2021年3月10日公開
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | ||
西武 | 3 | 0 | 7 | 0 | 1 | 3 | 0 | 0 | 0 | 14 | |
中日 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 |
今井達也〜上間永遠
3月9日、10日と行われた中日戦。ライオンズは山賊打線が爆発して2連勝したわけだが、見た感じではライオンズ打線が素晴らしかったというよりは、ドラゴンズの投手陣があまりにも出来が悪かったように筆者の目には映った。10日に関してはドラゴンズは開幕投手の福谷投手が先発マウンドに登ったわけだが、3回を投げて被安打12、失点10という内容だった。確かに完全に打ち崩したライオンズ打線も素晴らしかったわけだが、しかしこの2試合の打線の爆発が本物であると言い切るには時期尚早だろう。
さて、10日のこの試合でまず注目をしたいのはやはりルーキーコンビだろうか。若林楽人選手、ブランドン選手が共にオープン戦1号ホームランを放っている。ドラフト制後、西武のルーキーコンビがオープン戦でアベックホームランを放つのは初めての出来事だったらしい。
まず若林選手のホームランだが、これは完全に福谷投手の失投だ。初球のカーブがど真ん中に入ってきて、まさに「打ってください」と言わんばかりの甘いボールだった。しかし甘いボールだったとはいえ、ルーキーがそれを見逃さずにしっかりと仕留めたことは見事だったと思う。
若林選手は打率こそまだ.105とプロの水に慣れ切ってはいないのだが、しかし守備での貢献度を考えると、打率を1割増として見ても良いのではないだろうか。先日のマリーンズ戦でも正確な送球で二塁打を阻止しているし、球際、フェンス側での強さも発揮している。
若林選手は決してホームランバッターではなく、今日のホームランによって今後もホームランを期待することは酷だと思うのだが、シュアなバッティングは今後の期待感を大きく持たせてくれる。基本的にはレフトの穴を埋められるように頑張っているというのが若林選手の現状であるわけだが、しかし打率.250程度打つことができれば、金子侑司選手からセンターのポジションを奪う可能性だって今後は出てくるだろう。
守備力に関してはもうすでに合格点をもらっていると思う。あとは1軍の打席でどれだけ積極的に自分のスウィングをしていけるかどうかで、開幕1軍、いや、開幕スタメンというポジションも見えてくるだろう。若林選手にはルーキーだからといって遠慮することなく、どんどんポジションを奪いに行ってもらいたい。そして若林選手がこれだけ躍動してくると、金子選手も木村文紀選手もおちおちしていられなくなる。
続いてブランドン選手の一発だが、これも若林選手同様初球打ちだった。打ったのは福投手のど真ん中に入ってきたカットボールだ。134kmという大した球速が出ていないこのレベルのカットボールが真ん中に入ってくれば、打たれるのも当然だ。この1球もやはり失投だったわけだが、しかしその失投を見逃さなかったブランドン選手のバッティングは見事だった。
ブランドン選手は開幕サードを目指して奮闘している。まだまだ打撃にも守備にも荒さがある選手ではあるが、一発の魅力は大きい。しかもそれだけではなく、この試合ではセンター前ヒットも2本放っており、結果的には4打数3安打5打点という暴れぶりだった。
一時期はホームランを打ってもその後消極的に簡単にアウトになってしまうことから、辻発彦監督も苦言を呈すことが多かった。しかし監督のその言葉を素直に受け止めたのだろう。ここ数試合の出場場面を見ていると、ヒットを打っている時はもちろん、アウトになっている時でも積極的なスウィングが増えてきているように見える。
この試合2打席目でのセンター前ヒットも、2球目に顔の近くに来た145kmのストレートを臆せず振りにいってファールにしている。そして続く3球目、真ん中に入ってきたストレートをセンターへと弾き返した。そして9回の5打席目では2球目の真ん中低めのスライダーを再びセンターへと弾き返した。積極的にボールに食らいついていこうという姿勢を強く感じさせてくれた今日のブランドン選手だったと思う。
開幕サードの座は佐藤龍世選手も虎視眈々と狙っているわけだが、しかし現時点でのアピール度はブランドン選手の方がずっと上だと言わざるを得ない。佐藤選手も昨年の汚名返上と行きたい今シーズンではあるが、現時点では多少の活躍だけでは開幕スタメンの座を勝ち取ることはできないだろう。それくらいブランドン選手が非常に良い活躍を見せてくれいている。
話は変わって先発した今井達也投手と二番手の上間永遠投手のピッチングも見事だった。今井投手に関してはこれくらいやってもらわなければ困るわけだが、上間投手に関してはここまで期待以上の活躍を見せてくれている。
徳島インディゴソックスからライオンズ入りして2年目の投手であるわけだが、制球力も安定しているし球種も豊富だ。今季は開幕路ローテーションにニール投手が加われない不安も大きかったわけだが、意外とこの上間投手がその穴をサラリと埋めてくれるかもしれない。
球数を見ても今日は4イニングスを投げて61球と、理想的な球数でまとめている。球数を必要以上に増やさず、1イニング当たり15球で抑えられるピッチャーというのは大崩れすることが少ない。逆に球数が増えがちなピッチャーは、昨季は安定感に欠いた今井投手にようにビッグイニングを作ってしまうケースが多い。そういう意味では上間投手はここまで、長いイニングを投げるピッチャーとしては理想的な投球を続けている。
ここまでの流れでは開幕ローテーションに当確していると思われるのは開幕投手の髙橋光成投手、裏ローテの一番手だと思われる松本航投手、そして今日好投した今井投手ということになると思うのだが、もし上間投手があと1〜2試合投げても大崩れしなかったなら、上間投手の名が開幕ローテーションに加わる可能性も非常に高いのではないだろうか。
今季も投手陣に関する下馬評がまぁまぁ低いライオンズであるわけだが、筆者個人としては今年何度も書いてきた通り、今季の投手陣は非常に良い形で仕上がってきていると見ている。選手個々のネームバリューだけを見ればホークスには劣ってしまうわけだが、しかしある程度完成してしまっているホークス投手陣に対し、ライオンズの先発投手陣はまだまだ発展途上にある投手たちばかりだ。つまり現状のホークス投手陣を、ライオンズの投手陣が上回るのも時間の問題であるというのが、筆者の率直な意見だ。