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2024年3月23日公開

平良海馬投手も契約結ぶ代理人スコット・ボラス氏の低下した交渉力

最終的には松坂大輔投手も嫌ったスコット・ボラス氏の手法

平良海馬投手が契約を結ぶ代理人スコット・ボラス氏

2021年夏の時点ですでに、平良海馬投手はメジャー移籍を視野に入れて代理人のスコット・ボラス氏と契約を結んでる。ボラス氏と言えばライオンズ周辺ではかつて松坂大輔投手や菊池雄星投手が契約を結んでおり、エージェントとしては日本でもかなり知られた人物の一人だ。

ボラス氏の手法は、とにかく選手の契約金や年俸を1ドルでも高く釣り上げることを最優先にしている。そのため一部では強欲と評されたり、選手ファーストではないと言われることもある。ただしボラス氏の選手をサポートするためのチームは全米屈指でもあるため、選手ファーストではないという批判は必ずしも当てはまらないとは思う。

とは言えボラス氏のやり方に嫌気が差し、ボラス氏との契約を解除する選手が少なくないのも事実だ。実際松坂大輔投手も、金銭面を最優先にするボラスのやり方に対し、過度なプレッシャーなく安心してプレーできる環境を求め、最終的にはボラス氏との契約は解除している。

とにかくボラス氏は日本でも知られる通り、「辣腕」という言葉が相応しいエージェントだ。そして必ずしもその評判が良いとは言えないボラス氏ではあるが、ボラス氏のおかげで契約が好転した選手が多いことも忘れてはならない。

しかしメジャーリーグ屈指のエージェントであるボラス氏にも最近はやや暗雲が立ち込め始めている。

交渉力が低下しつつある辣腕代理人スコット・ボラス氏

どうやらボラス氏の交渉力が低下しているようなのだ。現在ボラス氏のエージェンシーと契約をしている選手の中で、ベリンジャー選手、チャップマン選手、スネル選手、モンゴメリー選手の大物四人衆は「ボラス4」と呼ばれている。いずれも大型契約を希望していたのだが、3人は希望額を大幅に下回る金額で契約し、1人は開幕直前になっているにもかかわらず契約にすら至っていない。

ボラス4の現状

コディ・ベリンジャー選手(28歳)
シカゴ・カブスからFA
希望額:総額300億円以上
実際の契約:カブスと3年120億円で再契約

マット・チャップマン選手(30歳)
トロント・ブルージェイスからFA
希望額:総額225億円以上
実際の契約:3年81億円でサンフランシスコ・ジャイアンツと契約

ブレイク・スネル選手(31歳)
サンディエゴ・パドレスからFA
2023年はサイヤング賞を受賞
希望額:総額400億円以上
実際の契約:2年93億円でジャイアンツと契約

ジョーダン・モンゴメリー選手(31歳)
テキサス・レンジャースからFA
未だ未契約

実際の契約額を見ても、日本のプロ野球とは比較できないほど莫大な年俸となっているわけだが、しかしいずれの選手も希望額を大幅に下回る額での契約となっている。ただしここまで契約を果たしている3人に関しては、毎年オプトアウトできるという条項が契約に含まれているようだ。オプトアウトとは契約の見直しや破棄を求めることができる権利のことだ。

かつて完全に売り手市場となっていたボラス氏の顧客であったが、近年は球団側がボラス氏の手法に対しかなりうんざりしているような姿をあからさまに見せており、複数球団のGMが連絡を取り合い、対ボラス包囲網を固めているという話も聞く。つまり他球団のGMと結託して、ボラス氏の交渉が不利に進むように仕掛けているということだ。

そして上述した通り、ライオンズでは平良投手がボラス氏と契約を結んでいる。物事を常に合理的に考える平良投手の性格からすると、ボラス氏のやり方は魅力的に映ったのだろう。

ボラス氏とは対照的な好人物であるネズ・バレロ氏

さて、ではなぜボラス氏のやり方は選手ファーストではないと批判されるのか。その理由は現在のボラス4の姿を見ればよく分かる。選手は、日本人だろうがアメリカ人だろうが何人だろうが、できるだけ早く所属先を決め、落ち着いてスプリングトレーニングに励み、万全の態勢で開幕を迎えたいものなのだ。これはほとんどすべての選手にとっての共通事項だ。

だがボラス4の動向を追うと、スター選手であるにもかかわらず3人の契約は開幕直前になってようやく結ばれることになり、その結果彼らは残留球団、移籍先球団のスプリングトレーニングには満足に参加することができなかった。そして未だ未契約であるモンゴメリー選手に至っては、ドジャースとパドレスの韓国遠征からすでにメジャーリーグは開幕しているというのに未だ所属先が決まらず、自主トレを続けているという状況だ。

今年に限らず、比較的頻繁にこのような状況を作り出すことから、ボラス氏のやり方は選手ファーストではないと批判されることが多い。平良投手も契約を結んだからにはもちろん過去のボラス氏のやり方をしっかりリサーチしたとは思うのだが、過去には松坂大輔投手ですらボラス氏のやり方に嫌気が差し、ボラス氏のエージェンシーと契約を解除した上で、他のエージェンシー(SFXベースボール)と契約を結び直している。

メジャーリーグでは、歴史的な金額での契約を望まない限り、しっかりと仕事をしていればボラス氏と契約を結ばなくても大型契約を結ぶことはできる。ちなみにまさに歴史的と言われた大谷翔平投手とドジャースの契約をまとめたネズ・バレロ氏は、ボラス氏とは異なりその人間性も高く評価されており、何よりも選手のことを第一に考えてくれると選手たちからは好評だ。

おそらく今後はボラス氏のように球団側から嫌がれる辣腕エージェントではなく、球団側とも友好関係を築いていけるバレロ氏のようなエージェントが力を発揮していくのではないだろうか。そしてこのような近年のボラス氏の周辺を観察していると、2021年夏の時点ですでにボラス氏と契約を結んだ平良海馬投手の行動は、やや先走りすぎたのではないかと思ってしまうのは、果たして筆者だけだろうか。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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