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2024年8月14日公開

直近5試合の打率が.062だった外崎修汰選手を一番に起用した理由とは?!

埼玉西武ライオンズ vs 福岡ソフトバンクホークス/19回戦 ベルーナドーム
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Hawks 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 9 0
Lions 1 0 0 0 3 0 0 0 × 4 5 1

継投○隅田知一郎H平良海馬Hボー・タカハシSアルバート・アブレイユ

勝利投手隅田知一郎 7勝8敗0S 2.95

セーブアルバート・アブレイユ 1勝5敗18S 2.19

失策野村大樹(3)

走塁妨害野村大樹

運にも恵まれ始めた隅田知一郎投手はこれから調子が良くなるはずだ

今季ライオンズは四度の8連敗を記録しているわけだが、9連敗はなかった。そして今回も9試合目に隅田知一郎投手が6回1失点と好投し、チームの連敗を8で止めることができた。今日は8月14日であるわけだが、ライオンズの勝利は実に8月3日以来の久しい出来事となった。

ただ、欲を言えば隅田投手は最低でもあと1イニング投げなければならなかった。しかも7回は八番から始まる下位打線だったため、6回まででスパッと継投に入ったのは意外だった。しかしベルーナドームの過酷な暑さを考えると、やはり他球場の100球とは疲労度がまるで違うのだろう。そのようなことも考えられ、今日の隅田投手は6回96球でしっかりと試合を組み立てての降板だったのかもしれない。

隅田投手が良いピッチングをする時は、だいたいチェンジアップが良いところに決まることが多い。今日もヒットこそ7本打たれたわけだが、しかし要所要所ではチェンジアップをしっかりとコントロールし、三振が欲しいところで三振を取ることができていた。

特に2回〜6回はほぼ毎回得点圏に走者を背負いながらも、スリーアウト目はすべて三振で取っている。走者がいる場面で二死からヒットを打たれるとあっという間に加点されてしまうため、特に得点圏では三振を取れるのが理想とされている。ただし三振を狙いすぎて今井達也投手のように四死球で自滅してしまっては元も子もない。

だが今日の隅田投手はチームが8連敗中で、何とかこの連敗を食い止めたいという思いが強かったのだろう。今日のピッチングはいつも以上に集中して丁寧に投げていたように見えた。だからこそ三振が欲しい場面でしっかりと三振を奪ることができたのだろう。

ただし二塁打を4本も打たれたというのは次回への反省事項となる。今日はこれが1失点のみで済んだが、巡り合わせが良くなければ大量失点に繋がっていた可能性もあった。今日の試合に関しては本当に巡り合わせがよく、ホークスの七番石塚選手が隅田投手のボールにまったく合っておらず、その結果石塚選手は3打席連続でチャンスで隅田投手の前に三振に倒れている。

巡り合わせが良いと、二塁打を4本も打たれても1失点に抑えることができる。そして調子が良い投手、調子が良い打者というのはこの巡り合わせが良くなることが増えていくのだ。例えば単純な話、自分が得意としている投手との対戦が増えることによって打者ならヒットが増えていき、ヒットが増えていくうちに調子自体も良くなり絶好調モードに入っていく。

今日の隅田投手は確かに丁寧に良いボールを投げていたわけだが、しかし石塚選手に助けられた面もあった。この巡り合わせが良くなり始めた幸運を逃さないで欲しい。そしてこの運を生かしながら調子をさらに上げていき、今日時点で7勝8敗という数字を9月中には10勝以上に乗せていってもらいたい。

やはり隅田投手には先輩としての意地を見せてもらいたく、今チームで最も安定感のある武内夏暉投手以上の勝ち星は挙げていってもらいたい。隅田投手にとって10勝というのは、通過点であるべきなのだ。

2022年までのような凄みがまだ戻って来ていない平良海馬投手

さて、今日隅田投手を継いで二番手のマウンドに登ったのは平良海馬投手であるわけだが、2022年のリリーフ時と比べるとまだピッチングの凄みは戻って来ていないように見える。

先発転向前の2022年はストレートの平均が155.4km/h程度あった。そして今日のピッチングではストレートを10球投じたのだが、平均球速は154.5km/hだった。ストレートのアヴェレージだけを見ると1km/hの違いで2022年と大差はないのだが、最速は今日は156km/hに留まっていた。もちろん156km/hも非常に速いわけだが、平良投手の最速が160km/hであることを考えると、まだ本調子ではないのかなという印象だ。

もちろんまだ病み上がりであるためギアを上げ切っていないとも考えられる。だがそれ以上に、この2シーズンで肩を先発用に作り直しているため、その分スタミナは上がったが球速が落ちてしまったことが考えられる。極端に言うと先発投手というのはマラソンランナーで、リリーバーはスプリンターだと言えば分かりやすいかもしれない。

平良投手はスプリンターの体をマラソン向けに作り直したため、瞬時での出力は間違いなく落ちているはずなのだ。ただこれは一時的なものであるため、今オフにまたリリーバーとして体を作り直せば瞬間最大出力はまた2022年と同水準まで戻すことができるだろう。専門的に言うと遅筋と速筋というのはそう簡単に作り変わるものではないため、平良投手の場合はオフシーズン1回分で十分にリリーフの体に戻せるはずだ。

しかし気になるのが来季の平良投手の起用法だ。さすがに今オフの平良投手のポスティングは99%ないと言えるため、トレードなどの特殊事項がない限りは平良投手は来季もライオンズのユニフォームを着ることになる。果たして平良投手自身はどう考えているのだろうか。先発に戻ることを前提に一時的にリリーフに入っているのか、それともリリーフの方が自分に合っていたと考え直したのか。これに関しては平良投手の今後のコメントを待つしかない。

ただしメジャーで先発となると、今の平良投手のレベルでは厳しいだろう。ストレートに関しては最速160km/hであるわけだが、これはあくまでもリリーフとして絶好調だった時の数値だ。先発としてのストレートのアヴェレージは151km/hにとどまっており、さすがにこの球速ではメジャーではNPBのように抑えることはできない。

そして日本人投手がメジャーで活躍するための一つの目安になるのがフォークボールの有無だ。フォークボールを上手く操れると、日本人投手でもメジャーで大成できる確率が高まる。平良投手の場合はスプリッターを投げるわけだが、その球速が133km/h前後なのだ。

フォークボールであれば133km/hでも通用すると思うのだが、スプリッターであれば140km/h台まで持っていかなければ、メジャーでは簡単に捉えられることが多い。そして本当にメジャーで通用する投手になるためには、カッターとツーシームの精度をもう少し上げると良いのではないだろうか。

メジャーではムーヴィング・ファスト・ボールという動く速球を投げられると大きな武器になる。実際にメジャーで綺麗なフォーシームストレートを武器にする投手はそれほど多くなく、平良投手のようなパワーピッチャータイプの大半はツーシーム系で芯を外しにいくピッチングで打球の飛距離を縮めている。

あとはダルビッシュ投手のように、どの球種を投げてもフォームが変わらないというレベルになってくるとメジャーの先発でも通用するとは思うのだが、しかし平良投手は現状、球種によってフォームが変わることがある。つまり平良投手は実はまだ発展途上の投手であるということなのだ。

そして今後実際にさらにレベルアップするためにも、まずは先発一本か、リリーフ一本に絞るべきだろう。それは今シーズンが終わり秋季キャンプでは間違いなく明確になるとは思うのだが、しかし先発としてはストレートのアヴェレージが151km/hであることを考えると、リリーバーとして160km/h以上を目指した方が平良投手の場合は活躍しやすいのではないかと筆者は個人的には考えている。

外崎修汰選手が生きる道は選球眼の良さによる出塁率の高さにあり!

直近5試合の打率が.062だった外崎修汰選手を一番に起用した理由とは?!

打線の方では今日は外崎修汰選手が良い働きを見せてくれた。今日も一番に入り4打数2安打で2打点、ヒットは2本とも二塁打だった。外崎選手には何とかこの好調さをキープしてもらいたいわけだが、しかし外崎選手の好調が長続きしたことは過去にはほとんどなかった。近年は好調である期間が特に短く、活躍した翌週には絶不調になっていることも少なくない。

実際最近の外崎選手を観察しても、今日に関しては2安打で大活躍を見せてくれたが、昨日までの直近5試合では16打数1安打でこの間の打率は.062だった。この数字でよく首脳陣が外崎選手を一番に起用したなと筆者は思ったのだが、しかし首脳陣から見たら、恐らくは外崎選手が好調モードに入ったという何らかのシグナルを見つけたのだろう。

もちろん源田壮亮主将が一番打者としてなかなか機能し切れていないという面もあり、できれば源田選手は二番で使いたかったという事情もあったとは思う。だがそれにしてもよく首脳陣は外崎選手を一番で起用したなと思う。そして今日に関してはその起用が当たったのだから、何とかこの繋がりを明日以降も続けてもらいたい。

やはり野球というスポーツは一番打者の出塁率が高いほど得点力がアップする。一部では「一番打者が100%先頭打者として打席に立つのは初回だけ」とも言われるが、しかし重要なのはそこではない。重要なのは如何にクリーンナップの前でチャンスメイクをするかなのだ。それができれば一死でも二死でも関係ない。

例えば一死だったとしても、一番打者が出れば二番で送って二死二塁というチャンスでクリーンナップを迎えられる。さらに一番打者が盗塁をしてからのバントであれば二死三塁だ。このようなチャンスメイクができればチームの得点力はグングン上がっていく。それは打率こそ.258でありながらも34盗塁しているホークスの周東選手(52得点はリーグ3位)の活躍を見れば明らかだ。

周東選手の出塁率は.316で、だいたい3回1回、1試合に最低1回は出塁することができている。そして四死球や相手の失策で出塁することができれば、その走力で四球を二塁打同様にできてしまうのだ。本来であればライオンズでは金子侑司選手が周東選手のような役割をしなければならなかったわけだが、残念ながら金子選手は4年契約を結んだのちはまったく活躍できなくなってしまった。

ちなみに外崎選手の出塁率は.330で、.230という打率と比較をすると非常に高い。つまり外崎選手はそれだけ選球眼が良いということで、その分四球も今季はここまで350打席で39個となっている。周東選手の368打席で21四球の倍近い数字になっているのだ。おそらく首脳陣としてはこの外崎選手の選球眼の良さに改めて目をつけたのではないだろうか。

仮にヒットを打てなかったとしても、外崎選手には選球眼の良さがある。実際昨日までの5試合で打率は.062だったとしても、その間は四球を3つ選んでいるのだ。外崎選手の場合はこれで良いのではないだろうか。調子が良い時は今日のように中軸並のバッティングを見せ、調子が悪ければ栗山巧選手のように選球眼の良さでチャンスメイクをする、これが今後外崎選手の生きる道になっていくのではないだろうか。

もちろん外崎選手は周東選手ほど走ることはできないわけだが、しかしシーズンをフルで出場すれば20盗塁以上はできる走力は持っている。また、外崎選手が出塁すれば源田主将とのコンビで何でもできるはずだ。例えばバントだけではなく、ヒット&ランやラン&ヒット、バスター&ランなど色々なことができるコンビであるため、しばらくの間は数字に左右されず、トノゲンによる一・二番コンビを固定すべきなのかなと筆者は考えている。

やはり、少なくとも外崎選手はクリーンナップタイプの打者ではないため、下位打線じゃないのであれば一・二番が合っている選手のように見える。そしてクリーンナップのようにヒットで走者を返す必要があるというプレッシャーから解放され、「四球でOK」という楽な気持ちで打席に立てれば、もしかしたら外崎選手の好調期間ももう少し長くしていけるのではないだろうか。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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