指導者として99%西武に戻れなくなった黄金時代のレジェンド

2021年12月16日公開

石毛宏典

完全に絶えぬ前に継承していきたい黄金時代のDNA

昭和から平成への変わり目にかけて、西武ライオンズは黄金時代の絶頂にあった。この頃のライオンズは、V9時代のジャイアンツよりも強いのではないかとさえ言われていた。

ライオンズとしてはこの黄金時代のDNAをもっと遺していきたいわけだが、現在ライオンズに在籍している主要ポストにいるレジェンドと言えば渡辺久信GM、編成部の潮崎哲也ディレクター、そして辻発彦監督くらいだろうか。

では他の黄金時代のレジェンドたちはもうライオンズには戻って来ないのだろうか?まずは秋山幸二元ホークス監督だが、彼は辻監督がライオンズに復帰したのと時同じくし、やはりライオンズの監督候補として名前が挙げられていた。だがこの時は秋山監督が実現することはなかった。

工藤公康前ホークス監督に関しては、現役の最後でまたライオンズのユニフォームを着た後、指導者としてライオンズに残っても良さそうな気はした。だがライオンズを1年で戦力外となった後も現役にこだわったことから、再びライオンズを退団するという形で去ったことで、西武球団もさらにもう一度工藤公康投手を指導者として招聘し辛くなったことは確かだと思う。

そして意外と一度も指導者としてライオンズに戻って来ていない人物として、平野謙氏の名前を挙げることができる。守備走塁面や職人技のバントで本当に高いスキルを持っていたのだが、しかし1993年にゴールデングラブ賞を獲得しながらもライオンズを戦力外になった影響なのだろうか、これまで指導者としてライオンズのユニフォームを着ることは一度もなかった。

ライオンズに戻れなくなってしまったレジェンド

また同様に、石毛宏典氏もライオンズへの指導者としての復帰が現実的に検討されたことはこれまで一度もなかった。石毛氏のライオンズ監督就任の話が挙がったのは、ライオンズの監督就任の話を蹴ってホークスに移籍した時だけだった。その後はホークスの2軍監督として(意図があったとは言え)じゃんけんでオーダーを決めたり、フロント批判とも取られる発言がありホークスには戻れなくなってしまった。

その後2002〜2003年にはオリックスの監督を務めたのだが、2003年は僅か20試合で解任されている。この時もやはり石毛監督はオリックスのフロントとの間に確執を生じさせている。このように二度も同じ過ちを繰り返していることから、ライオンズも石毛監督の誕生をリストから消してしまったのだろう。

ライオンズに戻れなくなったという意味では、伊東勤元監督のライオンズへの復帰は、今後限りなく100%に近い99%という確率で「ない」と言い切れる。その理由に関してここで書くわけにはいかないし、その理由を球団内の誰から聞いたのかも書くことはできない。なぜならオフレコだったからだ。

そしてその理由は筆者が知る限りでは、マスコミが報じたことも一度もない。マスコミも知らないのか、もしくは知っているけど忖度して書かなかったのかは分からないが、とにかく筆者もここでその理由を書くわけにはいかないのだ。だが、ある確かな理由から伊東勤元監督が今後ライオンズに復帰することはほとんどありえないというのが事実だ。

そしてやはり清原和博氏もライオンズへの指導者としての復帰は厳しいというのが現実だろう。ファンとしては「いつかは」という思いもあるが、しかしリハビリ中ということを考えればライオンズどころか、プロ野球への復帰自体が現実問題としては難しいだろう。

レジェンドで純粋な日本一を達成したのは渡辺久信監督ただ一人

こうして振り返ってみるとライオンズの黄金時代のレジェンドの中で、指導者として素晴らしい実績を残したのは東尾修監督、伊東勤監督、渡辺久信監督、辻発彦監督ということになる。そしてこの中でリーグ優勝からの日本一を達成しているのは渡辺久信監督ただ一人だ。

渡辺久信GMに関しては、実は今でも監督再登板の噂が絶えることがない。しかし東尾修氏に関しては年齢的には監督再登板は難しいだろう。だが東尾修監督のような人物が、1・2軍を行き来する統括投手コーチなどになってくれれば、ライオンズ投手陣の底上げもスピードアップするはずだ。

そして現職である辻発彦監督に関しては、ライオンズの監督になって以来まだ一度も「辻発彦らしい野球」をしたことがない。リーグ二連覇した時も打ちまくって勝ったという形で、勝つ時は豪快に勝つが、負ける時は手も足も出せない試合が多かった。

だがそろそろ投手陣の整備も進み、打線を線として繋げていける選手も揃って来た。2021年はまさにその過渡期だったと言える。今も昔も打力に頼った野球をするチームは短期決戦に弱い。しかしライオンズが今季あたりからようやく見せ始めて来た脱山賊打線のスタイルが形になり、先発三本柱の中から絶対的エースの存在が誕生して来れば、2022年は短期決戦で勝てるチームになっていけるはずだ。まさに黄金時代のライオンズのように。

筆者が辻発彦監督に感じている一つの物足りなさ

辻監督は本当に素晴らしい指導者だと思う。だが筆者が辻監督に対し物足りなさを感じている点が一つあり、それはチーム全体を同じ方向に向かせることができていない、という点だ。

もちろん優勝、日本一という目標は誰でも持っていると思うし、選手全員がその方向を向いているとは思う。だが大事なのは先に結果を見ることではなく、先にプロセスを大切にすることだ。

黄金時代のライオンズは、4番の清原和博選手でさえも自分を殺してチームバッティングに徹することが非常に多かった。チームの全員が、ONE FOR ALLの精神で個々の役割をしっかりと理解していた。つまりチームが勝つために今自分が何をすべきなのかを、全員が分かっていたのだ。

だが現在のチームはまだそのような大人のチームにはなっていない。山川穂高選手にしても今だに「自分がホームラン王になれば優勝できる」と考えているのだが、これは優勝できるチームの主砲の言葉としては相応しくはない。

主力としてまず考えなければならないのはチームの勝利であり、それを1つずつ積み重ねて優勝することだ。個人タイトルはその副産物であり、個人タイトルありきの勝利ではない。例え山川選手が50本塁打を打ったとしても、得点圏打率が今のように1〜2割台では話にならない。

辻監督は、このように未だ個を優先している選手に考えを改めさせる必要があると筆者は考えている。そういう意味では辻監督が個人的に臨時コーチとして清原和博氏を春季キャンプに招き、山川選手に「四番道」を説いてもらうのも良いのではないだろうか。そうすれば山川選手にとってもそれは大きな財産となり得るし、清原氏にとっても最高のリハビリとなるはずだ。

ここまで、辻監督は選手に優し過ぎたと思う。選手のやりたいようにやらせ過ぎていたと思う。伸び伸び野球と言えば聞こえは良いが、実際としてチームは一枚岩ではなかった。しかし来季はそうではなく、もう少し大人のチームになっていけるように、未だ個を優先する選手たちに、個より先にチームの勝利を重んじる考えができるように導いてあげて欲しい。

筆者が最も尊敬している野球人は三原脩監督だ。三原監督は「アマは和して勝ち、プロは勝って和す」という名言を残している。辻監督の下では二度リーグ優勝をしているわけだが、CSでは二年続けてホークスに手も足も出ずに負けてしまった。つまり辻ライオンズはまだプロとして和していない状態なのだ。

しかしここで辻監督が黄金時代のDNAを注入していくことができれば来季こそは日本一を奪回し、チャンピオンフラッグの下で和したチームはいよいよ新たな黄金時代を築き上げることができるだろう。

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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