高いものにしていくためにも、炭谷捕手の獲得は非常に大きなプラスとなる。古賀捕手・柘植捕手の若さに炭谷捕手の経験値が加われば、ライオンズの捕手陣は一気に底上げされることになるだろう。

今季、古賀捕手はリーグトップの盗塁阻止率をマークしたり、日本代表にも選ばれるなど、飛躍の年となった。それを悔しい思いで見ていたのが柘植捕手であり、リハビリを終えた後は柘植捕手も虎視眈々と正捕手の座を狙っていくはずだ。

炭谷捕手が柘植捕手をサポートすれば、古賀捕手はもっと頑張らなければならなくなる。そして頑張るために炭谷捕手に助言を求めることもするだろう。そしてまた一歩リードすれば柘植捕手もさらに上を目指してくる。この繰り返しによりライオンズの捕手陣は一気にレベルアップすることが予想される。

時代は変わっても、やはり強いチームには名捕手の存在がある。かつてライオンズの名捕手として鳴らした炭谷捕手の加入により、近い将来古賀捕手と柘植捕手が名捕手と呼ばれるようになれば、ライオンズの戦いはもっと安定感を増していくはずだ。

昨季までの正捕手であった森捕手は、お世辞にも名捕手と呼ばれたことはない捕手だった。だが炭谷捕手は、かつての球界の名捕手たちが名捕手と呼んだ捕手だ。その経験値を受け継げるのだから、古賀捕手と柘植捕手にとってはとても幸せなことだ。

今季は5位という屈辱的な順位に沈んでしまったライオンズではあるが、来季はもちろん今季のような邪魔は入らず戦っていくことができる。投手陣は安定し、守備面ではセンターラインもしっかりとしている。あとは強打の外国人選手を獲得できれば、ライオンズは来季、間違いなく優勝争いに加わってくるはずだ。少なくとも筆者はそう確信している。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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