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2024年5月30日公開

交流戦終盤までの貧打解消が見えてきた蛭間拓哉選手を軸に据えた新西武打線

中日ドラゴンズ vs 埼玉西武ライオンズ/3回戦 バンテリンD
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Lions 1 0 0 0 0 2 0 0 0 3 10 2
Dragons 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 7 0

継投○武内夏暉H平井克典H佐藤隼輔H松本航Sアルバート・アブレイユ
勝利投手武内夏暉 4勝0敗0S 1.27
セーブアルバート・アブレイユ 1勝4敗11S 2.70
失策武内夏暉(2)

好調蛭間拓哉選手を中心にようやく上向き始めたライオンズ打線

コルデロ選手

渡辺久信監督代行に代わってから、やはり選手の目の色が変わってきたように思える。今日の試合でも岸潤一郎選手が気迫の一塁ヘッドスライディングを見せたり、昨日同様佐藤龍世選手がファインプレーを見せたり、一週間前とは別のチームの試合を観ているようだった。

そして蛭間拓哉選手が四番に座った打線は10安打を放ち3点を奪った。平沼翔太選手に代わり途中出場となった滝澤夏央選手に加え、蛭間拓哉選手炭谷銀仁朗捕手がそれぞれマルチヒットをマークし、攻撃陣もようやく上向き始めたという印象だ。

筆者は以前、蛭間選手は吉田正尚選手のようなタイプの四番打者になれると書いたわけだが、徐々にその姿に近づいてきている。蛭間選手が優れている点は、バックヒップターニングという動作から作る左靴の形だ。この左靴がスウィング時にしっかりと立ち、さらには投手の方向を向いている。この左足が寝てしまうと打球が弱くなるわけだが、バッティングフォームの土台となる蛭間選手の左足部は、栗山巧選手のように非常に良い形になっている。

そしてバットをしっかりと振り抜く姿勢も素晴らしい。もちろん崩されれば中途半端なスウィングをしてしまうこともあるが、それはどんな巧打者でも同じことだ。とにかく最近の蛭間選手はライオンズ打線の中において、最もバットをしっかりと振り抜いている打者だと言える。それがまだ出場試合数は少ないとは言え、.328というハイアヴェレージに繋がっていることは間違いない。

岸潤一郎選手も素晴らしい打者になる資質を持っているわけだが、岸選手の場合はまだ振り抜くバッティングを見せることが非常に少ない。今日1本打ったヒットも、体制を崩されながらも上手く合わせて当てたら運良くセンター前まで抜けてくれた、という感じの打球だった。もしこの場面でもっとバットを振り抜いていれば、もっと強烈な打球のヒットになっていただろう。

そしてフランチー・コルデロ選手に関してはヒットこそ出なかったものの、今日は犠牲フライで1打点を挙げている。このような貢献から少しずつ調子を上げて、かつての中村剛也選手のように三振かホームランかというタイプのバッターになっていってくれればと思う。コルデロ選手の場合は当たればとにかく飛ぶため、下手に合わせにいくバッティングをするのではなく、大型扇風機と揶揄されようとこれからもしっかりと振り抜くスウィングを見せ続けてもらいたい。

なおコルデロ選手が犠牲フライを打った際、ライオンズベンチが大盛り上がりでコルデロ選手を迎え入れた場面が非常に印象的だった。このような雰囲気は異国の地で悩むコルデロ選手を勇気づけることになるため、これからもぜひライオンズナインには、今日のようにコルデロ選手を盛り立ててあげて欲しい。

球団史上初のデビュー戦以来先発4連勝を記録した武内夏暉投手

さて、先発マウンドに登った武内夏暉投手に対してはもはや「見事」としか言いようがない。武内投手のコメントによると今日は調子が悪かったと言う。確かに全体的にボール1個分ずつ制球が高かったかなという印象ではあったが、しかしそれでも5回2/3を無失点で投げ抜いた。

そして今日の好投により防御率は1.27となり、さらにはようやく規定投球回数に到達したことで、一気に防御率でリーグトップに躍り出た。12球団レベルで見ても、セ・リーグトップの広島カープ床田投手の1.27と並んでいる。

武内投手は調子が良くなかったと言いながらもこれだけの好投を見せてきた。これはまさに松坂大輔投手以来のルーキーとしてのエース級の働きだ。しかもさらにはその松坂投手をも越え、西武ライオンズ史上初となる、ルーキーの先発登板のみによるデビュー以来の4勝負けなしという記録までついた。

武内投手は憧れの和田毅投手を越えていきそうな予感だ。和田投手はルーキーイヤーに14勝5敗という成績を残しているわけだが、武内投手もそれに近い数字を残していきそうなパフォーマンスを見せ続けている。もしこの2ヵ月で疲労を考慮されて登板を飛ばされていなければ、開幕2ヵ月で5勝は挙げていたと思われ、まさに和田投手のルーキーイヤー同様のペースで勝っていたと考えられる。

そういう意味でもこれは以前のコラムでも書いたことなのだが、よほど状態が悪くならない限りは、多少の疲労では武内投手の登板は飛ばすべきではないと筆者は考える。記録という意味でも、チームの勝利という意味でも、武内投手は今、投手陣トップクラスの貢献度となっているのだ。そのような投手の登板は、ルーキーと言えど簡単に飛ばすべきではない。

それにしても、筆者個人としては同一カードに左腕を二枚並べてきたことにはやや驚きを感じたのだが、もしかしたらこれは次のカードで與座海人投手が先発マウンドに登ることを示唆しているのかもしれない。今ライオンズには7人の先発投手が一軍登録されているわけだが、明日の先発は髙橋光成投手が予定されている。

そして中日戦で投げた投手と髙橋投手を除くと、一軍にはボー・タカハシ投手渡邉勇太朗投手、そして與座海人投手が一軍登録されている。もちろんこの中で誰か1人はリリーフに回っていくわけだが、與座投手以外は3人とも右の速球派投手だ。この3人を同一カードに並べてしまうと、相手打線も右の速球派投手のボールに目慣れしやすくなる。

それを避けるためにも真ん中に左投手を挟むのが理想的となるわけだが、中日戦で左腕を二枚使ったことでそれはもうできなくなった。となると速球派投手の間にアンダースローという変則投法の與座海人投手を挟んでくる可能性が高いと言える。渡辺久信監督代行は、2013年までの監督時代からアンダースロー投手の起用法に巧さを見せているため、渡辺監督代行に代わったことで與座投手の出番が増える可能性は高まったと言えるだろう。

ちなみに與座投手はファームでは7試合に登板し、先発として2勝を挙げて防御率は1.79と格の違いを見せていた。ファームでの成績は渡邉勇太朗投手よりも與座投手の方が上だったため、これを機に與座投手にも先発としての機会が与えられるのではないだろうか。

交流戦が終わる頃には貧打が解消されているであろうライオンズ打線

ところで筆者は平沼翔太選手の活躍に大いに期待をしていたのだが、こうも怪我が多いとその期待値どんどん下がってしまう。今季はキャンプ初日に右ふくらはぎを痛めて離脱し、先日は試合中に足を攣り、そして今日は左ハムストリングスの張りでヒットを打った直後にベンチに下がってしまった。

ここまで見せてきてシュアなバッティングやチャンスでの強さを見て、筆者は平沼選手に三番を任せてみてはどうかと書いたわけだが、しかし怪我に弱い選手を主軸に据えることはできない。特にクリーンナップはシーズンを通して不動となるのが理想的だ。そのためこのように怪我が多い平沼選手は、頻繁に怪我をしていた山川選手同様に主軸としては使いにくい選手であると言える。

強かった頃のライオンズの主軸はほとんど怪我をすることがなかった。黄金時代で言えばAKD砲は不動だったし、東尾監督が連覇した際も鈴木健選手とマルチネス選手は不動だった。三番髙木大成選手に関しては怪我に悩まされたが、それでも二人は不動だったため打線も常時機能し続けた。

そして2002年、2004年に優勝した際にはアレックス・カブレラ選手が不動の四番打者として君臨し続け、その脇を固めるように和田一浩選手やホセ・フェルナンデス選手の活躍があった。また、2008年に日本一になった際も頭部死球まではクレイブ・ブラゼル選手が四番に座り続け、ブラゼル選手が調子を落とすとそこから中村剛也選手が四番打者として飛躍していった。

とにかく強かった頃のライオンズにはこのように、簡単に怪我で休むことをしないクリーンナップがしっかりと揃っていたのだ。だが近年のクリーンナップは山川選手は頻繁に下半身を怪我し、森友哉捕手もライオンズ最終年ではマスクを投げつけた際に手を怪我して長期離脱を余儀なくされていた。

こうして考えると今ライオンズに必要なのは怪我に強いクリーンナップだと言える。その筆頭が蛭間選手だと言えるのではないだろうか。蛭間選手はまだホームランを打てる打者ではないが、振り抜く力と勝負強さは本当に素晴らしく、このまま打線が機能してくればヘスス・アギラー選手が戻ってきても蛭間選手が四番に座り続けるのではないだろうか。

現状の一軍戦力で考えると、三番打者がウィークポイントになっている。今はずっと外崎修汰選手が三番に座っているが、打率が上がってきそうは気配はやはり感じられないし、ホームランもまだ1本にとどまっている。そう考えると近い将来はコンタクト能力もあり、パンチ力もあり、さらには走ることもできる岸選手あたりが三番に座るようになるのが理想と言えるのかもしれない。

そして三番岸選手、四番蛭間選手の後ろの五番六番にアギラー選手、コルデロ選手が入り、中村剛也選手はここぞという場面の代打として起用されるのが最善だと思われる。もしくはDHを上手く回すことができれば、中村選手を六番七番にある程度固定しても良いだろう。このような打線になってくれば、相手バッテリーとしてはかなりの恐怖感を感じるようになるはずだ。

ただし筆者のこのような考えは今はまだ絵に描いた餅でしかないため、あくまでもただの理想論に過ぎない。しかしこのような打線を組んでいける可能性を秘めていることを考えれば、西武球団が松井稼頭央監督のためにろくな補強をしなかったという批判はまったく当てはまらない。少なくとも筆者は補強はしっかりと的確に行われたと考えているし、それを生かし切れなかったのは松井監督の手腕によるところだと言うべきだろう。

いずれにしても蛭間選手が機能し、岸選手も状態を上げてきている今、アギラー選手が戻ってくれば打線にはかなりの厚みが出てくる。そのアギラー選手もそろそろファームの試合に出れるのではないか、という情報もあるため、交流戦が終わる頃には貧打も解消されている可能性が高いと見て間違いないだろう。

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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