HOME > ゲームレビュー (131記事) > 今は現場目線で厳冬のオフに向けて選手を篩にかけている渡辺久信GM

2024年8月24日公開

今は現場目線で厳冬のオフに向けて選手を篩にかけている渡辺久信GM

埼玉西武ライオンズ vs 東北楽天ゴールデンイーグルス/21回戦
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Eagles 1 0 0 1 0 0 0 0 0 2 6 0
Lions 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 5 0

継投●松本航水上由伸本田圭佑田村伊知郎ジェフリー・ヤン
敗戦投手松本航 1勝7敗0S 2.86

リリーフから即先発に戻り、今日はショートスターターを務めた松本航投手

松本航投手

今日はローテーションの谷間で、いわゆるブルペンデーだった。そして先発マウンドに登ったのは、5月1日以来の先発マウンドとなった松本航投手だった。結果的には初回に辰巳選手に先制ソロホームランを浴びてしまい、3回52球で被安打3、失点1という内容だった。

ベストピッチとは言えなかったが、リリーフを経て3ヵ月半振りの先発マウンドとしては及第点と言って良いのではないだろうか。今日は久しぶりの先発ということで52球に留まったが、もし今後もローテーションの中で投げていくことになるのであれば、登板を重ねながら徐々に100球に近づけていくのではないだろうか。

今日のピッチングでやはり一番もったいなかったのは3回だ。この回は失点こそなかったものの、2連続三振を奪った後に2連打を浴びてしまった。ここを上手く三者凡退に抑えられていれば、もしかしたらもう1イニングということもあったかもしれない。

今日は首脳陣としては約50球と考えていたのか、それとも3回までと考えていたのかは分からないが、しかし松本投手が先発に戻った初戦としては、まずまずの出来だったと言えるのではないだろうか。

ただ、今日はアウトの約半数がフライだった。ここがもう少しゴロアウトが増えてくると併殺打の可能性が増え、逆に球数が減り、今季序盤のようにマダックス(100球未満での完封勝利)をまた狙えるようになると思う。そういう意味では今日のピッチングは本当に少しずつなのだが、捕手のミットよりもボールが高かったかなという印象だった。

しかしボール自体は悪くなく、3回に入っても特段球威が落ちているということもなかったため、もう少し投げさせても良かったのかなとは思った。ただここはリリーフから即先発に戻ったという形となるため、いきなり無理をさせて故障を招くよりは、5位に浮上する見込みもほとんどない最下位という状況からも、やはり徐々にという判断になったのだろう。

なお今季、残っている6連戦はあと3回のみとなる。その他の週は先発投手5人以下で回せる状況となっていく。そして今一軍にいる先発投手は松本投手の他には今井達也投手隅田知一郎投手武内夏暉投手渡邉勇太朗投手髙橋光成投手の6人となっている。と考えると、今日崩れたわけではない松本投手が来週も先発する可能性は非常に高いだろう。

ライオンズファンの多くもそう考えているように、やはり松本投手はリリーフよりも先発に適性がある投手だ。次戦以降はもう少しイニングを増やしながら、6連戦じゃない週でも先発枠を渡さないようなピッチングを期待していきたい。今季の状態で見ると、少なくとも髙橋光成投手のボールよりは、松本航投手の方がチームを勝利に導く可能性は高いと言える。

今は現場目線で選手を篩にかけていると思われる渡辺久信GM

そして相変わらず貧打は深刻だ。渡辺久信監督代行の言葉通り、ブルペンデーである今日は打線が奮起しなければならなかった。しかし奮起したのは3安打を放った源田壮亮主将だけだったと言える。

チームとしては散発の5安打で、残りの2本は古賀悠斗捕手柘植世那捕手のシングルヒットだった。それでも四死球を絡めながら多少のチャンスメイクはすることができた。しかしいつも通りあと一本が出ず、8回に押し出しの四球で1点を取るのがやっとだった。

そして今季はもうすでに幾度もこの場で書いているわけだが、なぜだがライオンズ打線は甘い球を見逃して難しいボールを振りに行っている。さらに言えば打者が打ちたいボールを待って打つのではなく、相手バッテリーが打ってもらいたいボールを素直に打ちに行ってしまっている。つまり相手バッテリーの術中に完全にハマってしまっているということだ。

渡辺監督代行の言葉通り、プロなんだからしっかりして欲しいという気持ちもある。だがそれ以上に打撃コーチ陣にもう少し良い働きを期待したい。だが平石ヘッドコーチ、嶋打撃コーチ、高山打撃コーチの3人がいてもこの状況を改善することが未だできていない。

ちなみに松井稼頭央監督が更迭された際、ヘッドコーチらではなく渡辺GMが監督代行に就かれたということは、渡辺GMとしても西武球団としても平石ヘッドコーチの能力を信頼していないと見ることができる。

そして監督が変わった際にコーチの入れ替えが一切なかったのは、渡辺GMからの「お前たちがしっかりしていないから稼頭央を更迭せざるを得なかった」というメッセージだったとも受け取れる。そう考えると松井監督の更迭は、もしかしたら渡辺GMや西武球団の親心からだったのかもしれない。

これだけ打線が機能していない状態で、これ以上まだ若い松井監督に恥をかかせたくない、渡辺GMはそう考えたのではないだろうか。もはや立ち直るきっかけさえ失っていたライオンズを率い、これ以上松井稼頭央というブランドに傷をつけるわけにはいかないと考えたのではないだろうか。

ファンとしては渡辺監督代行に代わったことで何らかの変化は期待したわけだが、それでも劇的な変化を期待したわけではなかった。渡辺GMとしては今回の監督代行就任は火中の栗同然で、渡辺GM自身、今のチームを短期間で戦える集団に変えられるという根拠などなかったはずだ。

だがそれでも、とにかくあと32試合戦っていく必要がある。ちなみにこの32試合の中で、ライオンズが17連勝してバファローズが17連敗すると、初めて5位バファローズと最下位ライオンズの順位が入れ替わることになる。だがこれはまずあり得ないことだ。そのため渡辺監督代行もファイティングポーズは崩してはいないものの、実質的には最下位を脱出できるとは思っていないだろうし、その前提で来季を見据えて今、選手をふるいにかけているのではないだろうか。

そして現場目線でGMとして選手たちを見て、「この選手は残留させてもチームにとって大きなプラスはない」と判断された選手は今オフはどんどん放出され、かつての星野仙一監督が断行したような血の入れ替えが行われるのではないだろうか。

特にチャンスをもらいながらもそのチャンスをほとんどモノにできなかった選手に関しては、若くてもトレード要員や戦力外としてチームを放出されていくことが予想される。恐らく渡辺監督代行は、GMとしてそのような目で今ベンチで選手たちを見つめているのだろう。

西武の窮状を知らないGMに代えるより、渡辺久信GMに引き続き再建を託すべし

例えば今季の働きを見ると、まず源田壮亮主将が放出される可能性はほとんどないだろう。この苦しいチーム状況の中でもリーダーシップを発揮しているし、誰よりもグラウンド上で勝利への執念を見せている。そのため源田主将に関しては、来季以降も間違いなくライオンズにとって必要な選手だと言える。

だが一方外崎修汰選手に関しては、時々面白いように打つもののそれがまったく長続きせず、打率も.222に低迷したままだ。源田主将に関しては7月の月間打率は.345、8月は.315となっており、好調がほぼ2ヵ月続いている。

だが外崎選手の場合は6月に.296という月間打率をマークしたものの、しかし実際には怪我もあり6月は8試合の出場に留まっている。そしてその他の月を見ても月間打率は1割台や2割台前半ばかりだ。そして2019年を最後に満足のいく成績を残せていないことを考えると、「環境を変えれば」という判断もフロントの中で芽生えていたとしても不思議はない。

今オフのライオンズはまさに聖域なき改革が必要になってくるわけだが、トノゲンコンビとして素晴らしい守備を見せてくれる外崎選手であっても、打撃がこの状況ではトレード要員になっても文句は言えないだろう。そしてセカンドのポジションということを考えると、少し前に佐藤龍世選手がすぐにライオンズに出戻った時のように、若林楽人選手との交換トレードだって可能性は0ではないと言える。若林選手は今季は、ライオンズのユニフォームを着ていた時からすでにセカンドの練習を再開していた。

外崎選手の場合は守備力も高いし、ある程度の経験値や実績もあるためトレードでの市場価値はかなり高い。しかし今季ライオンズに加入した野村大樹選手に関してはまだ年齢的に若いとは言え、トレード市場ではそれほど高く買ってもらうことはできないだろう。また、野村選手の場合はヘスス・アギラー選手の代役という役割もあり獲得された選手であるため、アギラー選手が完全復活したり、もしくは別の外国人一塁手が加入した場合は、一軍での影はかなり薄くなってしまうはずだ。

そうなって来るとさすがに打率.193ではトレードどころか、3〜4年も待たずして戦力外となってしまう可能性さえある。野村選手の場合、右打者であるにもかかわらず対左投手の打率が.158という点もかなりネックだ。これだけ左投手を打てない右打者となると、トレードでも欲しがる球団はおそらくはいないのではないだろうか。そう考えると、さすがに今オフの戦力外というのはないと思いたいわけだが、しかしここからもし来季も数字を上げられなかった場合は、一年後には整理リストに名前が載る可能性は否めない。

また、岸潤一郎選手長谷川信哉選手らもトレード要員となっても不思議はない。長谷川選手は今はファームでかなり頑張っているわけだが、ファームでは打てても一軍に上がって来ると結果を出せないことが続いている。また、岸選手に関しては野球以外のところで同じ過ちを二度繰り返しているという意味で、やはりトレードの可能性は否めない面がある。

岸選手にしても長谷川選手にしても、守備力はまずまず高い選手であるため、外野手が手薄な球団であれば欲しがるチームは複数あるだろう。ただ、残念ながら12球団で最も外野手が手薄なのがライオンズだとも言えるため、外野手を簡単に放出することはできないというチーム事情もある。だが外野手と外野手による交換トレードとなれば、やはり可能性が低いとは言えない。

筆者はGMの職務についても専門的に理解しているプロの野球指導者であるわけだが、チームを短期間で戦える集団に変えたいというの場合、今季いるメンバーをほとんど変えずに来季に挑むというやり方では通用しないことをよく知っている。残念ながらチーム編成に関しては、選手の成長に期待するわけにはいかないのだ。

もちろん勝てているチームに関しては若手選手の成長をのんびり待つこともできるわけだが、しかしライオンズのように早急にチームを立て直さなければならない場合、選手が成長してくれるであろうという期待を持って編成するわけにはいかない。継続的な血の入れ替えを行いながら、過去の良い時期に戻ろうとするのではなく、新しいチームを作っていく必要がある。そしてそのためにも必要なのがトレードと大量戦力外通告ということになるわけだが、恐らく今オフは両方とも断行されるのではないだろうか。

渡辺GMは情に厚いGMだが、情に流されないという側面も持っている。そのため筆者はここで渡辺GMを切るのではなく、選手が起こしたトラブルなどによりバラバラになってしまったチームを、引き続き渡辺久信GMに、専任GMとして再建を託すべきだと考える。

ハッキリ言えば近年のライオンズの弱さは渡辺久信GMの責任でも、松井稼頭央監督の責任でもない。かつて選手の心を逆撫でするようなことばかりを言ってFA流出を加速させた歴代球団本部長たち、私生活でトラブルを起こしてチームに迷惑をかけた選手たち、そして野球をするにはあまりにも過酷すぎるベルーナドームにその原因があり、これらに関してはGMや監督がどうこうできる問題ではない。

そしてベルーナドームを嫌いFA移籍したり、FA入団を断られたりしていることが実際に起こっていることを考えると、GMを代えても監督を代えても何かが急激に変わることはまずありえない。だからこそ今のライオンズの窮状をよく理解している渡辺久信GMに引き続き再建を託すべきだと筆者は考えているのである。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
⚾️ 筆者カズのTwitter(現X)
⚾️ 筆者カズの野球系YouTube
⚾️ 筆者カズの野球系Instagram
SNSのフォローやいいねもよろしくお願いします🙏

関連記事