2022年9月17日公開
ペナントレースも佳境に突入している中、ライオンズはここに来て5連敗を喫している。8月末には首位に立っていたライオンズだが、今や順位は4位となり、5位マリーンズとの差も2ゲーム差まで差し迫ってきた。
今季ライオンズが勝ち切れていないのはやはり打線が奮わないことが大きな原因となっている。チーム防御率は12球団中2位という素晴らしい数字が出ているが、チーム打率は12球団中最下位となっている。
昨年までの打線は今季よりはましだったが、チーム防御率は悪かった。しかし今季はチーム防御率が改善し、今度は打線が湿り続けるという皮肉な結果になっている。
やはり大黒柱が安定しないチームは、安定した戦いをすることはできない。絶対的エース、守護神、名捕手、真の四番、リードオフマン。やはりこのあたりがしっかりしてこないチームは不安定な戦いが続く。
例えば2年連続で日本シリーズに進出した最後となっている1997〜1998年のことを思い出してみたい。まず絶対的エースとして西口文也投手の存在があり、1997年は守護神を固定できなかったものの前半戦は石井貴投手、後半は森慎二投手が守護神役を務めた。
そして正捕手には伊東勤捕手という牙城があり、四番には勝負強い繋ぎ役として鈴木健選手が打線を牽引し、マルちゃんことマルティネス選手が2年連続で30本塁打以上打っている。
1997〜1998年の連覇時の打線は、今季と比べると小粒の印象も否めないが、しかし打線としてはしっかりと機能していた。1番松井稼頭央選手、2番大友進選手、3番高木大成選手の俊足トリオは他球団の脅威となり、この3人で塁上を引っ掻き回しながら鈴木健選手とマルちゃんが打点をあげていくというスタイルが確立されていた。
ちなみに1997年の四番打者であった鈴木健選手は19本塁打で94打点を挙げたが、今季ここまでの山川穂高選手は39本塁打で84打点にとどまっている。この数字を見るだけでも、山川選手が勝負どころで打てていないことがよく分かる。
もちろん39本塁打というのは素晴らしい記録であるわけなのだが、しかし筆者個人は、この39本塁打は39本塁打という価値には至っていないと感じている。39本塁打も打てば、四番打者であれば軽く100打点は越えていて欲しいというのが筆者の望むところだ。
秋山翔吾選手を欠いて以来、ライオンズは1番打者さえ固定できずにいる。今季ライオンズの1番には13人が座っているのだが、1番打者の総合打率は.200少々という非常に寂しいものとなっている。
筆者個人としては、リードオフマンを確立できるまでは1番打者は源田壮亮主将一本で良いと思う。今季は出塁率は.322と安定しているし、条件が整えば盗塁数を伸ばすこともできる。実際ルーキーイヤーからは3年連続で30盗塁以上記録しているし、昨季は盗塁王のタイトルも獲得した。
源田主将を1番に固定した上で、2番打者として若手選手を英才教育したら良いと思う。若き日の栗山巧選手のように。2番という打順は野球を深く学べる打順で、栗山選手も2番を打つことで野球に益々精通していった。
1番片岡易之選手が出塁すると、栗山選手とアイコンタクトをしていつ走るのかを確認し合っていた。このふたりは抜群のコンビネーションでまず1〜2番だけでしっかりと線を描き、その線を3番中島裕之選手・4番ブラゼル選手や中村剛也選手へと繋げていった。前回日本一になった2008年もやはり、このように打線がしっかりと機能していた。
近年山賊打線と呼ばれているライオンズ打線だが、2年連続リーグ優勝をした2018〜2019年であっても、打線の機能性というと、それほど高くはなかったと筆者は見ていた。3番森友哉捕手や4番山川選手がガンガン打てばもちろん点は入るのだが、この二人が調子を落とすとチームの得点力は格段と下がってしまう。そしてその傾向は今なお続いている。
山川選手は全打席ホームランを狙っていると公言している。これは本人がハッキリと言っているので間違いはないだろう。だがその姿勢は果たして四番打者として相応しいのだろうか。
例えばエンゼルスの大谷翔平選手とマイク・トラウト選手のコンビは、二人ともホームランは狙わずに打席に立っていると話している。「良いスウィングをすれば自ずとヒットやホームランにつながっていく」という考えで打席に立っている。だからこの二人はフォームが崩れることも少なくと、好不調の波も小さい。
一方の山川選手はホームランが出なくなると打率が急降下していく。これは「ヒットはホームランの打ち損ない」と考えている選手によくある傾向だ。そして森友哉捕手に関してもフォームを崩したスウィングを見せることが多い。
さて、ここでアレックス・カブレラ選手や、ホセ・フェルナンデス選手のことも思い出してみよう。彼らもホームランバッターでたくさんホームランを打ってきたわけだが、彼らの口癖は「ハードスウィング」だった。これは良いフォームでバットをボールに強くぶつけていく、というニュアンスの言葉なのだが、この二人であってもホームラン狙いのバッティングはしていなかったのだ。
山川選手にもそろそろ気がついて欲しい。四番打者はホームラン数が多ければ良いってものじゃないことを。もし山川選手が今後もホームラン狙いのバッティングを続けたいのであれば、四番打者としてではなく、6番や7番でやるべきだろう。そして4番には、チームバッティングをしながらもホームラン数を伸ばせる打者を座らせるべきだ。
ライオンズ打線が打線として機能していないのは、筆者は山川選手の思考に原因があると考えている。もし山川選手が常にホームラン狙いではなく、状況に応じたバッティングができるようになれば、他球団の四番打者たちのようにもっと尊敬される真の四番打者に進化することができるだろう。
筆者の記事を読んでくださる方は「この筆者はいつも山川選手に厳しい」と思っているかもしれない。しかしそれは山川選手が嫌いだからではない。山川選手が四番打者だからだ。もし山川選手が5〜6番を打っているのであれば、筆者も39本塁打を手放しで賞賛していたと思う。
だが山川選手自身4番にこだわりを持っており、実際に4番を打っている。だからこそ筆者は山川選手には自身の調子が悪くてもチームを勝利に導ける真の四番打者になってもらいたいと願っているのだ。
そして腰痛で登録抹消となっていた外崎修汰選手も最短10日間で1軍に戻ってきた。外崎選手も辻発彦監督から期待を寄せられている選手ではあるが、バッティングの安定感というとかなり乏しい。
守備に関しては素晴らしいと思う。源田主将との二遊間でのコンビネーションも抜群だ。あとはバッティング安定感が鍵となるわけだが、筆者は外崎選手こそ2番打者として野球を学ばせたらどうかと思っていた。
だがその外崎選手も今年30歳で、今から育成という話ができる選手ではなくなってしまった。30歳であれば結果だけが求められることになる。
辻監督からは絶大な信頼を得ていたが、しかし将来監督が変われば今の打率ではレギュラーは白紙となってしまうだろう。流石に3年連続で打率2割台前半では、いくら守備力があってもレギュラーと呼ぶのは難しい。
外崎選手にしても30歳になるという年齢で、ここから大幅に飛躍することはあまり期待できない。現状では2019年がキャリアイヤーとなっており、それ以降の成績は下降線を辿り怪我も増えている。
将来チームの組閣が変わりトレード要員にされないためにも、外崎選手は守備だけではなく、バッティングでも安定感を見せなければいけない。もはや「光るものがある」という言葉に甘えてはいられない年齢だ。
とにかく30歳前後の選手に求められるのは安定感であるため、森捕手・山川選手・外崎選手の3人はそこにもう少しこだわりを見せるべきだろう。そうすれば山賊打線ももう少し繋がりを見せるようになり、こんなに頻繁に完封負け(今季ここまで18回)を見せられることも減るのではないだろうか。