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2024年8月20日公開

武内夏暉投手には球団側からポスティングを提案されるようなエースになって欲しい!

エース対決でしっかりと勝てる投手がいなくなってしまったライオンズ

この場でも度々書いて来たことではあるが、ライオンズには涌井秀章投手が去って以来新たな真のエースが誕生していない。涌井投手後にエースと呼ばれたのは岸孝之投手、菊池雄星投手、髙橋光成投手となるわけだが、いずれも真のエースと呼ぶには物足りなかった。

まず岸孝之投手の場合はエース対決になるとなかなか勝ち切れないところがあった。被本塁打の数もリーグトップクラスの多さで、特に涌井投手が去り、岸投手が表ローテの一番手で投げるようになってからは重要な局面で被弾してしまうことも少なくなかった。そして菊池投手に関しては根本的に上位チームにはまったく勝つことができず、最多勝を獲得した年でも下位チームからの白星がすべてだった。

そして昨季までは髙橋投手がエースと呼ばれていたわけだが、数字的には先発二番手クラスだったと言える。例えば涌井投手がエースだった頃の岸投手のような成績が、昨季までの髙橋投手の成績だった。確かに二桁勝利を挙げていたことは素晴らしいわけだが、しかしライオンズのエースと呼ぶにはあまりにも物足りない数字だった。

ライオンズを立て直すための課題は1つや2つではない。少し前まではリードオフマンの不在が主な補強ポイントとなっていたわけだが、もはやリードオフマンだけではなく打線全体が低調であるため、リードオフマンを作れればそれで万事OKという状況ではなくなっている。

しかし最も重要なのはやはり、涌井投手以来の真のエースの育成だろう。真のエースとは相手チームの先発投手よりも先にマウンドを降りることをせず、なおかつエース対決が年間を通して続いていく状況においても.600以上の勝率を維持できるピッチャーのことだ。

そのようなピッチャーが不在であることから、ライオンズが年々勝てなくなって来ていると見ることもできる。もちろん打線の不振も影響が大きいわけだが、しかし2〜3点の援護でチームを勝利に導けるのがエースだとすれば、打線が不振であっても勝っていかなければならない。

ただ、かつては「この投手が強いチームに入っていたら間違いなく200勝していただろう」と言われた投手も幾人かはいた。例えば小宮山悟投手は通算117勝を挙げているわけだが、200勝とまでは言わなくても、もし(近年のライオンズのように)当時の非常に弱かった頃のロッテではなく、黄金時代のライオンズでプレーしていたならば、150勝程度は勝てたのではないだろうか。

ちなみに渡辺久信監督代行のNPBでの通算勝ち星は125勝だった。もし小宮山投手がライオンズでプレーしていたならば、ライオンズで絶対的エースとして活躍していた渡辺久信投手をも凌いでいた可能性があったかもしれない。

現状のローテーション投手たちが真のエースになれる見込み

さて、では今のライオンズの中では今後一体誰が真のエースになり得る可能性を秘めているだろうか。ちなみに真のエースとはただ野球が上手いだけではなく、チームメイトの手本にもなれる存在である必要がある。そう考えると球団批判に近い言動を取ったことがある平良海馬投手は真のエースとなっていく可能性は低いと言える。もちろんメジャー志望も持っているため、今後長年ライオンズにいるわけではない、という意味も含めて。

では今井達也投手はどうかと言うと、確かに無双状態の時は山本由伸投手クラスのピッチングを見せてくれる。しかしその状態が毎年長く続かないのが致命的だ。未だ安定感に乏しい面も不安材料となっており、毎年これだけ波がある状態を見ると、エースと呼ぶにはまだ早いのだろう。

また、今井投手はメンタルトレーニングを否定してしまっており、このあたりの考え方を改めていかなければ、もう一段上の投手に進化していくことは難しいだろう。つまり来季以降も無双状態の時期があったとしても、山本由伸投手のように年間を通して無双状態を続けることはできないということだ。

隅田知一郎投手に関してもまだ波があると言える。将来的にはメジャーに渡った今永投手のレベルに近づいていく投手だとは思うのだが、現状ではまだ安定感に欠けている。隅田投手の場合は崩れる時は簡単に崩れてしまう傾向があるため、走者を出した時にもっと明確な形でギアを上げられるようになれば、すぐにでもエースクラスのピッチャーになることはできるだろう。

では渡邉勇太朗投手はどうかと言うと、将来的にはもちろんエースになっていける資質は十分に持っている。だが緩急をまだ上手く使えなかったり、配球のコンビネーションが未熟なところがあるため、このあたりの投球術を磨くことができれば、やはり二桁以上は勝てるようになれるだろう。ただエースという話になると、まだローテーションをしっかりと守った経験もないため、それを語るには時期尚早だと言える。

今のライオンズで最も真のエースに近い存在のピッチャーは武内夏暉投手

武内夏暉投手

現時点でのパフォーマンスのみで考えていくならば、やはり真のエースに最も近い存在は武内夏暉投手ではないだろうか。最近2試合に関しては連続KOとなってはいるものの、今季の全体的なピッチングを見る限り、ライオンズ投手陣の中では最も安定したピッチングを続けている。

ただし武内投手には股関節が硬いという弱点があり、投球フォームを観察しても股関節を上手く使いこなしていないという印象だ。股関節というのは下半身と上半身を繋ぐ役割を担っており、全スポーツ選手にとって最も重要な関節だと言うことができる。

もし武内投手が今後股関節の柔軟性を高め、今まで以上に上手く股関節を扱えるようになれば、投げるボールの強さと安定感はさらにアップしていくだろう。また、もっと上手く股関節を使えればリリースポイントが打者に近付き、エクステンションも長くなる。エクステンションというのはピッチャーズプレートからボールリリースまでの距離のことを言うのだが、毎年安定して勝てる投手というのはこのエクステンションが他の投手よりも長い。

例えばライオンズ時代の涌井秀章投手も1年目から2年目にかけて投球フォームをモデルチェンジしたことでエクステンションが大幅に長くなり、高卒2年目からあっという間に安定して勝てる投手へと進化していった。武内投手も涌井投手同様に股関節の使い方を改良することができれば、自身が憧れる和田毅投手同等の数字を残せるようになるだろう。

また、武内投手は非常に謙虚な性格でもある。あまり大きなことを言うことも決してなく、目の前の打者に対し集中して淡々と投げている。その直向きさにチームメイトも心を打たれ、「武内に勝ちをつけてあげたい」と思いながら打席に立ってくれるようになる。つまりかつての西口文也投手のように。

武内投手には将来的には和田毅投手のようなエースになっていってもらいたい。和田投手は決して速いボールを投げられるわけではないのだが、ストレートの伸びは球界トップクラスであるため、140km/h出るか出ないかのストレートであってもバッターは簡単に振り遅れてしまう。

そしてボールの出どころという意味でも和田投手は打者からは非常に見にくく、いわゆるスモーキーと呼ばれるタイプの投手だ。スモーキーとは、煙の中から突然ボールが飛び出てくるかのようにボールの出どころが見えない投手のことをそう呼ぶ。ライオンズにおいては涌井秀章投手以上のスモーキーはかつて存在していなかった。

和田投手も涌井投手もとにかくボールの出どころが非常に見にくく、なおかつエクステンションも長い。だからこそ和田投手はここまで日米通算165勝、涌井投手もここまで161勝を挙げることができている。筆者は、武内投手は股関節次第ではこの二人のような投手になれる可能性を持っていると見ている。

武内投手は技術的にも人柄的にも非常に好感度が高い投手で、やはりこういう選手が真のエースになっていくのだと思う。例えば涌井秀章投手にしても、ライオンズ、マリーンズ、イーグルス、ドラゴンズと渡り歩きながらも、すべての球団の選手とファンに愛されている。

一方髙橋光成投手や平良海馬投手はどうかと言えば、かなり早い段階からメジャー移籍を口にし、多くのライオンズファンをうんざりさせてしまっている。この時点でやはりエースとしての資質は乏しいのかなという印象だ。

武内投手もアスリートである限り、もしかしたらいつかはメジャーでプレーをしたいという思いも持っているのかもしれない。だがいつか実際にメジャーに行くのだとしても、髙橋投手や平良投手のような言動は慎むべきだ。そして選手側からポスティングを要求するのではなく、逆に球団側からポスティングを提案されるような選手になっていってもらいたい。

そう、大事なのは選手側からポスティングを要求するのではなく、球団側からポスティングを提案されるような選手になることなのだ。これこそがチームにもファンにも愛される真のエースの姿だ。武内投手には、髙橋投手や平良投手のようになるのではなく、チームやファンから背中を押されてメジャーを目指すような選手になってもらいたい。そしていつかメジャーに行くのだとしても、最後はまたライオンズに戻り、ライオンズのフランチャイズプレイヤーとして引退していくような選手になっていって欲しい。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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