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2024年6月 5日公開

リーダーシップを発揮しなければならない選手がリーダーになり切れていないライオンズ

東京ヤクルトスワローズ vs 埼玉西武ライオンズ/3回戦 神宮
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Lions 0 0 0 1 0 0 1 0 0 2 7 2
Swallows 0 0 0 0 0 5 0 2 0 7 8 0

継投●隅田知一郎平井克典ジェフリー・ヤン上田大河
敗戦投手隅田知一郎 3勝5敗0S 3.65
盗塁源田壮亮(4)
失策元山飛優(2)古賀悠斗(1)

打撃技術がまったく伴っていないライオンズの若手打者たち

埼玉西武ライオンズ

さすがに今日の敗戦は痛い。絶対に負けられない試合が続いている中、2カード連続での負け越しはやはり許されないし、更迭された松井稼頭央前監督に対しても示しがつかない。

今日まず書いていきたいのは7回表、相手ピッチャーの暴投で1点を取り、さらに満塁のチャンスが続いての代打長谷川信哉選手の場面だ。二死だったため、当然だが併殺崩れや犠牲フライによる加点は不可能で、この場面はヒットや四死球がなければ点を取ることはできない。

そのような場面で初球は外角いっぱいのカットボールで、長谷川選手はこれを空振りした。そして次にスワローズバッテリーが選んだボールも、ほとんど同じコースへのカットボールで、2球連続で同じボールを投げたことになる。だが長谷川選手は初球よりもわずかに甘いようにも見えた2球目のカットボールを打ち上げ、ファーストへのファールフライに倒れてしまった。

こう言っては失礼だが、2球連続で同じボールを投げてもらっても打てない長谷川選手の打撃技術は、一軍レベルではないと言える。しかも150km/hを超えてくるような高速カッターではなく、142km/hという平凡な速度のカットボールだった。いくら外いっぱいのコースだったとはいえ、まったく同じボールを2球連続で投げてもらい、その2球目を振りに行って仕留められないというのは、これはやはり技術不足だとしか言いようがない。決して相手投手が投げたボールが凄まじかったわけではないのだから。

やはりライオンズでは近年、良い打者がほとんど育っていない。打撃コーチにしても何を指導されているのかは分からないが、二軍で打ってこのように一軍に上がってきても、ミスショットを繰り返す選手ばかりだ。長谷川選手も今日の打席のようなミスショットを繰り返している限り、一軍に定着することはできないだろう。

そして7回に同じように満塁のチャンスで打席に立った佐藤龍世選手にも同じことが言える。佐藤選手も開幕時の好調さはもう見られないわけだが、この打席でも1-2と追い込まれていながら、外角低めのボールを見逃して三振に倒れている。

カウントが1-1であればまだ見逃すことができる難しいコースへのストレートではあったが、しかし1-2と追い込まれていたのだから、際どいコースは振っていくのが鉄則だ。佐藤選手の場合は初球のやや甘く入ったフォークボールを見逃し、1球ボール球を挟んで3球目は高めのボール気味のストレートを振って空振り。そして4球目で見逃し三振となった。

もちろん佐藤龍世選手だけではないのだが、ライオンズの打撃陣は初球の甘いボールを見逃して、それ以降の難しく入ったボールを打ちに行って凡退しているケースが非常に多い。このパターンは現在足首痛で登録抹消されているヘスス・アギラー選手もやはり同様だった。

野球というスポーツは、追い込まれるほど打率は下がっていく。ファーストストライクの打率が最も高く、1ストライク、2ストライクと追い込まれるたびに打率は下がっていく。これはイチロー選手であっても同様で、メジャーで首位打者を獲った年ですらその傾向があった。イチロー選手であってもそうなのだから、ライオンズの一軍半の打者たちならなおさらだ。やはりこのあたりは打撃を担当する嶋コーチ、高山コーチの指導不足である可能性が高い。

松井稼頭央監督誕生時に松井色をまったく出せなかったコーチ人事

西武球団は今、監督やコーチを育成していくプログラムも実施している。これはとても良い取り組みであると思う反面、思うように指導者が育って来ていないというのが実情だ。印象としては引退した選手をとりあえず抱え込み、順番にコーチ経験を積ませているようにも見える。これはまるでみんなに大臣をやらせてあげる政治の世界と同じだ。

指導者を育成したいのであれば、やはり二軍指導で実績を出した指導者を一軍に異動させるべきだ。嶋コーチに関しては2013年の引退後、一軍〜三軍までの指導を歴任してある程度のコーチとしての経験を積んできている。しかし一方の高山コーチは2014年の引退後、2021年に二軍打撃コーチを務めただけで2022年から一軍打撃コーチを務めている。この人選が報道された際に筆者は一抹の不安を覚えたものだが、蓋を開けてみるとやはり機能しなかった。

嶋コーチに関してはとにかく練習量が多いカープ出身なのだから、もっと選手にガンガン練習をさせても良いと思う。以前も書いたことだが、それこそ木村文紀選手のように手の皮がボロボロになるまでバットを振らせても良いのではないだろうか。だがもちろん振らせるだけではなく、ボールの待ち方や狙い球の絞り方に関してももっと細かく指導していってもらいたい。なぜなら上述した通り、ライオンズの若手打者たちの技術はまったく一軍レベルではないからだ。

高山コーチは現役時代は目立った活躍はほとんどしていないが、嶋コーチはカープ時代に首位打者を獲り、赤ゴジラと呼ばれ恐れられた。嶋コーチには、自らの現役時代を凌ぐ選手をもっと育成してもらいたい。

それにしても松井稼頭央前監督は、なぜ打撃コーチとしてこの二人を選んだのだろうか。高山コーチは確かに数年間だけライオンズでの在籍期間が被っているが、しかしその当時の松井選手はスーパースターで高山選手はほとんど一軍の試合には出場していないレベルだった。

また、嶋コーチに関しては在籍チーム的にはまったく繋がりがない。嶋選手がライオンズのユニフォームを着た頃、松井稼頭央選手は楽天イーグルスのユニフォームを纏っていた。こうして考えていくと、もしかしたら松井前監督には有能なコーチを招聘できる人脈がなかったのではないだろうか。

PL繋がりという意味では、本来はコーチ人事にもっと松井色を出しても良かったと思う。例えば外部で指導力のあるPL出身と言えば、元スワローズの宮本慎也氏がフリーだったわけだが、しかし松井監督が誕生した際、宮本氏を含め、すでにライオンズ入りしていた平石コーチ以外、松井色を感じさせるコーチ人事は噂すら耳にしなかった。

こうして見ていくと、コーチ人事に松井色を出せなかったという点も、松井前監督の敗因だったのではないだろうか。さらに言えば、外野守備走塁コーチとして大友進氏、打撃コーチとして和田一浩氏を招聘することも可能だった。彼らは松井選手がライオンズのスター選手だった頃に苦楽を共にした選手たちで、気心も十分に知れていたはずだ。

しかし実際には松井色を出せたのはPL繋がりの平石コーチだけで、しかもこれは渡辺GMが三顧の礼でホークスから連れて来たという経緯がある。つまり松井監督自身が「俺と一緒に戦おう!」と声をかけたのではなく、渡辺GMから与えられたという形だった。

そして筆者個人としては、松井監督が誕生した際に熊澤とおる打撃コーチの再登板を期待したのだが、これも残念ながら叶わなかった。ちなみに熊澤コーチは筆者が尊敬するコーチの一人で、本当に確かな理論を持った結果を出せるタイプのコーチだ。実際に熊澤コーチはメジャー時代に不調だった松井稼頭央選手を甦らせたし、2008年にはライオンズ打線に198本塁打を打たせている。しかし現在熊澤コーチは埼玉県内でクリニックを開院しているため、もしかしたら松井監督が声をかけたとしても、再登板は諸々の理由で難しかったのかもしれない。その諸々に関してはここで書くことはできないのだが。

西武球団が自前で監督コーチを育てるという取り組みは、上述した通り本当に素晴らしいチャレンジだと思う。だがまだ上手く育てられていない現状を考えると、せめて2人に1人は外部招聘でも良いのではないだろうか。例えば打撃コーチであれば一人は球団で育てた嶋コーチ、もう一人を外部から連れてくるという形だ。

今ライオンズ打線が奮わないのはもちろん選手たち自身に大きな責任があるわけだが、しかしその選手たちを育成し切れていないコーチ陣にも責任があると言える。そういう意味では一度、外の野球を知っている指導者を挟むのも良策だと言えるのではないだろうか。

ダルビッシュ有投手のようなリーダー格がいない現在のライオンズ

さて、話は変わって昨オフにFA宣言をして2年契約を勝ち取った平井克典投手だが、平井投手はその席で「年齢的にもう活躍できる年数は多くはない」と言われたという。これはもちろん発破をかけるという意味だったとは思うのだが、しかし今季のピッチングを見ているとこの言葉の通りになって来てしまっている。

ここ最近も今日ホームランを打たれたことはもちろん、2試合に1回は2安打以上を打たれているのだ。ホールドが付いている試合であってもピシャリと抑えているわけではなく、走者を出しながらも何とか抑えられたという状況だった。このようなパフォーマンスを見ていると、平井投手もそろそろ完全に下り坂なのかなという印象を受けてしまう。

ライオンズにはもう一人、増田達至投手というベテラン投手もいるわけだが、増田投手の方がまだパフォーマンスは平井投手よりも若干安定していた。その増田投手は5月27日に登録抹消されて以来、ファームでも登板していない。と考えるとどこか体の不調があるのか、それとも疲れを抜くための措置かということになるのだろうか。

だがこのようにブルペン陣が苦しい時こそ増田投手、平井投手というベテランに頑張ってもらわなければならない。これまで幾多の修羅場を潜り抜けて来たこの二人にこそ、若手リリーバーたちに道標を示してあげて欲しい。今日プロ初登板してほろ苦デビューとなった上田大河投手にしても、将来的には間違いなく一軍の戦力になってくる投手だ。その上田投手に明日リベンジさせるためにも、例えば平井投手が今日上田投手を食事に連れていって野球談義をするなどのコミュニケーションも必要なのではないだろうか。

以前のライオンズでは、投手にしても打者にしても調子が悪くなると決起集会を開くことがよくあり、それはファンの耳にも時々届いて来ていた。だが今のライオンズからはそのような情報がまったく聞こえて来ず、聞こえて来たことと言えば少し前に中村剛也選手が試合後に選手ミーティングを招集したことくらいだ。

もしかしたら今のライオンズには若手選手を大勢引き連れて食事に行き、その支払いを全額一人で賄う格好良い中堅選手の存在がいないのかもしれない。例えば日本代表でダルビッシュ有投手が時々するそれのように。そういう意味では今のライオンズの選手たちはただ仲が良いだけで、支え合いや共に鎬を削るなどのことができていないのかもしれない。

だが松井監督とは真逆で人情派である渡辺久信監督代行であれば、そのような点にも気を配り、「これでみんなで食事にでも行って来い」と言ってポンとポケットマネーを出すこともあるのではないだろうか。

しかし本来であれば野手なら源田壮亮主将、投手なら髙橋光成投手がそのようなことを率先して行っていかなければならない。だが髙橋投手に関してはそんなことよりも、自身が立ち上げたブランドのプロモーションの方が大事であるようだ。

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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