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2024年9月 1日公開

通算225盗塁のスピードスター金子侑司選手が惜しまれながらも引退を決意

先輩からも後輩からも慕われていた金子侑司選手の素晴らしい人柄

通算225盗塁のスピードスター金子侑司選手が惜しまれながらも引退を決意

金子侑司選手が今季限りで現役を引退することが決まった。これは非常に残念だ。金子選手は今季34歳となっていたわけだが、ファンの本音を言えば栗山巧選手中村剛也選手のような息の長いフランチャイズプレイヤーになっていってもらいたかった。

金子選手は2012年のドラフトで西武球団から3位指名されてプロ入りした。当時の背番号は大卒とは言えドラフト3位で2番を与えられたのだから、球団の期待もそれだけ高かったということだろう。その期待に応え金子選手は1年目から一軍で活躍し、4年目には53盗塁で盗塁王のタイトルを獲得した。

初めて盗塁王を獲ったこの年はシーズンの最終盤で右膝の裏を痛めてしまったわけだが、この膝裏痛がなければ、もしかしたら糸井嘉男選手との同時受賞ではなく、単独受賞も可能だったかもしれない。それだけに最後の最後で怪我をしてしまったのが非常にもったいないところだった。

だが金子選手はそれ以降も怪我に苦しむことが多くなった。初めて盗塁王を獲得した翌年には左脛を疲労骨折してしまい、盗塁数も半減してしまう。だがその怪我から見事に完全復活し、プロ7年目には二度目の盗塁王を獲得した。

近年は球界のスピードスターと言えば他でもないホークスの周東選手であるわけだが、ライオンズファンからすれば、金子侑司選手にこそ今の周東選手のような存在になってもらいたかった。打率は.260〜.270程度だったとしても、40〜50個の盗塁を決められる選手、金子選手はそのような活躍をするには十分な脚力を持っていた。しかも金子選手はスイッチヒッターという強みもあった。

そして二度目の盗塁王を獲得した2019年オフ、西武球団は金子選手に対し4年契約を提示した。年俸1億円とうい大台を越え、スター選手の仲間入りかとも思われた。しかし残念ながらそれ以降は年々打撃の成績が落ちていき、出場機会も若手選手に奪われることも多くなった。

そして打撃成績が落ちて来ると盗塁のスタートに対する精彩も欠いていき、2020年以降は脚力でかつての輝きを取り戻すことは最後までできなかった。もちろん金子選手は今でも瞬足と呼ぶに相応しい快足であるわけだが、しかし盗塁王を獲った頃と比べると、スタートに対する馬力や加速力の低下はやはり隠すことはできなかったようだ。

ちなみに筆者は今季の金子選手には大きな期待を寄せていた。なぜなら金子選手自身が憧れていた存在であり、かつて自らの背番号を背負っていた松井稼頭央監督に春季キャンプから徹底指導を受け、打力も復調傾向にあったからだ。実際今季序盤ではリードオフマンとして良い働きを見せられる機会も増えており、このままシーズンの最後まで行って欲しいなと思ったのをよく覚えている。

もし金子選手がリードオフマンとしてシーズンを通して機能することができれば、今季のライオンズもここまで苦しむことはなかっただろう。金子選手の活躍いかんでチーム状況も変わる、金子選手とはそれだけチームの勝敗に対する影響力を持った選手だったのだ。

盗塁王を獲った頃というのは、細い体で爆発的な加速力を見せ、本当に簡単に盗塁を決めているように見えたほどだった。もちろん実際には盗塁を決めることは簡単ではないのだが、それが簡単に見えてしまうほど金子選手の盗塁はスマートでありスタリッシュでもあったのだ。

やはり今から考えると、膝裏と脛骨の怪我の影響が大きかったのだろう。2年続けて脚を故障してしまったことで、バッティングでの根張りも盗塁での加速力も失われてしまったのだと思う。その結果金子選手自身がかつて語っていたように、盗塁に対する勇気を少しずつ失っていき、満足に盗塁をすることさえ難しくなってしまった。

よく「脚にスランプはない」と言われるが、これは嘘だ。脚にも守備にもスランプは間違いなくある。こんなことを言うのは大抵盗塁も守備も苦手だった元選手たちだ。だが走れる選手からすると、一歩目を切り出す勇気を持てなくなる時が誰しも一度や二度はあるものだ。金子選手もこの脚のスランプに苦しんた一人だと言える。

金子侑司選手は本当に素晴らしい選手だった。人柄も良いし、チームメイトたちからも慕われている。引退が発表された直後の今日の試合でも、平沼翔太選手が登場曲を金子選手の曲に変える一幕があり、その瞬間、打席に立っているのは平沼選手なのに、スタンドでは一斉に金子選手のタオルが掲げられていた。これは本当に泣ける場面だった。

さらには先輩である栗山巧選手も金子選手に対し餞別のコメントを残しており、このようなことから、金子選手は先輩にも後輩にも慕われていたことがよく分かる。活躍できていなかった一時は、街中で歩きタバコをしながら飲み歩く姿をスクープされ、「何やってるんだ!」と言われるようなこともしでかしたこともあったわけだが、今ではそんなことさえも懐かしく思えてくる。

金子侑司選手は、プロ野球選手の中でも飛び抜けて華のある選手だった。もし度重なる脚の怪我さえなければ、金子選手は日本代表の常連にもなっていただろうし、間違いなく全国区の人気選手となっていたはずだ。それだけに怪我だけが本当に悔やまれたわけだが、そうだとしても金子選手は本当に魅力溢れるスピードスターだった。これからはぜひライオンズのコーチとして次世代のスピードスターの育成に励み、将来的にはライオンズの名三塁コーチになっていって欲しい。

金子選手、生涯ライオンズを貫き、怪我に苦しみながらもこれまでライオンズのためにたくさんの貢献をしてくれて本当にありがとう!今季は空席も目立つベルーナドームでしたが、あなたの引退試合には間違いなくベルーナドームは満員御礼となるはずです。願わくば、ぜひその最後の場面で最後の盗塁を見せてください!

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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