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2024年8月22日公開

ペース配分を変えたことが奏功している西武先発陣の今後の役割は上位いじめ!

埼玉西武ライオンズ vs オリックスバファローズ/20回戦
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Buffaloes 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 6 0
Lions 0 0 0 0 0 1 0 0 × 1 9 0

継投○隅田知一郎H平良海馬H佐藤隼輔Sアルバート・アブレイユ
勝利投手隅田知一郎 8勝8敗0S 2.81
セーブアルバート・アブレイユ 1勝5敗20S 2.08
盗塁源田壮亮(8)

もうベテランや外国人選手にほとんど機会は与えられなくなった西武打線

今日、ライオンズは6月29日以来約2ヵ月振りの連勝を記録した。2ヵ月間も連勝がないというのは、長いプロ野球史の中でも頻繁に起こっていたことではない。もちろん15連敗などと比べればレアではないのかもしれないが、しかし通常、最下位チームであっても月に一度くらいは連勝できるものだ。

実際セ・リーグの最下位であるスワローズは45勝60敗4分、勝率.429という成績で、3月から8月までの間、すべての月で連勝を記録している。このスワローズの成績と比較をしても、ライオンズがどれだけ勝てていないのかがよく分かる。

だがライオンズが勝てていないことなど誰の目にも明らかだ。楽天イーグルスの初年度、2005年の成績は38勝97敗1分で、勝率は.281だった。それと比べるとライオンズの現段階での勝率は.308となっているため、初年度のイーグルスよりはまだマシということになるだろうか。

なおイーグルスの初年度はチーム打率は.255とそこそこ打ってはいたのだが、如何せんチーム防御率が5.67と惨憺たる数字だった。打線が点を取っても投手陣がそれ以上に取られてしまうというのが2005年のイーグルスで、やはり投手陣が足りていないと勝てる試合にも勝てなくなってしまう。

一方今季のライオンズはチーム防御率は3.31と、可もなく不可もなくといった数字になっている。そしてチーム打率に関しては本日現在では.207となっており、創設初年度のイーグルスのチーム打率よりも遥かに下回る。そのため投手陣が奮闘してもまったく援護点を得られず、最後の最後で投手陣が力尽きて敗れる試合も多かった。

今季のライオンズの場合、今更言うまでもなく打線に問題があった。メジャー経験豊富なヘスス・アギラー選手フランチー・コルデロ選手を獲得したわけだが、一体誰がこの二人が共倒れすると予測しただろうか。多くの評論家たちもこの二人は活躍すると断言していた。

8月も末に近付いてきた段階で一軍に出る見込みがないのであれば、早めにウェーバー公示にかけるべきだとも思う。さすがにこの時点で一軍にいないという状況で、来季以降の話をすることはできない。せめてオールスター後に再合流を果たしていれば話も変わるわけだが、残念ながら今のところ二人とも一軍に上がってくる気配はない。

渡辺久信監督代行も恐らくは、若手に多くの出場機会を与えて来季を見越した戦いをしているのだろう。最近はトノゲンコンビと炭谷銀仁朗捕手以外のベテランの出場機会もかなり減ってきている。

しかし野村大樹選手に関しては一軍で起用し続けるべきだろうか。時々活躍することはあるものの、打率は.200と低迷しているし、守備や走塁でも拙いプレーをすることが少なくない。

野村選手を指名打者で起用するくらいなら、もっと怖さのあるコルデロ選手を使った方がいいのではないかとも思えるわけだが、二軍で56試合に出場して打率.294、5本塁打、29打点という成績を残していながら一軍に上げてもらえないというのは、やはり来季は構想外になったと考えるのが自然だろう。

平良海馬投手をブルペンに戻した渡辺久信監督代行のファインプレー

さて、とにかく点が取れない中での連勝というのはこれは投手陣を称えるべきだ。昨日の試合も今日の試合も1-0での辛勝であり、特にリリーフ陣の奮闘には目を見張るものがあった。やはり平良海馬投手がブルペンに入ったことで、7回以降のリリーフ陣の安定感が飛躍的に上がったように見える。

これまでは佐藤隼輔投手にかかる負担が大きく、中村祐太投手にしても実績以上のパフォーマンスが求められる場面が非常に多かった。そのため二人とも今季は途中で息切れを起こし登録抹消を経験している。

それが平良投手がブルペンに加わったことで負担が分担され、ここ最近は佐藤隼輔投手も無失点リリーフをずっと続けている。8月に関しては7試合に登板して防御率は未だ0.00のままだ。WHIPも7月は0.23、8月も0.32となっており、2〜3イニングスに1人という割合でしか走者を許していない。疲れにより調子を落とした6月のWHIPが2.63だったことを考えると、現在の佐藤投手は絶好調と言っても過言はないだろう。

そして今日の試合に関しても隅田知一郎投手が6回でマウンドを降りると、平良投手、佐藤隼輔投手、アルバート・アブレイユ投手がいずれも1イニングを三者凡退で抑えてみせた。これでいわゆる勝利の方程式が確立されたと思って間違いないだろう。

勝利の方程式が確立されたということは、あとは先発が比較的早く崩れたとしても試合そのものが壊れていなければ、5〜6回の2イニングスのみを残りのリリーバーたちで全力で抑えにいけば良くなり、勝利の方程式以外のリリーバーたちも計算してマウンドに登りやすくなる。そしてもちろん先発はまずは6回までしっかりと試合を作り、7回以降は1イニングずつと考えられるようになることで、初回から飛ばしやすくもなる。

つまり勝利の方程式が確立されると、一般的には7〜9回だけではなく、5〜6回に投げるリリーバー、6〜7回まで投げる先発投手にもこのような好影響が出てくるのだ。こう考えると怪我から治ってきた平良投手をブルペンに戻したのは、渡辺久信監督代行のファインプレーだったと言える。

試合のペース配分が明らかに変わってきた近頃のライオンズ先発投手陣

隅田知一郎投手

そして打線が1点しか取れないという中で、隅田知一郎投手は本当に我慢強く投げてくれたと思う。ピッチングを見ていても1球ごとに気迫が感じられ、そう簡単に打たれる気配は感じられなかった。

最終的には6回で98球を投げて被安打6、奪三振3、四球1、無失点という素晴らしい内容だった。理想を言えばあと1イニング投げてもらいたかったわけだが、しかし夏のベルーナドームということを考えると、100球を越す前の98球で降板させたのはベンチの好判断だったのではないだろうか。

ちなみに夏の甲子園ではすでに50人以上の選手に熱中症だと思われる症状が出ていると言う。これを踏まえると残りのベルーナドームの試合では先発投手を100球未満、もしくは勝ち投手の権利を得た時点でサッと降板させるというのも一つの戦い方になっていくだろう。

恐らく隅田投手に対しても首脳陣からは、100球程度で降板させるという通達があったと思う。だからこそ真夏のベルーナドームであっても初回から比較的飛ばしているように今日は見えた。先発は完投してこそ先発、という考え方もあり、筆者自身も完投完封を目指せるのであれば目指して欲しいと考えている。しかしそれは状況にもより、試合の半数がベルーナドームで行われるライオンズの場合は、先発投手はできるだけ疲れを最小限に抑えて降板させて次戦に備えさせるのが最善だと言える。

昨日の髙橋光成投手にしても、今日の隅田投手にしても、100球程度での降板が通達されていたからこその無失点投球だったのではないだろうか。真夏のベルーナドームの場合、7回8回までを計算しながら投げてしまうと、春先の涼しい時期以上にパフォーマンスが低下しやすくなる。

だからこそ今渡辺監督代行は、先発投手には7回以降は考えることなく、初回から飛ばしてまずは6回まで試合を作ってくれれば良い、と割り切って考えるよう通達しているのではないだろうか。

勝てない時期のライオンズというのは、先発投手が長いイニングを計算しながら投げていくことで変に力をセーブしてしまい、そこを突かれて早い回で失点してしまうケースが多かった。渡辺監督代行自身それは頭にあったはずであり、先発投手のそのようなパフォーマンスを改善するために起用法を少し変えたのではないだろうか。

そして明日の先発は渡邉勇太朗投手だ。渡邉投手はスタミナは十分にある投手ではあるが、やはり明日も好投していたとしても長いイニングを投げさせることなく、100球前後、5〜6回程度でスパッと代えてくるものと思われる。この起用法により先発陣全体の試合序盤での失点が減っていけば、ここからの戦い方も変わっていくことになるだろう。

そして先発陣の早い段階での失点を防ぐことができ、昨日・今日のような試合展開、つまり1点でも勝てるということが分かってくると、打撃陣にかかるプレッシャーも軽くなり、今まで以上のバットを振れるようになるかもしれない。今までのライオンズ打線は若手選手たちがまだまだ未熟ということ以外にも、追いついて追い越さなければ勝てない試合が続いたことで、常に4点5点を取りに行くようなバッティングになっていた。

だが4点5点を取りにいくような大振りを続けていては、技術的にまだ未熟なライオンズナインでは当然ヒットは出なくなる。しかし少ない得点でも勝てるということが分かってくれば大味なスウィングをすることも減り、もっと1球1球を大切にして打席に立てるようになる可能性が高い。

今渡辺監督代行が見せている投手起用にはそのような効果も期待できるため、明日の渡邉投手も今日の隅田投手同様の形で勝つことができれば、もしかしたら今後のライオンズは面白いように勝てるようになるかもしれない。

もはやライオンズの最下位に関してはほぼ確定しているという状況のため、今後は非現実的に5位4位を目指すというよりは、とにかく目の前の1試合1試合を大切にし、首位いじめ、上位いじめをしていってもらいたい。そうすれば圧倒的な最下位にいながらもライオンズファンを楽しませることができるし、圧倒的な最下位チームが上位いじめをすることにより、ペナントレースもさらに面白いものになっていくはずだ。そしてそのような状態に持っていくためにも大切なのが、明日渡邉勇太朗投手が先発する試合ということになるのである。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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