2024年8月28日公開
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | |
Lions | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 6 | 0 |
Marines | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | × | 2 | 9 | 0 |
継投/ ●髙橋光成〜 上田大河〜 水上由伸
敗戦投手髙橋光成/ 0勝10敗0S 4.13
今日も負け投手になったことで、髙橋光成投手は開幕10連敗となり、これはパ・リーグでは史上3人目、そして実に64年振りの不名誉となってしまった。しかもチームもマリーンズ相手に開幕から0勝15敗となり、こちらも開幕からの同一カードの連敗記録をさらに更新してしまっている。
髙橋投手は試合後に、「投げるたびに良くなっているので次は勝てるような投球をしたい」と語っていた。しかし本当に良くなっていたのだとしても、簡単に先制点を相手に献上してしまうピッチングは何も変わっていない。そしてとにかく髙橋投手が登板する試合では援護点が少なく、今日も今季17度目の完封負けとなっている。
髙橋投手が登板する試合に関しては、打者たちの技術不足云々という話ではないと思う。近年は毎年のようにポスティングでメジャーに行かせてくれとごねている髙橋投手であるわけだが、果たしてチームメイトたちはそのような選手に対し、「このピッチャーを勝たせるために頑張って打とう!」と思えるだろうか。少なくとも筆者はライオンズナインはそう思ってはいないと考えている。
もちろん選手たちは「どうせメジャーに行っちゃうんでしょ?」、とはあからさまには言わないだろう。しかし心の中では髙橋投手にはライオンズ愛がないとか、ライオンズのためにプレーしようという気持ちがない、と思っているはずだ。そしてそれは平良海馬投手に対しても同じことが言え、やはり今季平良投手が先発した試合では援護点は少なかった。
もちろん今季は打力が圧倒的に弱いため、例年以上に点を取れていないことは事実だ。しかしそうだとしても、隅田知一郎投手や武内夏暉投手が頑張って投げている試合では先制点を取れているケースも多い。
髙橋投手は前回は無失点、今日も6回2失点と、数字だけを見れば上々の結果を残しているとも言える。だがそれでも勝てないのはやはり打線に見放されているという点が大きいのだろう。もはや髙橋投手のために死ぬ気で頑張るという選手はライオンズにはいないのだと思う。
これは一般企業でも同様であるはずだ。例えば上司が「もっと良い会社に転職する」と言ってしまった場合、果たして部下たちはどうせいなくなるこの上司のために必死になって働こうとするだろうか。しかし逆にヘッドハンティングによって他社に移籍する場合は、「ヘッドハンティングされるなんてさすがだな。この人の下で働けなくなるのは残念だけど、辞めてしまうまではこの人のために精一杯頑張ろう」、と思ってもらえることが多いのではないだろうか。
ライオンズで言えば松井稼頭央選手や松坂大輔投手、秋山翔吾選手らに関してはヘッドハンティングされた側に入るだろう。逆に髙橋投手や平良投手は会社を見捨てて転職すると思われてしまうタイプで、これはレイムダック状態を招きかねないし、今のライオンズを見れば完全に招いてしまっているようにも見える。
やはりNPBはポスティングに関するルールを改正すべきだ。ポスティングは選手側から要求してはいけないというルールにすべきだろう。あくまでもポスティングは球団の権利であるため、球団側からポスティングを提案することで、初めてポスティング移籍という選択肢が生まれるという形にすべきだ。
パ・リーグでは髙橋投手、平良投手だけではなく、マリーンズの佐々木朗希投手も同じような状態だ。大した実績を残していないのにも関わらずポスティングによるメジャー移籍を要求し続け、今ではマリーンズナインもマリーンズファンも、その多くが佐々木投手に対し失望していると耳にする。やはりポスティングによってメジャーに行くのならば松坂大輔投手や、昨オフの山本由伸投手のように皆に背中を押され、応援されながら行くべきなのだ。
さて、ファームの方に目をやると中村剛也選手がホームランを打っていたり、怪我をしていた平沼翔太選手が本格的に試合に出始めたりしている。中村選手は最近は一塁がメインの三塁手、平沼選手も一塁を守りながら二塁、三塁も守れる選手だ。
今季序盤、怪我をするまでは勝負強いバッティングを続けていた平沼選手がしっかりプレーできるようになった場合、一軍でなかなか安定したバッティングを見せられておらず、平沼選手とポジションも被る野村大樹選手がまず入れ替えの対象になるだろう。野村選手は今日は指名打者として三番に入ったわけだが、最後に打ったヒットは8月18日楽天戦の1打席目で、実にもう10日間もヒットを打てていない。
いくら将来が期待される若手選手とは言え、ホークスからすると、育成選手との交換トレードでOKという程度に考えられていた選手だ。さすがに現段階ではまだそのレベルにある選手にクリーンナップを打たせなければならないというのは、ライオンズとしては本当に苦しい状況だ。
ちなみに平沼選手は今季一軍では22試合に出場し、打率は.267ながらも得点圏打率は13打数7安打の.538だった。5月の中日戦で左ハムストリングに張りが出て登録抹消されるまでは、一軍で順当にヒットを積み重ねていた。だが今季の平沼選手はキャンプ初日に右ふくらはぎを痛めるなど、怪我に泣かされている部分がある。とは言えこれまでは決して怪我ばかりしていた、というタイプの選手ではないため、左ハムストリングスにもう不安がないようであれば、一軍に戻ってくる日もそう遠くはないだろう。
だがここで気になるのが、ファームの優勝をどう捉えるかという点だ。現在ライオンズの二軍はイースタンリーグで1.5ゲーム差の首位に立っており、ファイターズ、ベイスターズ、ジャイアンツと優勝争いを繰り広げている。そして残りはあと24試合となっており、一軍が歯痒い戦いを続けている以上、もしかしたらせめて二軍だけでも華々しく優勝させよう、と考えていたとしても不思議はない。
ライオンズの場合、一軍はもはや5位浮上さえも絶望的な状況だ。それならばやはり球団としても、優勝を狙える位置にいる二軍の戦いを優先させることもするだろう。そう考えると平沼選手だけではなく、渡部健人選手やフランチー・コルデロ選手を今季はこのまま二軍でプレーさせ続ける可能性も高い。
なおファームを指揮する西口文也監督は、監督初年度の2022年こそ首位と19ゲーム差の5位(7球団中)に沈んだが、2023年は首位と4ゲーム差の3位、そして今年は1.5ゲーム差で首位を走っており、実は二軍の状態は一軍ほど悪いものではない。もちろん二軍レベルの投手が相手だから打てているという選手も多いわけだが、それでも西口監督の采配が高く評価されていることは間違いない。
夏場になってもファームで好調な打者がなかなか一軍に上がって来ないというのは、実はこのように、二軍が好調であることも影響していると考えられる。もちろん一軍が現実的に一つでも上の順位を目指せる状況であれば、絶対に二軍が優先されることはない。だが5位浮上さえも非現実的となっている一軍の状況を考えると、二軍を優勝させるために好調な選手を一軍に上げないという判断も決して間違いとは言えない。
だがこの状況は非常に寂しい。開幕前のライオンズは優勝候補の筆頭にも挙げられていたほどなのに、蓋を開けてみればホークス一強で、ライオンズは鷹の後ろ姿さえ目視できないほどの谷底で、咆哮をあげても誰にも聞こない状況となってしまっている。
話を一軍に戻すと、今日の試合で最も残念だったのは古賀悠斗捕手が7回に打った併殺打だ。この回はまず先頭の七番外崎修汰選手がセンター前ヒットで出塁していたのだが、2-0とリードされていたこの場面、送りバントができないことを考えるととにかく併殺打だけは絶対に避けたい打席だった。
古賀捕手も当然そう考えていたと思う。だがもしかしたら彼の思考は「併殺打だけは絶対に打ってはいけない」、というものではなかっただろうか。以前も少し書いたことではあるが、「〜してはいけない」「〜しなければいけない」という思考法ではスポーツでは良い結果を生み出すことはほとんどない。
そして「併殺打だけは避けよう」と繰り返し考えていたせいでプライミング効果が働いてしまったことも考えられる。プライミング効果というのはスポーツ心理学用語で、あるキーワードを繰り返し頭の中で考えてしまうと、それに対し体の反応が早くなってしまう状態のことだ。分かりやすく言うと、「併殺打だけは避けよう」と繰り返し考えてしまったことにより、併殺打を打ちやすい行動に繋がってしまうということだ。もちろん厳密に説明をするともっと奥が深い言葉であるわけだが、簡単に説明するとそういうことになる。
例えば一般的に併殺打を打ちやすい左投手のボールと言えば内側に食い込んでくるカッター、外に逃げるシンカーやチェンジアップ、そして低めに落ちていくボールだ。古賀捕手自身も、もしかしたらこのあたりのボールは避けようと必死に考えていたのかもしれない。だがもし実際にそうだったとしたら、やり方は逆だ。手を出さないようにするボールのことを考えるのではなく、打ちに行くボールのことを考えるべきなのだ。
例えば「変化球が高めに来たら思いっきり振り抜こう」とか、「ストレートが甘く入って来たら迷わず振ろう」とか、そのように実際に行いたい行動についてを繰り返し考えるべきなのがスポーツ心理学では良いとされている。だが古賀捕手は初球の低めに落ちていくフォークボールを簡単に打たされてしまい、無死一塁という好機を一瞬で潰してしまった。
ライオンズの選手たちを観察していると、このようにスポーツ心理学的に良くないとされる考え方をしながらプレーしているように見えることが多々あるのだ。そしてこのようにメンタルが鍛えられていない状態だからこそ、ライオンズもなかなか大人のチームになることができず、主力が抜けたチャンスを若手選手たちが死ぬ気で活かしに行くことさえできていない。
これもやはり以前にも少し書いた通り、古賀捕手はもっと捕手脳を生かして打席に立つべきなのだ。だが打席の古賀捕手を見ていると受け身でいるようにも見えてしまい、調子が良ければ時々打つこともあるが、トータルとしてはバッテリーに打たされてしまっている内容の打席が多い。
このあたりも古賀捕手は配球をもっと学ぶだけではなく、学んだ配球術を打席でも生かせるようにしていく必要があるだろう。このあたりはもう伸び代と言うしかないわけだが、しかし伸び代だらけの面々では一軍では勝てないことも事実だ。これが選手を育てながら勝つことの難しさであり、やはり理想としては勝ちながら選手を育てていきたいというのが全監督の正直な思いであるはずだ。