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2024年6月22日公開

外崎修汰選手の危機感を煽り始めた若林楽人選手からの突然の突き上げ

オリックスバファローズ vs 埼玉西武ライオンズ/11回戦
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Lions 1 0 3 0 0 0 0 0 0 4 8 0
Buffaloes 0 0 0 1 0 0 0 1 0 2 9 0

継投○隅田知一郎H松本航Sアルバート・アブレイユ
勝利投手隅田知一郎 5勝5敗0S 3.01
セーブアルバート・アブレイユ 1勝4敗12S 3.09
本塁打岸潤一郎(5)

外崎修汰選手の危機感を煽り始めた若林楽人選手からの突然の突き上げ

四番起用に見事に応えた岸潤一郎選手の特大5号スリーラン

岸潤一郎選手

ようやくライオンズの連敗が5で止まった。だが最近は感覚が少し麻痺しており、まだ5連敗しかしていなかったのかという感覚さえある。そしてとにかく今日の1勝で、ライオンズはようやく勝利数を20にすることができた。ちなみにライオンズは現在20勝45敗で、ホークスは43勝19敗2分となっている。

さて、昨日のコラムで筆者は岸潤一郎選手の四番はさすがに「まだ」早いというようなことを書いた。将来的にはもちろんありだとは思うが、今現在では安心して四番を任せられるレベルではないと思うからだ。

渡辺久信監督代行も「今のメンバーなら岸なのかな」というニュアンスで岸選手の四番起用について語っていた。そう言われると確かにそうなのかもしれない。今一軍にいるメンバーだけで考えれば、打率.254の岸選手はかなり打っている部類に入るためだ。

ただ好感が持てるのは、岸選手は打率.254に対し、得点圏打率が.280だということだ。.280という得点圏打率はもちろんまだまだ寂しい数字であるわけだが、しかし打率よりも得点圏打率の方が高いというのは、クリーンナップを打つ打者には必要な要素だと言える。

岸選手の打率が今後.270、.280、.290と上がっていき、それに伴い得点圏打率も.300、.310、.320と上がっていけば、その時は文句なしに岸選手はクリーンナップを打つべき打者だと言い切れるだろう。

そして岸選手は気温と共に調子を少しずつだが上げてきている。4月の月間打率は.228だったのだが、5月は.275、6月は.276と、僅かではあるが右肩上がりとなっている。そして得点圏打率も5〜6月は.333となっており、4月の.231からは大きく数字を伸ばしているのだ。さらには4月の長打率は.386だったが、6月は.483と1割も上げてきている。

この数字の変化を見て渡辺監督代行も岸選手の四番起用を2試合続けたのだろう。そしてその岸選手は今日、見事に四番としての仕事を果たしてみせた。3回表、四球で2人の走者を置いた状態で京セラドームの5階席まで届いた特大の5号スリーランホームランを放ってみせた。

打った瞬間はもしかしたら上がりすぎて切れるかなとも思われた打球だったが、最後まで切れることなくレフトポールの遥か上を通過する見事なホームランだった。このホームランを見せられてしまうと、岸選手には四番の資質があるのかもしれないと痛感させられる。

以前書いた通り、筆者は岸選手個人には大きな期待を寄せている。なぜなら岸選手はインサイドアウトを徹底してバットを振っており、ヒットが出る出ないは別としても、基本に忠実なバッティングを続けているからだ。そのため岸選手はライオンズで一番の成長株であるとも書いた。

それでもまだまだ相手バッテリーの配球に上手くはめられてしまうことも多いため、昨日の時点では岸選手はまだ四番の器ではないと書いた。だが岸選手にはぜひこの筆者の考えを完全な不正解にする活躍を明日以降も続けてもらいたい。そしてとにかく高い得点圏打率をキープし続けてもらいたい。

渡辺久信監督代行が言い続けてきたことをようやく形にできた西武打線

さて、先日は異例とも言えるシーズン中のチームバッティング練習をチーム単位で行ったライオンズだったが、今日も異例と言える試合前のフリーバッティングをしないで試合に挑むという取り組みを行なった。共に渡辺監督代行の発案であるわけだが、今日はこれが上手くはまり、序盤に一気に4点を奪って久しぶりに試合のイニシアティヴを握ることができた。

1回表、まず先頭の西川愛也選手選手が二塁打で出塁すると、滝澤夏央選手が犠打で送り一死三塁。そして三番栗山巧選手がライナー気味の犠牲フライをライトに放ち、プレーボールから僅か5球で先制点を挙げてみせた。

この攻撃こそが渡辺監督代行が就任時からずっと言い続けてきた野球だ。交流戦を経て、ペナントレースも再開2試合目でようやく理想の攻撃を行うことができた。この場でも筆者は書き続けているわけだが、野球というスポーツは先制点を挙げるとそれだけで試合を有利に進めることができるスポーツなのだ。

逆に相手に先制されてしまうとまず犠打ができなくなる。そして簡単に走者を走らせることもできなくなり、攻撃がどんどん後手後手になってしまい、なかなか追いつくことさえ難しくなってしまう。今日の初回の攻撃にしても、もしビハインドであった場合は滝澤選手に送りバントのサインを出すことはできなかったはずだ。だが1回表のプレーボール直後だったこともあり、迷わず送りバントのサインが出され、一死三塁という絶好の好機を作ることができた。

そしてライオンズが先制すると、逆にバファローズバッテリーとしては大胆な配球がなかなかできなくなってしまう。例えば内角を狙っても少しでも甘く入ってしまうとそれはホームランボールになってしまうため、点差が広がるのを嫌い、外角低め一辺倒の消極的な配球になりやすく、すると打者は外角低めに眼慣れしてしまい、厳しいコースに投げても打たれるという悪循環に陥ってしまう。ちなみに現状ではそれが古賀悠斗捕手の配球になってしまっている。

しかし今日は初回に幸先よく先制できたことで、オフェンスもディフェンスも積極的に攻めに行っているように見えた。これこそが渡辺監督代行が交流戦中ずっと作ろうとしながらも作れなかった流れなのだ。今日はその流れをようやく作れたわけだが、大事なのは今日の1勝ではない。今日勝って明日も勝つこと、そして明日勝ってその次も勝つことが重要なのだ。今日の1勝で喜んでいいのはファンのみなのだ。

松坂大輔投手の助言に従わず、十分な投資を行なっていない西武の選手たち

さて、ここで少しファームの情報も覗いておきたい。筆者は今年の4月あたりに、若林楽人選手は外野ではなく二遊間でも良いと思うと書いたわけだが、ここ最近、その若林選手がファームでは二塁手として試合に出ることが続いている。この起用法はとても良いと思う。

なぜならトノゲンコンビというのはある程度聖域にされてしまっており、怪我さえなければこの2人のレギュラーは外せないと言われている。だがスポーツ選手というのはライバルの存在なくして成長することはない。外崎修汰選手に関しても下からの突き上げがないためなかなか安定感を見せることができずにいた。

だがここに来て若林選手がファームでセカンドに入ることが増えており、しかも1試合で2打点3打点を挙げるなど勝負強いバッティングを見せている。しかもファームでの通算打率は.323という高さで格の違いを見せつけている。外崎選手ももうすでにファームではセカンドとして出場しているわけだが、突如若林選手というライバルが出現したことにより、外崎選手にも今ようやく危機感が芽生え始めているのではないだろうか。

トノゲンコンビによる二遊間コンビも、そろそろ世代交代を考えなければならない時期だ。それを考えれば今後若林選手が、かつての浅村栄斗選手のような大型二塁手に成長していくことができれば、将来的にはかなり面白みのある打線になっていくのではないだろうか。

ただ、浅村選手に関しては熊澤とおるコーチの個人指導によりステイバックを完全にマスターしたからこそ打点王になれたのであって、今それを若林選手に指導できる打撃コーチはライオンズにはいないのではないだろうか。だからこそかつて浅村選手が元西武一軍打撃コーチだった熊澤コーチに個人指導をお願いしたように、若林選手も科学的に野球動作を理解したパーソナルコーチと契約すべきだと思う。

今の時代はパーソナルコーチと契約をするのは当たり前となっている。メジャーリーガーの多くもパーソナルコーチと契約をし、個人単位でバイオメカニクスやパフォーマンスの流動状態をチェックしてもらっている。そのため不振に陥ってもその不振が長引くことが少ない。

なお筆者の職業はまさにそのパーソナルコーチであるわけだが、日本には野球を専門としたパーソナルコーチの存在は多くはない。例えばイチロー選手や山本昌投手らを支えた小山裕史コーチも野球畑のコーチではなかった。だが野球に必要な体づくりに関しては専門的に指導することができるため、小山コーチのもとからは名選手が続々と誕生している。

若林選手も一軍で頭ひとつ分飛び出ていくためには、パーソナルコーチの指導を仰ぐことも必要だと思う。ちなみにそれは若林選手だけではなく、ライオンズの若手から中堅レベルの選手全員に言えることだ。蛭間拓哉選手などは栄養士と契約をしているようだが、それに加えて科学的に野球動作を見ることができ、科学的に野球動作を指導することができるコーチとの契約も必要だろう。

松坂大輔投手は引退セレモニーのスピーチで、自分への投資を惜しまないでくださいと後輩たちに伝えた。だが手にした年俸の多くを注ぎ込んででも個人コーチと契約をするライオンズの選手は多くはない。ちなみに多くを注ぎ込むと言っても、一般的にはどんなに高くてもシーズン契約の場合は年俸の10%以下が相場だ。

今季の年俸が1220万円の若林選手の場合は、個人コーチとシーズン契約を結んでも122万円となる。もし成績が上がって来季の年俸が跳ね上がるのであれば、やはり選手たちはこれくらいの投資は迷わずに行なっていくべきだろう。そうすればライオンズからもまたリーグを代表するスラッガーが育って来るはずだ。

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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