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2024年9月19日公開

松井稼頭央監督休養の真相と、2025年以降の監督問題を改めて考える

渡辺久信GM兼任監督代行

一部スポーツ紙は渡辺久信GM兼任監督代行が今季終了時に要職をすべて辞するというような報道をしていた。だが筆者はこの報道にやや疑問を抱いている。まず報道のタイミングが非常に早かった点と、他の有力スポーツ紙がこの報道にほとんど追随していないためだ。

想像するに、恐らくは記者が西武球団関係者と話をし、「渡辺GMは辞めるんじゃないのかな?」というあやふやな言葉を先走って「辞める」と報道してしまっただけなのではないだろうか。ちなみに報道における「関係者」というのはいつでも誰のことだかは分からない。実際に西武球団で働く人間は現場だけでも100人以上、全体を見れば軽く数百人を超えるため、関係者だと言われれば球団社長であってもパートタイマーであっても関係者に違いはない。

そもそも渡辺GMを監督代行に据えたのは渡辺GMの判断ではなく、西武球団側の判断だった。そして少なくとも内部には渡辺GM以上の監督代行適任者はおらず、来季監督の外部招聘という面を見ても、将来的に有力な監督候補はいるものの、今オフに色良い返事をもらえる可能性は非常に低い。

また、まだまだ監督としての経験値が未知数とも言える西口文也二軍監督に、現状のライオンズを託すのはあまりにも酷だということもできる。もちろん辻発彦監督や伊東勤監督の再登板という可能性もあるわけだが、しかしまずは来季以降も渡辺GMが兼任監督としてもう少しチームを立て直し、その後で後進に監督の座を禅譲するというのがスマートではないだろうか。

確かに松井稼頭央監督から渡辺GMに代わってもチーム状態が劇的に良くなることはなかった。だが9月の成績を見てみると通算勝率.338のチームが、7勝7敗の勝率.500で戦っているのだ。しかも最近5試合だけで見ると4勝1敗という成績になっており、次戦では今季初の4連勝の可能性も出てきている。

そしてライオンズの今季は残り11試合となるわけだが、5位との差も14.5ゲームまで縮まってきた。もちろんこれでもまだまだ大きな差であるわけだが、しかし9月始めに19ゲーム差だったことを考えると、そこから4.5ゲーム差縮めてきていることになる。もちろんバファローズが不振に陥っているという事情もあるわけだが、それでもライオンズがその間にある程度勝てたからこそ差を縮めることができた。

なお筆者は今でも松井監督を今季最後まで続投させるべきだったと考えている。ちなみに松井監督が更迭されたのは数字だけが原因ではない。ただ単にチームが勝てないだけでは、監督交代というのはそう簡単に起こる出来事ではない。ではなぜこれが起きてしまったのかと言うと、球団側から見て、松井監督が具体的にチームの立て直し案を持っていないと判断されたからだ。

もし松井監督が、成否は別としても明確な立て直し案、ヴィジョンを持っていたならばあれだけ早いタイミングで更迭という結果にはならなかったはずだ。もちろん松井監督も無策でなかったことだけは確かだと思うのだが、少なくとも西武球団側が考えると勝てていない原因と、松井監督が考えるそれが一致していないことから、恐らくは球団側が、球団が考えていた敗因を松井監督のやり方では解消できないと判断したのだろう。

ちなみに松井監督というのはタイプとしては数字に強いタイプの監督だ。データを読んだり、チーム強化案を数字を立てながら具体的に示すことができるという、どちらかと言えば智将タイプの監督だった。恐らくだが松井監督はチームの立て直し案を、数字ありきで球団側に示したのではないだろうか。例えば外国人選手の打点がいくつとか、援護率が何点だとか。そしてこの数字がこうなればチーム状態は上がる、という説明を球団に出していたのかもしれない。もちろんこれは松井監督の監督としてのタイプから推測しただけであるため、その可能性がある、という程度でしか言えない。

だが西武球団、もしくは渡辺GMは松井監督が率いるライオンズを見ていて、気のない見逃し三振、あまり考えが感じられない凡打など、数字以上に問題視していた点があったはずだ。根性論とまでは言わないが、少なくともメンタルや戦う姿勢という面で球団側は大きな不満を抱えていたのだろう。

それに合わせ松井監督はマスコミ受けが非常に良くない監督だった。試合後のコメントもいつも同じ退屈な言葉ばかりで、マスコミを少しでも楽しませようというサービス精神がまったく感じられなかった。ちなみにマスコミが報道する野球ニュースを見るのは野球ファンであり、マスコミを楽しませられないということは、それはすなわち野球ファンをも楽しませられないということになる。このあたりの松井監督のマスコミ対応も、恐らくは球団としては不満だったのではないだろうか。

だからこそ西武球団は冷静沈着な松井監督とは真逆のタイプである、闘将タイプの渡辺GMを後任に据えたのだろう。渡辺監督代行は就任早々からファイティングポーズを見せ続けており、味方選手が死球を受けると誰よりも先に相手チームに怒鳴り込み選手を守ろうとしてくれる。そして何よりもマスコミ受けが良い。

松井監督はマスコミに対し、負けているチームの監督なりのコメントを出すことがまったくできなかった。選手が何度同じミスを繰り返しても「起用した自分の責任です」、という類のコメントしか出さない。だがマスコミが聞きたいのはそういうことではなく、監督としてそのミスをどう考えているのか、ということなのだ。

一方の渡辺監督代行は一度や二度のミスには目を瞑ったとしても、繰り返されるミスに関してはマスコミに対しても感情を隠すことなくコメントしている。勝てば明るいコメントを出すし、負ければ悔しさいっぱいのコメントを残す。そのためマスコミも記事にしやすいし、マスコミに対してサービス精神がある監督の場合、チーム状態が最悪でも必要以上に厳しい記事を書かれる心配もない。

だが松井監督のように同じ言葉ばかりを繰り返す監督の場合、記者たちもあらゆることを想像しながら書かなければならず、そしてそのような記事にはどうしても厳しい言葉が目立つようになる。なぜなら監督がチームに対し厳しい言葉を出さないのだから、記者が負けているチームに対し厳しい記事を書くしかないからだ。

当たり前だが、球団は有力スポーツ紙の記事に関してはほぼすべてチェックを入れている。今のライオンズの状況をメディアはどう見ているのかということを知るためだ。そしてもちろんSNSだってチェックしていたはずだ。そのようなリサーチからも、このまま松井監督を続投させてもメディアを敵に回す可能性がある、と球団は考えたのではないだろうか。

今季前半のライオンズは、まるで戦う集団の姿ではなかった。だが渡辺監督代行が率いて以来は、徐々に選手たちが戦う姿を見せられるようになってきている。もちろん2008〜2013年のライオンズと比べるとまだまだまったく迫力がないわけだが、しかし秋に差し掛かり、チームは確実に形になり始めていると言える。

少しずつだが形になり始めている今、あえて監督を代える必要があるだろうか?そもそも僅か一年足らずの間に3人の監督がチームを率いるというのは異常だ。新監督のやり方がチームに浸透するには少なくとも3年かかると言われている中で、一年足らずで3人目の監督というのはチームを戸惑わせるだけだ。

松井監督がもし、ファイターズの新庄剛志監督のようにマスコミ受けの良い監督であれば、2季目の5月で休養ということにはならなかったはずだ。そういう意味でも松井監督の休養というのは、筆者は勝率以上の理由があったと考えている。だからこそ西武球団は球団主導で、松井監督とは真逆で発信力のある渡辺GMを監督代行に据えたのだ。

とは言え松井監督としては不運にも泣かされた。昨季までのエース、外国人打者全員がまったく機能することがなかったというのは、これは同情の余地は十分にある。せめて外国人打者の誰か1人でも一軍で試合に出続けられていれば、松井監督の状況もまた変わっていただろう。

そういう意味でも西武球団は松井監督をこのままリリースしてしまってはいけない。将来の再登板を見据えてもう一度帝王学を学び直させ、5年後、10年後に再度監督を任せるべきだと思う。残念ながら一年少々と短命に終わった松井監督の野球は、机上の戦略だけに終わってしまった。これをもっと、何か起きた時に臨機応変に対応していく能力を培うことができれば、数字に強い松井監督は必ず勝てる監督になれるはずだ。

そしてそのためにもまずは渡辺監督代行が来季は正式なGM兼任監督として、かつての根本陸夫監督のようにまずはチームの下地をもう一度作り直し、その上で勝つための引き出しをたくさん持った監督にチームを引き継いでもらうのがベストだと思う。逆にもし下地がない今の状態で他の監督に任せたとしても、またチームを1から作り直さなければならず、それは回り道になってしまうばかりだ。そうならないためにも筆者は、少なくとも来季から1〜2年は渡辺GMが兼任監督としてチームを率いるべきだと考えているのである。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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