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2022年9月16日公開

隅田知一郎投手は来季、1勝10敗を10勝1敗にひっくり返すだろう

隅田知一郎

勝ち運から見放された隅田知一郎投手を起用せざるを得なかったチーム事情

ルーキー隅田知一郎投手が、パ・リーグの新人としては史上初となる10連敗を喫してしまった。今季一番の山場となるであろうホークス3連戦を、これでライオンズは3連敗で終えてしまったことになる。そして残り試合を考えれば、優勝という文字がかなり遠ざかってしまった言えるだろう。

自身10連敗を喫したこの試合、隅田投手は初回に5点を失うも、2〜7回までは無失点投球を続けていた。そう考えると「立ち上がりだけ」とも言いたくなるが、2回以降を無失点で抑えられるのも実力であれば、初回に5点を失ってしまうのもまた実力なのだ。

野球選手というのはよくゲンを担ぐ。ゲンを担がない選手の方が遥かに少ないだろう。そういう意味では今季の隅田投手はまったく勝ち運に恵まれていなかった。勝ち運に見放された投手をこの大一番で起用しなければならなかったのは、やはり今井達也投手を欠いたチーム事情だったのだろう。

今季ルーキーとしていきなり勝ち星を挙げた試合を見終えた時は、森山良二(10勝9敗で新人王)の再来かとも思われたが、結果は1勝10敗という数字で、10連敗を喫した後再度登録を抹消されてしまった。おそらく今季はもう隅田投手の出番はなく、新人王の獲得も事実上なくなってしまった。

10連敗という記録は隅田知一郎投手を大きく成長させるだろう

ただ、この10連敗は隅田投手にとっては大きな財産となるだろう。10連敗を喫したものの、先発投手として試合を大きく壊したというピッチングは少ない。勝ち星にこそ恵まれなかったが、今井投手を欠いた苦しい先発投手事情の中、数字をど返ししてチームへの貢献度は高かったと思う。

先発しても5回も持たず降板する試合も多かったが、そんな試合でも大量得点を奪われたわけではなく、3失点程度のピッチングが多かった。もしこれらの試合のどこかで、辻発彦監督がもう少し辛抱して続投させていれば、味方の援護により勝ち星を拾えたこともあっただろう。そういう意味ではこの10連敗は、10連敗という言葉のインパクトほど気にする必要はないと思う。

それよりも隅田投手は、普通のルーキーはまずはファームで経験を積むものだが、1軍で経験を積めたというのは非常に大きいだろう。この経験は間違いなく来季以降に繋がるはずだ。

隅田投手は力でガンガン押すタイプではなくクレバーなタイプであるため、この経験を来季の糧にして飛躍することができる選手だと思う。今季ここまで何が良くて、何がダメだったかもしっかりと整理できているはずだ。

数字だけを見れば1勝10敗という散々なものとなってしまい、パ・リーグの新人としては史上初となる10連敗という不名誉な記録も残してしまった。だが来季、この数字は逆転現象を見せるだろう。

隅田投手を進化させるのは和田毅投手の生きたお手本

現在のライオンズには隅田投手が参考にできる先発サウスポーはいない。だが今季は、ホークス和田毅投手のピッチングを目の前で見たはずだ。彼こそが隅田投手がお手本にすべき投手だと思う。

松坂世代の和田毅投手は、今なお1軍のローテーション投手としてチームの勝利に貢献し続けている。もちろん理想を言えば内海哲也投手がもう少し1軍で投げて、隅田投手に生きたお手本を見せられれば良かったのだが、しかしその内海投手は先日引退を発表した。

となると1軍の主戦投手として活躍している、隅田投手と同じタイプの先発サウスポーと言えばやはり和田毅投手になるのだろう。球速を抑えながら、無駄な消耗は極力控え、球速ではなく球質で勝負してここまで日米通算154勝を挙げている。まさに隅田投手が目指すべき姿だと言える。

ルーキーの隅田投手と、大ベテランの和田毅投手の違いはマウンドでの立ち姿にある。和田投手は打たれても平常心を崩さずに、次何をすれば良いのかが分かっているように見える。だが隅田投手は一度打たれ始めると表情が変わり、弱気になっているのが相手に見えてしまうことがあるのだ。

もちろんルーキーなのだから、打ち込まれたらアップアップにもなってしまうだろう。だがプロで勝ち続けるためには、ちょっとやそっと打たれたくらいで表情を変えてはいけないし、打たれた時こそ冷静に次何をすべきかをしっかりと考えていく必要がある。

最近の投手は多くのことを捕手任せにしてしまうことがあるが、それではダメだ。それでは隅田投手は和田投手のような一流投手の仲間入りすることはできない。

隅田投手が勝つためには配球の組み立てにも再考の余地あり

10連敗を喫したあの初回、9番打者から三振を奪るまでアウトは犠打によるものだけだった。配球も単調で、あまり良い配球だとも感じなかった。

まず1・2番に初球のストレートをそれぞれヒットにされ、3番打者にはセーフティ気味の犠打。ここまでストレートたったの3球で一死三塁二塁のピンチとなり、迎えたのは柳田悠岐選手。そしてこの柳田選手に対しいきなり変化球のみの極端な配球になっていく。

柳田選手ほどのスラッガーじゃなくても、ストレートだけでピンチを作ってしまった投手を相手にすれば当然変化球狙いをしてくるだろう。ただ、スプリッターを2球低めに決められたこと自体は良かった。初球は空振りも奪えている。しかし2球連続でスプリッターは少しもったいなかった気がする。

3球目のカッターを死球にしてしまうわけだが、2球目をカッターにしていた方が、3球目のスプリッターを初球同様に活かせていたと思う。ここはまだ初回だったのだから焦ってアウトを取りに行かず、もっとじっくりと攻めた方が良かった。もちろんこれは筆者個人の考えでしかないのだが。

ここは隅田投手というよりも、森友哉捕手にもう少し考えてもらいたかったなという個人的な印象だ。なぜならルーキーの隅田投手が森捕手のサインに首を振ることは決して簡単ではないのだから。

ただし、現場の判断としてはやはりあの配球がベストだったのだろう。筆者個人としては違う意見を持っていたが、しかし現場の判断がベストだったことに疑いようはない。なぜならグラウンドに立たなければ分からないことの方が多いのだから。

いずれにしてもストレート3球で大ピンチを背負う前に、3番打者にセーフティ気味の犠打を決められたところでもう少し違う判断があっても良かったのかなとは思う。森捕手としては裏をかいてのストレートだったのだろうが、浮き足立った隅田投手の3球目のストレートはど真ん中に行ってしまった。

もし3番今宮選手がセーフティではなく打ちに行っていたら、かなり高い確率でホームランや長打になっていただろう。そのため筆者個人としては、今宮選手への初球にこそ叩きつけるようなスプリッターが欲しいと思いながら観戦をしていた。そして長打ではなく犠打で済んだ幸運をバッテリーにはもっと活かして欲しかった。

隅田投手なら1勝10敗を、10勝1敗にひっくり返せる!

初回に5点を取られたのも実力だし、2〜7回を0封したのもまた実力だ。だが結果を見れば7回5失点となるわけで、この試合の防御率は6.42となる。緊迫した3連戦でのこの数字が、現在の隅田投手の実力だ。

だが隅田投手はこの秋、色々なことを考えるはずだ。そして来季は5失点した初回のようなミスは減り、初回からこの試合の2〜7回のようなピッチングができるはずだ。隅田投手にはそれだけのポテンシャルがある。

10連敗という記録は確かに不名誉ではあるが、今季崩れた場面を一つ一つしっかりと見直していけば、来季は10勝1敗という数字を記録することだってできるはずだ。2〜7回のようなピッチングを見せられれば、そのような期待も抱きたくなるというものだ。

隅田投手には来季は、10連敗という不名誉を払拭するような10連勝という活躍を筆者は期待していきたい。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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