2021年12月20日公開
埼玉西武ライオンズにも世代交代の波が押し寄せてきている。打線に関してはもちろんなわけだが、守護神に関してもそうだと言えるだろう。近年は増田達至投手が絶対的守護神として君臨し続けて来たわけだが、今季はシーズンを通して不調が続いてしまった。
増田投手は来季は34歳となるわけだが、勤続疲労が溜まって来ているのだろう。今季投げていたボールは、過去2年のボールとは異質なものだった。ストレートには力の翳りが見え、変化球にもキレがなかった。
もちろん来季はまた復調してくれるとは思うのだが、しかしその保証はないのがプロ野球という世界だ。豊田清投手コーチとしては、来季も増田投手が復調して来ないこともあらかじめ想定しておかなければならない。
だが幸運なことにライオンズは平良海馬投手の存在がある。仮に増田投手が復調できなかったとしても、守護神不在に悩まされることはない。一昔前はグラマン投手に守護神を任せなければならなかったほど、守護神不在に悩まされていたわけだが、今はそのような心配はない。
それでも心配は点はある。それは平良投手が先発を志望しているということだ。今季に関しては先発に対する思いは封印していたようだが、それでも先発に対する思いを断ち切ったのかどうかは筆者には分からない。
もし平良投手が今後も先発転向への意欲を持ちながらも、ライオンズが平良投手をリリーバーとしてしか起用しなかった場合、何年か後にはFAで先発ができる場を探すことだってあり得る。
もちろんそんなことはまだまだ先の話であるわけだが、渡辺久信GMの頭の中にまだその懸念はない、ということはありえないだろう。なぜならそこまで見据えて中長期的にチームビルディングを行うのが渡辺GMの手法だからだ。
今季、平良投手は見事な活躍を見せてくれた。開幕から39試合連続無失点というのは、2リーグ制後では最長であるらしい。20試合連続無失点でも十分に素晴らしいのに、39試合連続というのは筆舌に尽くし難い記録だと思う。この数字を塗り替えるとしたら、やはりまた平良投手になるのだろう。
だが平良投手は今オフに右足の手術を受けている。10月23日に手術を受けて、3ヵ月で実戦復帰できるとのことだったが、しかし今季と同じパフォーマンスを見せられるかどうかは、春になってみなければ分からない。回復が早まることもあれば、遅れることだってあるからだ。
しかしその術後の経過さえ問題なければ、来季の開幕守護神は順当に行けばやはり平良投手になるのだろう。もちろん平良投手が先発を志望しなければ、の話だが。
平良投手は伊良部秀輝投手と同じタイプの投手だと思う。もちろん性格などはまったく違うのだろうが、選手としてのタイプはとても良く似ている。剛腕を唸らせ剛球を投げるタイプかと思えば、実際にはメカニックを非常に重視しており、投球フォームに対しても他の選手以上に研究熱心だ。
ちなみに伊良部投手は非常に繊細な方だったと言う。一時は悪童とも呼ばれた選手だったが、しかし根は優しく、常に野球のことを考え、やはり誰よりもフォームに対し研究熱心な選手だった。あんなに若くして亡くなってしまったことが本当に惜しい野球人だったと思うし、筆者も個人的に尊敬している野球人の一人だった。
平良投手に関しても、70万円ほどするポータブルタイプのラプソードを自腹購入している。この機器の数値を見ながら、投球フォームの改良に努めているらしい。平良投手はきっと、自分で自分自身のコーチができるような、俯瞰力を持った選手なのだろう。
もしライオンズ投手陣の中で別に守護神を任せられる若手投手が出てくれば、平良投手も先発に挑戦する機会をまた与えてもらえるかもしれない。
宮川哲投手や水上由伸投手などは、今後守護神候補として名乗りを上げていってもいいと思う。今季は低迷してしまった宮川投手だったが、もう一段レベルアップできれば十分に守護神の座を狙っていくことができるだろう。
そしてもしまた平良投手が先発に挑戦できるのであれば、やはり先に名を挙げた伊良部投手のような豪快な先発ピッチャーになっていってもらいたい。
プロになった以上は、やはり一番やりたいポジションに挑戦するのがベストであると筆者は考えている。平良投手がもしまだ先発へのこだわりを持っているのであれば、状況さえ許せば首脳陣もチャンスを与えるべきだろう。
もちろん守護神を不在にしてしまうような状況にはできないわけだが、増田投手が完全復活したり、他の若手投手が目覚ましい飛躍を見せて来たなら、チャンスは与えてあげなければならないと思う。そうしなければ、本当にFAで先発をできる場を探してしまうことにもなるだろう。
だが可能な範囲でチャンスを与えてもらえれば、仮に先発転向が上手くいかなかったとしても平良投手の中には首脳陣や球団への感謝が生まれ、FA取得後もライオンズ愛を表明してくれるようにもなるはずだ。
2020年は開幕からノーヒットで27個のアウトを積み重ね、リリーバーとして1人で9イニングス以上をノーヒットに抑え続けた。その姿を覚えているファンであれば、平良投手が今度は先発投手として正真正銘のノーヒットノーランを達成する姿を見てみたい思っている方も多いのではないだろうか?もちろん筆者もその一人だ。