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2024年7月19日公開

守備の基本さえできていないライオンズは年間100敗しても不思議ではない!

埼玉西武ライオンズ vs 福岡ソフトバンクホークス/15回戦
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Hawks 0 0 0 2 0 0 2 0 0 4 7 1
Lions 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0

継投●武内夏暉本田圭佑ジェフリー・ヤン
敗戦投手武内夏暉 5勝2敗0S 1.70
盗塁/ 野村大樹(1)、外崎修汰(5)

守備の基本さえできていないライオンズは年間100敗しても不思議ではない!

少し疲れが見え始めて2連敗となってしまった武内夏暉投手

ルーキーながら開幕から5連勝していた武内夏暉投手もここに来て本格的に疲れが出始めているのか、5連勝後は2連敗となってしまった。いつもの制球力も今日はやや甘い感じで、内外を狙ったボールが、少しずつ炭谷銀仁朗捕手のミットよりも真ん中寄りに入ることが多かった。

そして球威に関してもボールの威力は少し弱かったように見えた。いつもよりも明らかに球速が遅い、というわけではなかったのだが、ストレートの伸びに関しては好調時の質の高さではなかったはずだ。その分変化球も見極められやすくなり、少し甘く入ったところでヒットを集められ、7回4失点という内容になってしまった。

しかしそれでも5勝2敗で防御率は1.70なのだから、数字としては本当に立派だ。シーズンはまだ半分近く残っているため、ここから二桁勝利を達成できる可能性はまだまだ残されている。今までこれだけ毎週続けて投げた経験のないルーキーとしては、今はまさに体力的に辛いところに来ているとは思うが、ここを乗り切れば少し楽になっていくはずだ。

ただ、ベルーナドームの夏の試合は本当に過酷だ。高温多湿でちょっとしたサウナ状態になってしまうため、これを嫌いFA移籍してしまったり、逆にFAで選手を獲得できなかったりということが実際に起こっている。そのため首脳陣としては武内投手を少しでも楽にしてあげるためにも、後半戦の過酷なベルーナドームでの登板は避けてあげても良いのかもしれない。

もちろん今井達也投手クラスであればそんな融通を利かせることは許されないが、しかしルーキーとしてこれだけ頑張っていて新人王も目指せるレベルにあることを考えると、ここから失速させないためにも、今後は夏でもやや涼しい仙台や、他球団のドーム球場での試合にローテーションを動かしてあげるのも一つの手と言えるかもしれない。

先制点のチャンスで一度で二つの弱さを見せてしまったライオンズ

さて、攻撃陣ではまず注目したいのは3回裏の攻撃だ。先頭打者の高木渉選手が死球で出塁し、外崎修汰選手がセンターフライ、炭谷捕手がライトフライに倒れ二死一塁という場面、ここで打席を迎えたのが7月は打率.400を超えている源田壮亮主将だった。

源田主将は見事に左中間への二塁打を放ったわけだが、高木選手が一塁から生還することができず、ホームでタッチアウトとなってしまった。渡辺久信監督代行は三塁ベース付近で高木選手の足がもつれていたとコメントしていたが、中継では残念ながらその場面は映されてはいなかった。

本当に足がもつれていたかどうかは別にして、一塁ベースから走り出した際のスピードと、三塁を蹴った後のスピードを比較すると、三塁を蹴った後は明らかに走りが失速していた。100mにも満たないこの距離で走りが失速してしまうというのは、渡辺監督代行の言葉通り「プロとしてどうなのかな」という印象だ。

確かに高木選手は足を自慢にしている選手ではないわけであり、過去には複数回の肉離れを起こし、下半身に不安がある選手ではある。しかしやはり、100m以下の走りで失速しているようでは一軍の戦力として見るのはやや厳しいのかなという印象だ。

2021年にはイースタンリーグで12本塁打を打った長打力が魅力な高木選手ではあるが、しかし中村剛也選手の走りを見ると、二塁ベースを蹴った後で加速する姿をよく目にする。中村選手でもそれだけ走れるのだから、高木選手が走らないわけにはいかないだろう。

こうして若手選手たちの動きをよく観察していると、やはり筋トレやマシン打撃ばかりしていて、しっかり走り込むという体づくりができていないようにも見える。ダルビッシュ有投手などは走り込みはナンセンスというニュアンスの言葉を発しているが、筆者はまったくそうは思わない。やはり走るという動作はすべてのスポーツの基礎となる動作なのだ。

上半身と下半身を上手く連動させ、リズム良く呼吸をしていくことによってより速く、より長く走れるようになる。中村剛也選手にしてもしっかりと走り込みをしているからこそ、走塁の後半で加速することができるのだ。怪我の多い高木選手が今後一軍に定着するためには、まずはそのあたりの体づくりから見直すべきなのかもしれない。

そしてこの場面もう一点注目したいのは阿部真宏三塁コーチの判断だ。高木選手の走塁以上に阿部コーチの判断に問題があったと筆者は感じた。高木選手が三塁ベースに到達したタイミングで、ボールはすでに左中間からショートまで返って来ていた。そのため筆者は腕をグルグル回す阿部コーチを見て、さすがにこれはセーフにはならないと思いながら見ていたのだが、案の定バックホームがかなり逸れても余裕でアウトにされてしまった。

二塁から三塁に走っていた高木選手は間違いなく左中間から返ってくるボールを見ながら走っていたはずだ。そのためタイミング的には間違いなくストップがかかると判断したと思う。それにより高木選手は恐らく、三塁ベースで止まる前提で三塁に向かって走っていたはずなのだ。

しかし三塁直前まで行くと阿部コーチが腕を回していたため、急遽再加速をしようとしていたようにも見えた。恐らく渡辺監督代行が足がもつれていると言ったのはこの場面ではなかっただろうか。

一塁走者が高松渡選手ならまだしも、俊足とは言えない高木渉選手だったのだから、左中間からの返球を見ればやはりここは止めるべきだったと思う。ただ、次の打者が打率.156の奥村選手だから無理してでも回した、という可能性もあるため、一概には言い切れない部分もある。

しかしそうだとしてもやはりタイミング的にはかなり無理があったと思えたため、やはり阿部コーチは高木選手を止めるべきだったと思う。つまりこの場面は高木選手の走力、阿部コーチの判断の両方に問題があったと言えるわけで、序盤の3回からこのような弱さを見せてしまったため、試合の流れをホークスに持っていかれてしまったと見るべきだろう。

守備の基本さえできていないライオンズの若手選手たち

さて、流れがホークスに行ってしまったプレーとしてはもう二点挙げることができる。ファーストを守る野村大樹選手なのだが、何の変哲もないファーストへのファールフライを追いかけた際、何と打球を追い越してしまい捕ることができなかった。当然これはエラーが記録されるプレーではないわけだが、この4アウトイニングはルーキーの足を引っ張るには十分すぎる痛手だった。さすがに打率.158という数字でこのようなお粗末なプレーは許されないのではないだろうか。

そしてもう一点は西川愛也選手の打球の追い方だ。4回表の先頭打者である栗原選手の打球はやや深めのセンターフライだった。ウォーニングトラックにも届いていないようなセンターフライだったわけだが、これを西川選手がまったく異なる方向に追ってしまい捕ることができず、その結果ワンバウンドでフェンスを超えてエンタイトルツーベースになり、この走者がその後先制のホームを踏んでしまった。

西川選手が追ったこのセンターフライは、確かにイージーフライではないが難しい打球でもなかった。落下点を見る限り、西川選手は打球には追いついていた。そのためあと僅かにライト寄りに向かって走っていれば、これはただの深いセンターフライで終わっていた。

今日は野村大樹選手のあわや左中間への二塁打を好捕してアウトにしたホークスの周東選手に対し、ライオンズは野村選手、西川選手がエラーが記録されない守備のミスを犯しルーキー武内投手の足を引っ張ってしまった。やはり1試合でこれだけミスが出ているようでは首位ホークス相手に勝つことなど到底できないだろう。

山村崇嘉選手

ただ、流れをライオンズに引き寄せるかに思えた好プレーもあったことは不幸中の幸いとでも言うべきだろうか。3回表に周東選手がサードへのセーフティバントを試みて、これが絶妙なところに転がった。これはさすがに内野安打かなとも思われたのだが、その周東選手のセーフティバントを警戒していたのだろう、山村崇嘉選手が猛チャージをかけてこれを捕球し、完璧な握り替えで一塁に矢のような送球を投げ、見事韋駄天周東選手をアウトにして見せた。

この山村選手のプレーは本当にビッグプレーだったと思う。最近は好調のバッティングを買われて四番に座っている山村選手だが、今日はヒットこそ出なかったものの守備でベルーナドームを盛り上げてくれた。数日前のコラムでも書いたわけだが、山村選手の守備力は本当に高くて安心して見ていられる。

ライオンズの外野陣は強肩の選手こそ揃っているものの、守備力となると決して高くはない。若林楽人選手の守備力は非常に高かったわけだが、例えば岸潤一郎選手のプレーを見ていると、グラブの使い方がエラーをしやすい選手の使い方になっているのだ。

グラブというのはフライでもゴロでも、基本的には立てて捕球すべきなのだ。その方が打球の勢いでグラブを持っていかれることが少なくなり、余計なファンブルを減らすことができる。だが岸選手は平凡な外野フライでもグラブを寝かせてフライを捕っているのだ。このグラブの使い方は、いつか必ず致命的なミスを生んでしまうはずだ。

一方蛭間拓哉選手はしっかりとグラブを立てて使っているため、守備の基本はできていると言えるし、野球少年たちも蛭間選手の守備はどんどん参考にすべきだと思う。もちろん状況的にグラブを立てられない場面もある。そのような場面ではもちろん無理して立てる必要はないわけだが、しかし平凡なゴロやフライに関してはグラブは立てて使うのが基本だ。

このあたりの守備の基本を見ていっても、ライオンズの選手たちの中にはできていない選手が多い。赤田将吾外野守備走塁コーチは一体何を選手たちに教えているのだろうか。ただノックを打っているだけなのだろうか。広岡達朗監督のように手本を見せて指導しろとまでは言わないが、しかしこのような基本的な動作はもっと徹底させるべきだろう。

そして守備からして基本が徹底していない選手たちを見ていると、今季のライオンズがシーズン100敗ペースで負け続けているのも不思議ではないのかなと思えてしまうのである。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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