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2024年8月 2日公開

今井達也投手がもう一段レベルアップするためにはメンタルの強化が不可欠

埼玉西武ライオンズ vs 東北楽天ゴールデンイーグルス/16回戦 ベルーナドーム
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Eagles 0 1 0 0 2 0 0 0 0 3 6 0
Lions 0 0 1 1 0 0 0 0 0 2 7 0

継投●今井達也佐藤隼輔松本航
敗戦投手今井達也 4勝7敗0S 2.59
本塁打野村大樹(2)
盗塁蛭間拓哉(3)

今井達也投手

7回3失点でQSクリア、と書くと確かにしっかりと試合を作ってくれたし、合格点をあげるべきだとも言うべきだろう。しかし先発したのは今季はエースとしてローテーションを回っている今井達也投手だった。エースということを考えると、やはりQSのクリアだけで合格点をあげるわけにはいかない。

数字的には7イニングスを投げて8奪三振なのだから、今井投手の試合後のコメント通り調子は悪くなかったのだと思う。ボール自体も比較的走っていたように見えた。しかし点の取られ方がエースらしからぬ内容で、チームを勝ちに導けなかった時点でエースの役目は果たせなかったと評価すべきだろう。

これが例えばプロ2年目で、先発経験もまだ乏しい青山美夏人投手ならば話は別だ。まだローテーションに固定されていない青山投手の場合、チームの勝ち負け以上にしっかりと試合を作れたことを評価すべきだし、もし青山投手が7回3失点という内容であれば十分合格点をあげられる。

しかしエースの場合はそうもいかないのだ。歴代のエースと呼ばれた投手たちを遡っていくと、涌井秀章投手、松坂大輔投手、西口文也投手らは、しっかりと試合を作るのは当たり前で、その上で上位球団に勝つピッチングを続けていた。だからこそ彼らはエースと呼ばれていたわけだが、しかし涌井投手が退団すると、岸孝之投手、菊池雄星投手ではなかなか上位球団に勝つことができなかった。つまりライオンズのエースのDNAが途切れてしまったということだ。

だが今井投手であればそのDNAを甦らせることができると筆者は信じている。チームに尽くす非常に漢気のある選手だし、自分が先発した試合に対しての責任感も強い。そして筆者がここで書くまでもなく、誰よりも今井投手自身がこの試合の敗戦を悔やんでいるはずなのだ。

ではこの試合のどのあたりが良くなかったかと言えば、チームが2-1と逆転してくれた直後の5回表に再逆転を許してしまった点だ。一死一塁という場面で迎えたのはイーグルスのルーキー中島大輔選手だったわけだが、この選手に対し今井投手はスライダーをど真ん中のやや高めに投げてしまった。もちろんこれはコントロールミスだったわけだが、この失投を捉えられて、今井投手は中島選手にプロ初ホームランを献上してしまった。

点を取ってもらった直後の失点が最も良くないパターンであることは、野球をやっていればプロでなくてもよく知っている。そしてそれがプロであればなおさらで、仮に最終的に7回3失点だったとしても、今井投手は5回表だけは何としても無失点で切り抜ける必要があったのだ。

そう考えると格下の打者を確実に抑えていくためにも、中島選手を打席に迎えたこの場面では今井投手はもっと慎重に攻めていくべきだったのだ。もしくは格下の打者を圧倒するためにもギアを上げるべきだった。しかしそうはならず、初球のスライダーが失投となってしまったのは、これは今井投手の油断と言わざるを得ない。

今のままでは、今井投手は山本由伸投手クラスのエースにはなれないだろう。その理由はこれまでも度々この場で書いてきたように、今井投手はメンタルトレーニングの存在を否定しているためだ。今井投手は恐らくは気が強いことと気持ちが強いことを同様に考えてしまっているのではないだろうか。

確かに今井投手は気が強いピッチャーだ。しかしメンタルの強弱というのは常に冷静でいられるかどうかであるため、実は気の強さはメンタルや気持ちの強さとは同じではない。例えばいくら気が強い選手であっても、その気の強さにムラがあるようでは安定したパフォーマンスを見せ続けることはできず、まさにここまでの今井投手のような状態になってしまう。

今井投手が日本代表レベルのエースになっていくためには、やはりメンタルの強化が必要だと筆者は考える。メンタルトレーニングによってメンタルを鍛えられればマウンド上での気持ちのムラもなくなっていき、間違いなく常に安定したパフォーマンスを発揮できるようになるはずだ。

かつてライオンズが黄金時代を築いていた時代には、メンタルに関する科学的エビデンスはまだ少なく、メンタルトレーニングという概念さえも根性論で片付けられていた。しかし現代ではメンタルトレーニングに関するエビデンスは数え切れないほど存在しており、科学的にメンタルトレーニングというものの効果も世界中のスポーツ界で認められている。

だからこそメジャーリーグにはすべての球団にメンタルトレーナーやメンタルカウンセラーがいるわけであり、今井投手も沢村賞レベルの投手に進化していくためには、物は試しと考え、一度メンタルトレーニングに本格的に挑戦してみるのも良いのではないだろうか。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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