2024年5月16日公開
今のライオンズの野手陣には一軍レベルの選手が非常に少ない。栗山巧選手、中村剛也選手、炭谷銀仁朗捕手という大ベテラン3人を除くと、間違いなく一軍レベルだと言い切れるのは源田壮亮主将と外崎修汰選手の守備だけではないだろうか。
トノゲンコンビの守備に関しては一軍レベルというよりも、一流レベルと言った方が適切だろう。だが源田選手の年俸は3億円、外崎選手が1億6000万円と考えると、二人とも年俸に見合った活躍をしているとは言えない。確かにこの2人の守備力は半端ではなく素晴らしいわけだが、ここまでの源田主将の打率は.252、外崎選手は.217という低空飛行だ。
この2人はそれぞれ現在複数年契約を結んでいるわけだが、それ自体は十分見合う契約だと思う。だが源田選手の年俸3億円というのはやや高すぎるのではないだろうか。栗山巧選手でさえも年俸の最高額は2億4000万円だった。確かにこれまで源田主将の守備で防げた失点は数限りないほどある。しかしそれを言えば奈良原浩選手の守備力も、源田主将と同水準だった。
奈良原選手の場合、ファイターズへの移籍1年目に128試合に出場して打率.280という成績を残している。しかし翌年の年俸は7400万円でしかなかった。確かに時代が違うと言えばそれまでであるわけだが、今季の源田主将の年俸は、その時の奈良原選手の年俸の4倍以上となっている。
繰り返し書くが、確かに源田主将の守備力は抜群だ。しかし近年.250〜.260台という打率の打者に3億円も出す価値があるかと問われれば、やや疑問だ。ただしこの金額は期待料も含まれているため、フロントも「源田選手ならこの額に見合う活躍をしてくれるはずだ」と考えての金額だったとは思う。
源田選手の場合は守備だけではなく、チームメイトへの声かけも積極的に行ってくれている。そういう意味ではリーダーシップに対する報酬も含まれており、もちろん守備だけに3億円を支払っているわけではない。だが3億円と言えば、球界でも日本人選手の中ではかなりの上位に入ってくる金額だ。そう考えると、源田選手にはもう少し打って走ってもらわなければ困るとも言えなくもない。
さて、ライオンズには一軍レベルの選手が非常に少ないと冒頭で書いたわけだが、まず古賀悠斗捕手に関しては他のコラムでも書いている通り、ブロッキングと配球面においてはとても一軍レベルだとは言えない。肩に関して盗塁を刺す能力が高いため評価できるわけだが、バッティングに関しては現時点では.299という高い打率を残しているが、昨季が.218だったことを考えると、現時点での打率を古賀捕手の実力だと評価するのはまだ早いだろう。そして柘植世那捕手に関しては出場試合数が少ないため、こちらもまだ評価できるような段階ではない。
内野手に関しては本来であれば渡部健人選手がクリーンナップを打つべきなのだが、今季は遅れて一軍登録されたものの、打撃不振であっという間に二軍に戻されてしまった。そして村田怜音選手はルーキーながらハッスルプレーでチームを盛り立ててくれていたが、残念ながら昨日の試合でフェンスに激突した怪我により、今日登録抹消となってしまった。
そして佐藤龍世選手に関してはエラーの多さは目立つものの、バッティングで取り返してくれれば良いというタイプの選手だ。ただ現時点での打率は.213と、開幕時の好調さはもう見られない。しかしそれでも出塁率は.317となっているため、選球眼は昨季に引き続き安定していると言える。この選球眼の高さは、ライオンズ野手陣の打撃面においては数少ない一軍レベルの能力だと言えるだろう。
外野手に関して言えば、ここまで金子侑司選手が予想以上に頑張ってくれている。開幕直後になかなか打てなかったこともあり、打率自体は現在.250、盗塁も3つにとどまっているが、この打率は上がって来ている中での.250であるため、最近の試合のように毎試合1本以上ずつヒットを打っていければ、交流戦くらいには.270~.280までは上がってくるだろう。金子選手の走力に関してはかつては一流レベルだったが、しかしベテランとなった今、走力にはかなりの陰りが見えている。
その他の若手外野手に関しては、若林楽人選手は1試合2本塁打を打ってパンチ力を見せるも、やはりまだ安定感に欠けるという意味では打力に関しては一軍レベルとは言えない。そして最近上がって来て好調を維持している蛭間拓哉選手に関しては、現在打率は.500となっているが、問題は.300前後の打率をどれだけ長く維持できるかだ。今は調子の良さもありヒットが続いているが、2ヵ月3ヵ月と安定して打ち続けてみなければ、やはり蛭間選手に関しても現時点で評価することは難しいだろう。
他の外野手に関しても打撃面で安定した働きを見せている選手は皆無だ。その中で出場試合数こそ少ないものの、本職は内野である平沼翔太選手がヒットを続けているのは評価できると思う。打率.300以上を打てとは言わないが、平沼選手が安定して打率.280〜.290あたりを打ってくれれば、これは戦力としては非常に大きな存在となるだろう。
ではなぜライオンズの野手陣から一軍レベルの打者が育ってこないのか?これは単純に打撃コーチたちの指導力によるところが大きい。嶋コーチにしろ、高山コーチにしろ優しすぎるのだ。ふたりともベンチで選手とニコニコしながら会話をしている姿がよく中継画面に映し出されている。
ちなみに筆者はユニフォームを着て監督・コーチを務めた際にはほとんど笑顔など見せなかった。これは選手に常に緊張感を与えるためにあえてそうしていたのだが、選手たちは「厳しい視線で見られている」ことを実感することで、より高い集中力を維持できるようになる。だが現在のライオンズのように選手たちが「温かい目で見てくれている」と感じている状態では、ミスしても次頑張れば良いという甘い考えが蔓延してしまう。
確かに野球にミスは付き物だ。しかしその1つのミスをした後、死に物狂いで特訓をして同じミスをしないように務めるのがプロ選手であるはずだ。だがライオンズの打者陣は近年、いつもいつも同じような打ち取られ方を繰り返している。
かつてのライオンズには土井正博コーチ、デーブ大久保コーチ、熊澤とおるコーチら、指導力も厳しさも兼揃えた名コーチたちの存在があった。だからこそ渡辺久信監督の時代までは、打者陣は次から次へと良い選手が育っていた。ライオンズもそろそろ内部昇格などではなく、一度外部から指導力と厳しさを兼ね揃えた打撃コーチを招聘すべきではないだろうか。
コーチの仕事は選手に好かれることではなく、選手に結果を出させることだ。それができていないのだから、嶋コーチ、高山コーチともに、やはり一軍レベルの指導力はないと言って差し支えないのではないだろうか。
これは少し前にも書いたことではあるが、さすがにそろそろ打撃コーチの入れ替えをすべき時期だと思う。二軍には小関竜也コーチ、フロントには田邊徳雄元監督がおり、彼らのうちどちらか一人でも一軍打撃コーチに加えていくべきだと思う。小関コーチが一軍に異動するのであれば嶋コーチ、高山コーチのいずれかを二軍に異動させ、田邊元監督が一軍に加わるのであれば、現状の貧打を考えれば打撃コーチ三人体制でも良いくらいだと思う。
とにかく選手たちの復調や成長をのんびり待っているだけでは、現状を打破することなどできるはずもない。何かカンフル剤となる手を打たなければ、このまま「たまに勝ってはまた連敗」というパターンの繰り返しになるだろう。チームとしては交流戦終了時までには負け越しをクリアしておかなければ、優勝どころかAクラス入りさえも難しくなる。
ライオンズが西武時代以前のパ・リーグのお荷物球団に戻ってしまわぬよう、渡辺久信GMには劇薬にもなるような手を打っておいて欲しい。それこそ内野守備走塁コーチとして伊原春樹氏を復帰させるくらいのことをしても良いのではないだろうか。それくらいのことをしない限り、今のライオンズが息を吹き返すことはないように思えて仕方がない。