2024年1月17日公開
2024年ライオンズの正捕手争いは、昨季2023年以上に熾烈になりそうだ。昨季も古賀悠斗捕手と柘植世那捕手による熾烈な正捕手争いが予想されたが、残念ながら柘植捕手は怪我に悩まされることになってしまった。
しかしその怪我も癒え、今季は柘植捕手もしっかりと正捕手を狙いに行けるコンディションにあるはずだ。だが現状で僅かにリードしているのは古賀捕手だと言えるだろう。昨季は盗塁阻止率はリーグトップを記録しているし、日本代表のユニフォームにも袖を通した。それらの経験値が加わったことにより、まだ大差はないものの、古賀捕手が一歩リードしていると言って間違いはないだろう。
そしてこの若きふたりの捕手に加え、今季から炭谷銀仁朗捕手がライオンズに復帰した。炭谷捕手も「可能性は低いけど、全試合出場するつもりで行く」と宣言し、正捕手争いに名乗り出ている。
もちろん炭谷捕手が正捕手の座を奪回すれば、それはそれで素晴らしいことなのだが、しかしライオンズの将来を考えるとそういうわけにもいかない。やはり古賀捕手、もしくは柘植捕手にできるだけ早く一本出してもらわなければ困る。
さて、この様相は2003年前後のライオンズの状況と被っている。その頃のライオンズは野田浩輔捕手、細川亨捕手という二人が立て続けにライオンズ入りして正捕手争いを繰り広げながら、それを大ベテランであった名捕手伊東勤が脇から支えるという陣容だった。
そして今ライオンズでは古賀捕手と柘植捕手が熾烈な正捕手争いを繰り広げ、それを炭谷捕手がサポートしていくという形になっている。この再現を渡辺久信GMが狙って作ったのかは分からないが、もし狙ったのだとすれば渡辺GMの策士振りは見事なものだとしか言えない。
ちなみに2000年代前半から続いていた正捕手争いでは、最終的には細川亨捕手に軍配があがった。だが実際には細川捕手も野田捕手も、共に一軍レベルの素晴らしい捕手へと成長していった。今現在デッドヒートを繰り広げている正捕手争いからも最終的に勝者が出るかもしれないし、併用策が取られるのかもしれない。それは松井稼頭央監督次第ということになるが、しかしいずれにしても古賀捕手・柘植捕手共に高いレベルの捕手に成長していくことは間違いないだろう。
古賀捕手、柘植捕手共に、まだまだ完成された捕手ではない。古賀捕手は盗塁阻止率に関しては素晴らしい数字を残したが、キャッチングはリードにはまだ課題があると言われている。
一方の柘植捕手は、キャッチングやリードに関してはすでに平均値以上だと言われているが、出場試合数がまだ多くないこともあり、盗塁阻止率に関してはまだ未知数だと言える。
二人それぞれにストロングポイントとウィークポイントがあるわけだが、今季に関してはまだまだ併用という形になるはずだ。例えば比較的球速が遅くて走られやすい投手の場合は盗塁阻止率が高い古賀捕手と組ませ、投球術がまだ未熟な速球派投手の場合は柘植捕手にリードさせる、という併用のされ方も予想できる。
ただしリード面に関しては、この若きふたりは当然だがまだまだ炭谷捕手には敵わない。炭谷捕手は年齢により肩の衰えは見せているものの、リード面に関してはまだ球界トップクラスの知恵者だと評価されている。
「抑え捕手」という言葉を聞くと、最近では現バファローズ監督である中嶋聡捕手がファイターズ時代に務め、大昔で言えばドラゴンズ時代の大石友好捕手が務めていたという歴史が、プロ野球ファンの記憶には残っているかもしれない。炭谷捕手は恐らくは、時々はスタメンに名を連ねながらも、基本的には抑え捕手的な起用法になっていくのではないだろうか。
抑え捕手制が導入された場合、まだ今季の守護神は誰になるのかは分からないわけだが、例えばホークスから移籍して来た甲斐野央投手が守護神を務めることになった場合、炭谷捕手であれば160km/hのボールを打者に165km/hのように感じさせたり、フォークボールを頭の高さから地面スレスレまで落ちて来ると錯覚させることもできるだろう。
これらの錯覚を生み出すのが投球術となるわけだが、炭谷捕手はまさに投手陣全体の投球術をレベルアップさせられる名捕手の域に入って来ている。そのようなレベルにある炭谷捕手を、なぜ楽天球団が戦力外にしたのか筆者にはまったく理解できなかった。だがそれはライオンズにとっては幸運だった。
ライオンズには炭谷捕手意外にも、岡田雅利捕手という今年35歳になるベテランの存在もある。だが岡田捕手は現在左膝のリハビリを続けており、快方に向かって来てはいるが、一軍復帰となるとまだまったく目処は立っていない。
これがもし実績がまだ浅い若手選手が怪我をしているという状況であれば、恐らくは育成契約に切り替えられていただろう。だが岡田捕手はこれまでライオンズを長年支え続けて来た功労者であるため、渡辺久信GMも岡田捕手を育成契約に切り替えることはせず復帰を待ち続けている。これはまさに西武球団の岡田捕手に対するリスペクトだと言えるだろう。
そしてライオンズにはその他支配下の捕手としては野田海人捕手、古市尊捕手の二人がいる。だがこの二人に関しては、将来的にはもちろん伸びて来て欲しいわけだが、今季中に正捕手争いに加わる可能性はまだ低いと言える。
また、育成選手としては矢野翔矢捕手と、火縄銃こと是澤涼輔捕手の二人がいる。この二人に関しては、矢野捕手はトミー・ジョン手術からの完全復帰が待たれ、是澤捕手に関してはかなりの伸び代を持っているため、それを生かし一日でも早くプロレベルに到達することが望まれている。
実はライオンズの捕手はこれだけで、怪我でまだプレーすることができない岡田捕手を除くと、支配下選手が5人、育成選手が2人の合計7人しかいない。正捕手争いに関しては熾烈を極めているわけだが、捕手層ということになるとかなり薄い状況だ。
ただし一軍には佐藤龍世選手という、緊急時には捕手もできる内野手がいるため、よほど怪我人が続出しない限りは試合運営に支障をきたすことはないと思う。だが捕手陣全体の底上げということを考えると、やはり矢野捕手にはできるだけ早く支配下選手に戻って来てもらい、是澤捕手にもできるだけ早く支配下契約を勝ち取ってもらわなければ困る。
今年に関しては問題ないだろう。だが近い将来炭谷捕手や岡田捕手が引退してしまった時のことを考えると、今年のオフは捕手の補強を手厚くしておく必要があるかもしれない。そしてやや層が薄い捕手陣の将来を考えると、柘植捕手・古賀捕手の次の世代の捕手の育成も、常勝球団を作るためにはできるだけ早く始めておきたいというのが現状のライオンズの捕手事情と言えるのではないだろうか。