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2024年9月25日公開

西口文也-鳥越裕介コンビが松井稼頭央-平石洋介コンビよりも優れている点

松井稼頭央監督-平石洋介ヘッドコーチが機能しなかった原因

平石洋介ヘッドコーチ

まだ球団からの正式発表があったわけではないが、どうやら来季の一軍監督は西口文也現二軍監督が務めることになりそうだ。そしてヘッドコーチとして鳥越裕介氏の招聘が検討されているという。新監督は大方の予想通り内部昇格となったわけだが、ヘッドコーチを外部招聘するというのはそれに対しての良策だと思う。

もちろん松井稼頭央監督に対しても外部招聘で平石洋介ヘッドコーチが招聘されたわけだが、しかしPL繋がりという信頼関係があったとしても、そこには大きな落とし穴があった。

一つ目は平石コーチが松井監督よりも5学年下という点と、二つ目は松井監督同様野手出身だったという点、そして三つ目は良い人過ぎたという点だ。ヘッドコーチの主な役割というのは監督の代わりに嫌われ役となって、監督の人望を高めるための演出家になることだ。これは選手から疎まれるくらい言うべきことを選手たちにガンガン言っていけるくらいじゃないといけない。

だが平石ヘッドコーチはどちらかと言えば若い選手たちから良き兄貴分として慕われるタイプであり、そういう意味で松井監督と同じ棲み分けになってしまったことで、ヘッドコーチとして上手く機能することができなかった。そしてヘッドコーチは、監督が考えるのと真逆の意見も遠慮することなくどんどん監督に進言具申していかなければならないわけだが、やはり監督よりも5学年下で、しかも上下関係がどの高校の野球部よりも厳しかったPL学園出身ということで、恐らくは遠慮してしまう面もあったのだろう。

また、松井監督同様に野手出身ということで、監督とはまったく異なる視点で野球を見ることが難しかったのではないだろうか。こうして今考えると松井監督に対する平石コーチは、ヘッドコーチではなく専任打撃コーチの方が良かったのかもしれない。

逆にヘッドコーチは、松井監督とはポジションがまったく被らない投手出身の豊田清コーチが、ヘッド兼投手コーチという形になっていれば、学年も豊田コーチの方が5学年松井監督よりも上だし、松井監督の中にない野球観を遠慮することなく進言することができ、ベンチワークももっと機能していたのかもしれない。

そしてそのベンチワークに関してだが、松井監督は走力を生かした野球を目指した。だがそのスローガンに対するビジョンがやや乏しく、それにより走る野球やスモールボールを機能させることができなかった。ビジョンというのは、走ることによって何をしたいのかという点だ。

短打で繋ぎながら走る野球で1点を目指したところまでは、松井監督の恩師でもある東尾監督の野球とほとんど同じだった。だが松井監督の野球がスモールボールで1点を取る、というところで話が終わってしまっていたのに対し、東尾野球では、足や小技を使ったスモールボールで相手投手が嫌がる野球をやり、それによって相手投手のリズムを狂わせて1点をもらいにいく、というものだった。目指した結果は同じでも、このようにプロセスまで明確にビジョン化されているか否かにより、実現力は大きく変わってくる。

このように考えていくと、平石コーチを招聘するところまでは本当に良かったと思う。しかし松井-平石コンビをもっと生かすためには、監督-ヘッドコーチというポジションよりも、監督-打撃コーチという関係性の方が良かったのかもしれない。ただ、平石コーチが一軍打撃コーチを務めた2022年のライオンズのチーム打率はリーグ最下位、昨季も5位、そして今季また最下位となっているため、平石コーチの指導方法はライオンズにはフィットしなかったのだろう。

ヘッドコーチ職のプロフェッショナルとも呼べる鳥越裕介コーチ

一方来季の布陣が見込まれる西口文也監督-鳥越裕介ヘッドコーチの関係性を見てみると、まず年齢は鳥越コーチの方が1学年上となる。そしてこれまでの所属球団や学生時代に下手に関係性がないことや、ヘッドコーチとしての実績も十分である鳥越コーチは、西口監督に対し遠慮なくどんどん進言していけると思う。やはりこのあたりも下手に友人関係があるよりは、知人程度の関係で、言うべきことを言える関係性が必要だ。

そして投手出身の西口監督に対し、鳥越コーチは内野手出身であるため、まったく違う野球観を持って選手を見ていくことができ、このあたりも西口監督にはない考えを、鳥越コーチはどんどん出していくことができるはずだ。また、参謀としてホークスの工藤公康監督やマリーンズの井口資仁監督から絶大な信頼を得ていた、ヘッドコーチ職のまさにプロフェッショナルであり、そのあたりはライオンズの前には実質2ヵ月少々しかヘッドコーチ経験がなかった平石コーチよりも、安心してヘッド職を任せることができる。

そして鳥越コーチは内野守備走塁コーチ・一塁ベースコーチとしての経験も豊富なため、そのあたりでの指導も期待されるわけだが、しかしライオンズのチーム状態を考えるとそこは兼任というよりも、ヘッド専任で西口監督を支える役目に徹してもらいたい。

では内野守備走塁コーチは誰が良いかと言えば、やはり高木浩之氏ではないだろうか。高木氏は2021年まではライオンズの編成やコーチを担当し、2022年にはライオンズアカデミーで子どもたちの指導に当たっている。今現在どうされているのかは筆者には情報を追うことができなかったのだが、しかし高木氏は現役時代は同学年の選手として、「西口に何としても勝ちを付けてあげたかった」、と語っているように、西口投手との信頼関係は抜群だった。

「西口監督を男にする」、と考えながらユニフォームを着れる人物、例えば渡辺久信監督に対するデーブ大久保コーチのように、大袈裟に言うと監督に対する絶対的な忠誠心を持てる人物は必要だと思う。近年はコーチの若返りも図っていたライオンズではあるが、しかし今季ここまで負けてしまった手前、コーチの若返りは失敗だったと言うしかない。この現実からも指導実績が豊富な高木浩之氏の現場復帰を筆者は強く求めたい。

さて、ここで鳥越コーチに話を戻すと、現役時代の鳥越コーチは反骨精神の塊のような選手だった。現役時代は中日ドラゴンズから福岡ダイエーホークス(現ソフトバンク)に移籍しているわけだが、その移籍に際し、鳥越選手は「トレードで出した星野仙一監督を見返すつもりで頑張る」、という決心でホークスの主力選手へと成長していった。

鳥越選手が当時語っていたように、星野監督に対し恨みつらみはなかったらしいが、しかしこのように反骨精神を全面に出せるというのはプロとして活躍するためには絶対不可欠なことだ。ちなみにホークスへの移籍後、古巣中日ドラゴンズとの日本シリーズを制して日本一になった際、鳥越選手だけがドラゴンズベンチに向けてガッツポーズしたというのは今でも語種になっている。

かつて鳥越選手が見せたこのようなスピリッツは、まさに今の若獅子に最も欠けている要素だ。今のライオンズ打線は技術以前にメンタルで相手に負けてしまっている。このあたりを叩き直してくれるという働きも、鳥越ヘッドコーチには期待できる。

ちなみに西口監督の内部昇格が決定的となったわけだが、実は次期監督の人選作業は、渡辺GMが監督代行に就任した直後からすでに始められていた。だがオファーを出した監督候補からはいずれも色良い返事を受けることができず、結果的には西口二軍監督しかいなかった、というのが実際のところであるようだ。

この西口監督も松井監督同様に東尾チルドレンであるわけだが、西口二軍監督も二軍では走力や小技を使った東尾野球を連想させる戦い方を見せている。いわゆるスモールボール(日本ではスモールベースボールと呼ばれる)によってライオンズの二軍を優勝争いに導いた手腕は、一軍でも大いに期待して良いのではないだろうか。

そして野球は「投手の出来が試合を決める」と言われるほど、とにかく投手力が重要になってくる競技だ。西口監督はまさに東尾野球の下で、東尾監督が見せる相手投手をとにかく嫌がらせてその投手力を削いでいくという野球を学んだ。エースとしてベンチで味方の攻撃を見ていても、「自分が投げている時にあんなことされたら嫌だなぁ」、と思いながら味方打線の活躍を見ていたはずだ。

東尾監督が見せた相手投手が嫌がる野球も、やはり東尾監督同様投手出身である西口監督だからこそ松井監督以上に具現化させられるのかもしれない。だがここからさらに重要になってくるのが打撃コーチ2人の人選作業だ。もちろんもうほとんど人選は終わっているはずなのだが、打撃部門の底上げ作業に関してはこれまでのコーチの留任や二軍打撃コーチの異動では済ませるわけには行かない。

比較的若い打撃コーチが補佐として入ったとしても、チーフ打撃コーチは指導実績豊富な人物を連れてくる必要がある。個人的には佐々木誠氏を打撃コーチとして招聘するのが良いのではないかと思うのだが、読者の皆さんはどうお思いだろうか。ちなみに佐々木氏は2023年までは鹿児島城西高校で監督を務めていたが、現在はどこかで指導に当たっているという情報は見当たらない。そのためもし招聘すれば就任に障害はないのではないだろうか。

そしてこの佐々木誠氏が最も最近プロのコーチを務めた2015〜2017年のホークスの打席成績は、2015年は.267でリーグ1位、2016年は.261で3位、2017年は.259で2位となっており、いずれでも打撃部門で好成績を収めている。
※ 2024年のライオンズのチーム打率は.214で12球団中最下位

西口文也監督の就任にあたり気になるのが現背番号13番の行方

さて、西口二軍監督が一軍監督に就任するに当たって最も気になるのは背番号13番の存在だ。考えられる進路は2つのみで、来季も残留して西口監督のために戦うか、今季0勝でもポスティングを要求するかだ。だが、もし0勝で終えた今オフでさえポスティングを要求するようであれば、西武球団ももう出してしまって良いのではないだろうか。ファンとしても毎年のように栄光の背番号13番を背負う投手がライオンズを去りたいと言う姿は見たくはない。

髙橋光成投手は今オフのポスティングは自ら封印して口を噤むべきだ。そもそも髙橋投手が一本立ちできたのは当時の西口投手コーチの指導によるものだった。もし西口コーチの助言がなければいつまでも力に頼ったピッチングを続け、二桁勝てるようにはならなかっただろう。

髙橋投手は西口コーチから右腕を力まずに伸びのあるボールを投げる技術を学んだわけだが、しかしその頃身につけた良いフォームは今ではまったく見られない。力まないどころか、とにかく腕を太くして筋力で球速を上げようとする間違った方向にどんどん向かっていってしまっている。その結果今季は一度も勝つことなく、自らのシーズンを今季二度目の怪我によって終えてしまった。

だがもし髙橋投手に少しでもライオンズ愛や男気が残っているのならば、来季は恩師である西口監督を日本シリーズで胴上げしてから改めてメジャー移籍を目指してもらいたい。そしてポスティングが認められなかったから来季もライオンズでプレーをするのではなく、髙橋投手自身の口から、「西口投手を胴上げするために今オフはポスティングは封印する」、という言葉が聞きたい。

しかし髙橋投手は何はともあれできる限り早くメジャー挑戦したいという気持ちでいるため、今オフもポスティングを要求する可能性が低いとは言えず、もし要求した場合は上述した通り西武球団はもう髙橋投手に対し見切りをつけるべきだろう。そしてライオンズも他球団のように、背番号13番を背負う西口文也監督を誕生させる、というような演出を行っても良いのではないだろうか。

このあたりに関してはもう髙橋投手次第としか言えないわけだが、しかし髙橋投手はもうすでに背番号13番を汚してしまっている。今季1勝もできなかったこと以上に、ライオンズ愛を貫いた西口投手が築き上げた栄光の背番号を、毎年のようにそのユニフォームを脱いでポスティングを要求することによって汚してしまった。ちなみに現役時代の西口投手はルーキーイヤーから18年連続で勝利を挙げており、二桁勝利は7年連続を含めて合計10回達成している。

西口投手が0勝に終わったのは引退する直前の3年間のみだったわけだが、髙橋投手は肉体的に全盛期であるはずの今季を0勝を終えている。これを髙橋投手がどう考えているかだ。この過去は忘れてメジャーで出直したいと考えているのか、それとも恩師である西口監督を胴上げしたいと考えを改めるのか。これはもう二つに一つでしかないわけだが、しかし少なくともライオンズでエースと呼ばれた投手には、無冠のまま海を渡ってもらいたくはない気持ちもある。

だが冷静に見ていくと先発陣は今井達也投手隅田知一郎投手武内夏暉投手渡邉勇太朗投手松本航投手青山美夏人投手菅井信也投手羽田慎之介投手と、成長株を含めれば髙橋投手(と平良投手)を除いてもローテーションは十分に回すことができる状態だ。そして髙橋投手自身、この先発陣の中に今から割って入ることは決して簡単なことではないだろう。そしてメジャーに行くにしても、チームからもファンからも温かく送り出してもらえる状況の中で海を渡ってもらいたいし、髙橋投手自身にももう一度背番号13番を背負っている意味を再考してもらいたい。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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