2024年10月16日公開
10月15日よりいよいよカーミニークで秋季練習が始まり、2025年度西口ライオンズが始動した。と言っても10月28日まで所沢で行われる秋季練習は、西口監督曰く肩慣らしという位置づけになるようだ。これはもちろんそうで、シーズンを終えて少し体が緩んだ状態でいきなり厳しい練習を課したとしても選手たちを壊してしまう。
だが10月30日からの南郷に関しては地獄の秋季キャンプとなるようで、西口監督も打者陣の振り込み数をかなり増やしていく腹づもりであるらしい。ちなみに新任コーチたちが本格的にライオンズに合流するのもこの秋季キャンプからとなる。
さて、2025年に向けて舵を取り始めたライオンズだが、昨日外国人選手2人の退団が発表された。ジェフリー・ヤン投手とフランチー・コルデロ選手だ。人柄が非常に良い2人だっただけに、後半戦はなんとか巻き返して再契約をと期待したわけだが、しかしコルデロ選手に関しては一軍に上がることさえ叶わず、ヤン投手も課題の制球力と被打率の悪さを克服することができなかった。
なお守護神を務めたアルバート・アブレイユ投手とはすでに残留交渉を始めており、ヘスス・アギラー選手に関してはこの秋再度チームに合流してもらい、そこで足首に不安がないようであれば再契約を打診する見込みとなっている。
そして今季途中で育成契約から支配下契約に切り替わったアンソニー・ガルシア選手に関しては年齢が若く伸び代があることと、年俸が格安であることから残留が濃厚となっている。ファンとしてはアギラー選手、コルデロ選手、アブレイユ投手、ヤン投手という中米カルテットで今季はチームを引っ張ってもらいたかったわけだが、残念ながらその思惑は期待外れに終わってしまった。
ヤン投手に関しては奪三振率は10.27と高水準だった。だが被打率が.276と高く、与四球率も5.58で、WHIPも1.66と振るわなかった。ヤン投手は火消し役としてリリーフ登板する機会もあった投手であるわけだが、しかしWHIPが1.66となってしまうと、火消しとして出てもその火に油を注いでしまうことになる。
もちろんノっている時は時々手が付けられないような快投を見せることもあったわけだが、その割合が低かった。ちなみにヤン投手はオリックスとの争奪戦を制して獲得した投手だったため、荒削りではあるものの期待値は大きな投手だった。渡辺久信GMも日本で制球力に磨きをかけてくれれば十分通用する投手になれる、という評価をしていた。
ヤン投手は三振を奪った際に高くジャンプをするパフォーマンスが売りだったわけだが、これがもう見られなくなると思うとやはり少し寂しい。そしてヤン投手が解雇された最大の理由は、パ・リーグ球団に弱かったという点が原因だと思われる。ヤン投手はセ・リーグ相手だと8試合で防御率0.00という見事なピッチングを見せていたのだが、パ・リーグ相手だと防御率が一気に跳ね上がってしまう。
対ホークスは6試合で5.40、対ファイターズは6試合で4.15、対マリーンズは6試合で7.36、対バファローズに関しては4試合で0.00だったものの、対イーグルスは7試合で14.14という防御率だった。そして対バファローズ以外の被打率は.313〜.400と、パ・リーグ球団にはことごとく打たれてしまった。やはりパ・リーグ相手に弱さを見せたこのあたりがヤン投手解雇の最大の理由であり、もし仮にセ・リーグには弱くても、パ・リーグを抑えていればもしかしたら来季の再契約もあったかもしれない。
一方のコルデロ選手は37試合に投げたヤン投手と比較すると、不自然なほど一軍でのチャンスをもらうことができなかった。オールスター明けくらいに一度一軍に再昇格しているのだが、しかし体調不良で出場する前にまた二軍に戻され、その後は二度と一軍に呼ばれることなくすでに帰国の途へと就いている。
コルデロ選手の出場試合数は僅かに23試合で、73打席しか一軍では打席に立つことができなかった。一般的に外国人選手が日本の野球に慣れるためには一軍で最低でも200打席は必要であると言われている。もちろん今季のライオンズの首脳陣もそのようなことは十分に知っているわけだが、しかしコルデロ選手は僅か73打席のみで見切りをつけられてしまった。
コルデロ選手の場合、確かに打てないだけではなく拙い守備で味方の足を引っ張ることも多かった。だがそのあたりに関しては少なくともアギラー選手の抹消後は守備はレフトではなくファースト、もしくは指名打者で出場させることもできた。実際西口二軍監督はコルデロ選手を基本的に指名打者として起用し、守る時もレフトではなくファーストを守らせていた。なぜ西口監督が行ったこの起用法を、松井稼頭央前監督や渡辺監督代行が行わなかったのかは今季の謎の一つだったと言える。
もし守備の不安がない指名打者としての起用がなされていれば、コルデロ選手は一軍でももう少し良い数字を残せていたかもしれない。実際二軍では76試合に出場して打率.270、6本塁打、37打点という数字を残している。もちろんこの数字も助っ人としてはまったく納得のいく数字ではないわけだが、しかし日本野球に慣れ始めていたことだけは確かだった。
しかし中にはエルネスト・メヒア選手のようにチームに合流していきなりホームランを打ちまくる選手も実際にはいるため、このあたりはもう日本でプレーをするまでは正確なことは誰にも予測することはできない。しかもメジャーで活躍したという実績もあったコルデロ選手に対し、メヒア選手は一度もメジャーに昇格したことがない選手だった。このようなことからも、外国人選手を獲得する上では非常にシビアな判断力が強いられるということになる。
コルデロ選手は、もしかしたら2025年の西口監督のもとで来日していたら違った成績になっていたかもしれない。西口監督はコルデロ選手がレフトを守れないと知るとあっさりとファースト、指名打者で起用するようになり、このように柔軟性を持った監督のもとでプレーしていれば、コルデロ選手はまた違ったキャリアを日本で残せていたかもしれない。
とにかく今季は外国人打者の不振が大きく響いてしまったライオンズであるわけだが、今オフはファイターズのレイエス選手の獲得を目指す可能性があるとすでにスポーツ紙によって報道されている。複数の有力スポーツ紙が報じているため、西武球団がレイエス選手の獲得調査を行っていることだけは確かだろう。
獲得できるかどうかは別として、今季のレイエス選手の年俸は1億円で、打率.290、本塁打25、打点65という数字を残している。もしこのレイエス選手を獲得することになれば、年俸は恐らくは2億円を通り越し2億5000万円程度となるのではないだろうか。なお今季のアギラー選手の年俸は2億1000万円だった。
ライオンズの場合は他球団以上に深刻な打力不足に陥っているため、今オフは日本未経験の外国人打者の獲得よりも、日本で実績のある打者の獲得を目指すべきだ。レイエス選手はファイターズとは1年契約であるため、もしレイエス選手が11月30日までに日本ハム球団と再契約を結ばなかった場合、12月1日以降は西武球団も自由にレイエス選手と交渉の席を持つことができる。
ただし、レイエス選手は新庄剛志監督を慕っているため、新庄監督が続投ということになった場合はレイエス選手のファイターズ残留の可能性は高まり、逆にもし新庄監督が退任ということになれば、逆にレイエス選手がフリーエージェントになる可能性が高まる。そのため西武球団がレイエス選手を獲得できるか否かは、新庄監督の去就にかかっているということができる。
また、今季限りでドラゴンズを退団することになったビシエド選手に関してだが、近年はストレートにやや差し込まれることが多かったという理由で、西武球団は獲得を見送ったようだ。ただこのビシエド選手に関しては、アギラー選手の動向次第ではどうなるかは分からない。年齢的にはビシエド選手はアギラー選手よりも1歳上だが、日本人選手扱いとなるため、年俸次第では今後西武球団が獲得に動く可能性がないとは言い切れない。
現在ビシエド選手は日韓4球団と交渉中であるため、少なくとも来季も現役としてどこかでプレーを続けることだけは間違いない。そしてこの4球団の中に西武球団が入っているのかどうかは今はビシエド選手のエージェントしか知らないわけだが、それでも獲得して損はない選手であることは間違いないだろう。
実は今季の西武球団はシーズン途中でキューバ人選手の獲得を目指したわけだが、それはかつてベイスターズでプレーしたユリ・グリエル選手ではないかと言われていた。しかし確実に言えることは今季途中でグリエル選手が日本のどこかの球団と交渉したが、所属していたアトランタブレーブスがリリースしなかったという点のみだ。
メジャーリーグの敏腕記者の話によれば、グリエル選手は日本のライオンズと交渉していたようなのだが、残念ながらブレーブスがグリエル選手を手放すことを認めず交渉は破談に終わった。だが不可解なのはそのことが伝えられた僅か数週間後の8月31日に、ブレーブスはグリエル選手をカンザスシティロイヤルズに放出していることだ。
この話の流れで分かることは、ブレーブスはグリエル選手を戦力として見ていたのではなく、トレード要員として必要としていたということだ。なおそのトレードは金銭トレードだったわけだが、確かにブレーブスとすればグリエル選手を自由契約にして日本に送り出しても一銭の得にもならないわけだが、金銭トレードであれば少なくとも金銭面ではメリットがあるため、そのようなビジネス面においてブレーブスはグリエル選手の日本行きを認めなかったのだろう。
そしてロイヤルズ移籍後のグリエル選手は18試合に出場して打率.241、本塁打0という数字に終わっているため、もしシーズンオフに西武球団が再度グリエル選手の獲得を目指した場合は、その時は獲得するにあたり大きな支障はないものと思われる。ただしシーズン中にライオンズが獲得を目指したキューバ人選手がグリエル選手だったのかどうかは、渡辺久信GMら西武球団フロントの一部の者しかその真実は知らない。
西武球団は例年外国人選手の獲得発表が他球団のどこよりも遅く、年の瀬の12月後半になってから発表されるケースが多い。その流れで行けば今オフも外国人選手の獲得には時間をかけていくものと思われるが、とにかく言えることは来季は外国人打者の獲得で失敗することは許されないということだ。
今季後半戦では佐藤龍世選手がずっと四番を務めていたわけだが、佐藤選手のみならず、岸潤一郎選手や山村崇嘉選手が四番を打っているようではダメだ。やはり四番には相手バッテリーが恐怖感を感じる強打者が座っていなければならない。
本来はその役目をアギラー選手が務めるはずだったわけだが、アギラー選手は春先から足首を痛めてしまい、それを庇いながらプレーを続けたことで悪化し、手術を受けるという最悪の結果に繋がってしまった。アメリカ時代のアギラー選手のスウィングとライオンズ時代のアギラー選手のスウィングを比較すると、実は圧倒的にライオンズ時代のスウィングの方が2023年の直近のスウィングと比べても弱くなっているのが分かる。恐らくはバットを強く振ることができないほどアギラー選手は足首が痛かったのだろう。
だがこの秋再来日して足首に不安がないことを確認できれば、西武球団はアギラー選手と再契約を結ぶ方針でいる。これに関しては筆者も賛成だ。足首の不安なくプレーすることができるのであれば、守備力が非常に高いアギラー選手は大きな戦力となるし、足首の不安さえなければ今季はまったく見せられなかった強振も、来季は見せてくれるはずだ。
ただ、もちろんアギラー選手1人だけということはないため、アギラー選手と再契約をしたとしても、最低でもあと1人は外国人打者を獲得することになる。それがレイエス選手になるのか、グリエル選手になるのか、はたまたまったく違う誰かになるのかは今は誰にも分からない。
なお2004年に日本一になった際は、前年は千葉ロッテマリーンズでプレーしていたホセ・フェルナンデス選手を獲得し、結果的にこれが大成功で、アレックス・カブレラ選手と強力なクリーンナップを形成することになった。来季はこの時の再現を目指すべく、もしファイターズのレイエス選手がFAになった際には速攻でアタックして獲得を目指してもらいたい。レイエス選手が外野手であるという点も、今季もまた外野のレギュラーが1人もいなかったライオンズにとっては喉から手が出るほど欲しい存在であることに間違いない。