2023年12月13日公開
渡部健人選手が来季の四番奪取、ホームラン量産を目指して肉体改造を始めているようだ。この肉体改造が上手く行き怪我が減れば、渡部選手はきっと来季は年間を通して四番を打ち続けてくれるだろう。
だが気になったのは体重が2〜3kg落ちて現在の体重が116kgという点で、これが事実であれば肉体改造を始める前は119kgあったことになる。公称では176cm/115kgだったわけだが、実際にはそれよりも4kg重かったことになる。
だがそうだとしても、今オフからであったとしても、肉体改造の必要性に気付いて実際に取り組み始めていることは高く評価していいのではないだろうか。渡部選手自身、今季もつまらない怪我で好調を維持できなくなり悔しい思いも強かったろうから、来季に向けて一段と意識を高めたのかもしれない。
ちなみに176cmで119kgというのは、これは完全にウェイトオーバーだ。もしかしたらお母様がフィリピン人で、お父様が日本人といういわゆるハーフということで、純粋な日本人よりは骨太なのかもしれない。だとしても176cm/119kgでは満足に走ることはできないだろうし、運動による下半身への負荷はかなり大きなものになる。
これは筆者が繰り返し書いていることだが、渡部選手は何もほっそりする必要はない。だがせめて110kg以下まで絞っていかなければ、今後も下半身の怪我は絶えないだろう。渡部選手自身もそれに気付き、今肉体改造に励んでいるのだと思う。
ちなみに渡部選手は現在、瞬発力系を鍛える筋トレをしながら体脂肪率を下げる取り組みをしている。渡部選手の現在の体脂肪率は公表されていないため筆者には分からないが、少なくとも20%近くはあるのではないだろうか。
野球選手として望ましい体脂肪率は12%未満だとされており、そこと比較すると渡部選手は明らかにウェイトオーバーということになる。
そして体脂肪というのは筋肉と比べると同じ体積でもやや軽く、温度は低く、柔軟性も低く、神経系の伝達速度も低下させる。つまりアスリートとして体脂肪率が高いと瞬発系のパワーが高まりにくく、ウォームアップでも体が温まりにくく、柔軟性が上がりにくいことで怪我もしやすいということになり、体脂肪率が高くて良いことはアスリートにはないのに等しい。
一見太って見える力士であっても、横綱などの一流レベルになると体脂肪率は10%前後になるわけだが、渡部選手の場合は力士のようなポッチャリ体型とは言え、体脂肪率はさすがに10%ではないだろう。
さて、渡部選手が現在取り組んでいる瞬発力系の筋トレとは、いわゆるプライオメトリクストレーニングがメインになっているのだと思う。プライオメトリクストレーニングというのは筆者もクライアントであるプロアマ選手に指導することがあるのだが、まさに瞬発力や爆発力を高めるための筋トレだ。
ただバーベルを持ち上げるだけのトレーニングよりも、野球動作に繋がる筋トレであるため、渡部選手がこの瞬発力系の筋トレを選んだことはとても良いことだと筆者はプロの野球コーチとして捉えている。
このプライオメトリクストレーニングというのは、取り組んだことがある方であればよく分かると思うが、普通の筋トレよりもはるかに辛い。だがその分上述したような爆発力を得られるため、他競技であってもプライオメトリクストレーニングに取り組むアスリートは非常に多い。
渡部健人選手は来季は4年目で26歳となる。ドラフト1位でライオンズに入ったからには、そろそろ1軍で覚醒してもらわなければ困る頃だ。
だが渡部選手は非常に謙虚なのだろうか。来季は「最低でもホームランは二桁打ちたい」と話している。だがファンが見たいのは10本塁打ではなく、ホームランキング争いを争いをする渡部健人選手の姿だ。
もちろん渡部選手自身「10本打てれば良い」と考えているわけではないだろうが、渡部選手には来季は一年間ずっと四番に座り続け、打率.300、本塁打30本という数字をクリアしていってもらいたい。
大切なのはただ本塁打をたくさん打つことではない。高い得点圏打率をキープして、本塁打数を増やすことだ。ちなみに以前ライオンズで四番を打っていた山川選手はとにかく得点圏打率が低い四番打者だった。ホームランはたくさん打ったが、勝負どころでチームを勝利に導くホームランは、打った数からするとかなり少ない。
山川選手の場合はチャンスではほとんど打てず、ソロホームランや、得点圏まで走者が進んでいない状況でのホームランが多かった。この弱点を突かれて徹底的にマークされたのが二連覇した際のCSで、山川選手はホークス相手にまったく良いところを見せることができず、チームはリーグ二連覇を果たしながらも一度も日本シリーズに進むことができなかった。
渡部選手には、山川選手のような得点圏打率が低い四番になって欲しくはない。極端な話、ホームランキングになれなくても構わない。だがチャンスでの一打で試合を決められる四番打者になってもらいたい。そう、無冠の帝王とも呼ばれた清原和博選手のように。
清原選手は最後までホームランキングになることはできなかった。しかし走者を生還させるためのチームバッティングに関しては、ライオンズの歴代四番打者の中ではトップクラスの貢献度だ。
渡部選手には山川選手のような四番ではなく、清原選手のようにチームを日本一に導くことができる四番打者になってもらいたい。そしてシンプルに考えてもらいたい。ホームランキングにはなれたけど日本一になれない四番打者と、ホームランキングにはなれなかったけどチームを日本一に導くことができる四番打者の、一体どちらになりたいのかを。
もちろん渡部選手には将来的にはホームランキングになってもらいたいとは思うが、しかしそれ以上に期待したいのは、四番渡部選手の一打で決めるライオンズの日本一だ。これこそがファンが何よりも渡部選手に求めていることではないだろうか。