2022年9月21日公開
髙橋光成投手が絶対的エースへと進化すれば西武は負けなくなる!〜前編〜
他球団のエースが憧れるようなエース道を持った投手は今のライオンズには一人もいない。髙橋光成投手は確かにライオンズのエースだが、しかし他球団のエースピッチャーが髙橋投手に憧れているとは思えない。
だが西口文也投手、松坂大輔投手、涌井秀章投手らは他球団のエースや投手たちにリスペクトされていた。例えばライオンズ内での話をすれば、西口投手はアマチュア時代は渡辺久信投手に憧れていた。そしてその西口投手に憧れてプロ入りしたのが岸孝之投手だった。同様に横浜高校繋がりである松坂大輔投手に憧れてプロになったのが涌井秀章投手だった。だがその後が続いて来ない。
菊池雄星投手にしても決して人望がある選手ではなかったし、何よりも上位チームにはまったく勝てない投手だった。2017年には16勝6敗と貯金10の壁を越えているが、しかし首位・2位のチームにまったく勝てない中でのこの数字には、大きく見える数字ほどの価値はなかった。
髙橋投手はかつての絶対的エース西口文也現2軍監督の指導を受けているのだが、投球術だけではなく、エース道というものも西口2軍監督から学んでもらいたい。いや、もちろん難しいのは分かっている。髙橋投手は1軍のエースであり、西口文也監督の居場所は2軍なのだから。
しかし髙橋光成投手が絶対的エースに進化できない限りは、ライオンズが常勝球団の座に戻ることはできないだろう。いつでもAクラスとBクラスを行ったり来たりのチームにしかなれないはずだ。そしてたまに優勝をしても、絶対的エースがいる球団にCSで敗れてしまう。
ライオンズはいつまでもこんなことを続けていてはいけない。もはやエース道を若手に教えてあげられる内海哲也投手は現役を退いてしまった。やはり一番良いのはエース道を知る現役選手が、それを若きエースに語り継ぐことだ。コーチが選手に教えるよりも、この方がよほど効果があることは球界ではよく知られている。
今季、パ・リーグでは投高打低の傾向が顕著に表れている。筆者は、髙橋光成投手の防御率の改善はこれが理由だと考えている。山川選手などは少し前に「間違いなく飛ばないボールに変わった」と公言していたが、NPBはボールは変わっていないと言っているし、メーカーの反発係数の測定値を見てもしっかりと規定値に収まっている。ではなぜプロ野球では今投高打低となっているのだろうか?
その理由はやはりコロナ禍による実践不足だと言えるだろう。実践不足や対戦回数が少ない場合、圧倒的に投手が有利になる。例えばオープン戦などはまさにそうで、コロナ禍前であっても全打者が実践不足状態であるオープン戦では多くの投手が好投することができる。
打者は、しっかりと実践を積んでいても打率.300を打つのがやっとなのだ。しかしコロナ禍は今年で3年目となり、実践不足も少しずつじわじわと3年分が積み重なってきているのだ。その結果が顕著に出始めたのが今季なのだと筆者は考えている。
つまり髙橋光成投手が大幅にレベルアップして防御率が改善されたのではなく、打者の積み重なった実践不足のおかげで髙橋投手らの防御率が改善した、というのが実際のところだろう。
実際昨季と今季の髙橋投手を見比べても、大幅に変わった要素というものがあまりない。それなのに防御率が大幅に改善したというのはおかしな話なのだ。筆者は野球の専門職に就いているためつい厳しい目で見てしまうのだが、もし打者の実践不足が完全に解消されたなら、髙橋投手はよほど大幅にレベルアップをしない限りは2点台の防御率を維持することはできないだろう。
ただ髙橋光成投手はまだまだ完成された投手ではない。学年的には今季は26歳となるのだから、確かにそろそろ完成を迎えてもらわなければ困る。だが現実としてはまだまだポテンシャルを残しており、フォームにしてもピッチングスタイルにしても完成にはまだ程遠く、伸び代まだ十分に残っているのだ。
何かきっかけがあれば髙橋投手は覚醒する。これが筆者の考えなのだが、そのきっかけを与えられるのはやはり西口文也2軍監督なのだろうか。
シーズン中に西口2軍監督に教えを乞うことは難しいが、秋季キャンプや春季キャンプでは西口2軍監督にアドバイスをもらえる機会も多少は増えるだろう。ただし、春季キャンプで髙橋投手に春野にいてもらっては困るのだが。
髙橋投手が、今シーズンを来季に繋げられるかどうかは一週間後のホークス戦にかかっていると言える。この試合で好投して12勝目を挙げられれば、2023年はさらなるステップアップを目指せるだろう。
だが逆にQSさえクリアできないようなピッチングであれば、「どうして勝てなかったんだろう?」という低いレベルに逆戻りしてしまう。
ライオンズのエースは二桁勝てればそれで良いというものではない。ライオンズの真のエースになるためには沢村賞が必要だ。西口投手、松坂投手、涌井投手はいずれも沢村賞を受賞している。だからこそ髙橋投手にも12〜13勝という絶対的エースではなく、並のエース級程度の数字を目指すのではなく、ライオンズのエースとして本気で沢村賞を目指してもらいたい。
もちろん沢村賞など狙って獲れるものではないが、しかし少なくともノミネートされるレベルの投手になっていかなければ、髙橋投手は並のエースとして覚醒せぬままプロ野球人生を終えてしまうだろう。
だが髙橋投手にはその程度で終わってもらいたくはない。ようやくライオンズのエースと呼ばれるようになったのだから、その安寧を維持しようとするのではなくあえて茨の道へと進み、さらに一段も二段もレベルアップし、絶対的エースの仲間入りを果たしてもらいたい。
そうすればライオンズが1シーズンに二度も7連敗を記録することなどなくなるはずだ。そして何よりも、CSで相手エースを打ちまかして日本シリーズに進出できるはずだ。