2021年12月15日公開
どうやら2022年の5月まで、ライオンズの週末はバファローズ戦が多くなるようだ。これはつまり週末は頻繁に山本由伸投手と対戦しなければならないことを意味している。しょっちゅう沢村賞投手と対戦しなければならないと考えるだけでも、来季の開幕後しばらくはライオンズにとってタフなゲームが続くことがよく分かる。
一見するとこれは「ライオンズ打線」にとって苦しいことだと思いがちだ。だが週末にバファローズ戦が続くことにより最も辛くなるのは打線ではなく、髙橋光成投手だ。仮に今季チーム最多勝利の高橋投手が2年連続で開幕投手を務めるのであれば、髙橋投手は頻繁に山本由伸投手と投げ合わなければならなくなる。
現状の実力差で言えば、山本投手の方が圧倒的に上だと言えるだろう。防御率を見ると髙橋投手は9回を投げれば4点近く点を取られるわけだが、山本投手は2点取られることがない。高橋投手が今オフによほどレベルアップするか、山本投手が調子を落とさない限りは、対戦が続けば髙橋投手が星を落とすことが多くなってしまうだろう。
今季は11勝を挙げた高橋投手だったわけだが、山本投手との対戦が続けば来季は二桁勝てるかも微妙になってくる。高橋投手としては、防御率2.00未満の数字を維持しなければ、山本投手と互角に投げ合うことはできない。これまで4点前後の防御率しか記録したことがない高橋投手にとっては、仮に来季も開幕投手になるとすれば非常にタフなシーズンとなるだろう。
だが来季の開幕も高橋投手になるとは限らない。今井達也投手や松本航投手だって開幕投手の座を狙ってくるはずだ。
今井投手の場合、オープン戦で与四球率が向上すれば開幕投手のチャンスは十分にあるだろう。今井投手は与四球の多さからWHIPの数値が1.40と芳しくない数字になっているのだが、今季5.63だった与四球率を3点台まで向上させられれば自ずと失点も減っていき、今季3.30だった防御率も簡単に2点台になって行くだろう。
それにしてもWHIPが1.40で防御率が3.30とは、今井投手がいかにして粘りのピッチングを見せていたかがよく分かる。通常これだけのWHIPであれば、防御率は4点前後でも不思議はない。
※ WHIPとは、1イニングに平均何人の走者を出しているのかという数値
WHIPに関しては高橋投手は1.26、松本投手が1.34だ。WHIPに関しては二人とも今井投手よりも良い数値を残しているのだが、しかし防御率に関しては高橋投手が3.78で、松本投手が3.79と、今井投手よりもかなり下回る数字となっている。
こうして考えて行くと与四球率さえ向上させられれば、来季の開幕投手は今井投手を据えるのが現状ではベストなのではないだろうか。与四球率の数字の悪さに関しては今井投手自身よく分かっており、インタビューでもこの数字を改善することを来季のテーマとして語っている。
非打率に関しても実は3人の中では今井投手が最も良い.220という数字を残している。そしてバファローズ戦の防御率が一番良いのも唯一2点台の2.91である今井投手だ。バファローズ戦は2勝5敗ではあるのだが、2.91という対戦防御率を見る限り崩れて負けているというわけではなく、援護が少なく敗戦投手になっていることが多かった。
こうした数字を見ていく限り、バファローズ戦が多くなる来季序盤の週末は、今井投手を開幕投手に据えて乗り切るのが最善ではないだろうか。そして今井投手を毎週末山本投手と投げ合わせれば、今井投手自身の殻を破るチャンスにもなって行くだろう。ライバルが強敵であるほど自分自身も向上していける。
今季の開幕投手は高橋投手が務めたわけだが、数字を追って行くとまだ高橋投手をエースと呼ぶことはできない。二桁勝利もまだ二度だけで、10勝、11勝止まりで防御率も芳しくはない。つまり高橋投手もまだまだ発展途上という段階で、三本柱の絶対的支というわけではない。
つまり表ローテの一番手をいつ今井投手に奪われても不思議ではないというのが現状だ。そして上述したように、バファローズ戦での数字を見る限りでは現時点で最も山本投手と五分近くで戦えそうなのが今井投手だ。
ライオンズの三本柱の中で、今後最もエースらしい数字を出していきそうなのも今井投手だと筆者は見ている。もちろん3人ともこれからますます伸びて行くわけだが、その中でも筆者は特に今井投手のピッチャーとしての資質に注目している。
ダルビッシュ投手を参考にしたというフォームも、徐々に自分のものになりつつある。こうしてフォームが固まってくれば、来季は自ずと与四球率も向上して行くはずだ。
もちろんオープン戦を見てみない限りは正確なことは何も語れないわけだが、しかし現状の数値や成長具合で見て行くのならば、2022年の開幕投手は今井投手が最も相応しいと筆者は考えている。
昨年8勝だった山本投手が最下位のチームを優勝に導いたように、来季は今季8勝だった今井投手がライオンズを底辺から天辺に引き上げてくれるはずだ(今井投手と山本投手は同学年の高卒プロ入り投手)。そして今井投手のポテンシャルであればそれが十分に可能であると、筆者はすでに確信しているのである。