2024年7月12日公開
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | |
Lions | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 2 | 6 | 0 |
Eagles | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | × | 3 | 6 | 0 |
継投/ ●武内夏暉〜 松本航
敗戦投手/武内夏暉 5勝1敗0S 1.37
盗塁/高松渡(8)
ついに武内夏暉投手にプロ初黒星が付いてしまった。もちろんいつかは誰にでも黒星は付くわけだが、しかし武内投手の場合は新人記録もかかっていただけに、それが途切れてしまったのはとても残念だった。
だが敗戦投手になったとは言えQSはしっかりとクリアしているし、投げているボール自体は良かったとは思う。ただ7回に浅村栄斗選手にホームランを打たれたボールは少し甘く入ってしまった。
1〜2球目は外からカーブを入れて浅村選手を誘い出し、3球目はカウント1-1からのチェンジアップで引っ掛けさせたかったのだと思う。だがこのチェンジアップが低めいっぱいに落ち切らず、真ん中やや低めという甘いコースに入ってしまった。それを上手く浅村選手に掬われてしまい、打った瞬間それと分かるホームランになってしまった。
今季はそれほど調子が良くなかったとは言え、腐っても鯛と言うべきか、浅村選手のバッティング技術はさすがだった。浅村選手は完璧にステイバック(体重移動に頼らない打ち方)をマスターしている打者なのだが、それを浅村選手に教え込んだのが熊澤とおるコーチだ。
ライオンズで言えば栗山巧選手と中村剛也選手が熊澤コーチの教え子であるわけだが、やはり熊澤コーチの理論的指導を受けている打者の技術は本当にレベルが高い。
スポーツ科学的に良い投げ方、良い打ち方というのはパフォーマンスが上がるだけではなく、故障のリスクも減らしてくれる。そのような技術を熊澤コーチが指導してきたわけだが、真獅子の骨と牙にしろ、浅村選手にしろ、この年齢まで第一線で活躍し続けていることもまったく不思議ではない。
打線に関しては相変わらず深刻な状態だ。一番打者である源田壮亮主将が二度ヒットで出塁しても、それが得点に結びつくことはなかった。しかも初回に関しては一番源田主将、二番西川愛也選手に連打が飛び出しているにもかかわらず、クリーンナップの三人全員がその後簡単に凡打に終わってしまっている。無死二塁一塁の走者を進塁させることさえできなかった。
さて、今日のイーグルス先発の早川投手は非常に良かったと思う。ちなみに2020年のドラフト会議で、西武球団も早川投手を一位指名していた。しかし残念ながら抽選に外れてしまい、西武球団は外れ一位として渡部健人選手を指名している。
その早川投手の今日の変化球の精度は本当に素晴らしかった。今日久しぶりに昇格したフランチー・コルデロ選手にとっては不運とも言えるような出来だった。
早川投手はコルデロ選手に対しては徹底して外角低めに沈んでいくボールを投げていたのだが、ストレート、スライダー、カーブ、フォークをすべて見事にギリギリボールゾーンの外角低めに集めていた。だがこの早川投手にも隙がなかったわけではない。特に1打席目に関しては初球と5球目に関してはコルデロ選手にもチャンスがあった。
だがこの1打席目に関しても、初球のやや甘い外角低めへのストレートを見逃してしまった時点で、一瞬で早川投手を楽にさせてしまった。このボールをコルデロ選手は見逃して1ストライクとなってしまうのだが、この初球がストライクになったことで、早川投手は「あとはボールになっても良い」という意識で気持ち的に楽に外角低めに投げることができていた。
もしこの初球をコルデロ選手が思い切り振っていたとしたら、面白い結果になっていたのではないだろうか。コルデロ選手を見ていると、恐らく初球はデータ的に変化球を待っていたのだと思う。そこにスーッとストレートが入ってきたことで手を出すことができなかったのだろう。だがこのやや甘い初球を見逃していくという現状は、試合後すぐにでもデストラーデ氏からも指摘があったはずだ。
そして5球目に関してはカーブが抜け気味に肩口から入ってきた。このボールは初球以上に甘いボールだったのだが、しかしここまで徹底して外角低めを見せられていたことで、肩口から入ってきた内角へのボールが、コース以上に近く感じられたのだろう。
残念ながら今日は3打数ノーヒットに終わってしまったコルデロ選手だが、今日の結果だけを見て首脳陣にはコルデロ選手をスタメンから外したり、代打要員にしてしまうことだけは避けてもらいたい。なぜなら外国人選手にとって必要なのは眼慣れだからだ。
外国人選手の場合、一般的には日本の野球にアジャストするには200打席前後必要だと言われている。しかしコルデロ選手の打席数はまだ70打席でしかない。さすがにこれだけ少ない打席数で日本人投手の配球に慣れるのは至難だ。もちろん70打席かけずに慣れることができる外国人打者もいるわけだが、しかしどちらかと言えば200打席くらいかけて徐々に慣れていく外国人打者の方が多い。
例えば政治には100日ルールのようなものがあり、どんな首相や大統領であっても国民は100日程度は基本的には何も言わずに見守る。だが100日経っても目に見えた結果が出ない場合は批判の対象となっていく。外国人打者にしても、やはり200打席までは打てなくても起用し続けるべきなのだ。だがもし200打席を越えてもアジャストできない場合は、その時はバッサリ斬り捨てて良いと思う。
今日の試合では移籍組の野村選手に2点タイムリーヒットが飛び出した。この打席に関しては本当に良かったと思うわけだが、しかしここまで松原選手の打率は.143、野村大樹選手は.118とまったく機能していない。この二人はジャイアンツ、ホークスではそれぞれずっと二軍暮らしをしていたわけだが、数字を見てもバッティングは二軍レベルであると評価するしかない。
一方移籍していった若林楽人選手は今打率は.278となっており、今日はサヨナラヒットまで打っている。サヨナラヒットが出ること自体が稀であるわけだが、今季の若林選手はライオンズとジャイアンツでそれぞれ1本ずつ、ライオンズのファームでの試合を合わせると今季3本もサヨナラ打を打っているのだ。
やはり若林選手と松原選手のトレードは、ここまでの数字を見る限りは失敗だったと言わざるを得ない。若林選手は確かに数字は安定していなかったが、しかしいわゆる「持っている」選手なのだ。良い場面で打席が回ってくることも多く、サヨナラ打を打てる勝負強さも秘めている。
若林選手がジャイアンツに行っても思い切りバットを振っているのに対し、松原選手と野村選手のスウィングには迷いが感じられることが多い。タイミングを外されて泳がされてしまい、ボールを撫でるようにして力ないゴロを打ったり、バットを最後まで振り抜かずに打っている場面がここまでは目立っている。
スウィングに迷いが感じられる時点で、松原選手と野村選手の状態が近々で上がってくる可能性は低いと見ていいだろう。これが最近状態の良い西川選手のように、しっかりとバットを振り抜いての凡打である場合は、1本のヒットで状態が上がってくることもある。しかし松原選手と野村選手の場合はヒットを打った後の打席でも中途半端なスウィングをしているため、出ているヒットに関しても打つべくして打ったヒットと言うよりは、運良くヒットになってくれたという評価になってしまうのだ。
渡辺久信監督代行としては若林選手を出してまで獲得してきた選手であるため、何としてでも結果を出してもらいたい思いもあるのだろう。だが残念ながらこの二人は一度ファームから出直すべきだと思う。この二人を今の状態のまま起用し続けるよりは、ずっとライオンズのユニフォームを着て頑張っている、例えばファームの高木渉選手などを我慢して起用した方がいいのではないだろうか。
高木選手などは長打力を持ったいわゆるロマン砲であるため、一軍で何かきっかけを掴んで場数を踏ませてあげれば、ある程度のバッティングを見せられるだけの選手だと思う。だが高木選手を見ていると、滅多に一軍に上げてもらえる機会を得られないせいか、どことなく最近は惰性で頑張っているだけのように見えなくもない。いや、もちろん本人としては絶対にそんなことはないはずなのだが。
もちろんここまで怪我もあった高木選手であるわけだが、以前はもっと「何がなんでも一軍に上がってやる!」という闘志やガムシャラさがプレーからは感じられた。トレードで獲得してきた選手にチャンスを与えることも大切だが、しかしずっと二軍で頑張っている選手にももう少しチャンスを与えてあげて欲しい。
特に今長打力不足に苦しむライオンズにおいて、高木選手の覚醒は喉から手が出るほどであるはずだ。トレードにしても起用法にしても、ちょっとチグハグさが目立っているのが今季のライオンズであり、それをファンでさえも感じられている現状だからこそ繰り返されている大型連敗なのだろう。