【山川事件】西武球団は決して一部の甘い考えに流されてはならない

2023年7月18日公開

山川選手と女性の「無理矢理」という言葉はそれぞれ意味が異なる

山川穂高、傷害事件

山川穂高選手の問題はライオンズファンも深刻に捉えるべきだと思う。ライオンズファンからすれば「日本一達成」というニュースを聞きたいのに、耳に入ってくるのは選手の醜聞ばかり。最近の出来事のみを上げてもコーチによる窃盗、選手による未成年喫煙、道交法違反、SNSを使った不適切な行動、外出禁止時の外出などが続いている。そして極め付けが主砲山川選手による傷害事件。

報道を一通り読むところによると、2022年11月、山川選手は20代の女性と食事をしたあとに性的行為に及び、そこで女性に傷を負わせたようだ。具体的には女性の膣に異物を挿入しようとして出血させたらしい。山川選手自身は「無理矢理ではなかった」と口にしているが、これは加害者の意見であって、事実として捉えることはできない。例えば極端な話、殺人犯が「俺はってない」と言っているのと理屈的には同じではないだろうか。

山川選手の言葉を聞くと「無理矢理性行に及んだわけでは絶対にない」というニュアンスで聞き取ることができる。だが女性側の言葉を聞くと「無理矢理膣に異物を挿入された」ということになるのではないだろうか。そもそも無理矢理そのような行為をしようとしない限り、流血するなどということは考えにくい。とするとやはり女性側の意見が事実に近いと考えた方が自然だと思う。

また、山川選手の立場からの「無理矢理」と、女性の立場からの「無理矢理」という言葉はまったく異なるレベルだと捉えるべきだ。女性からすると山川選手は「丸太のように太い腕をした野球選手」ということになり、例え山川選手がごく軽い力で女性を押さえ付けようとしただけであっても、女性からすれば力ではまったく敵わないはずだ。そう考えると山川選手が口にする「無理矢理ではない」という言葉はやはり、まったく意味をなさなくなる。

実はまったく同じ場所だったレストランとホテル

一部報道では「一緒に食事をした後にホテルに行った」と書かれているが、実際にはそうではないようだ。どうやらバーとホテルが一体化した場所らしい。一見個室バーのように見えるらしいのだが、実際にはホテルの個室をバーのように使う店であるようだ。つまり女性からすると、「有名人だからやっぱり食事は個室バーなんだなぁ」と思っていたところ、実はそこはすでにホテルの一室で、もはや逃げることはできない状況になるようだ。

山川選手が女性に対し「実はそのような店です」と最初から伝えていたのか否かは報道されていないため筆者には分からない。だが仮に伝えていなかったのだとすれば、これは実に卑劣な行為だ。個室レストランに誘いつつ実はそこはホテルなのだから、これは真っ当な男性が取る真っ当な行動とは言えない。真っ当な人間であれば決してこのような行為はしない。
※ 後日、レストランでの食事後に「個室のバーで二次会しよう」と山川選手が嘘をついて女性をホテルに連れ込んだことが明らかになっている。

だが話によれば、現役プロ野球選手では複数人の人気選手がこの「レストラン兼ホテルの一室」を利用しているようだ。価格に関しては彼らと同年代の普通のサラリーマンでも使えるような金額で、決して高級ホテルというわけではない。それにしても年俸数億円をもらっている彼らが、このようなチープなホテルを日常的に利用していると知るのは野球ファンとしてはまったく夢を感じることができない。

仮に起訴された場合、山川選手の選手としての道は終わる

この「山川問題」に関し、ファンは二分しているようだ。残念だが厳罰・解雇も仕方ないと考えるファンと、早期復帰を望んでいるファンだ。筆者個人としては契約解除もやむなしと考えている。だがこれはまもなく下されるであろう起訴・不起訴によって変わってくるのだろう。

一部報道によれば示談交渉が進んでおり、不起訴になる可能性が高いとも言われている。だがファクトチェックされた記事ではないため、この情報を鵜呑みにすることはできない。仮に不起訴となれば西武球団としては復帰への道を探ることになるのだろうが、逆に起訴された場合はNPBで過去に起きた類似事例を踏まえると契約解除になる可能性が高い。

仮に契約解除になった場合、日本の独立リーグでプレーすることは難しいだろう。以前千葉ロッテマリーンズの選手が問題を起こし契約解除とされた際、独立リーグ内で「該当選手を獲得しないことが望ましい」というお達しが出された。山川問題はその時の問題よりもはるかに重大なため、仮に西武球団を契約解除になった場合、独立リーグでプレーすることも困難となるはずだ。

ましてやハラスメントに日本以上に敏感な諸外国のリーグでプレーすることなど、さらに難しいだろう。となると考えられるのは社会人野球やアマチュア指導者の道となるわけだが、そもそもこのような重大事件を起こした人物を雇用したいと考える社会人チーム(企業)はないだろうし、教育現場を担う学校側にしてもこのような人物を指導者として招くことには二の足を踏むだろう。

そうなると起訴されて西武球団を契約解除となった場合、山川選手が生き残る道は制約がないに等しいYouTuberや、自ら事業を起こすことくらいになるのではないだろうか。起訴された場合、このように少なくともプレーを続けることはかなり難しくなると思われる。

FA移籍の道は完全に閉ざされたと言っていい山川穂高選手

一方起訴されず西武球団に残留できることになった場合、今シーズン中の復帰となると流石に難しいのではないだろうか。また、山川選手は以前よりソフトバンク球団へのFA移籍が噂されていたわけだが、起訴されなかったとしてもこの道は閉ざされたと言って過言はないだろう。ソフトバンク球団にいくら資金力があったとしても、このような重大事件を起こした選手に大金を支払うことはないはずだ。費用対効果で考えても、大金を支払う価値は見いだせないからだ。

これに関しては他球団も同様で、西武球団に残留してFA宣言をしたとしても、手を上げる球団は恐らくはないだろう。そうなると可能性の問題として、山川選手のFA権は事実上失効したに等しくなる。ただし今回の事件を踏まえて西武球団が大幅減俸に処し、今後FAランクがB〜C程度まで落ちた場合はどうなるかはまだ想像できない。

西武球団に残留した場合でも、まず背番号3は今オフにでもすぐに剥奪すべきだろう。もはや山川選手はライオンズの背番号3を背負うには相応しくはない。当然ポジションも剥奪し、0からやり直させるべきだ。だがもうすでに30代に突入している山川選手の場合、果たして0からやり直すだけの気持ちを維持できるだろうか。問題を起こす以前の言動から踏まえても、山川選手のメンタルの安定感は決して高くはない。間違っても栗山巧選手中村剛也選手が同じ年齢だった頃と比べることはできない。

残留させた場合西武球団がやらなければならないのは、まずは背番号3を剥奪すること。そして不起訴となった場合でも何らかの社会的償いはさせるべきだろう。被害女性に対する誠心誠意を込めた償いは言うまでもなく、ファンや社会に対する償いもさせるべきだ。例えば養護施設への訪問、ホームレスへの炊き出しなど、野球とは関係のないできるだけ子どもとは触れ合わない活動を定期的にさせるべきだろう。筆者個人としては少年野球教室でさえ山川選手はしばらくは参加すべきではないと考えている。

今西武球団に必要なのは東尾修元監督の遊び方指導

プロ野球はファンあってのプロ野球だ。そして社会的責任も一般企業以上に担っている。NPBのプロ野球は日本に12球団しかなく、日本中に無数ある大企業の中で、わずかに12社だけがプロ球団を持つことが許されている。その責任の大きさを考えると、少なくとも山川選手の早期復帰に関しては検討すべきではないだろう。

今現在は3軍扱いで主に若手選手を指導したり、人目につかない状況でバッティング練習をしているという情報が入っている。少なくとも生きた投手の球は登録抹消されて以来ほぼ打っていない状態だ。この状態では、仮に今季中に復帰させたとしてもまず打つことはできないだろうし、またすぐに怪我をするのが関の山だ。

現状を考えると早期復帰はないに等しく、復帰は早くとも2024年シーズンとなるはずだ。それでももはや山川選手を四番打者として計算することはできない。松井稼頭央監督は早急に次期四番打者を育成しなければならず、しばらく渡部健人選手を4番に据えていたが、その渡部選手はコンディション不良ですでに登録を抹消されており、その渡部選手もSNSでの不適切行動が報じられている。

渡部選手の場合は特に法を犯した可能性のある行動をしたわけではないが、山川問題に乗じて一部週刊誌がこのことについて報じている。確かに法を犯したわけではないのだが、しかしプロ野球選手という立場を考えればこのような軽率な行動は慎むべきだろう。渡部選手の行動にしても、少なくとも品がある行動だとは言えない。

コンプライアンスにどこよりも厳しい球団として知られる西武球団だが、多発している問題をただ傍観しているわけではない。球団としてSNSの使い方などを事あるごとに選手には指導している。それでも一部の選手の耳には届かないのだから、球団としては実に頭が痛い。ましてや球団と選手の間には雇用関係はなく、あくまでも業務提携という関わりの中で球団運営はなされており、その状態においてはできることも限られるのかもしれない。

遊び方を教えられる人がいなくなったプロ野球界

筆者が考える問題は、プロ野球界に「きれいな遊び方」を教えられる人がいなくなったということではないだろうか。例えば松井稼頭央選手がまだ駆け出しだった頃、当時の東尾修監督が松井稼頭央選手に祇園での遊び方を教えていた。一般的に舞妓さんと遊べるのは顔見知りだけで、一見さんは芸者遊びを楽しむことはできない。東尾監督は活躍したご褒美として、松井稼頭央選手を京都に遊びに連れ出したりしていた。

昭和や平成前半のプロ野球を知る選手はこのように先輩たちからきれいな遊び方を学んでいった。だが現代の選手は遊ぶ人は遊び、遊ばない人はまったく遊ばない。例えば栗山巧選手などはまったく遊ばないタイプの人物で、この姿はストイックなアスリートとして尊敬すべきものであるのだが、しかしそんな素晴らしい人物である栗山選手は後輩に野球を教えることはできても、きれいな遊び方を教えることはできない。もちろんこれが栗山選手の欠点になることは決してないのだが。

現代のプロ野球界がそうならば、東尾監督から直に学んだ松井稼頭央監督がきれいな遊び方を選手に教えてあげる必要があるのかもしれない。仮に松井監督自身が教えられなくても、松井監督が頼めば東尾元監督が喜んで教えに来てくれるはずだ。球団の、いわゆるフロント陣が言ってもダメならば、名もあり顔も利く東尾修元監督のようなパイプをもっと活用すべきではないだろうか。

グラウンドで償わせることはもはや時代が許さない

とにかく筆者個人としては、プロ野球球団が担う社会的責任の重さを考えると、山川問題を軽々しく考えるべきではないと考えたい。そしてそれは後藤高志オーナーもきっと近い考えだと思う。不起訴だったからといって無罪放免というわけにはいかないだろう。それではごくごく一部のライオンズファンを喜ばせるだけで、多くのライオンズファン、その他11球団のファン、そして何より被害を受けた方は決して納得しないはずだ。

「プロは結果さえ残せばいい」という考え方が通用する時代はもうとっくの昔に終わっている。犯罪は言うまでもなく、法を犯したことにはならない不倫でさえも大きく問題視される時代だ。そんな時代に「グラウンドで償わせろ」という考え方は決して社会に受け入れられることはない。一部のファンはこれを「生殺し」と言うが、しかし発端は山川選手自身にあるのだから、生殺しだろうが何だろうが責任は一身に負わなければならない。

ちなみに山川選手曰く、奥様にはすべて打ち明けてすでに赦しを得ているとのことだ。であるのだから、山川家のことをここでとやかく書くことはしない。だが夫人やお子さんの周囲は、彼らが山川穂高の夫であり子どもであることを知っているわけで、彼らが肩身の狭い思いをしてしまうのはとてもやるせない。だからこそ我々ファンもご家族に関しては必要以上のことはつぐむべきだろう。

とにかく山川選手はグラウンドに立つ前に、プロ野球ファンが、社会が納得するみそぎを済まさなければならない。もしそれなくして山川選手がグラウンドに戻れば山川選手自身だけではなく、西武ブランドにも更なる傷が付いてしまう。ライオンズという球団は西武グループ全体のシンボルだ。このブランドがこれ以上傷付かぬよう、やはり西武球団は決して一部の甘い意見に流されるべきではないと筆者は考えている。

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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