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2024年7月20日公開

調子が良くても悪くても外崎修汰選手は下位打線で起用し過度な期待を寄せるべきではない

埼玉西武ライオンズ vs 福岡ソフトバンクホークス/16回戦 ベルーナドーム
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Hawks 0 3 0 0 0 0 0 0 0 3 7 0
Lions 3 0 0 0 0 0 0 2 × 5 9 0

継投今井達也○ボー・タカハシSアルバート・アブレイユ
勝利投手ボー・タカハシ 2勝6敗0S 3.42
セーブアルバート・アブレイユ 1勝4敗16S 2.23
本塁打
野村大樹(1)、蛭間拓哉(1)

調子が良くても悪くても外崎修汰選手は下位打線で起用し過度な期待を寄せるべきではない

最近のライオンズではあまり見られなかった泥臭い野球をする野村大樹選手

今日のホークス戦は、初回に幸先よく3点を先取したものの、先発今井達也投手が2回表にスリーランホームランを浴び、3点のリードを一瞬で吐き出してしまうところからゲームが始まっていった。

初回に3点取っただけにもう少し楽な展開の試合を期待したわけだが、そうは問屋が卸さなかった。そんな試合の中、今日は野村大樹選手の活躍が素晴らしかった。まず初回に、古巣ホークスから恩返しと言わんばかりの見事なツーランホームランを放って見せた。

この野村選手、打率こそ.195に留まっているが、得点圏打率は10打席で8打数4安打の.500、7打点となっているのだ。まだ打席数は少ないとは言え、この数字は非常に目覚ましいと言って良いだろう。渡辺久信監督代行も野村選手のことを勝負強いと評価している通り、ライオンズ移籍後はチャンスで本当に勝負強いバッティングを見せてくれている。

守備力、走力に関しては平均値よりも低いと言わざるを得ないが、バッティングに関しては打席数が増えるほど思い切りの良さが見られるようになってきた。移籍直後は中途半端なスウィングで凡打を重ねる場面が目立っていたわけだが、ここ数試合を見ているとライオンズの空気に慣れてきたのだろうか、しっかりと振り抜くことが増えてきた。そしてそれがここ数試合の好成績に繋がっているのかもしれない。

野村選手を見ていると、不器用ながらも打球に喰らい付いていく姿勢が見て取れる。先日も、確か犠牲フライを打った場面だったと思うのだが、必死にボールに喰らい付いて犠牲フライを打ちながらも、体勢を崩して打席付近で地面に手を付いてしまう場面があった。しかしそれでも、まるで這ってでも一塁に向かおうとする姿勢にはかなり好感を持てた。

野村選手はまだ23歳と若く、伸び代もまだまだある選手だ。そのため良い打撃コーチと巡り会うことができれば、将来的にはある程度安定した数字を残せるようになるのではないだろうか。どちらかと言えばスタイリッシュにプレーをしたがるライオンズの若手選手たちと比較し、野村選手はいわゆる泥臭い野球をする。そういう意味ではこれまでのライオンズに新風を吹き起こす存在だと言える。

若林楽人選手と松原選手のトレードは今のところ失敗だったと言わざるを得ないが、齊藤投手と野村大樹選手のトレードはひとまずは成功だったと評価して良いのではないだろうか。

エースとして慎重さが足りなすぎた今日の今井達也投手のピッチング

今井達也投手

さて、先発マウンドに登った今井達也投手に関してはやや心配だ。決して大崩れしているというわけではないのだが、最近は3試合連続でエースらしからぬピッチングを見せてしまっている。

今日の試合に関しても、やはり野球の鉄則として点を取った直後に取られてはならないわけだが、しかし3点を取ってもらった直後に3点のリードを一瞬で吐き出してしまった。せめてリードを守り自身に白星を付けて欲しかったわけだが、2回のピッチングを見ていると、簡単にボールを投げに行って簡単に打たれてしまったという印象を受けた。

相手が首位ホークスなだけに相手をなめていたわけではないと思うのだが、2回のピッチングに関してはあまりにも慎重さが足りていないように見えた。連続四球で走者を2人背負った後、柳町選手にホームランを打たれたボールはほぼ真ん中のストレートだった。

初球もストレートを内角高めのボールゾーンに投げ、そのボールは155km/hだったわけだが、ホームランを打たれたボールはほぼ真ん中の153km/hだった。つまり初球よりも圧倒的に難易度が下がったボールが来たため、今季ここまでは1本しかホームランを打っていない柳町選手でもスタンドインさせることができてしまった。

配球にはいくつものセオリーが存在するわけだが、その中の一つが1球前よりも低い難易度のボールは投げないというものがある。配球は常に、1球前よりも難易度を上げたボールを投げていく必要があるわけだが、それを実現させるためにバッテリーは上手くボール球を使っていかなければならないのだ。

しかし今日の今井投手は、連続四球を出した直後のバッターへの初球がストレートでボールになってしまったためか、2球目であり得ないくらい簡単にストライクを取りにいってしまった。ちなみにバッターからすると、四球直後のピッチャーはストレートを投げてくる確率が非常に高いため、ストレート一本で待っているケースがほとんどだ。そのバッターに対し簡単にストレートを投げてしまったのだから、これは今井投手と古賀悠斗捕手に慎重さが足りなすぎたと言うしかない。

今季序盤はほとんど無双状態のピッチングを続けていた今井投手ではあるが、やはり思うように勝ち星が増えないことで焦りが出てきているのではないだろうか。四球の数も不調時に近い割合に増えてきているし、少なくとも今現在、今井投手自身好調とは感じていないはずだ。

今回渡辺監督代行は三本柱をホークス戦にぶつけてきたわけだが、今井投手のここ数試合の状態を見る限り、三本柱はもう少し勝てる見込みの高い対戦相手に分散させた方が良かったのではと思う。こう言っては何だが、今のライオンズがホークスやマリーンズに勝てる見込みは非常に低い。だからこそ三本柱すべてを同一カードで使っていくのは今後は避けるべきだろう。それどころか、もしかしたらエースをカードの初戦に当てるローテーションも今のライオンズの状態では避けるべきなのかもしれない。

だが、このホークス3連戦はオールスター休み前最後のカードとなり、月曜日から木曜日までは試合はなく、明日の試合を終えるとライオンズの次の試合は金曜日までない。そのようなスケジュールもあり三本柱を同一カードに持ってきたのだとは思うが、これも来週の金曜日以降はまたローテーションも再編されることになるだろう。そして後半戦の開幕も今井投手が務め、次のエスコンフィールドでの試合は、久しぶりに無双状態に入っていることを期待したい。

調子が上がってきても過度な期待を寄せるべきではない外崎修汰選手

そして今日は最後に外崎修汰選手についても少し書いておきたいのだが、やはり外崎選手の旬は短すぎる。怪我から復帰した6月は最終的には8試合の出場で.296という月間打率になっていた。つまり太腿の張りで抹消される直前と、復帰直後の数試合だけは調子が良かったということだ。

しかしこの好調もあっという間に下火になってしまい、7月はここまで14試合で月間打率.188と再び不振を極めている。これだけ旬が短く安定感のない外崎選手は、やはり好調であっても上位打線で起用すべきではないだろう。上位打線やクリーンナップを打つべき選手は、調子が悪くてもそれなりに打てる打者でなければならない。

ただ、残念なことにライオンズには今それだけのレベルにある打者はいない。だがベテランである外崎選手には伸び代はもうほとんど残されていないため、同様にまだ安定感がない打者ということであれば、外崎選手よりも若い選手を上位打線で起用すべきだ。

今日は見事な勝ち越しタイムリーヒットを見せてくれた外崎選手ではあるが、数日前のように七番〜八番を任せるのが良いのではないだろうか。ちなみに外崎選手はオールスター後の初戦のエスコンフィールドを苦手としており、今季エスコンフィールドでの打率は.105となっている。このあたりの数字を踏まえても、やはり今後はもう外崎選手には過度な期待を寄せるべきではないだろう。

もちろん我々ファンからすると、外崎選手は全打席でヒットを打ってくれるはずだと信じているわけだが、しかし首脳陣までそのような期待をしていてはいけない。首脳陣は選手たちを信頼しながらも、信用してはならないのだ。監督は常に、選手は失敗する前提で戦術を敷いていく必要がある。

そのような戦い方が隙をなくしていくわけだが、今のライオンズはどちらかと言えば隙だらけの状態だ。だからこそ打ったり打たなかったりの外崎選手は下位打線を任せることで、外崎選手が不調に陥った時のチームへのダメージを軽減させていく必要がある。

守備力が抜群なだけに、せめて.265くらいを下位打線で打ってくれたら打線の繋がりももっと良くなるとは思うのだが、近年の外崎選手の数字を見ているとそれさえも贅沢に思えてしまうのはやや切ないところだ。だが外崎選手には、今絶好調の源田壮亮主将に触発されて、オールスター明けから再び調子を上げてきてもらいたい。それが今ファンが外崎選手に期待することだ。

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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