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2024年1月28日公開

相乗効果により合計70本塁打以上は打つであろうアギラー選手とコルデロ選手

中米出身の打者が活躍する確率が非常に高いライオンズの土壌

ヘスス・アギラー選手

約一週間後には、いよいよライオンズの新外国人選手たちがライオンズのユニフォームを着てプレーをすることになる。今季の新外国人打者に関しては2人ともパワーヒッターであるため例年以上の期待が寄せられているわけだが、一般的には外国人選手は蓋を開けてみなければ分からないと言われることが多い。

だがそんなことを言っていては身も蓋もないではないか。やはりライオンズファンとしてはアギラー選手コルデロ選手にはキャンプイン前のこの段階から大きな期待を寄せていきたい。

近年の西武球団は、外国人選手に関してはとにかく人柄と真面目さを最優先に人選をして来た。その結果、先日引退を表明したザック・ニール投手のように11連勝をするなど時々目を見張る活躍は見せてくれるものの、安定感があり日本人離れした選手となると皆無だった。実際ニール投手も、ライオンズの日本人投手たちよりも球速はずっと遅かった。

そしてデビッド・マキノン選手に関しては、昨季はプロ野球全般で助っ人不当たりの年でありながらも比較的頑張ってくれた。だが年俸1億円以上出せる成績だったかと言えばそんなことはなく、インパクトのある成績を残すことはできなかった。

ではインパクトのある成績を残した選手は誰になるかと言えば、エルネスト・メヒア選手(ベネズエラ)まで遡らなければならない。メヒア選手は2014年途中にライオンズに加入し、途中加入選手としては史上初のホームラン王を獲得した(中村剛也選手と同数)。

そしてその他のインパクトのある成績を残した外国人選手と言えば、アレックス・カブレラ選手(ベネズエラ)、ドミンゴ・マルチネス選手(ドミニカ)、オレステス・デストラーデ選手(キューバ)らの名前を挙げられるわけだが、実はいずれも中米出身の選手なのである。西武球団は今季、原点回帰とも言える流れで中米選手を支配下・育成合わせて6選手獲得した。

ちなみにメヒア選手同様シーズン途中での加入と言えば、デストラーデ選手は1989年6月にライオンズに加入し、なんとそこから僅か83試合の出場で32本塁打をマークした。この衝撃は当時、メヒア選手がホームラン王を獲った時のインパクトよりも強く、さらにはデストラーデ選手は翌年から3年連続でホームラン王を獲得している。

二人一組だからこそ打棒を爆発させられるアギラー選手とコルデロ選手

さて、今季はアギラー選手とコルデロ選手がそれぞれ四番・五番を打つことが濃厚となっているわけだが、パワーヒッターを2人獲得したことはとても良かったと思う。もし1人だけの獲得だったとしたら、もしかしたら期待通りの活躍はできない確率の方が高まっていたかもしれない。

仮にアギラー選手が四番を打ち、コルデロ選手が五番を担った場合、まずバッテリーはアギラー選手を簡単には歩かせられなくなる。もしアギラー選手との勝負を避けたとしても五番にはやはりホームランバッターであるコルデロ選手が控えており、安易に走者を貯めてコルデロ選手を迎えるわけにはいかないからだ。

そうなると無死の状況であってもバッテリーはアギラー選手に対しストライクゾーンで勝負しなければならず、アギラー選手としても無理して難しいボール気味の球を振る必要がなくなり、ストライクゾーンの好きなコースを待ちやすくなる。それによって対戦そのものがピッチャー・イン・ザ・ホールという打者有利の状況で進められる場面が増えていく。

逆にコルデロ選手の存在がなく、新外国人選手がアギラー選手だけで五番打者が迫力に欠けた場合、相手バッテリーは無理してアギラー選手と勝負する必要がなくなる。仮にアギラー選手を歩かせたとしても、アギラー選手は走ることはできないし、迫力に欠ける五番打者と勝負をしにいってもアギラー選手と勝負することほど危険性は高くはない。

そのためバッテリーはアギラー選手に対してはボール気味のコースを四球を厭わず突けるようになり、思うように勝負してもらえないことでアギラー選手は苛立ちが募らせ、その結果ボール球にも手を出すようになり、フォームを崩されて活躍できない状況が続いてしまうことになる。

しかし五番にコルデロ選手がいることにより、バッテリーはアギラー選手に対してもストライクゾーンで勝負せざるを得なくなる。そしてコルデロ選手を出してしまうと、今度は佐藤龍世選手のように進塁打を打てる打者が控えており、上手くライト前に転がされてしまうと一瞬で三塁一塁というピンチを招くことになるため、やはりコルデロ選手に対しても簡単にボール球を投げられなくなってしまう。

ちなみに五番打者に迫力が欠けているのと、六番以降の打者に迫力が欠けているのとでは意味合いはまったく変わってくる。迫力が欠ける五番打者に対してはバッテリーもどんどん攻めていきやすいのだが、迫力が欠ける六番打者以降となると(クリーンナップがしっかりしているという前提)、下位打線に対して無駄な四球は出したくないという心理が働いてくる。

先発投手というのは長いイニングを逆算しながらスタミナを計算していくわけだが、ピンチでもないのに六番打者以降の下位打線に対し本気で投げてくる投手はほとんどいない。クリーンナップに対しては全力で抑えにいき、下位打線では少し力を抜いて、また上位打線と対峙するまで体力を温存しようとするのが、先発投手の心理なのだ。

やや話が戦術的過ぎて分かりにくくなってしまったが、ベンチワークというのはこのようなことも考えられながら組み立てられていく。渡辺久信GMも自らの監督経験からいかに五番打者が重要なのかを理解しているからこそ、予算を与えられたこのオフは破壊力抜群の打者を2人メジャーから連れて来たのだろう。

最低でも二人合わせて70本塁打以上は期待したいアギラー選手とコルデロ選手

昨季は深刻な得点力不足に泣かされたライオンズではあったが、アギラー選手とコルデロ選手が加入したことで、中村剛也選手渡部健人選手を六番以降で起用できるようになり、得点力は昨季と比較すると爆発的にアップしていくことが予想される。

昨季はどうしても大ベテランである中村選手や、まだまだ一軍での安定感には乏しい渡部選手に頼らざるを得ないところがあり、五番打者どころか、クリーンナップトリオ全体が迫力不足に陥っていた。もちろん中村選手はまだまだ元気であるわけだが、10年前のように試合に出続けることができなくなっていることは確かだと言える。

だが四番・五番という重責をメジャー経験があり、日本人離れしたパワーを持っているアギラー選手とコルデロ選手に任せられるようになったことで、中村選手はより楽な打順で500本塁打を目指せるようになり、渡部選手にしてもやはり四番よりは少し楽な打順で一軍での経験を積めるようになる。

つまりアギラー選手とコルデロ選手を2人同時に獲得したことにより、メリットはクリーンナップだけではなく、六番以降にも派生させることができるのだ。やはり四番打者というのは打線の核であり、四番打者がしっかりしてくると、打線全体の繋がりも良くなっていくものだ。

だが昨季のように四番打者が不祥事によりほぼ全休となってしまうと、打線は核を失いガタガタと音を立てて崩れていってしまう。そしてそうなったらもう、レジェンドである中村剛也選手を四番に据えたとしても打線を立て直す前にシーズン終了を迎えてしまうことになる。

昨季は松井稼頭央監督にとってはまさに不運としか言いようがなかった。近藤健介選手をFAで獲得できなかったことにより、森友哉捕手が抜けた打線の穴を埋められなかっただけではなく、さらには山川穂高選手が不祥事により全休となってしまったのだから、戦うにも戦えない状況だったとしか言いようがない。

だが今季は違う。打線の核をしっかりと整え、クリーンナップには近年にはなかったほど大きな期待を寄せることができている。確かに外国人選手は蓋を開けてみなければ分からないという声もあるが、上述したように、アギラー選手とコルデロ選手の2人を獲得したことにより、ギャンブル性はかなりなくなったと言える。

仮に二人の打率がそれぞれ.260〜270という数字に留まったとしても、二人合わせて70本塁打以上打ってくれればまったく問題ない。しかも打率が低くても、得点圏打率が.350以上あれば良いのだ。しかしもちろん、山川選手のように打率も得点圏打率も低いというのでは困ってしまうが、しかしアギラー選手とコルデロ選手は決してチャンスに弱い打者ではない。

一週間後にはいよいよライオンズの春季キャンプも始まっていく。アギラー選手とコルデロ選手が並んでフリーバッティングを行い、南郷の空に幾重にもアーチを描いていくことで、ライオンズファンだけではなく他球団の選手たちも、「今年のライオンズは今までとは違う!」と確信することになっていくだろう。そしてそれを目の当たりにすべく、筆者は今か今かと2月6日のキャンプインを待ち望んでいるのである。

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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